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人間、諦めが肝心なのである

 ★


 人間、諦めが肝心なのである。それもタイミング良く。自分が傷つかない程度の状況を見計らって。人間が努力する原動力は将来の為や、信念の為というだけではなく、安全圏を確保する為という事も重要な一つだ。


 だってそうだろう。勉強は学校で落ちこぼれない為に。スポーツはクラスで嫌われない為に。音楽は友達関係を保つ為に。興味や友情などのスパイスではなく、自分が優位な状況で安全な場所にいる事を噛み締めるという気持ち的な余裕が大切なのだ。


 俺の場合はこれに一歩も準じていない。いつも任務失敗は命に関わるという、文字通り『命懸け』。緊張感で押しつぶされようとなっている。俺の戦う理由はいつも制覇様の為に。自分の生活を豊かにする為に金を稼ぐとか、自分の誇りの為に、高難易度の仕事に臨むとか、そんな感じは一切ない。


 人間は諦めが肝心だ。下手に意味のない信念に拘るのは愚の骨頂である、いざという時に、そんな甘えた発想は、自分の身を助けてはくれないのである。自分を大切にする、自己中心的な考えをするという意味ではなく、自分の人生をより豊かで安全にする、そんな『当たり前』が俺にはない。


 もし制覇様が、人生のスタートラインから運の無かった俺を利用し、俺をロリコンだと暗示させ、無理矢理にサンタクロースにして、俺をいいように操っているのであれば。俺はそれを見抜けない間抜けという話になる。彼女を愛すという事は、彼女の奴隷になる事と同義でいいのか?


 確かに俺は任務としてではなく、自分から進んでサンタクロースになりたいと思った。今までの自分を否定し、新しい自分を律する為である。そして俺はロリコンになった。でも俺は彼女にとって、桜台制覇に対して最善の最高の援助をしているとは思えない。


 あの隠居魔王も言っていた。もっと馬鹿になれと。流れに身を任せるのではない。逆風に進む事をしなければならない。例え死ぬ結果になったとしても、それでも何かを掴みとらなくてはならない。


 「工場見学での任務。制覇様は絶対に極秘事項を取らなくていいって言っていたけど……それじゃ駄目だな」


 俺が絶対に、その極秘事項を手に入れる。そして制覇様の為にそいつを開封する。そのまま制覇様に手渡ししてはいけない。ようやく自分がすべき事が見えてきたじゃないか。


 『制覇様のやろうとしていることを知る』


 これが俺の今にすべきことだ。制覇様の思惑を理解し、それでいて自分がすべき行動を見極めるのだ。まずはその得体を知らなくては、始まらない。

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