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第七話 存在復活

 月曜日。時刻は午後、放課後。

 今日、(あきら)の存在を戻し浅原(あさはら)を犯人に仕立て上げる。

 この土日、俺は部屋にこもりひたすら試行錯誤を繰り返していた。

 ただの一つも失敗は許されない。一発で決める。二回目は無い。この条件を頭におき、ただひたすらに……。


 自転車置き場にて。

 俺は先に到着していた、古城に手を降った。

 読者部の面子には、用事があるから遅れる、と言っておいたから会うことは無いだろう。それでも、一応ということで俺はこの自転車置き場を待ち合わせ場所に指定していた。


「ここで戻すんですか?」

「いや、少し移動する」


 そう言い俺は歩き出す。本来なら自転車で移動するのだが、古城は持っていないので俺も、まあそういう気分だったってのもあるけど徒歩で移動することにした。そこまで遠い距離でもないし、別に徒歩でも問題ないからな。

 学校を出て少し歩いた所に、公園がある。ここなら、この時間帯人はいない。






――公園につき、俺は古城を前にベンチに座る。緊張しているのだろうか、手汗がすごい。


「じゃあ、始めます」


 問題はここからだな。上手く哲を操れるかどうか……。

 

 古城は手を前に出し、瞼を閉じる。

 ここら辺は想像実現と似ているな。ん? 少し、空間が歪んだような気が……。

 ふと気づくと、古城の前に一人の男子生徒が立っている。


「えっ……」


 その光景に、俺は思わず声を漏らした。

 空間移動と呼ばれる能力があるが、その能力でもこんな……いきなり。俺は、ずっと前を見ていたはずなのに。これが存在否定というものか……。

 『透化』も『存在否定』も使える技自体は、使用者又対象を見えなくなることだ。ただ、存在否定はそこに『存在』するのに、脳が認識出来ない状態。透化は文字通り『透明人間』だ。つまり、使用者本人自体は透明になってるか、なってないかの差か。


「哲?」


 まるで、さっきまでぐっすりと寝ていたような表情を見せる哲に古城が話しかける。存在否定されている間、本人はどういう感覚なのだろうか。意識不明と同じ感じだろうか。


「ここは……」


 哲は辺りを見渡す。そしてもう一度、古城の方を向いた。


「俺は……そうだ、消えて……成功しなかったのか?」


 古城は俺の方を向く。俺はベンチから立ち上がって、哲の名を呼んだ。


「成功はした、でも俺が頼んで存在を戻してもらった」


 哲は不思議そうな目で俺の方を向く。お前は誰だ、と聞いている気がした。


「俺は志比、三年だ」

「志比……」


 俺は哲に、ベンチに座るよう促した。


「何か飲むか?」

「いや、いい……です」


 哲の精神状態はそこまで悪くなさそうだ。だが、この状態では……今日は辞めておくべきか……。いや、存在が戻ったということは、既に学校のみんなの記憶も戻っているということ、なら今日じゃなきゃ……。


「あの、なんで俺の存在を戻して……」

「ああ、それは後で話すとして、まずは読書部について聞きたくないか?」


 こういう場合の、こういう精神状態の人とどう話せばいいかわからない。しかし、この問いに対し動揺しなければ状態はだいぶ良いということになるだろう。計画について話し、そして理解してもらわなければ……。


「読書部……そうだ、葉桜先輩は!!」


 哲は勢いよくベンチから立ち上がるが、俺は再び座るよう促した。


「俺は今、読書部に頼まれて、お前の存在を戻す方法をみんなと一緒に探している」

「みんなが……」

「ああ、みんなお前のことを心配してるぜ」


 哲は、再びベンチに座る。俺は近くにある自販機へと行き、お茶を一本買った。


「お前が消えた理由に、葉桜と浅原が関わってることは知ってる。だから、そういったことも含めてお前に色々と聞きたいんだ」


 俺は、買ったお茶を哲に差し出す。


「俺は、お前の葉桜に対する想いを成就させたいと思ってる」


 お茶を受け取った哲と初めて目が合った。


「えっ……」


 驚いた表情を見せる哲。いや驚いたというよりも、いまいち俺の言葉がどういう意味か分かっていないようだ。


「俺もな、お前と似たような立ち位置だったことがあるんだよ」


 俺は即興の話を話し始める。中学の時に先輩に恋したこと、しかし先輩には好きな人がいて、またその好きな人とは両想いだったこと……。我ながら、フィクションとは思えない出来だった。まあ、ここでの先輩は葉桜を想像していた所為もあるだろうが。


「まあそれでな、お前のことについて調べていくうちに何時の間にか自分と重ねててな、ほっとけなくなったんだよ」


 俺は続ける。


「だからさ、俺にお前の恋を成就させる手伝いをさせて欲しい」


 我ながら酷い嘘だ。

 俺の話を聞き終えた哲は、暫く黙っていたが、やがて口を開いた。


「無理ですよ、俺にあの二人の間に入り込む余地は無い」


 ……随分と弱気だった。まあ無理だと悟って、自らを消すという方法を取ったんだ。仕方ないか。


「まあ、お前だけの力じゃ無理だろうな。でも、俺には二人の関係を壊すための計画がある」

「無理ですよ、あの二人は本当に……」

「言ったのか? あの二人が」


 哲は顔を上げた。


「聞いたのか、二人の、それぞれの気持ちを」

「いや……でも」


 哲はまた俯く。


「諦めるのが早過ぎだ。仮に両想いだとしても、その絆を破壊する計画を俺は立てたんだよ。お前の協力が、お前と葉桜達の絆があるからこその計画がな」

「先輩達との絆?」

「志比先輩……それは」


 すっかり存在を忘れていた古城が会話に入る。このまま黙ってて欲しかったんだけどな……。


「その計画は……」

「お前は黙ってろ」


 俺は語気を強くし、言った。古城はビビったのか口を閉じてしまう。今、ここで冷静な古城の意見は不味い。あと一押しで……。


「あとはお前次第だ、哲。お前がやってくれると言ってくれれば、俺はお前の、葉桜への想いが成就することを保証する」


 哲は俯く。

 大丈夫。こいつは葉桜への想いのために、自己を犠牲にしている。なら、この計画にも確実に乗ってくる。あとは、俺のことを信用しているかどうかだけ……。


「それで葉桜先輩は、俺のことを見てくれるんですか?」

「ああ、そこはお前次第だが……少なくとも浅原は消える」

「消えるって、まさか存在否定を!?」

「いやそういう意味じゃなくて、読書部から消えるっていう話だよ」


 この計画に古城は必要ない。というかもう古城は帰ってもらって構わないんだけどな……。


「じゃあ、どうやって」

「それを今から話そうとな……で、お前の答えは?」


 一瞬考える素振りを見せた後、哲は答えた。


「協力します! それで葉桜先輩と、もっと近づけるなら!!」


 俺は小さく心の中でガッツポーズを決めた。しかし、これはまだ通過点に過ぎない。


「よしっ、じゃあ計画について話すから……というか色々あって今日これから実行したいんだが」

「えっ!? ……いや、別にいいっすけど」

「よし、じゃあ計画については学校に戻る途中に話すから」


 そう言って、俺は立ち上がる

 時刻は既に午後五時を回っていた。

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