『大蛇をプレスマンにする方術』
ある村の奥にある山には、大きな滝があって、その滝壺には、大蛇が住んでいました。それはもう、大きいです。長いです。ぐるぐる巻きにされると、あばら骨が全部砕かれてしまうほど痛いですし、その結果、丸飲みにされてしまうのです。そういうわけで、村人は、大層困っていました。たきぎを拾いに行くときも、峠を越えるときにも、どうしても、滝壺を通らなければならなかったので。
あるとき、修験者が、村を訪れて、村人に方術を示しました。縦じま模様の手ぬぐいを丸めて開き直すと、一瞬で横じま模様に変わる、というものでしたが、村人は感激してしまい、大蛇退治を頼みました。修験者は、任せておけ、しかし腹が減っては戦ができないから、何か食べるものを用意してくれ、と言い、三日三晩、食べては寝て食べては寝るという生活を繰り返しました。村人が、早く大蛇を退治してくれ、とせかすと、四日目の昼になって、修験者は、しぶしぶ山に入っていきました。夕方、山から下りてきた修験者は、村人の前に二本のプレスマンを投げてよこすと、大蛇は全部で三匹いて、大きなやつ二匹を、方術でプレスマンに変えてやったが、一番小さいやつを取り逃がしてしまった。私は疲れてしまったので、もう一匹を倒すには、十日間くらい英気を養わないと無理だと思うが、行ってほしいか、と尋ね、村人が、もう食べ物はないからいい、と断ると、それを見越したかのように、ではさらば、と言って、去っていってしまった。
村人たちは、三匹の大蛇が一匹になったのなら、山に入っても大丈夫だろうと思い、これまでよりも積極的に山に入るようになったのですが、大蛇の被害に遭う者は、どういうわけか、減らないのでした。
教訓:この修験者の弟子は、突然耳が大きくなるという。




