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小説1  作者: まり
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クロエとシロエ

手を伸ばす。

暖かい光が僕の頬をくすぐる。きもちいい。光の指が僕の心をくすぐる。頬がへにゃってなる。うれしい。指が優しく貝殻を拾うように僕の耳を暖かく包み込む。ふわ、いい香り。僕はこの暖かい光にまみれながら、くあーってした。「目を開けて?」光がせがむ。嬉しいからふにゃっと目を開けた。

ちらちらした光と線がくっつき始めて、形になる。きらりと煌めいた銀糸がゆらりと糸の束になる。そして重なり合いながら、まとまっていく。銀糸の髪が、光織り込みながら美女の頬のあたりをくすぐった。美女がうっとりとした顔で僕をのぞき込んでいる。目は綺麗な深緑色。光が入り込む。あまりに目の光が深く優しく、僕を飲み込むから僕は息をのむ。美しい僕のお兄ちゃんシエロは僕をのぞきこむ。たっぶりとした深い目の色に心奪われていく。

「ふさ」。

銀糸の髪が流れ落ちる。僕はそれ、に目を奪われる。この素晴らしく、オーロラの流れのような心を絡める髪の毛の流れを撫でるように慈しみながら僕はうやうやしくお兄ちゃんの髪を嗅いだ。良い匂い。とても良い匂い。シャンプーの香りの奥になめらかで落ち着く美しい匂い。僕を奪う優しさ。まるで閃光のような強さだ。


シエロ。

迷い込んだ森の妖精。静かに咲く深緑の森でお昼寝をする。そんな歌を口ずさみたくなるようなぽわぽわの泡だらけの湯舟に浸たる。気持ちいい。そんな僕をお兄シエロはうっとりと見つめている。目と目が合う。心が目から脳に体に愛が溢れてくる。これが幸せなんだって。僕はそう思う。お兄ちゃんは、目をほころばせてうれしそうにしている。僕もうれしい。幸せに浸っている。目が蕩けて、僕の頬にあやすように指をあて、そっと僕にキスをした。唇に心がつながっているのを感じる。心が滑らかになる。唇が溶けるというより、嬉しさでやっぱり溶けそう。この優しい溶けるようなシエロに入り浸りたい、触れた唇の感覚は、甘やかでつるやかで心が透明な泡の世界に吞まれていくような潤香に満たされる。僕はきっと世界一甘やかされている。シエロの恋人。


シエロは、にゃごにゃご言いながら布団に甘えている。お尻を振り振りしながら目をうっとりしている。白い羽が生えている様なふかふかな布団の中の天使だ。そして僕に、甘えている。「きゅううー」、そういってシエロは膝を布団で挟んでぅーーって唇を尖らせた。

「ふう」シエロが力を抜いた。「くううーー」そう言いながらお布団を強く抱きしめてくるんと跳ねた。布団を蹴りながら後ろに向かって広がりふかふかの布団に飛び込んだ。


「クロエ」

シエロが僕を呼んだ。僕はシエロを脱がせることにした。今着ているパーカーを清潔なパジャマに変えよう。シエロは軽い動きで僕をあしらう。僕の伸ばした手を、僕を指さしながらするっとなでおろす。僕は心が揺れる。シエロの撫でた手を絡めとる。つうっと手を握り僕はシエロにささやいた。「着替えよう?」僕はシエロを服の上からくすぐる。シエロははずかしいよといってにげる。そうしていたら、僕はクロエの白パーカーを抱えていた。僕が洗う。そういってシエロの上から下まで剥いで持ってきた。今日も幸せだなあ。そう感じながら天井裏の階段を下って行った。ひつひとつ螺旋階段を下る。下りきると廊下に出た、子供たちがぴょこよこして待ってる。


シエロの白パーカーを嗅いでいる。洗濯機の前で一時間ぐらいそうしていた。

「くはっ」「やぁば」

僕は違和感にきずいて振り返る。いつものからかい癖のある双子の黒パーカーがいる。

「すきすきっ」「シエロおおおおおお」

そういって腕を体に抱きつけてくねらせている、黒パーカーの双子はいつもやんちゃに僕をからかう。この二人は他人の感情が好きなようだ。

「ねえ、ねえ」「ママは何でそんなにパパばかり構うのさ?」

「もおおお」「僕らももっと構ってよー」

「どうしたの?」「あれぇ?」

「……」「……。」

何かが何かを言っていたが僕は構わずに「すううううううううううううう……」

吸っている。シエロの体から出た香り、汗がいい感じに雑菌と交わって増えていく香りに癒されていた。

「きもい」「きもいねーーーー」

ふう、さすがにいいか…。そう思い僕は思い切って洗濯機に洗濯物を投げ込んだ。白いパーカーがシャボンに飲まれていく、また新しくお兄ちゃんの体を包み込んで優しく守ってくれるように、僕は柔軟剤を投げ込んだ。白くて、オーロラ色になった柔軟剤が、泡に交じって光っている。「………お兄ちゃんの汗は泡に溶けてもきれいだな。」そう言ってやっと双子の存在を思い出して振り返った。



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