第16話 愛する気持ち
エリゼは泣き崩れ、そしてもう意識はぼうっとしてしてきていた。
その目は腫れておりそしてもう泣いて身体から水分が抜けて、ベッドに倒れ込むようにして寝転がる。
（水が欲しい……）
そう思いベッドの横にあるサイドテーブルの上にあるガラス瓶から水をグラスに注ぐ。
そしてそれをゆっくり飲んで喉を潤していると、部屋の入口のほうから大きな音がしたと同時にエリゼ自身に衝撃が伝わってくる。
思わずグラスを落としてしまい割れてしまう。
部屋に大きな音が響き渡るが、それよりもエリゼは自分の目の前が大きな胸板でいっぱいになり驚いた。
そしてこの甘く落ち着く香りは……。
「ジェラルド様！？」
「エリゼ、ごめん。いきなり抱きしめて」
グラスの破片が飛び散ったことも気にせず、ジェラルドはエリゼを強く抱きしめた。
「どうしても話したかった」
「私もジェラルド様と話がしたかったのです」
ゆっくりと二人は身体を話して見つめ合って、少ししたあとにエリゼが話し出す。
「私は勝手にジェラルド様に愛されていると思っていました。でもジェラルド様の中には大切な人がいた」
「エリゼっ！ 彼女とは……」
「あなたの一番になれない……」
ジェラルドはエリゼの手を取って、俯くエリゼに視線を合わせるように少し下から見上げる。
「彼女、ローラとはさよならをして気持ちの整理をつけてきた」
「……？」
「私の事を命を懸けて守ってくれた彼女をすぐに忘れることは今は難しい。だが、私が今一番大切にしたい、愛しているのはエリゼ、君だ」
その言葉にエリゼの気持ちが揺れ動く。
（ジェラルド様……）
「私はもう愛している人を失いたくない。だから、君を絶対に呪いから救ってそして二人で幸せになりたい」
エリゼはその言葉に刹那の間を置いた後、顔を上げてジェラルドに気持ちを伝える。
「私はあなたのことが好きです。呪いの脅威を乗り越えてあなたと二人でこの先も過ごしていきたい。だから……」
そっと彼女は覚悟を決めたようなそれでいて少し不安そうな表情を浮かべながら、ジェラルドに問いかける。
「ジェラルド様のことを好きでいていいですか？」
エリゼの言葉を聞き、再びジェラルドは腕を引いて抱きしめた。
「当たり前だ、私もエリゼが好きだよ。心から愛している。だから、傍にいてほしい」
「……はい」
目を閉じたときにエリゼの目から涙が零れた──。
