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第10話 邂逅

 ジェラルドが人波をかき分けて魔女を目指し追いかけるのを、後ろから同じようにエリゼも駆けて追う。

 やけに人が多い街並みを急ぐ気持ちで走っていく。


(早く……早く……)


 エリゼの気持ちに呼応するかのように、ジェラルドが魔女に向かって叫ぶ。


「待てっ!」


 魔女の背中がだんだん大きくなったところで一気に手を伸ばすも、ふっと目の前から消えるようにいなくなる。

 立ち止まって辺りを見回すと、再び離れたところに魔女の姿がありそしてまたエリゼたちは追いかける。


「貴様、待てっ!!」


 ジェラルドがようやく足を止めた魔女の肩に手を置いたその瞬間に、エリゼもその場に追いついた。


「はぁ……はぁ……」


 エリゼは息を切らせながらゆっくりと顔をあげて魔女を見ると、深くフードを被ってそして赤い目を光らせていた。

 だが、その顔はエリゼの記憶の中の魔女とは少し違った。


(どうして……)


 でも、エリゼはその魔女の顔をよく知っていた。


「……お……かあさま……?」

「え?」


 魔女はエリゼのその声を聞き、深くかぶっていたフードを脱いだ。

 すると、エリゼにお母様と呼ばれたその魔女は不気味に笑ってそっと語り始める。


「大きくなったわね、可愛いエリゼ」

「なんで? 病気で死んだはずじゃ……」

「エリゼの母親だと?」


 ジェラルドは戸惑い確認するようにエリゼの顔を見ると、エリゼも彼を見返してそして小さく頷いた。

 三人の視線が交錯して、まわりの森に風が強く吹く。


「確かにお前は私に呪いをかけた魔女だ。だが、エリゼの母親でもあるのか?」


 ジェラルドのその答えに長く形の整った爪を撫でて、魔女は言う。


「私はエリゼの母親ではないわ」

「でも、お母様の顔……」


 すると、ゆっくり瞬きを一つすると微笑みながら魔女はエリゼに向かって言う。


「エリゼの母親は私の双子の妹よ。でも、死んだ。あなたも知っている通り。それから、陛下」


 ジェラルドは魔女の言葉をじっと聞いている。

 警戒心を解くことなく、剣の鞘に手をあてながら……。


「二人に呪いをかけたのは、私の妹コルドゥラよ」

「え……」

「陛下、王族ならば『ドロテアの伝承』を知っているわね?」

「貴様、なぜそれを……」


(『ドロテアの伝承』……?)


 ジェラルドの様子とは異なり、エリゼは聞いたことがなかった。

 しかし、彼には心当たりがあるようで、魔女に続けて問いかける。


「まさか、今もドロテアの呪いの伝承をしていたというのか?」

「ええ、そしてそのドロテアの直系子孫であり、唯一の闇魔術の使い手がコルドゥラだった」


(お母様が闇魔術師……? どういうこと?)


 混乱するエリゼとは違い、ある程度内容の把握が出来たのか、ジェラルドはふうと一息ついた。

 しかし、そこで何かに気づいたようで、魔女に尋ねる。


「魔女、お前は闇魔術は使えないのか? 直系子孫は君もだろう?」

「私は使えない。双子で生まれた魔女はどちらかしか魔術を使えない。私はただの人間も同然」


 ジェラルドは何か考え込むように手を口元に当てた。

 少しの沈黙の中、言葉を発したのはエリゼであった。


「どうして……お母様が呪いなんて……」


 無理もなかった。

 自分の死んだ母親が自分を苦しめる呪いをかけていたのだ。


(お母様は私が嫌いだったのですか……?)


「エリゼ、君のお母様は『ドロテアの伝承』に従って……エリゼっ!!」


 エリゼは体中が震えてしまい、あまりのショックにその場に倒れ込んでしまった。


「エリゼ……」


 魔女は悲しそうに下を向き、ジェラルドに話しかける。


「陛下、私は無力ですが、二人の呪いを解く可能性を探し続けます。西の森に普段おりますから、何かあればそこへ」

「……わかった」


 魔女はゆっくりとその場を去った。

 残された彼は、腕の中にいるエリゼの名を呼びながら、心配そうに頭を撫でた。

申し訳ございません。一部修正があったため、掲載しなおしています。

次回は、明日2月7日(金)7時頃の更新予定です。

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