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サイドC-11 ファーラーン冒険者ギルドにて

「で、なんでわざわざこの国に来たんだ?目的は?」


ケビンは相手がSランクパーティであるとか、ガガがフィオナ王国の貴族だとかをまったく無視して、ぶしつけに聞いた。

ケビンの最終冒険者レベルはAランクで、その点においては相手の方が上位ではあるが、ギルドマスターはランクに関係なく冒険者を統括する立場にある。

少々相手が気分を害そうとも、聞くべきは聞かなければいけない責任があった。


ケビンがそんな風に聞いたのには二つ理由があった。

ほかのことはともかく、どうしてもそれだけははっきりさせる必要がある。


「ここファーラーンにあるダンジョンを攻略するためだ」


ガガは迷いなく宣言する。

このことだけは嘘偽りもないので、なにかを含む必要もない。


「なんでここなんだ?」

「なんでとは?」

「おれが覚えている限りでは、貴公たちはいままでフィオナ王国を出て活動をしたことはないはずだ。それが今になって他国のダンジョン攻略に来た。今まで国外での活動に見向きもしなかった貴公らがだ。フィオナ王国にあるダンジョンもまだ攻略は完了していないという。それを後回しにしても、ファーラーン・ダンジョンを攻略しにはるばる海を越えた。どうしてだろうと疑問に思うのは、ギルマスとしては当然だと思うが」

「どう思われても、このダンジョンを攻略したいとメンバー一同思ったからだ。それ以上の理由ない」


ガガはきっぱりという。

ケビンの言う通り、フィオナ王国にもダンジョンが2つ見つかっている。

ただどちらも辺境にあるうえに、難易度も高く、いまだ攻略されていない。

それらを後回しにしてまで、他国のダンジョンを攻略に来るとは、ケビンのいう通り普通に考えてちょっとおかしい。

渡航の苦労を考えても無理がある。


「具体的に、ファーラーン・ダンジョンのどこら辺に興味がわいたか聞いてもいいか?」

「それは答えるつもりはない。強制して聞くこともできないとギルドでの規約ではなっているはずだが、この国の特別ルールでもあるのか?」


ガガはにべもない。


「そうだな、ギルマスといえども冒険者たちの意向までをすべて聞く権利はない。この国でも同じだ。ゆるせ、単なる俺の好奇心だ。というかこんな珍しい状況、だれもが興味を持つと思うよ」

「それはそうかもしれんが、自分たちの趣味趣向に理由をきかれても困るというものだ。しいていうならこの町の発展のすざまじさに興味をもったかな。わずが十数年そこらでダンジョンがみつかったというだけで大都市に発展したと聞けば、どんなダンジョンだろうと興味もわく。特に我が国のダンジョンは難易度が高いうえに、奥地にあって人も留まりにくく、攻略どころかダンジョンの恩恵にあずかれていない。同じような条件のこのファーラーンが発展した理由を知りたいというのも、目的といえば目的だな」

「それは冒険者の興味というよりは、フィオナ王国重鎮としてのご意向と判断していいか?」

「メンバーはともかく今話した点については、そうとらえてもらって構わない」


ガガのセリフに、やや得心がいったケビンであった。

だがもうひとつ、どうしても聞いておかなくてはならない。

回答が得られるとも思っていないが。


「無礼ついでにもうひとつ。なんでこのタイミングなんだ?」

「タイミング?」

「申し訳ないがこの国のギルド・マスターとの連絡網で、御国の重鎮が近々使節団として訪れると聞いている。国家間の事務官レベルでやり取りはいままでもあったろうが、ここまでレベルでの使節訪問などおそらくノースランド連邦始まって以来の出来事だ。そこにもってきて同行こそされていないが、Sランクパーティも渡航したという。冒険者ギルトは国家間のやりとりに不干渉の原則があって、各国の政府も承認している反面、政策の内容についての共有はないので知りようがないが、なにか関連があるのではと勘ぐらないわけにはいかないとおもわないか?とくに一旅団に匹敵する戦力をもっているおたくらがいることで、戦争でもはじまるのでは、という噂までたってるくらいだ」


使節団の規模は知らされていないが、末娘とはいえ一国の姫が渡航するのだ。

まったく兵隊が随行しないわけはない。

それとガガたちが呼応して、評議会を制圧するのではないかという噂があるのは事実だった。


「あーもう、そんなめんどくさいこと、するわけないでっしゃろ」


黙って聞いていたプラティアが、いきなり大声で叫んだ。


「あのなケビンはん、うちらはあくまでダンジョン攻略にきたんやわ。ガガはともかくうちらはフィオナ王国にはなんの関係も未練もないですわ。そりゃ獣人王国が居心地よくないとはいいません。けどすくなくともうちはどこでも楽しく狩や攻略ができておいしいたべ物のある国なら、どこへだっていきますわ。それよりはやくダンジョンに潜りたいですわ。その話をしませんか?」


プラティアのまくし立てに、なぜかテツガとラン・ムーもうなづいている。


「もし仮にケビンはんがいわれたような行動をとろうといわれても、うちら動きませんわ。人間の軍隊相手の戦闘?あほらしい、どこが楽しいねん。提案されたとたんうちはパーティ離脱ですわ」


これにもガガ以外の二人は、さもありなんと、こうべをふる。

あっけにとられたケビンとガガがしばらくつなぐ言葉をうしなった。


「まあ、そういう可能性を考えるのは自由だが、こいつらの本心はこれだ。俺自身の意向など、自分たちが同意できなければ梃子でも動かない連中だ。確約の保証はないにしても、俺のリーダーとしての威厳もある。察してくれ」


すべてを信じるかはともかく、納得せざるを得ないケビンだった。


「というわけで、ファーラーン・ダンジョンだ。こちらもざっくりとした情報はもっているが、詳細な情報もほしい。有料でもわかっている範囲での地図も欲しい」

「わかった。それはこのあとでハンナに対応させよう。ほかになにかあるか?」

「ではもうひとつ。ここを拠点としている『アンバーチャイルド』というパーティがどこにいるかおしえてほしい」


ケビンは、意外なパーティ名がガガから発せられたので、少し驚いた。


「『アンバーチャイルド』に何の用だ?」

「過去に数回だけファーラーン・ダンジョンを攻略した唯一のパーティと聞いている。話をききたいのと、できたらダンジョンに同行を願えないかと思っている」


これにはガガのメンバーも、えっ、となった。

メンバーが聞いていないのもあたりまえで、今一瞬それがよいような気がした、ガガの思い付きだった。


「同行か、どうだろ、受けるかなハンナ」

「たぶん断るんじゃないですかね。相手がだれであれ、共闘したということは聞いたことがないんで」


問いかけたケビンに受けたハンナは、いかにもそのメンバーを知っているような問答をした。


「いるんだな、このファーラーンに」

「住んではいないですけどね。リーダーのホクトの拠点はといえば、ここが拠点です」

「共闘したことがないというのは、本当か?理由はなんだ?共闘を申し込むほどの相手がいままでいなかっただけなのではないか?」


なぜかハンナとケビンがお互いをみて、ひとつため息を突いた。


「理由はたぶんパーティーメンバーのミヤビちゃんのせいだと思います」

「ミヤビというのは、ケットシー族、つまりは猫人だ」


ケビンがハンナの言葉を補完する。


「名前は知らないが、獣人がいるのは聞いている。それがなんで他のパーティと共闘しないことにつながるんだ?」

「それがな、ホクトというのは俺の恩師にあたる人の孫なんだが、15になった時にミヤビをつれて冒険者登録に来たんだ。まあここら辺では見ない珍しい人種なんで、たちまち噂の的になったんだが、その二人でいきなりダンジョンを見つけてしかも攻略してしまった。ホクト自身は普通の青年だったんで、経験的に言ってもダンジョン制覇はミヤビの能力によるところが多いのだろうとみんな思った。それでミヤビのスカウト合戦が始まってな。だがどんなにいい条件をだそうとも、ミヤビはかたくなにホクトとのパーティにこだわり、かつパーティへの入団希望者についても断り続けたんだ。ホクトではなくミヤビとのメンバーになっておこぼれをもらいたい輩が多かったわけだが」


ケビンはさらに、ミヤビがそうとう大きいストレージもちであることも教えた。


「入団を拒否?いまの『アンバーチャイルド』のメンバーは8人と聞いているが」

「そうそれよ」


ケビンはダレに聞こえるわけでもないだろうに、乗り出して声をひそめるようにしゃべる。


「ミヤビで驚いてたら、マツリというもう一人の猫人まで連れてきた。それだけじゃない。このファーラーンどころかどこの国の人間かわからないヒューマンやドワーフ、エルフまで連れてくる始末だ。それもみなそこそこ優秀そうにみえる。実体は同行したものがいないからわからないが、気配でできることはなんとなくわかる。くわえてあの巨大なウルフ型のゴーレムの随伴だ。どういう伝手かわからないが、ホクトはそういう人材を登用することに長けているとしか思えない。だがおれはあいつがガキの頃から知っているが、とてもそんな能力があるとはおもえない」

「その彼のおじいさんの伝手というのはないのか?」


「それはあるかもしれない。だが、俺の知る限り爺さんのジーノは、このあたりでのみ活動していた。若いころまではさすがにわからんが、それにしてもあんな多彩な人種に伝手があるともおもえん」


ケビンは、それはまさに解けない謎として話す。

他にもホクトには解せない点が数多く存在するのだが、そこら辺は流布しないと約束しているため、たとえガガたちが有数のSランクパーティとはいえ、暴露することはなかった。


ガガといえば、そのケット・シーをみてみてスカウトする気もあったが、今の話では難しそうだと認識した。

もちろん、自分たちの名声があればという可能性も否定はしていないが。


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