表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/123

サイドC-10 ゴーレム馬ときれいな街道

ゴーレム馬での旅程はとても快適であった。

ゴーレム特有のぎこちなさを想定していたので、乗り心地は全く期待していなかったが、しなやかな走りでそういったこともなく、むしろ馬や騎獣よりも疲れない感触を三人はもった。

なにより騎獣の休息を全く考えなくて良いのはありがたかった。

とはいえプラティアだけは生きた騎獣で、体力に特化した亜竜といえども補給や休息を考える必要があり、そのための休憩をしばしば取らざるを得なかった。


乗り心地云々でプラティアの意思を通したのだが、こんなに快適であれば反対されてもすべてゴーレム馬にすればよかったと、ガガは少し反省した。

少しというのは、馬が休憩がいらないとはいっても乗っている側もつかれるので、どうしても休憩は必要なのだった。

なので、プラティアの騎獣の休憩の目安が、だいたいのパーティの休憩時間となった。


食料もあの商店で購入したものを少しずつ出すことで、準備もいらず火をたく必要もないため、非常に時間短縮ができた。

下手するとおにぎりやサンドイッチは、騎乗したままでも食べることが可能で、その点においても優秀な携帯食であった。


「それにしてもこの街道、魔の森と呼ばれている樹海の中に通っているにしては、ずいぶんとひらけているよな」

「たしかに」


テツガの言葉に、ガガは賛同する。

街道はフィオナ王国での主要街道に常識的な敷石こそ敷き詰められていなかったが、道幅が非常にひろく馬車5台程度は余裕で並走できそうだった。

普通樹海では、街道を維持するために伐採作業を冒険者なり騎士団なりを使っておこなうのだが、刈ったあとから追うように樹海が再生していくので、どうしても全体を維持しようとすると最低限になってしまう。


そうなると、街道は馬車1台ところか旅行者が自分たちで伐採しないと通れないというパターンが往々にしてある。

再生を遅らせるために、街道に石を引きつめるなどの処置を行えば、ある程度の効果は期待できるものの、ノースランド連邦にそれほどまでの国力はない。


なのに今この街道は大樹海の中にありながら、想定以上の道幅が確保されており、しかもそれが旅程中間の3日目になっても途切れない。

定期的に街道のメンテナンスがされているとしか思えなかった。


加えて街道途中には村ほどではないが、休息できる小さな砦が複数存在した。

内部はそれほど広くないが、背の高い城壁に外堀が作られており、橋は一か所しかない。

門戸はないが、馬くらいまでしか侵入ができず、馬車等は門の外のスペースにおくようになっている。


あとどういう仕掛けか門を人や馬が通るたびにけたたましい鈴の音がなり、通行者ありのアピールをしてくれる。

狭いとはいえ門扉がないので、魔物の侵入は防げないが、それでも周り全部が樹海での野宿よりは全然ましで、しかもそこに人が集まってくるので、防衛もしやすい。


飲み水用の井戸があり、かつ雨などをしのげる簡易的な天井付きスペースも存在するので、いたせりつくせりだ。

たまたまその砦で夜が一緒になった商人の護衛冒険者に聞いてみたところ、この施設は10年ぐらいまえからぽつぽつとつくりだされたらしい。

しかも誰が建てたか不明で、建築しているところも誰も見ていないということだった。

街道の整備については得意な冒険者パーティが存在するらしく、冒険者ギルドの依頼で実施しているらしいとは、その冒険者も風のうわさで知っていた。

具体的なパーティ名は知らなかったらしいが、ガガはそのパーティについてある程度予感のようなものを感じていた。


旅程を一週間に予定していたガガたちであったが、ゴーレム馬と騎獣の進行速度が早いうえに、街道が広かったせいか魔物にも想定したほど遭遇せず、足を止められなかったので一日半はやく着いたかたちとなった。


「なんだ、ここは」


テツガが思わず声を上げる。

目の前に作りかけり門が、高さ10メートル以上でそびえたっていた。

森を抜けたら遠方に見えたとか言うのではなく、森の切れ目でやっと景色が開けたと思ったら、壁がそびえたっていたのだ。

しかも作りかけで、その奥数百メートル先に同じサイズの別の城壁と門扉が見えた。


作りかけのといったのは、その城壁の左右をみるとまだ積みかけで門から作り始めている雰囲気だったからだ。

作りかけの内側はすでに森が伐採されていて、広い平地になっている。


「どやら都市の外壁をもう一つ作っているようだな」

「つくってるって、たしか5層構造の都市でしたよね。この上まだ広げる気なのでしょうか?」

「そうなんじゃないか、これを見る限り。それにしても地方都市だぞ。そこまでして人口は見合っているのかな」


ガガがそう思うのも無理はなかった。

魔の森のなかにいきなり現れた地方都市ファーラーン。

いくら中心にダンジョンを持っているといっても、その面積をうめる人が果たしているのかどうか、興味がわいた。


とりあえず冒険者ギルドに向かうため、ガガたちは門を4つ超えた。

獣人ばかりとめずらしいパーティにもかかわらず、門の守衛はめずらしさの驚愕はなかったものの、通行所代わりの冒険者カードを見せるたびにSランクパーティということで、驚かれた。

多分であるが、その視線のほとんどはプラティアに向いていたように、ガガは感じた。


冒険者ギルトに到着し入室すると、いつものお出迎え行事のように、ガガたちパーティをみた瞬間に、建物内の喧噪が一気にひいた。

あちこちでガガたちの異質で威容な雰囲気におされて、ひそひそ声だけになる。


そんな周囲に目もくれず、ガガは正面カウンターに立つ年配ではあるが美しい受付嬢前に進んで、声をかけた。


「フィオナ王国から渡航してやってきた『レッド・サンダー』4人だ。しばらくはここのダンジョンを攻略しようと思っている」

「Sランクパーティ『レッド・サンダー』さまですね。ドムントの冒険者ギルドより通達は受けております。ようこそファーランへ。ギルドマスターより、おいでいただいた際には最優先でお通しするよう言われております。どうぞこちらへ」


ドムントでの扱いと同じテンプレのような対応だが、S級パーティともなればやむを得ず、冒険者ギルドに所属している以上ギルマスの声かけをよほどのことではない限り、断ることができないため、ガガたちはあまり億劫には思っていなかった。


受付嬢は3階の一室に案内すると、


「ケビン、先日通知のありましたS級パーティの方かだをお連れしました。入室よろしいですか?」

「ハンナか、ああいいぞ」


一同が入室すると、奥の大きなデスクでなにやら書類と奮闘している精悍な男がみえた。


「客人悪い、もう少しでけりがつくので少しそこで座って待っててくれ。ハンナ悪いが客人にお茶とお茶菓子出してくれ」


はいとハンナと呼ばれた受付嬢は、部屋を出ていった。

少ししてお茶とつけそえの皿をもってふたたび現れる。

お茶は緑がかったガガたちの知らない種類のお茶で、お茶菓子も茶色のパンに似た貝のような形をしたものだった。


「珍しいですよね。でもおいしいですから食べてみてください。ギルマスの友人からいただいた『どらやき』というおかしで、こちらの紅茶と同じ茶の葉の加工方法を変えた『緑茶』とよく合いますよ」


配膳してくれたハンナという受付嬢は、丁寧に説明してくれた。

物珍しそうに見る三人をさしおいて、プラティアはためらいなく手を伸ばしいただく。


「あら、ほんとうにおいしいわ。これうちの口に合いますわ。気に入りました。どちらで購入できます?」


喜んで食べるプラティアに、ハンナは申し訳なさそうに


「あっ、いえ、これはもらい物で...。その友人の手作りなので、どこかで購入できるとかではないんです」

「そうなん?では友人さんをご紹介願いたいわ~」


ガガは、そんなプラティアを少し困ったまなざしで見つめる。

プラティアは、冒険者としては申し分ない人材だ。

何かにつけて斜に構えるところがあったり、傍若無人であることも否めないが、冒険においては常に率先して挑みいやなことでも面倒くさがることもなく行ってくれる頼もしい仲間だ。


ただひとつ欠点があるとすれば、おいしいものに目がないという点だ。

今回初めて遭遇した、この『どらやき』なるお菓子もたいそう気に入ったらしく、さっそくその友人を紹介しろとつしつこくハンナに絡んでいる。ガガは、その友人とやらが、大量におかしづくりを強要されるところを想像して、少し気の毒になった。


魔力量の消費と比例しているのかは不明だが、プラティアはよく飲みよく食べる。

その食べる量はパーティ随一といってよい。

パーティー内で体の大きさからしたら三番目で、かつ女性特有のほっそりとした体のどこに食べたものが入っているのかというくらい、よく食べる。


ガガは、プラティア以外ハイ・マーメイド族にあったことがない。

なので暴飲暴食がハイ・マーメード族の特性なのか、プラティア単体での特性なのかを知らないし、確認したこともない。

本人も同属のことは決してしゃべらないし、そもそもいるのかも不明なのだが、昔ガガが彼女に出会ったころ、なぜ冒険者になったのかを聞いたことがあり、その答えが


「こちらの国の方がおいしいものが食べれるから」


だったのはよく覚えている。

しかし他の魚族のものは基本的に地上のでのものをあまり食べないことから、やはりプラティア特有の性癖だとガガは最近おもっている。


「またせた、すまん。今作っていたのを今日中に回さないと、事務方がうるさくてな。で、貴公らがあの有名な『レッド・サンダー』か。おれがファーラーンのギルドマスターケビンだ。以後よろしく」


ガガに引けを取らない引き締まった躰の男は、ガガに対し右手を差し出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ