サイドC-9 商会『カメヤマシャチュウ』にて
ガガたち『レッドサンダー』一同は、ミュートラムで一泊した後商会『カメヤマシャチュウ』で購入した騎獣にのって、一路ファーラーンへの街道を北上していた。
あのあとせっかくの機会ということで、他にもいろいろと支店長に案内してもらい、商会が扱っている商品をみてまわった。
それが思いのほか時間をとってしまい、一泊することになってしまったのだ。
商会『カメヤマシャチュウ』が取り扱っている商品の種類は、ガガの想像をはるかに超えた。
食物だけでも、小麦、大麦、米、ジャガイモ、トウモロコシ、かぼちゃ、大豆の穀物に始まり、オーク種、ボア種、ブル種、サーペント種、怪鳥種、アリゲータ種の肉類、レタス、キャベツ、白菜、たまねぎ、人参、トマト、きゅうり、大根、ごぼう、ピーマン、ニラ、ほうれん草、大葉、ネギ等の青菜にニンニクやショウガ、ワサビなどの薬味、まいたけ、えのきだけ、マッシュルーム、しいたけ、ヒラタケ、エリンギ等のキノコ類、リンゴ、梨、イチゴ、バナナ、洋ナシ、みかん、ブドウ、イチジク、メロン、もも、スイカ、グレープフルーツなどの果物類、さらには加工品ではあるが各種魚類の甘露煮や干物、オイル漬け品などが量も豊富に取り揃えられていた。
食材の中には、ガガたちも聞いたことのないものも多く入っていたが、商会に買い物に訪れる客たちは承知しているのか、まんべんなく食材を購入していっていた。
武器の類については、両刃の長剣、短剣、ナイフ、バスターソード、メイス、レイピア、鉄の棍棒などが、鉄、魔鉄、鋼、ミスリルを材料として多種多様に品数をそろえられており、数は少ないがアダマンタイト製の剣まで用意されていると支店長はこっそり耳打ちした。
防具や杖もピンからキリまで用意されており、しかも武器も含まれるのだが、それらのほとんどになんらかの付与魔法がかかっているとの情報も開示された。
しかもその価値からしたら、フィオナ王国の一般的な価格の半分以下で購入できるため、おのずと4人の興味はそこに集中した。
プラティアなど、ミスリルベースにしルビーレッサードラゴンの額の魔石を3つ埋め込んだ炎属性の魔法プール可能な杖と、木の魔物の芯から抜き取って磨き上げたという魔力増幅のバフがかかった杖2本にほれこんでしまい、遊びに来たわけではないというガガの言葉も無視して、予備杖としてさっさと購入してしまった。
ラン・ムーも、魔力をかけることで隠密バフがかかるミスリル性のナイフに釘告げになり、こちらもプラティアほど派手にではないが、ガガに申し訳なさそうに購入していた。
商店には日用品や衣類も鍋、食器、カーテン、風呂桶から下着、ドレス、ズボン、コートとこちらも品ぞろえ豊ではあったが、それらにあまり興味のないガガたちには見る気も起きず、素通ししようしたところに例の国で問題になっていた魔道コンロを見つけて、
「これはこちらの商品なのか?この商会で製作も行っているのか?」
と思わず聞いてしまった。
支店長はそれまで張り付いていた営業スマイルを持続しつつ
「はい、これもわが商会が誇るオリジナルの魔道コンロです。非常に小型なうえ、魔石も極小3個で最大火力で連続3日間36時間もちます。使い方次第ですがふつうに調理をされるご家庭でしたら、ひと月ぐらいは優にもちます。小型なので冒険者パーティ様にも重宝いただいておりますよ。おひとついかがですか?」
ガガはその薄方の魔道コンロを手に取ってみる。驚くほど軽くコンパクトだ。
確かにこのサイズで、その燃費であれば一つぐらい荷物に持っておけば湯を沸かしたりするのにいちいち焚き木を集めたりせずに済むので、便利だろう。
仲間にプラティアのようなストレージ持ちがいればなおさらだった。
値段を見ると、フィオナで聞いたよりもさらに安く銀貨5枚ときた。
使い捨てでも十分な価格だ。
プラティアのストレージ容量は30トン。
いまはまだ獲得素材などがほぼなく、旅の用意品だけなので、まだガラガラだ。
本人に了解を得て、3つほど購入した。
ついでだったが、高輝度で高効率の照らす範囲が切り替え可能なハンドライトも人数分購入して、それぞれのサイドポーチにいれる。
生活魔法でライトが使えるからいらないとプラティアは嫌がったが、照射範囲が変えれてかつ魔力も必要なく、照射時間も1万時間とほぼつけっぱなしでも年間もつことからと、ガガが押し切った。
値段も1個銀貨1枚と銅貨5枚という格安だったのも理由だ。
最後に4人が案内されたのは、おいしそうなにおいと調理音が充満する、食堂のようなところであった。
店内いっぱいに机とカウチが並べられ、壁際にならんだオープンな複数の調理場と料理人から、調理されたものを購入した人たちが、思い思いに食事をとっていた。
「こちらは食品を実際に調理して販売しているコーナーとなります。わが商会で販売している商品は珍しいものもあり、調理方法がわからないといわれるものもありますので、サンプルと宣伝も兼ねております。もちろん普通の商品もたくさん格安でご用意しております」
ガガは店を一通り確認する。
その中に例の「おにぎり」を販売している店舗も存在した。
本国で見たそれとは異なるのは、いろいろなトッピングやお米によくあう具材を内包しているものが、塩だけのプレーン以上に場所をしめており、極めつけが
「げっ、何じゃこの黒い紙は?包みか?」
おにぎりの側面に縦に巻かれた黒い紙のようなものをみて、テツガが叫んだ。
「これも食べられるんとちゃいます?ほら」
と、まわりを見るとおにぎりを購入して食べているまわりのひとたちは、その黒い紙をばりばりたべている。
「えっ、でも黒いんだぜ。気持ち悪くないか?」
「最初は色に驚かれる方も多いのですが、あれは細かな海藻を集めて固めて干したものです。海苔といいます。風味もよくおにぎりによく合いますよ」
テツガの言葉をフォローするように、支店長が説明してくれた。
色はともかく、おそらくこの商会の用意するものなので、味は間違いないだろうとガガは確信した。
一同は支店長に勧められるまま、おのおの気になるものを購入して試食した。
ガガは、オークのばら肉巻きおにぎりとプレーンの塩おにぎりとワイバーンの串焼きを、テツガは、ブラッディブルの串焼きに赤みの魚の塩焼きを具材にしたおにぎりを、ラン・ムーはお漬物という野菜を塩漬けした具材のおにぎりと人参・レタス・玉ねぎにドレッシングをかけたサラダ、ビッグアリゲータの身を甘いたれをつけて焼いた肉を、プラティアはスケソウタラとよばれる魚の卵を唐辛子と塩、昆布等でつけた具材の入ったおにぎりに同じくマグロとよばれる魚の身を煮たものに卵と油から作られたマヨネーズとよばれる調味料で味付けされた具材の入ったおにぎりを購入した。
「なんじゃこりゃ」
「おいしいわ」
「すごい、初めて食べる味だ」
ガガ以外はじめておにぎりを食べた三人は、三者三様の感嘆を発した。
テツガなど直前まで海苔を食べるのを嫌がっていたにもかかわらず、足りないと言い出した。
「確かにうまいな。それにこのエール、きんきんに冷えててうまい」
酒を飲むと問題のあるラン・ムー以外は、エールも飲んでいた。
お酒を置いている店舗をちゃっかり見つけて、水替わりに購入したのだが、それ自体もおいしく思わぬ誤算だった。
「エールだけではなく、葡萄酒や果実酒、火酒なども各種ご用意してます。とくにうちでしか販売しておりませんウィスキーやバーボン、ブランデーや日本酒と呼ばれるお酒は、火酒とおなじく酒精が高く風味も味わいもお酒を好まれる方には好評です。お試しになられては?」
支店長に勧められるままにそれぞれを試飲した三人は、これまた初めてのお酒に舌鼓をうった。
試飲したなかでガガはブランデー、テツガはウィスキー、プラティアは日本酒が気に入った。
とくに日本酒は甘口辛口とそれぞれ独特の風味と味にプラティアは魅了された。
試飲のはずがいつのまにか飲み会にばけて、三人は購入を繰り返した。
酒の肴にもこまらず、いろいろ試しているうちにコロッケやメンチカツ、オーク肉のカツにコカトリスのから揚げと、目新しいものは後を絶たなかった。
どちらかというと食事をするためのそのコーナーにて、宴会が始まってしまったガガたちは浮いているといえば浮いていたが、酒が事象により飲めないラン・ムー以外はお構いなしに滞在した。
とはいえそのままでは手持ち無沙汰のラン・ムーも、ハンバーガやサンドイッチなるパンに野菜や肉の加工品を挟んだものをみつけてきて、フレッシュオレンジジュースをともなっておいしくいただいていた。
長くなった食事の終わるころ、三人の前には別に用意された持ち帰り品がどんと積まれた。
プラティアが各店舗に頼んで、大量に持ち帰り品を用意させたためだ。
店側は、数百人前という量に消費期限があるのでその量はと断ったのだが、
「うちのストレージは、時間経過がほとんどおまへん。消費期限が1日ならば少なくとも半年はもちます」
と押し切った。
ついでに日本酒も各種100本程度購入した。
かくて、旅のどころかダンジョンでの食材もか確保したかれらは、騎獣しか買う予定がなかったにもかかわらず大量の散財をしてしまった。
そして予定以上の時間を『カメヤマシャチュウ』で費やしたガガたちは、一日おくれでファーラーンへと旅だった。
時間はかかったが、一同は大満足で商会をあとにしたのだった。




