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サイドC-7 ドムント冒険者ギルドにて

『レッド・サンダー』の面々は、商船に揺られること丸2日かけてノースランド連邦のの窓口ともいえる、ドムントにたどり着いた。

黒船に比べれば鈍足もいいところだが、これでもローランドがもつ商船の中では格段に早い部類の船だった。

通常は回避しかできない海の魔物の遭遇も、今回はプラティアがいたおかげで彼女の竜巻魔法により撃退できたことも、行程の短縮化をはかれていた。


上陸後、ガガはまずドムントにある冒険者ギルトに赴いた。

今のガガは大国の諸侯ではなく、一人の冒険者であり、その肩書は全世界で平等にあつかわれる。

冒険者は基本的に冒険者ギルドに入っていることで、どこの国でもフリーパスだ。

各国も冒険者がもたらす恩恵もあるため、直接招致したいと動くこともあるが、強制はできない仕組みになっている。


逆に入国拒否だけは可能となっているところがおもしろい。

冒険者は職業柄犯罪者に等しい輩も存在するため、拒否だけができるようになっている。


もうひとつ冒険者には縛りがあって、B級以上の冒険者もしくは冒険者パーティに関しては、移動した先で冒険者ギルドに移動届を申告する必要がある。

これは緊急案件が発生したり、そのランクしか受け付けられない依頼を発注できるようにするためだ。


『レッド・サンダー』はSランクパーティの為、この手続きだけはどうしても必要だ。

これを怠ると、たとえSランクといえども降格や登録解除もやむを得ない。


それにたとえ怠ったとしても、すでにガガたちがノースランド行きの船にのっていて、プラティアがでっかい水柱を魔法で立てたりしたんで、船を降りた瞬間から噂にはなっていた。


冒険者ギルドにガガたちがはいると、それまでうるさかったギルド内がシンと静まった。

ガガの獣人顔やテツガのドラゴン顔も目立つが、プラティアの薄パステルのひらひらな衣装がやはり一番目をひく。

一発で噂の『レッド・サンダー』の一員と知れた。


シンとした室内にガガたちだけの足音がひびく。

まわりの注目を無視して、ガガは受付へと直進した。


「こんにちは、ご用は何でしょうか?」


受付嬢の若い女性は、ガガたちに臆することなく気軽に声をかけた。


「フィオナ王国から今日ついた『レッド・サンダー』4人だ。しばらくノースランドで活動するので、報告に来た」

「Sランクパーティ『レッド・サンダー』さまですね。フィオナ王国の冒険者ギルドから報告を受けております。ようこそノースランド連邦へ。数日前からギルドマスターがあなた様方の寶来をまち待機しております。どうぞこちらへ」


受付嬢は笑顔を絶やさぬまま、4人をギルドマスター室に導いた。


「やあ、どうも。ギルドマスターのアダムです」


出迎えたのは小柄なヒューマンの男性だった。

ガガたちはちょっと意外そうな顔をする。

通常ギルドマスターには引退した冒険者がつくのが普通だが、アダムと自己紹介した人物はどう見ても冒険者にはみえなかった。


「ああ、驚かれてますね。そうなんですよ私もともと冒険者ギルドの事務方なんです。書類の整理や計算、素材の鑑定なんかは得意なんですが、魔物退治とかはからっきしで。まあでも最有力候補者がまだ現役を続けたいとかで、やむなく中継ぎという形でギルドマスターをやっております」


ガガたちからしたら、荒くれの冒険者たちに対しての抑止の意味もあるギルド・マスターがそれでよいのかとも思うが、まあ他国でのことでそういうこともあるかと思った。


「それで、今回はどのようなご予定もしくは目的で、こちらにまいられたのですか?あなたの国でも魔物の脅威はひっきりなしと聞いておりますが、わざわざ海を超えられた理由を教えていただけますか?」


アダムは丁寧ながらも、さらりと確信をついた質問を投げかけた。


「こちらの大陸に最近発見されたというダンジョンにパーティで興味があってな。踏破が最近なされていないということだったんで、いっちょ俺らでクリアしてやるかと」

「なるほど、それはファーラーンダンジョン、アースワンダンジョンどちらのことを言われておりますかな?」

「ファーラーンだ」


テツガが背後から低い声で答える。

少し兼が入っているのは、さっさとこの面談を終わらせたいためか。


「なるほど、ファーラーンですか...ときに噂程度なのですが、御国の正式使節団が近々ノースランド連邦にいらっしゃるとかどうとか。嘘か本当かは不明ですが、あの外国にいらっしゃったことがないアカリ王女様もいらしゃるという噂までたっております。Sランクパーティのリーダーとしてだけではなく、フィオナ王国きっての諸侯であるあなた様がこのタイミングでノースランドに上陸されている。なにか関連はございますか」


テツガとラン・ムーは少し顔をゆがめた。

竜石人と兎人の表情の違いがヒューマンにわかるかどうかは別として、少し動揺はした。

アダムは笑顔を絶やさぬまま、目だけは笑っておらず、その様子を見守る。

対してプラティアとガガは涼しい顔だ。


「たしかに使節団が立とうとしている話は聞いている。だが俺はその件に全く関与していない。ダンジョンに潜るのはあくまでおれたちの冒険者としての興味だ」

「そうですな、それこそまさしく冒険者の矜持ですな。いやすみません、邪推してしまって。他国からの王女様がいらっしゃるなど、この国始まって以来のことですからな。私自身も興奮して先走ったご質問をいたしました。お詫びいたします」


本心の見えぬ当たり障りない謝罪でかわすアダムを、ガガはうろんに思った。


「それでは私からのお話はこれで終了です。ご足労かけました。ぜひこの国での活躍を期待してます」


聞きたいことはきいたとばかり、アダムは締めに入った。

ガガはしかし、まだ確認することがあった。


「ちょっといいか。ふたつお願いがある」

「はあ、なんでしょう」

「ひとつは騎乗用の馬か亜竜を購入したいのだが、信頼できるところを紹介してほしい。乗合で移動でもよいのだが、俺たちは目立つ連中だ。できたら単独行動できる方法を取りたい。ただここからミュートラムまでは、定期船を使って移動だから、紹介してくれる購入先はミュートラムの商家で頼む」


アダムはなるほどとうなづき、少し考え込む。


「亜竜か馬ですか。冒険者ギルドでは取り扱いがないのですが、それらを扱う大手の商会ならご紹介できますので、紹介状を手配しましょう。それでよろしいですか?」

「ああ、信頼できるところから手に入るのであれば、かまわない」

「で、もうひとつのお願いとは?」


ガガはここで一息間を置き、少し顔をアダムに寄せてつぶやくように言った。


「『アンバーチャイルド』パーティについて、知っていることがあれば、教えてほしい」


アダムは意外という顔で、ガガを見つめる。


「あのパーティですか...たしかファーラーンを拠点にするD級パーティだったと。ガガ殿、それをお知りになりたい理由をお聞かせ願えますか?」

「知っているのか?」

「ええ、中継ぎでも一応ギルドマスターですので、この大陸の主要なパーティのことであれば最低限は。ただあのパーティに興味を持たれる理由がわかりません。Dランクパーティですので。構成員が少し変わっていて有名は有名ですが...彼らにどのようなご用ですか?」

「優秀な獣人がいると聞いた。うちのパーティにスカウトしたい」


ガガは一応用意していた回答をする。

というか半分本気だ。

噂半分にしても、ミヤビの実力は抜きんでているように思える。

エースのプラティアと双璧をなせば、おそらく『レッド・サンダー』は最強パーティとなると考えていた。


「獣人...猫人のミヤビさんまたはマツリさんのことをおっしゃってますかな?」

「ふたりいるのか?ミヤビの話は噂で聞いていたが....」


アダムは『アンバーチャイルド』について、知っている範囲でという条件付きで説明してくれた。

登録されているパーティメンバーは、ガガの事前情報のとおり8人であった。


リーダーのホクトはファーラーンの近くに住む青年で、祖父がAランク冒険者であったこと、そのほかのメンバーとしてはガガが確認したかった猫人のミヤビとマツリがいること、そのほかにイリス出身の姉妹でカエデとツバキという亡祖父がこの連邦の騎士団長だった剣士とマジックキャスターがいること、マルティという錬金術師にクリスティーネというエルフ、ミネルバというサモナーの計8人であった。


「ただこのパーティが目を引いているのは、クラウドとよばれているウルフ型のゴーレムを常に従えておりまして、それがとてつもない性能をもっているとの噂です」


ゴーレムを従えているという言葉に、ガガは興味をもった。

フィオナ王国に置き去りという形で配置されているのも大量のゴーレムなため、なにか符合するものがあるかもしれない。


「あと8人登録はされていますが、メンバー全員がそろったところを見たものはおりません。それどころか確認不明のドワーフや鬼人も一緒にいたとの報告もあり、ここら辺は謎なグルーブです」

「だがランクDパーティなんだよな?」

「それは間違いありません。実力もそれに見合っているかと...」


それ以上の情報は、アダムも持っていなかったらしく、ガガたちは騎獣の紹介状をもらって、冒険者ギルドを辞した。


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