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サイドB-35 僕に任せて

「あの二人は相当の手練れですな。ベルルート様はもちろん、たぶんわしでもかないますまい」

「やっぱりそう。私の直観でもそう感じたから、間違いなさそうね」


マルティたちが屋敷を辞去したあと、裏庭でアカーシャとゲオルクが密談していた。

マルティとミヤビを見た瞬間の直観をアカーシャは忘れられないでした。

アカーシャ自身、幼少からの訓練によって、ランクBレベルの冒険者となれる実力者である。

とくに索敵と直観スキルに関しては、役目がら必要なスキルのため鍛えられていた。


だからわかる。

二人がとてつもない実力を秘めていることを。

そしてそれにもかかわらず、その力に邪悪さを有していないことも。


「それにしても驚いたわ。今回の父の調査対象が、お嬢様方とパーティをくんで参上するなんて」


ベルルートが金策に出ているというのは、ある意味本当だった。

屋敷を維持するための資金稼ぎとして、自身の能力と情報網を利用して探偵のようなことをしていた。

今回の依頼主は聞いていないが、調査対象が猫人のいる冒険者パーティといっていたから、おそらく間違いないだろう。

猫人なんて、アカーシャ自身昨日人生初めてみたのだ。


それほどまでに猫人(ケット・シー)とは珍しい種族だ。

はるか南方の大陸にケット・シーだけの王国があると聞いたことはあるが、あくまで噂話た。


「まあでも、考えようによっては願ってもない状況だわ。父も彼らを追ってアースワンまで赴いたのに、空振りだったろうけど」


しかもそれを連絡する手段に時間がかかる。

手紙を出したとしても、届いて戻ってくる頃には、彼らのパーティは出立してしまうだろう。


「3日後にはここに戻ってきて滞在するそうだから、できる限り彼らの情報を本人たちから引き出すしかないわね」

「そうじゃな、それがよかろうて。加えてお嬢様方にもさりげなく情報を聞いてみるとよい」

「わかったわ」


かれらとの邂逅から聞けば、自然色々なことがわかるだろう。

アカーシャはアプローチを考えつつ、仕事に戻ろうとする。


「ところで彼らの雰囲気が大きすぎて気が付かなかったが、お嬢様たち、経験を積まれたのかだいぶ強くなられているぞ」


アカーシャが、えっ、と声に出して問い直す。


「どういう意味?」

「どういう意味も何も、言葉の通りさ。ありゃ相当な体力や腕力、魔力の持ち主になっているぞ。経験的にはまだ浅いので駆け引きはわしらのほうが上だろうが、純粋な腕力とかであればお嬢様たちは下手するとわしらと同じかそれ以上の強者といえるぞ」


マルティたち二人への警戒が強すぎたので、姉妹には気を向けていなかったが、そんなことがあるだろうかとアカーシャは感じる。

そりゃ装備がよくなっていたのは見て取れたが、ゲオルクがそう感じたのはあくまで装備の良し悪しにもとるものではないのか?


「そんな、たった一年の冒険者生活よ。そりゃカエデ様はお父上に似て剣の腕はあられたけど、実践を伴わない素人の剣だったわ。おそらくだけど薬草取りとか小物の魔物狩りとか、そういうことしかしてきてないと思うけど」

「いや、おそらくそれだけではあるまい。あの金貨の量から考えても、だいぶん危ない道を渡られたのではないかな?」


ゲオルクの心証は意識していなかったアカーシャに比して多分間違いないだろう。


「どちらにせよ、お嬢様方にはそれとなく聞いてみるわ」


と、今度こそアカーシャは仕事に戻るべく、その場を去った。


★★★


3日後の昼頃、予告通りマルティたちはサーフライト家に戻ってきた。

辞去した時とは異なり、二人と1体は徒歩での再訪であった。


マロンとアカーシャが驚いたのは、前回は大型の馬車で積載大量だったのに今回はマルティだけがショルダーバッグのみで、ミヤビに関しては腰の小刀意外手ぶらだったことだ。


普通の移動が多い冒険者であれば、最低限リュックくらいは常に背負っている。

マロンが思わず荷物を宿屋か何かに置いてきたのかと聞いたほどだった。


「実はですね...」


とマルティは声をひそめてひそひそと告白する。


「ミヤビがストレージスキルもちでして。そこそこな大きさをもってます。旅に必要な程度のもの+アルファぐらいは入れておけるんですよ」

「まぁ、それはすごいスキルですね」


マロンとアカーシャは、純粋に驚く。

ストレージのスキルは知られてはいるが、実際にそのスキル持ちには普通一生合えない程度の希少さだ。

おそらく二人ともミヤビが最初に出会ったスキル保持者だろう。


これを聞いて、カエデとツバキがすっとんでくる。


「内緒にしとくんじゃ無かったの?」


小声でマルティに確認する。

マルティは、ああそうかという顔で


「ミヤビは特別。もともとファーラーンでは知られている。僕とかクラウドが持っていることは知られてないけど」


最初のころは、それほど希少なスキルと知らなかったホクトが、ミヤビに関してはごく普通に使わせていた為、冒険者ギルド周辺には知れ渡っている。

それはファーラーンに限らず、全冒険者ギルド共通の認識ともなっているので、いまさらなのである。


「もっとも、無茶苦茶容量があることは、君たちのほかはファーラーン支部の冒険者ギルドマスターとその側近ぐらいしか知らないけどね」


と、一応ストレージスキルを持っていること以上は広げないように釘はさしておく。


「ところで君たちの用事はどんな案倍?いつファーラーンに出発できそう?」


マルティの言葉に、二人は顔を見合わせる。


「それがね、思ったよりもかかりそうなのよ」


ため息とともに、説明してくれた。

まず家屋があちこち痛んでいて、修理の必要があるらしく、それは家主不在では対応してよいかどうかわからず放置されているらしい。


「なにより深刻なのが、氷室です。もともと老朽化はしていたそうなんですが、それが完全に機能しなくなったらしくて、食材の貯蔵に困っているらしいんです」


次に屋敷の維持についてだった。

単純な話で、屋敷を維持していくには今の人員だけでは圧倒的に不足しているそうなのだ。

外部からの臨時雇い入れをしたくても先立つものがなく、三人で手分けをして行ってはいるが、対応できていなかった。


「だから、新たな使用人を雇い入れるしかないんだけど、辞めちゃった人たちは軒並み再就職しているか邦に帰っちゃってて、ゼロからの人探しになっているのよ。お金は何とかなりそうだから人を雇いたいんだけど、執事長不在なんで相談もできないし、帰ってくるのにはまだ時間がかかるらしいし。どうもアースワンへ行ってるらしいのよ」


執事長ヘルルートの用事は実はマルティたちの調査だったのだが、それはさすがに姉妹には言えないためアカーシャは親戚の話を押し通していた。

カエデにしてみれば、それが分かっていれば現地で連絡の取りようもあったと嘆いたが、さすがに後の祭りだ。


「というわけで、最低でもひと月はかかりそうなの。せっかく同行してもらってなんだけど、もし急ぐようなら先にファーラーンにもどってもらってたほうがいいわ」

「そうです。お忙しそうなマルティさんたちを私たちの家の都合で引き留める訳にはいきませんので。私たちもあとから必ず追いかけますから、そうしてもらえませんか」


申し訳なさそうに姉妹はマルティに申し出た。

しかし二人の態度に反して、マルティのほうは目をきらきらとさせ、そんなマルティをあきらめの目で見るミヤビがいた。


「えへん、えーとつまりはだ。氷室と建物の修復がおわり、人手不足が解消すればいいんだよね」

「ま、まあそうなんだけど...」


マルティの勢いにおされて、姉妹が少し引き気味に答える。


「わかった。それは全部僕が解消してあげる。それも3日くれれば対応可能だ」

「えっ、3日?」


またとんでもないと思う反面、なぜだかマルティならやりかねないと、姉妹の経験がいっていた。

ただ、使用人たちについてはそうはいかない。

この人は何をいっているんだろうと思った顔をしていた。


「たぶん大丈夫にゃ。というかこっちのほうがマルティは得意だから、任せてみるにゃ」


ミヤビもやれやれといった感じで二人と使用人に告げる。

不安に思っている使用人に対して、姉妹はマルティならこちらの要求する以上のことをやらかしてしまうのではという別の不安にとらわれたのだった。


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