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サイドA-42 カスミの万能環境適応

第19層でのカスミの訓練は、その層のダンジョン制覇進行で順調に重ねられていった。

同じことを何回も繰り返せるくらい、同様の魔物が絶え間なく出現するため、恐怖心に対する感覚が麻痺していった。

簡単に言えば、馴れてきたのだった。


魔力に関してもとびぬけて魔力量を持っているため、非効率に魔法を乱発しても、ちょっとやそっとの相手ではほとんど減らない状態がつづいた。

カスミは風系の攻撃魔法だけでなく、水系の攻撃魔法もいろいろ試した。

特に高圧縮されて水をレーザーのごとく狙い撃ちする『水刃』は、射撃ににたガン系に通じるものがあるので、気に入ったようだ。

カスミはホクトと違い、リアルタイム性のつよいゲームに普段よく参加していた。

FPSもその最たるもので、いっぱしにガンの種類なども知っていたりする。


「なんかこの剣、つまらん」


狩をしつつ進んで一日もたってセーフティエリアに到達し、夕飯を広げているところでカスミがぼやきだした。


「つまんない?それってアダマンタイトでできた魔剣でしょ?十分な性能があると思うけど。刃こぼれを防ぐ付与と鋭利さを増す付与もついてたと思うけど」

「そう、それよ」


カスミは片手にもったホークの先に、ブラッディーホーンブルのヒレステーキをつけたまま、ホクトをさした。

ちなみに夕食のメニューは、ブラッディーホーンブルの和風ヒレ肉ステーキ丼だった。

大根に似た辛みのある根菜をすったものに、醤油もどきの調味料をかけている。

醤油そのものはまだないが、大豆に似た豆を加工することで、なんとなくそれらしい味の液を、サブキャラ・マルティの錬金術で開発していた。


「このデフォルトの剣、性能が突飛すぎるのよ。何でもかんでもスパスパ切れちゃって、下手すると切った感覚もないんだから。もう少しこう、抵抗というか感触というか、なにか戦っているみたいな実感がほしいのよ」


魔剣自体のスペックが優秀なうえに、カスミの技能も力もスピードも並外れているので、第19層の魔物がある程度高位なものであっても、カスミのステータスにとっては、確かに物足りないだろうとホクトも思う。


「まあ、そうかもしんないけど、初日だしまずは肩慣らしの意味合いもあるからさ...」

「えー、そうかもしれないけれど、でもねーなんかこの世界の現実感と相反して、ここだけ現実感がないっていうのも悲しいわ」


とここでホクトは、カスミの言葉に内心同意する。

ホクトがこの世界で最初で初めてふるった剣は「ツクヨミの剣」は、ミスリル性で劣化防止の付与もあり便利なものであったが、魔剣といわれるほどのものではなかった(といってもそれでも十分高価な剣)ので、さすがに魔剣ほどの性能は持っていなかった。


そのあとで、魔剣を手に入れたこともあり、実際に装備してみたのだが、感想はカスミと同様物足りなさを感じて、いまは魔剣の類は使っていない。

加えて言うならば、そのあとのサブキャラに武器専門の製造固有スキルをもつサブ・キャラや、マルティという付与の得意な錬金術師が手に入ったこともあって、じつはいろいろな素材でいろんな種類の剣を作って、マルティの付与魔術をああでもないこうでもないと試したものがたくさんあるので、いまはそれらの剣を順に使ってみたりしている。


ありていに言って、カスミにそれを贅沢だと一蹴するには、ホクト自身もわざと剣のレベルを下げて楽しんでいる以上、できるはずもなかった。


「それにさ、別の問題もあるのよ。発動できないスキルもあるのよ」

「発動できないスキル?」

「固有スキルの『神聖魔道剣術』よ。魔力をこめてこれは使うことは感覚的にわかるんだけど、魔力を発動させないまでも剣技としても使えるみたいなの。ところがこれが相手がそれ相応じゃないと、どうもうまく発動できないみたいなの」


剣技のスキルは、ホクトもそうだがそれ自体の剣技をすべて把握しているわけではなく、スキルを発動させると使い手側が思えばあとは状況によってスキル自体が最適な剣技を自動的に選択して発動させてくれる。

この自動的というところが味噌で、相手のレベルや武器のランクによっては、発動させようとしても発動する必要がないとスキル側が認識してしまうと、発動しないのだ。


と、ここでミヤビにホクトは確認したくなった。

剣技はともかく、体技スキルはどうなのだろう?


「ミヤビさ、『秘拳「月夜見闇透拳」』て使ったことある?もとい使おうとして使えなかったことある?」


ミヤビはホクトの質問に少し考え込む。


「うーん、そのスキル自体あんまし使わないけど、あるといえばあるかにゃ」

「それはどんな場面だった?」

「場面というか、相手によるかにゃ。レベルの低い相手にゃと、1対1では絶対に発動しないにゃ。まだそこまでの相手にであったことにゃいけど、相手のスキルレベルがたかければたぶん発動してくれると思うにゃ」


『秘拳「月夜見闇透拳」』が、その特徴として多数の相手をする際にもっとも効果が表れやすいらしい。

ミヤビのデフォルトもっている短剣も、もともと性能がそこそこよいので、普通の短剣スキルで基本的にはこなせてしまう為、秘拳をからめてまでの戦いは、基本ない。

もっというとどちらかというと体技のスキルなので、相手もそれにみあうほどの体術スキルとスピードをもっていないと、発動しないのだと想定された。


どちらにしてもカスミが固有スキルを発動させようとすると、もう少しレベルの低い剣でないと駄目なようだった。


「えーと、いまは何があったかな...」


ホクトは頭を?きながら、ストレージに収まっている剣を物色し始めた。

鍛冶スキルサブキャラが作った同系の両刃剣が5本、日本刀が3本、バスターソードーが2本あった。

素材も魔鉄や鋼、ミスリルと様々だ。


その中で、カスミのスペックに合いそうな両刃剣を選んで取り出した。


「はい、これ。たぶんお望みの使い勝手ができるスペックの剣。素材はミスリルで劣化防止付与と硬化付与、自動洗浄の付与がついているよ」


さや入りのそれをほいと投げられ、カスミはそれを片手でうけとる。


「なんだ、あるじゃん。でもなんでミスリル?もっと下位の金属製でもいいのに」

「それ以上硬度の低い金属だと、たぶんカスミのステータスに力負けしてもたない。いいからそれ使って。心配しなくてもそんな剣、まだごちゃまんとマルティのストレージに入っているから」


剣をさやから出して刃を眺めつつ、ふーんとつぶやく。


「ごちゃまんとね。マルティていうのはサブ・キャラ?」

「そう、錬金術師でそういう付与魔法が得意なキャラ。いまは魔の森を絶賛攻略中」


★★★


「でぇーい」


カスミは怒号とともに、自分の体長の5倍はあろう巨大サメに似た魔物を横一文字に、真っ二つにした。

上下に分断された巨大サメは勢いはそのまま、カスミの後方へ水中をただよい、弧を書いて地面に着地した。

そのままドロップ品へと変化をとげ、小魔石、サメ皮、ヒレ、本体と等しいくらいの重量のサメ肉と袋に入った数百本のサメ牙となった。

相変わらずドロップ品が多いのは、ホクトが持っているダンジョンでドロップ品が10倍になるスキルのおかげだ。

このスキルは、パーティ登録された者へも効力がある。

巨大サメの魔物の討伐数は、これで15体目となった。


カスミは、ミヤビにドロップ品回収をまかせて、あたりに目を配っている。

次の獲物の気配はすでに感じていた。


「やっぱり海の中も、じゃんじゃん攻めてくるわね。楽しいけど、ちょっと多すぎない?」


歓喜とも文句とも取れる言葉をホクトに向けた。


「繰り返すけどそういう設計なの、この階層は。地上も海の中もおんなじ。だけど地上とかわらず動けるのはすごいね、この『万能環境適応』スキルは。息もまったく気にならずできてるし」


ホクトは、天高く揺らいでる水面を見上げていった。

そう、ここは第19層の島と島の間にある海底の底であった。

三人は20メートルはあろう海底のそこに、地上にいるのと全く同じコンディションでたっていた。

息は普通にできるし、水圧も全く感じない。

移動のときに水の抵抗もなく、海流のながれは風を感じているに等しかった。

この深さであれば、相当暗くなってもよいはずなのに、10メートルぐらい先までは明るくはっきりと見える。


三人が名にも不自由なく海底にいられるのは、カスミの固有スキル『万能環境適応』のおかけだ。

この支援魔法は、どんな環境でも地上と変わらない状況に被術者をおけるスキルだ。

カスミにこのバフをかけられた者は、水中だろうが溶岩体の中だろうが、平原にいるのと同じ状態でいられる。

持続時間はカスミが術をかける時に調整可能で、最大で一日24時間までの範囲で自由自在だ。

いまは、取り合えず最初のお試しということで6時間にして、近い島と島の間をショートカットしている。


「ただ不思議なのは、泳げないことだね。水で満たされてるはずなのに浮力がかからないので、海底に貼り付けられてるし」


上方に揺らぐ水面は見えているので、泳いで上がることもできそうなのだが、感覚としてはまったくできる気がしない。

もしそれをしたければ、水系の魔法で竜巻でも作って、推力を無理やり作らなければならなそうだった。


「でも、おかけでやっと魚系の素材が手に入った。これはありがたいことだ、うんうん」

「魚だけじゃ無いにゃ、と」


ミヤビが巨大サメの反対側から、高速で這って近づいてきたブルーウォータサーペント、いわゆるウミヘビまたはウツボの魔物をぶつ切りにしながらつぶやいた。


こちらも大量のドロップ品に変化する。


「これで蒲焼きも確保だね」


ホクトはまたも嬉しそうにつぶやく。


「やれやれ、せっかくの固有スキルもホクトにかかればただの素材集めの補助スキルになってしまうのか、よっと」


カスミが次の巨大サメをしとめつつ、傍らで何もしない弟に飽きれていた。


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