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サイドA-38 『快鮮100』販売開始

綾子姉からエリクサーの存在が世間にばれるのを防ぐ作戦、略して綾姉対策は順調に開始された。

まず清涼飲料水のオリジナル品を製造してくれるメーカーは、「飲料水 プライベートブランド 製造」でちょっとネット検索するとすぐに数社見つかった。


北斗が車で数時間のでいける範囲にも2ヶ所あり、どちらも材料持ち込みが可能であった。

最低ロットが1500本で継続発注か前提とあるが、ビンの用意や封入処理、はては通販サイトへの組込みまで行ってくれるらしく、初期費用と実際の初回ロット製造費を合わせても数十万ですみ、もともとあまりお金を使っていない北斗にしたら余裕の範囲だった。

継続生産分はどこまで持つか不明だが、利益がでればそれはそれでよいのだが、儲けることが主目的ではないのである程度売れて初期費用は除いてトントンになる自転車操業でよいと判断した。


それで『エリクサー』の情報流布が抑えられるのなら、安いものである。

製造業者とのやりとりや契約も順調に進んだ。

飲料水のベースは、その製造業者でよく作っているビタミン飲料とし、そのなかに『エリクサー(梅)』を混ぜてもらうことにした。


もちろん業者には『エリクサー(梅)』の詳細な説明はせず、ただどうしても混ぜたい液体があること、その混入の場合には必ず立ち会いさせてもらうことを条件にだして業者側もこころよく承諾してくれた。

ただし、その液体自体の成分分析を事前に行うために、検体として40g程度提出してもらうこと、飲料に混ぜるまえに加熱処理をする必要があることを必須とされた。


北斗は事前の調査で熱を加えてもエリクサーの効能に変化はないことは確認済みだったので、その点は心配していなかったのだが、分析でどのような結果が出るかだけが心配だった。


が結局それは杞憂で、エリクサーの分析結果は「若干の希少ビタミンが入った弱アルカリイオン水」と、結果としてはそこまでの心配する必要がなかった。

エリクサーとしての効能はあるものの、魔法的な要素をもつそれは、この世では検知できないのだろうと、北斗は一人納得した。


「それにしても、これを30万倍に飲料水に混ぜるんですよね。成分としては無いに等しいんですけど、本当によろしいんですか?」


割合については心配されたほどだったが、そこはうまく説明できないので


「教会でいう聖水みたいなもんですよ。ただのおまじないかな」


と、どうともとれる煙に巻くような説明を終始一貫しておこなったので、あちらもついにはくわしく聞くのをあきらめた。

初回ロットとして1500強は、初回の打ち合わせから二か月で行われ、販売はつつがなく開始された。


製造に立ち会った北斗も、販売分とは別に余剰としてできた30本をもらい帰宅した。

綾姉に配るのではなく、自分用である。

綾姉には、ネットで購入できるようにしておいたからとSNSで伝えて、それっきりにした。

返信でギャーギャー言われたが、最終的には安定的に購入したりまわりに自分の美の秘訣が購入できることをまわりに流布できるようになったことがよかったのか、しばらくして静かになった。


ネット販売では3本をひとセットとして販売価格は送料込みで4000円とした。

ビタミン飲料ととしては結構高い設定である。

おまけに嘘ではないが、「お肌が3才は若返ります」や「シミそばかす問題がこれ一本で解決します」などのうさん臭さたっぷりのセールスコピーと、かつほかの商品と区別がつきにくいように『快鮮100』というありがちな製品名をつけての販売だ。

綾姉に感化された人たちと多少の物好きが買う程度だろうから、月500セットしか製造しないことになるが、たぶん十分だろうと思う。


とにかくいろいろ手間はかかったが、これてリスクのひとつが緩和されたことを北斗は純粋に喜んだ


ただ事態はこの後、北斗の思惑とは別の方向に走り出した。

まず綾子からの「ネットで買えなくなった」と文句が来たことで、最初の異変に気が付いた。

調べてみると買えないのではなく単なる欠品だった。


業者を通して通販サイトとは月に1回納品することは約束しているので、ネット側も「近く納品予定あり」の表示をして予約販売もできるようになっているのだが、どうも予約が6000セットを越えてしまって、いまも増え続けているらしいのだ。


製造業者も小ロットの顧客ということで、あまり注視はしてなかったものの、通販サイトからの増産依頼が来るようになって、北斗に増産の相談をすることになる。


増産数は最初月12万本といきなり破格の要求されたが、さすがにそこまでは売れないのでは思った北斗は交渉の末、当面は3万本にして、様子をみつつ上げていくことで落ち着かせた。


増産をのむ条件として、綾子への通販分を確保するための毎月5セットのメーカーから綾子への直送の依頼と、製造費の値引きを要求した。

綾子ひとりなら月1セットあれば十分なのだが、どうもまわりの部下たちに自分の身内が作っていることを自慢しているらしく、その延長で配ってもいるらしい。

なんとも綾子らしいと北斗と、それを聞いた香澄も納得していた。


製造業者側も売り上げアップが今後も見込めるため、個別送付と製造費ダウンはこころよくのんでくれた。

北斗は知らなかったのだが製造業者のメリットはそれだけでなく、もうひとつあった。


製造時に抜き取りで成分調査と試飲を業者は行うのだが、その試飲係が社内で奪い合いになっていた。

というのも、確実にアンチエイジングのある飲料、やや高額のそれを無料で職務として飲めるのである。

効能のすごさは徐々に社内で広まっており、チャンスがあるごとに試飲をしたがる人員が増えたのだ。


それに気が付いた製造業者の幹部は、さすがにまずいと感じたのか、ルール作りだけではなく北斗の許可を得て余剰製造分だけ無償で社内配布するようになる。

その分は社内における福利厚生費として捻出され、製造費からちっちり割り引いてくれていたので、北斗としては反対する根拠もなく、製造業者としては社員エンゲージアップの手段として有効なため、両者にとってにウィンウィンの関係となった。


北斗にしても儲けるつもりなどなかったのだが、一気に収入が本業の30倍近くに膨れ上がってしまい、それがきっかけでこれから先の人生のキャリア変更を考えることができるようになってしまった。


開発者というスタンスに対しては、全くもって不満はない。

ただ今務めている会社に不満がないかといわれれば、そうではなかった。


IT業界は、いまでこそ人も増えてきているが、それでも人手不足は慢性的でまだまだ解消されていない。

なのでどうしても若い時分から、リーダー格に上げられることが多くなり業務としては設計・製造よりもマネージメントに時間を取られることが多くなる。


手を動かしての作り手としてに喜びを感じる北斗としては、まさにその立場に半分足を突っ込んでおり、人員的にそれを断りにくくなっている。

逃れるとしたら、個人事業主として独立することがよくてそれを検討はしていたが、どうしても収入が不安定になるリスクがあるため踏み出せずにいる。


(ただ、この『快鮮100』の売り上げがずっと続くんならば.....いやずっとじゃなくても1年も続けば、生涯とはいわなくても結構な備蓄にはなるな)


主な仕事が多少不安定でも、十分食べていける事になる。

というか食べるだけなら、あちらの世界からもってくる食料で、家賃と光熱費さえ稼げれば何とかなる。


『ネオアンバー・ソメイユワールド』世界とのつながりががいつまでも続く保証はどこにもないが、備蓄さえできれば仕事でも自分のやりたいことを優先してそれで食べていると北斗は確信する。


そしてそれは1年後、十分な備蓄の確保と、仮に『ネオアンバー・ソメイユワールド』とのつながりがその瞬間断ち切られたとしても、やっていけると確信した北斗は、所属していた会社をやめ、個人事業主として独立をはたすこととなる。


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