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サイドC-6 Sランクパーティ『レッドサンダー』

「つまりは商会『カメヤマシャチュウ』はファーラーン・ダンジョンの発見とともに立ち上がり大きくなってきた商会だから、少なからずダンジョンの何かが関連しているとおもわれてはると、こういうことでしゃろか?ダンジョンの特性なんてどこでもおんなしようなもんと思いますけど。ただの偶然ちゃいますか?」


『レッド・サンダー』パーティメンバーの一人、ハイ・マーメイド族のプラティアがガガの説明をうけて、興味なさそうに聞いた。

いまは自らの魔法によってヒューマンの形をとっているが、実際は尾ひれをもつ海の種族の亜人である。


海に住む亜人の中でも希少種であるハイ・マーメイドの彼女は、魔法に特化した種族で、水・風・白魔法を自在に操れる。

特に水中での魔法に関しては、災害級の魔法を駆使することができ、ひとりで中クラスの船も沈めることが可能である。


治癒魔法に代表される白魔法にも精通していて、戦闘魔法士でありながらもプリーストや補助魔法士としてもフォローできる。

さらには時間遅延のストレージスキルももっており、その能力は重量にして約30トン程度の容量のものが持ち運びかのうである。。

それらの自在の活用を裏付ける魔力量も種族特融の大容量をほこり、いまだ魔力切れを起こした経験は彼女にはなかった。


一人で戦闘・回復・荷物持ちの三役をこなすプラティアは、ガガのパーティでも抜きんでの能力者であり、リーダーのガガを含めたパーティメンバーのだれよりも冒険者の間で名の通っている有名人であった。


「俺もそう思うがな。だが発展の速度が異常なのは事実だ。だからその原因を知りたいんだろう」

「でもなんでそれが、ダンジョン攻略ということになるんです?」


ガガよりもふた周りも小さいウサギ種の獣人が、ガガに問いかけた。

彼の名前はラン・ムー。

職業はレンジャーで、主にパーティの斥候を務めている。

性格は冒険者にしては慎重で、まわりの環境の危険度にもよるが常に警戒を解かないタイプの獣人だ。


兎人族独特のピンとたった長い耳は、広範囲の音を拾うのが得意で、短足だが筋肉質の両脚はパーティ一の俊敏性を誇っている。

最速のプラティアにくらべ移動距離も持続時間も短いが、短時間の瞬発力がとびぬけていて閉空間での戦闘を得意としている。


武器もその得意な空間に見合ったもので、主として短剣や投げナイフを獲物として利用している。

というか大きい武器は持てないタイプだ。


「国の諜報部隊もいろいろ調べているがな、やはり結果ばかりの情報だしな、そういうところは実際にダンジョンに潜ったものの肌感というか、実体験での裏付けとしてほしいというのが国の要請だ」


「でも、そういう理由ならすでに冒険者として活動している諜報員もいるんじゃないですか?」


ラン・ムーは、そんなことが今回の冒険の理由になるのが不思議らしい。

たしかに情報網は、弱国のノースランド連邦を対象にしているとはいえ、長年培ってきた積み上げがあると言っているのだ。


「それがな、どうもうまくいってないらしい」

「どうゆうことですの?」

「このダンジョン、第80層まであるらしいんだが、近年大きく様変わりしていてしばらく制覇報告がないらしい。第19層がネックになっていて、そこの途中で断念するパーティが多いらしい。というか第19層を目的としているパーティーがほとんどらしいんだ」


「なんで第19層が目的?」

「第19層には『ミドル・ポーション』の沸いている泉があるらしいんだ」


ポーションはスーパー・ハイ・ミドル・ロー・タイニーに大別されていて、ふつうにポーションとようときはローまたはタイニーのことをさす。

ポーションはランクにあわせてその効能も即効性も指数的に変わってくるが、価格も同様に上がっていく。

ダンジョンにおいてもポーションがお宝箱から得られるパターンがほとんどだが、泉に沸くようなタイプは珍しい。


「なら、その泉で『ミドル・ポーション』を汲んで帰って換金するのを目的としているパーティーが多くて、それ以上の攻略を積極的にすることがないと、こういうわけか」


「でもポーションでっしゃろ、液体は重いとおもいますえ。うちみたいにストレージもちならともかく、実入りにつながるほどもてへんのやない?」


「まあな、一気に大金を得ようと思えばそうかもしれんが、例えばそれが『ミドル・ポーション』10本分だとしても金貨にしてだいたい30枚前後になるから、普通の冒険者にしてみれば大金だ。それに命をかけないととれない魔獣の素材やドロップ品よりも、持ち帰れる量は少なくてもリスクなく得られるお宝としては魅力的だと思うぞ」


ガガたちSランクへの依頼は難易度が高い分、得られる報酬も桁違いだ。

現にガガのパーティメンバー全員が、一生とはいわないまでも20~30年程度は普通に暮らせる貯蓄が冒険者ギルドに預けてある。

それでも危険な冒険者を続けているのは、各々細かい理由は異なるが、誰もが冒険好きでかつメンバーを気に入っているためだった。


「それにな、制覇が進まない理由は他にもあってな」


ガガは王級の会議室で聞いたファーラーン・ダンジョンの浅い層の様子をはなしていく。

見つかった当初は、層数こそ80と多いが各層が狭く貧相で、出現する魔物や宝箱の内容も貧相だった。

ところが見つかって半年もたつと、ダンジョン構成が大きく様変わりし始めたらしい。


まず第19層がいきなり海と島で形成された巨大フィールド・ダンジョンに変貌した。

先ほどの『ミドル・ポーション』の泉がわくセーフティーエリア、通称オアシスを皮切りに魔物も海にはシャーク種、陸にはクラブ種や亜竜が生息するようになった。

島と海とで全体がまさしく迷宮となり、覇行距離もながく行き止まりも多いため、制覇しようとする冒険者たちの難易度を極度に上げていた。


その変貌のあとに続くように、第6層~第17層すべてが森と平原で構成されたフィールドダンジョンとなった。

広さは1日あれば回れる程度のダンジョンで、気候も常によく、冒険者たちには気軽に訪れられる層となった。


特筆すべきは第1層から直接各層へ続く階段が出現したことが、このダンジョンへの冒険者たちの取り組み方を大きく変えた。

冒険者たちはこの階段を利用してすきな層へ直接移動が可能になった。

帰還も然りで特定の層にむけて潜航し、成果を持ち帰ることができるようになったのだ。


拡張した第6層~第17層もそれぞれ特徴をもっており、成果物も一定しているので、自分の丈に見合った攻略が可能なのであった。


「だがな、この一見有利に見える構成が、じつは第19層以降への挑戦を阻んでいるというわけなのさ」


冒険者はいわば体をはった職業であり、それで失敗すれば実入りがないだけでなく、ケガなどすれば継続することさえできなくなる。

なのでなるべくリスクをさけて続けられるようにするのは自然の流れで、それに答えるかのようにファーラーン・ダンジョンは変貌していたのだ。

「それだけなら何の問題もないんだが、どうもくだんの『カメヤマシャチュウ』が売っている品や加工品の原料がすべてではないんだが、その第19層のオアシスまでで得られる素材ではないらしく、外部から購入している形跡もないらしい。そこで諜報部はそれらの原料はこのダンジョンのもっと深い層、第20層以降から得ており、それを行っている冒険者がいるのではと推測したんだ」


たとえば麦や米は、ダンジョンのドロップ品や宝箱からの獲得品としては珍しいが、このダンジョンでは第6層~第17層で得ることができる。

ただそれらすべてが流通に流れたとしても全然賄えないほどの量の穀物を、『カメヤマシャチュウ』は出荷している。


例えば植物系の魔物トレントのドロップ品であるトレントの樹脂や木材は、第19層のわかっている範囲を含めて存在が確認されていない。

にもかかわらず、『カメヤマシャチュウ』ではこれらを利用した加工品、木の杖や軽装用の防具や盾などで大量に安く売られている。

魔石にしても鉱物にしても、『カメヤマシャチュウ』が出荷している量が、ダンジョンから冒険者たちが持ち帰る量をはるかに超えている。


「ただ表立ってそのような形跡がほとんどなく、そこらへんの実情を調査するとこを含めて、俺たちに第19層以降まで制覇してきて欲しいというわけなんだ」


ここまでわかっているのだから、直接仕入れ元を『カメヤマシャチュウ』を調査するなりじかに聞くなりすればよさそうなものだが、それらの試みはいまのところ失敗に終わっているらしい。

まあ他の商人だったとしても、自分に有利な入手先をおいそれと公表するとはおもえず、遠回りのようだがそれが一番確実な成果が得られそうだった。


「いまほとんど形跡がないっていわれはりましたな?なにかとっかかりはあるんとちゃいますか?」


プラティアはガガの言葉にすかさず突っ込みをいれる。


「じつはな、それらしいことをしているパーティがひとつだけあってな。だけどそのパーティはDランクで、第19層を制覇できるとも思えないとの諜報部の判断だ。実体もつかみにくいらしく、今回の調査ではそのパーティにも接触しようと思っている」


「そのパーティ、なんていうパーティですの?」


「『アンバーチャイルド』というパーティらしい...メンバー数はいまは8人だそうだ」


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