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サイドC-5 フィオナ王国会議5

トーラの『黒船』限定の入国禁止の提案は、あっさりと却下された。

それ自体が不平等、自身たちの船の往来は許しても、特定の商業上の不利益をまねく恐れがある、というだけの禁止令は国として外聞が悪かった。


また同様の理由で、関税の導入についても却下された。

ノースランド連邦とフィオナ王国間の貿易に関しては、関税という輸入物に関する税金は存在しない。

かわりに港に停泊する港使用料と船員に対する入国税で代替わりしているのが現状だ。


『黒船』からは船員が入国することがないため入国税についてはともかく、短時間で実際は沖にしか停泊はしていないが、港使用料はこちらの都市の店舗の職員がきっちり納めていたので、その点についてはルールを遵守している。

なので入港を禁止するには、根拠があいまいで実施すれば『黒船』を脅威と認識していると公言しているに等しい。


侵略の可能性があるとしても、その根拠足る証拠や挙動でもつかまない限り、入港禁止にすることはできなかった。


関税について科すことは可能だが、相手国に関税を導入させる理由を作ってしまうことにもなり、国費の数十パーセントを輸出で賄っているフィオナ王国としては、率先して導入することはしたくなかった。

相手国が侵略を疑っている状況であれば、関税導入は疑心暗鬼に陥らせる可能性が高く、最終手段としたかった。


「そこでだ、我が国としては3つの方針で対応使用と思っておる」


アマデウス王が、満を持して方針を告げだした。


「ひとつは南・西・東の軍の1旅団をそれぞれ首都の南方に駐屯地を作り、一時的な配置をおこなう。駐屯機関は最低半年とし、状況により延長する。部隊の構成および人選は各守護職諸侯に一任する」


各方面守護には、騎士団として順待機人員も含めて3~5旅団を抱えているが、そのうちの1旅団ともなるとなかなかの割合を割くことになる。

1旅団あたり5000人程度の構成で、今回の号令で終結するのは、15000人ほどの大臨時部隊となる。

首都の南方というのは、『カメヤマシャチュウ』の活動範囲外という配慮からだろう。


「次は、ノースランド連邦へ親善使節団を派遣する。これについては、アカリ第2王女を使節団長として、ここにいる大臣およびスイレン嬢も補佐として出向いてもらう」


これには一同どよめきが走った。

アカリ王女と言えば齢12歳の王の正妻の娘で、アマデウスが溺愛を自負するほどの箱入り娘である。

温和で朗らかな性格に加え、王妃に柔和な見た目とそれに相するひとなっこい性格で、国内外に評判のよい姫であった。


「国王、なにもアカリ様でなくても」

「いや、今回はあちらにこちらの侵略なしの意思表明を明確にする必要がある。それには姫が適任だ。姫のよい評判は、ノースランドにも響いておるからな。融和を唱える使者としては、アカリは適任だよ」

「しかし、もしもということも....」

「トーラよ、彼女も王族の一人だ。そういう時の覚悟も持たせてるつもりだ」


ノースランドに開戦の意思があれば、そのままとらえられて人質となるかもしれない。

娘を溺愛する父親の前に、国を預かる王としての覚悟を見せられたトーラであった。


「とはいってもな、いざという時のための処置はする。特殊部隊の人間を同行させる」

「特殊部隊というと王族のあれですか」


トーラは、少し息をのんで答えた。

あえて名前を口にしなかったが、トーラはそれが『夜露草』という、王族がひそかに抱えるという忍集団であることをさしているとわかった。

実体および構成は、貴族たちでも知る者もおらず、謎の集団である。

『夜露草』一族は、独自の体術と独自の魔法を持つ者の集団とされており、王族の守護だけでなく隠密に情報収集や調査も得意としているらしい。


「とにかくノースランド連邦評議会には、侵略の意図なしと伝えると同時に、『黒船』および『カメヤマシャチュウ』への関与なしの言質をあらためて取る必要がある。そのための使節団じゃ。こちらの最大限の友好アピールをせざるをえまいて」


反論を許さぬ声でアマデウスはいう。


「で、最後の一つだがな、ガガよお主にひと働きねがいたい。ガガ侯爵としてではなく、S級冒険者パーティ『レッド・サンダー』のリーダーとしてな」


★★★


「あれがうわさの『黒船』ですな。実物は思った以上にめっちゃ大きい感じやわ」


プラティアが、ひらひらと帯状の服が風に舞うのも構わず、海上に浮かぶ巨大船を海岸から眺めながらいった。


「たしかに。でかいなあれは」


ガガも同意の言葉を発する。

王宮の会議室で図面をみて、大きさは知っているはずなのに、実際に海上に鎮座するそれをみた感想は圧巻の一言だった。


「で、俺たちは何をしに、ノースランドにわたるんだ」


ガガの横に立つひときわ体の大きいドラゴニュートが、おなじく『黒船』をみながら聞いた。

プラティアと同じくガガのパーティメンバーで、名をテツガという。

腰に下げた魔鉄製のメイスに、背中に背負う大型のバスターソードからも容易に想像が付く戦士職であった。


あの御前会議から一週間後、ガガは自身が持つパーティ仲間をひきつれて、北の港町イリスまで来ていた。

これからノースランド連邦にわたって、国王の3つ目の方針をこなすためだ。


「あちらにわたって、ダンジョンの攻略を行う」

「ダンジョン攻略?ノースランドというとアースワン・ダンジョンか?」

「いや、ファランドール大樹海のなかにあるファーラーン・ダンジョンだ」


それがアマデウス国王にガガが直々に依頼された内容であった。

ガガはその時の会話を思い出す。


「S級パーティ『レッド・サンダー』のリーダー・ガガとして依頼したい。ノースランド連邦の北方に位置する都市、ファーラーンのファーラーン・ダンジョンを攻略しダンジョン詳細を調査してほしい」

「それはどういうことなんだ」


ノースランド連邦国への対応というのにダンジョン攻略してほしいという、一見関係のなさそうな方針に、ガガが戸惑いの声を上げる。

アマデウスは傍らのスイレンに目くばせをして、詳細を説明させる。


「陛下がおしっゃられたファーラーン・ダンジョンですが、見つかったのが比較的新しくいまから15年程前になります。ノースランド連邦で見つかった2つ目のダンジョンとなります。ダンジョンがみつかったファーラーンは、いまでこそノースランドの首都に匹敵するほどの城塞都市となっておりますが、もとは貧相な地方村のひとつだったと聞いております。ダンジョンが発見されれば、付随効果で冒険者の流入やそれを受け入れる施設の拡充、ダンジョンからの収集物で商業も発展するのは自然の流れといえばそうなのですが、発展のスピードがやや不自然です」

「不自然?」

「まず城塞都市なのですが、ダンジョンを中心に5段構造となっております。内部の城壁はダンジョンからの侵入を拒むためだけのものになっておりまして、その周りの第2層が冒険者やそれらを取り込む冒険者ギルドや宿屋、素材買取や飲食店などの商業施設、その城壁の外第3層が住民地区、第4層が素材の加工や生成を営む鍛冶師や魔法具生成師、縫線や布生成に肉加工やパン製造等を包括する製造業の地区、第5層は連邦国軍とその家族が住む外的対応地区とすみわけがされています。人口はこちらの調査員の推定で約3万。ルクレール候は、これを聞いてどう思われますか?」


スイレンがまっすぐにガガに問う。


「地方都市どころではないな。首都といわれてもおかしくない規模だ」


ガガが素直な感想を述べる。

同席する他の諸侯たちも、この情報は初耳らしく息を飲んでする。


「たった15年だと?ダンジョンが見つかったとはいえ、少し、いやそうとう異常な発展スピードではないか?」


トーラも思わず声を上げる。


「はい、異常です。現にその規模はノースランド首都イオシスをしのぎ、国内でも奇跡的な発展都市といわれております」


ダンジョンが発見された地域は、それ自体が巨大な宝箱を見つけたに等しく、否応なしに人が集まり発展はしていく。

ただそれには長い時間がかかるのが通常で、それだけの要因で発展するものでもなく、国の援助の割合で発展進度に影響がある。

ノースランド連邦国にはそれほどの国力がないので、ファーラーン・ダンジョンにもそこまで援助がいくとも思えず、現に同国のもう一つのダンジョン、アースワン・ダンジョン周辺も、先ほど開示されたファーラーン・ダンジョンほど発展はしていない。


「そして近年大量にノースランド国内・国外に小麦や米、魔道具を作り出し売り出していると思われる『カメヤマシャチュウ』は、ここに本店を構えております」


スイレンはとどめの情報を、出席者に伝えた。


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