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サイドC-4 フィオナ王国会議4

「王のおっしゃるそれは、つまり商業的な競争相手ということですか?それとも、まさかとは思いますが侵略される相手としてですか?」


トーラが、王をみて答えた。


「今日の話をきいて、私は貴公らがどう感じたかをきいておる。ウィリアム侯は、今の口ぶりだと侵略される可能性は、ほぼないと感じているということだな」


「はい、いまの情報だけでの感想ですが、経済的な侵入はなにか対策は必要と感じましたが、国としてあの連邦が他国を脅かす体質をもっているとは、露ほどにも思っておりません。魔の大樹海だらけで、国としてやっと体裁を作っているような連中ですので」


トーラは、ノースランド連邦を心理的に下に見ていた。

王国制とっとていないあの国は、国王や有力貴族というつよい方針を掲げる者がいない。

現に今の連邦評議会なる、知恵者の集まりというのも、個々が権力を有していない分、強制力に乏しいと考えている。


民主制というのは住んでいる人々の生活水準が上がってきて初めてなりたつ。

常に魔物に脅かされ、魔の森に生活圏を脅かされているこの世界では、人間が普通に暮らしていくのさえ厳しく、どうしても経験の厚い権威をもった一族に率いられるのが、普通なのかもしれなかった。


そういう意味で、フィオナ王国では度々ノースランドを支配下に置く話も出ており、実際過去に侵略した経緯もあった。

だがすべそれらはとん挫している。

まず大陸間に存在するチェシェ海が、それを阻んでいた。


そして、それを大型船で走破して部隊を到達させたとしても、かの国は魔物が席巻している国で、生活資源に乏しく進行しても大部隊を賄えるほどの資材の現地調達が難しい。

そのため補給線がどうしてもネックになって、大きな部隊を送って維持することが難しい。


なによりもそこまでして制圧したとしても実入りが少ないばかりでなく、逆に継続して資源を送り続ける必要がある。

現在のフィオナ王国としてはそこまで面倒をみきれないと結論付けた。

ならばむしろ、輸出先としてなにかしらの見返りを求めた方が、楽であるると考えている。

この先ずっと侵略をしないとは結論付けていないが、当面の王国の方針がそれであった。


「ふむ、だがなウィリアム侯、こうは考えられんか?かの国はたしかに国として貧弱だ。なのでわれらがフィオナ王国のようなある程度豊かな国がうらやましいとおもっている。ただ、侵攻するには国力がいままで無かった。が、他国を侵略しうる戦力が突然ではあるがついた。そうなるとひょっとして手に入れるチャンスではないかと、思う者もでてくるのではないか?」

「戦力?たしかにその大型船は戦力を運ぶには、最適かもしれませんが、肝心の戦力があの国にあるとは...」


いいかけて、トーラはハッとする。

会議に出ている他の貴族たちも、突然青い顔をした。


「そうだ、思っている通りだよ。そのゴーレム群が我々が認識した、ノースランドの新戦力だよ」


★★★


スイレンの報告は、その後も続いた。

ノースランド連邦の問題の超大型船は、一日に1便の割合で定期的に来航してきている。

1回の輸送で運ばれてくる馬車の数は、おおよそ100台で各馬車は各町に25台ずつ均等に物を運んでいる。


逆に帰りのついては、常に100台が入れ替わりになるのではなく、数十台はこの国に残っているらしい。

送り返すものが持ってくるものに対して少なく、中には空のまま帰国する馬車もいるらしいということであった。


「入れ替わりが激しくてすべては確認できておりませんが、いまこちらの国に残っている馬車は確認している範囲で300台、追い切れていない範囲で森などに待機させているのもあると思いますので、少なく見積もっても400~500台はあると推察されます。あと、持ち帰りの品なのですが、陶器や鉄の調理器具、古着や調味料、小および極小魔石とわかっております。とくに極小魔石については、買いあさっている節があり、こちらも現時点で数十トン、数にして200万個以上は持ち帰っているとおもわれます」


極小魔石はいままでは使い道がほとんどないわりに数があるため、捨て値で売られているものだ。

売る方にしても在庫がはけて大助かりというわけだ。

なので大量買いしているものがいても、歓喜こそすれ脅威を感じるものなど商人や冒険者ギルドにはいない。


「ちなみにゴーレム馬と御者ゴーレムですが、魔核にはこの極小魔石が使われているのが確認されています」

「どうやって確認を? こちらから馬車に手を出したのか?」


侵略などという言葉が出てきた後だ。

他国の商人の馬車に手を出すなど、開戦の口実つくりに最適だと、トーラはひやりとする。


「いえ、魔物に破壊されたものを、こちらで回収して調査した結果です。あちらのゴーレムは強力ではあるようですが、ブラッディベア等には単独では対応できないようでした。われらが回収したのゴーレムの横には、馬車の残骸とブラッディベアの片腕が残っていました」

「つまりはだ、ノースランドには最低でも200万の数体でブラッディベアの片腕を落とすぐらいの戦力が作れる準備があるというわけだ」


ガガが飽きれたようにいう。


「加えて、すでに国内には数百機の進行先発隊がいるとも言えるのだな」


ニビルも追従して加える。


「おちついてる場合か、そうそうにそれらを阻止する手だてが必要ではないか?アマデウス王よ、即刻それら馬車の国大退去とノースランド連邦国の船の寄港の停止発令を進言します」


トーラが立ち上がって、ややヒステリックに叫んだ。


「なるほど、それでここにサミルがいないのか。合点がいった」


ガガが得心がいったと、北の守護職サミル・マクラレン侯爵の会議不在の理由を確認した。

いつ進行が始まってもおかしくない状況で、北の拠点から守護職が動くことはありえなかった。


「ガガの推察どおり、マクラレン侯爵がここに不参加なのは、ノースランドに対する警戒態勢のためだ。同様に緊急に卿らに集まってもらった理由も、ノースランド連邦の侵攻に対する対応を決めるためで、まあそこまでは良いのだが、一つ困ったことがあってな。わしの一存では如何ともしがたいことを伝えるためでもある」


「どういうことですか?王よ」


王は、また細かい説明をスイレンに投げた。


「この超巨大船から搬出される商店は、ここ半年の輸送開始と時を同じくしてできたノースランド発祥の商会で、名を『カメヤマシャチュウ』といいます。ノースランド発祥といいましても、どうやらノースランド評議会とはまったく関係のない組織らしく、超巨大船でさえその商会のものとなっております。簡単に言いますと、あの船はノースランド国籍ではありますが、ノースランド連邦国の公的な支援をうけて作られたものではなく、あくまで商会単体もしくは個人の所有物であるということです」

「『カメヤマシャチュウ』、なんだか舌を噛みそうな変な名前だな」


ガガが、変な部分にひっかかった。


「ばかな、じゃあ船を含むゴーレム軍団すべてが、個人の商会の所有物とでもいうのか?しんじられるか、そのような与太話が」


トーラが、もういい加減にしてくれとばかり、わめきちらす。


「残念ですが事実です。ことの重大さを認識した王と大臣で内談し、じつはかの国に問い合わせたのです。あの船が御国家所有の船かどうかを。その反応は実に不思議で、自身たちは計画どころか建造過程にさえまったく関与しておらず、それどころかどこからあのような船団が出てきたのかと、自身たちも驚いているというのです。くわえて、こちらが問い合わせてもいなかったのに、おそらくこちらが心配しているであろう侵攻計画等は微塵も存在せず、むしろこちらが早まった決断をせぬよう、切に願うという回答をしてきたのです。国と国のやり取りですので、100%信用することはできませんが、回答の速さと切羽詰まった内容からは、真実が書かれている可能性がたかかろうと結論づけております」


ノースランド連邦評議会も、ローランドからの火急の問い合わせが何を危惧しているかを推察し、身に覚えでもないことで事態が進むのに危機感を覚えたようだ。

その対応事態が戦略のうちのひとつであれば周到な回答であろうが、なぜか真実であるような気が一同はした。


その超巨船、会議の途中からは明確にわかりやすいように、船全体の塗装色をとって『黒船』と名付けられたそれは、ローランド王国にとってもノースランド連邦にとっても、異質のものなのだった。


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