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サイドC-3 フィオナ王国会議3

「この図面は、我が国の造船技師たちにより、外観から見える情報をもとに描かれたものです。目測の部分もありますので、完全なものではありませんが、大方はあっているものと推測します」


「ばかな、これが船だと。確かに船に見えなくもないが、ここに書かれた寸法のものが、あの国に作れるのというのか?私が知っている大型船の倍以上のサイズではないか?第一にだ、この図面には帆柱がかかれていないが、この船の規模を考えると、いったいどれだけの帆を設置すれば、船を動かせるというのだ」


トーラ侯が悲鳴のように、がなり立てた。

それもそのはずで、そこに書かれている寸法は、常識の範囲になかった。


「トーラ様のおっしゃる通り、この寸法を信じるとすれば、わが国の大型船に比して全長で3倍、全幅で2倍、全高で3倍、体積にして18倍の差があります。我が国の船を大型船と呼ぶのであれば、これは超大型船とでも言わざるを得ません。あと、誤解無きように説明しておきますと、帆柱がないのは技師たちのミスでも怠慢でもなく、元からありません。この船は帆船ではないのです」


「帆船ではないだと?では人力による櫂が動力というのか?いったい何人の漕手が必要というのだ。100人か?200人か?奴隷を使うにしても、とんでもないぞ」


スイレンは苦い顔で答える。

その答えを発したくない表れだった。


「それも違います。櫂も目撃されていません。技師たちの観測によれば船後方に水流を吐き出す口があり、それを推力として使っているようです。技師たちの想定ですが、何かしらの魔道具が配置されていて、それを推力として利用していると考えられています」


スイレンよりもたらされる情報に集まった貴族たちは、言葉もない。


「大きさと動力の魔道具だけが問題ではないのだよ。スイレン続けて」


アマデウス王は、さらに畳みかけるように、スイレンを促す。


「はい、この超巨大船は船の動力も未知のものであることだけでなく、その走破性能もずばぬけているようです。こちらも実際に目測でしか確認できていないのですが、スピードがこちらの船の少なくとも5~6倍はあったそうです。海上で我が国の船と並走した際の目測ですので、多少大げさではあるとは考えますが、推力を発生させる仕組みが全く異なりますので、それが最高速度かどうかも判別がつきません。最低でも5~6倍と考えた方がよいと思います。加えて言うならば、この船は帆船に比べて風の状態による影響をうけにくく、速度が一定に保たれる可能性がたかいと考えられております」


帆船はどうしても天候や風向きに、運航を左右される。

もちろん熟練の航海士であれば、それを巧みに利用して最適な時間を叩き出せるだろうが、それは技術や経験が必要であり、誰でも可能ではないし、自然相手なので限界もある。

それに対してこのノースランド連邦の船は、それらを頼りにしてない分、影響を受けにくいといえる。


「我が国よりノースランド連邦のドムント港までは、熟練の航海士をもってしても丸一日かかるが、この船であれば半日も必要としないだろう。最高速度が我々の想定を越える場合、一日に2往復できてしまうかもしれん。恐ろしいものだ」


アマデウス王は、誰に対するでもなくつぶやいた。


「...信じられない」


トーラ侯がショックを隠せない声でつぶやいた。

他の出席者も声には出さないが、思いは同じであった。


「推測が多いようだが、実際にこの船に乗った人間はいないのか?いないとしても船員はいるのだろう。こちらに寄った時には港の宿場で食事のひとつもするだろうし、これだけの船だ。一度の積載量も半端ないだろうから、荷下ろしの為の人工だってこの港の人間をやっとったりすることもあるだろう。そういった人間からは情報をえられないのか?あとこの船はいつごろから存在して、何隻ぐらい確認されているのか?」


東方守護職のニビル・ドットライド侯爵が、スイレンに対して問うた。


「この船が目撃され始めたのは、つい6ケ月前です。それまではこちらの商船が、あちらの入り口の港ドムント港はもちろんのこと、その奥のミュートラム港に寄港した際も見かけませんでした。それが現在ですが、最低でも6隻は確認されております」


1隻でも大変な存在なのに、最低でも6隻という数字は、またまた一同を傷心させる。


「そしてこれら情報が憶測でしかない点ですが、調査ができないのがその原因です。我が国もこの船の技術を脅威と判断し、すかさず情報収集を開始しました。外観からだけでなく、内部の人間や、ノースランド連邦へも人をやって情報を収集するためにあらゆる手を尽くしてまいりしました。船自体にも潜入しようと公式・非公式にアクセスしてきました。しかしそれらの活動の結果としては、収集できる手段がほとんどないとわかったことだけでした。ドットライド様のおっしゃるように荷下ろしの労働者でもやっとってくれれば、突破口もあったかもしれません。船員が町に繰り出してくれれば、接触することも可能だったでしょう。ですがこちらの船は荷下ろしに人をやっとっていません。船員もこちらの町にはでてきたことがありません。荷を下ろして、入れ違いに持ち帰る荷を積み込むと、すぐに連邦にとって帰ってしまいます。そもそも船員がいるのかどうかも、いまだわかっておりません」


「どういうことだ、荷の入れ替えはしてるのだろう。なのに船員が見当たらないなんてことが、あるのか?」


スイレン嬢は、ニビルの言葉に、はいと返事をした。


「では、どうやって荷を積み下ろしたり、運び込んだりしてるんだ」

「こちらの船が運んでいるのは荷物だけではありません。馬車も運んでおります。より正確に言えば荷をあらかじめ積んだ馬車を積んでいるんです」


「ば、馬車だと?」

「ニビルよ、その通りなのだ。どうやら馬車のまま船から排出されるらしいのだ。馬車はそのまま目的地にむかって、荷物をはこんでいるのじゃよ」

「しかも、その馬車はゴーレム馬と人型のゴーレム御者に操作されているようです。積み込む荷物もあらかじめこちらに拠点のある商人により積み込まれた馬車が、そのまま船に格納されているらしいのです」


スイレンの詳細の説明によるとこうだ。

この船は、こちらローランド王国の港では喫水が足りないのと、もともとそのような大型の船が停泊することを考慮されていないため、入港することができず、少し離れた沖合に停泊する。

そして、船に備わっている装備によって、そこから馬車1台が通れる程度の一時的な桟橋を陸までかけ、その上を馬車が行き来しているらしい。


ゴーレム馬とゴーレム御者に引っ張られた馬車は、受け手であるノースランド連邦国の商人の店、いまは入港町であるイリスと首都ロンランシア、その間にある2つの町にしか無い様だが、それぞれに向かう馬車が決まっているらしく、個々の町へのグループが商団となって移動していると報告された。


「しかし、ゴーレムだけとは。イリスはともかく首都までは結構な距離だぞ。不用心じゃないか?街道があるとはいえ、護衛もなしに到達でき無い場合もおおいんじゃないか」


ガガが不思議そうに問うた。

街道に出没する魔物や盗賊のことを言っているのだ。

護衛をつけて行きかうのが普通だと言った。


「確かにその点については、こちらでも最初の疑問でした。ただ、結論から言うとそれも問題ないのです。ゴーレムの御者やゴーレム馬自体が高い戦闘力と判断力を有しており、魔物や盗賊に対応できていることを、こちらの偵察隊が確認しております。それどころか魔物については、討伐後にその素材を持ち帰ったり、盗賊については生きたまま牽引したりしてきているようです」

「はあ、たかがゴーレムだぞ?指令する者もなく、独自にそんな判断ができるわけない」


ガガの感想は、一同の感想でもあった。

ゴーレムは、基本的な命令を一つか二つ程度与えて、それを遵守することしかできない。

例えば、「すべての敵から建物の侵入を阻止しろ」とか「動く敵をすべて殲滅しろ」とかの程度である。

今回のゴーレムが、もし報告の通りの動作をするのであれば、少なくとも10程度の命令を一度にうけて、臨機応変に対応していることになる。

そんな器用なゴーレムが存在するとは、いままで聞いたことが、ガガはなかった。


「信じられないかもしれませんが、それが可能なのです。もっと信じられないのは、片言ですが会話もできるとということらしいです。報告程度の言葉ではあるらしいのですが....」


ガガを含む諸侯たちは、先に食べた『おにぎり』とは別の意味で、おなかがいっぱいであった。

この数時間で信じられない情報のオンパレードである。

だがスイレンは、さらに追い打ちをかけた。


「さらに、この馬車自体ですが、見たこともない車輪とおそらく鉄で作られたであろう筐体という、これまた我々にはない技術で作られております。筐体自体は隙間がなく、背後の扉より中の物を出し入れするようだということです。盗賊たちに襲われた場面を見ていたものの報告によりますと、鉄の斧で押し入ろうとしたものもいたらしいのですが、その程度ではビクともしていなかったようです。あと車輪が特殊で、街道のような補正された道ですと速度が段違いに出るそうです。そこに疲れを知らないゴーレム馬がくわわると、海だけでなく陸においてもわれらより優位性があると判断されます」


「そこでだ、皆に問う。新型の超大型船、命令を同時にいくつも処理できるゴーレムに、頑丈で高速な馬車。これらはわれらにとって脅威として認識しうるものか、もしくはそうでないか?」


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