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サイドB-28 エリクサーの材料と金貨

ダンジョン・コア前のコンソールに座ったミミコ=ホクトは、4度目となるダンジョンマスター登録を行っていく。


[ダンジョン・マスター登録しますか?「はい」「いいえ」]→「はい」

[ダンジョン・マスターは、操作者のミミコでよろしいですか?「はい」「いいえ」]→「はい」

[ダンジョン・マスターの登録解除はできません。ダンジョンマスターの死をもって、自動解除となります。

ダンジョン・マスターはダンジョン内であればどこでも移動可能ですが、ダンジョンから出ることはできません。

これら条件を理解したうえで、ダンジョン・マスター登録を実行しますか?

※最後の確認です。この操作後は解除はできません。

「登録」「やめる」]


相変わらずのネットでの旅行を予約のような確認を経て、無事ミミコはダンジョンマスターとなった。


[ミミコをダンジョン・マスターとして登録しました。末永くこのダンジョンの管理をよろしくお願いします]


メッセージのあと、ミミコは手慣れた手つきでコンソールを触っていく。

ミミコの眼前に、山のようにメッセージウィンドウが空中に出現した。

ミミコはその中のひとつを凝視し、ひゅーと口笛をならす。


「このダンジョン、各層の出来具合や広さからある程度想定していたけど、やっぱりそうだわ」

「なにがやっぱりなの?」


マルティがミミコに確認する。


「広さだけでなく質も年数も今までのダンジョンで一番大規模だわ。記録だとこのダンジョンができて4600年はたっているみたいよ。それに蓄積されている魔力量も、1時間あたりの魔力回復量も半端ないわ。これ見て」


とミミコは、ひとつのウィンドウを示す。


AGE: 4648year

DMP 16,030,020,000,442 (53,760,000/h)


「ほんとだ、すごい数値だね。とくに時間当たりの回復量がすごいね」


マルティも息をのむ。


「たぶんだけど、樹海フロアが多いのが回復量の多い原因だと思う。自分の中でさらに魔力が発生するような仕組みを作っていることになるし...」


ミミコはここで何かを思いついたように、別のウィンドウを精査しはじめる。

ウィンドウはさらに増えていく。


「このDMP値は、大丈夫なの?今まで見てきたほかのダンジョンなら、とうにスタンピードが起こってもおかしくない数値なんだけど」


マルティが別の懸念を表明する。

ミミコは手を止めずに、回答する。


「魔力を消費するために、どんどん魔物は発生させているみたいだけど、ダンジョンが広いからたぶんまだまだ余裕があるんだと思う。それにどうも、いまだダンジョン各層の拡張は継続的にされているみたい。時間当たりの魔力回復量の約9割は消費されているもの。えーと...あった。これだわ」


とミミコはまた別のウィンドウを示す。

それはマルティ=ホクトにとってはおなじみの、ダンジョン生成に関するスケジューリング・ウィンドウであった。

確かに、その内容はミミコの予想通り、各層の拡張プログラムが1ヶ月単位ループ形式でなされていた。

しかも各層個別に事細かく設定されていて、スタンピードが発生しない程度に魔物や罠、宝箱などの生成配分がなされていた。


「これって...」

「多分思っている通りよ。自然にここまでのスケジューリングは、コアだけでは無理よ。ここには前に知性を持った人または亜人タイプのダンジョン・マスターがいたと思うわ」


ダンジョン・コア自身にもダンジョンを構築する能力は備わっているが、それは本能的なもので具体性に乏しく、スケジューリングなどない。

効率を考えていないので変化速度も遅く、単調になりがちだ。


ホクトたちが最初に攻略したファーラーン・ダンジョンがそんな感じで、第80層と層の数は多かったものの、1層1層の構造が単調で魔物の種類もそれほどではなかった。

それにたいしてこのアースワン・ダンジョンは、層数こそ18と少ないものの一つ一つのフロアの構成がとてつもなく広く複雑で、似たようなところはあるものの、それぞれが独自の特徴をもっている。

とてもダンジョン・コアの仕業とは思えない構成をしていた。


「層数の少ないことから、ダンジョンマスターがついたのは相当初期の頃だと思うわ。最後のスケジューリングがいまから2000年くらい前だから、たぶん自分の寿命を感じて自動的にダンジョンを成長させつつ、外に影響が出ないようにしてたんだと思うわ」

「ダンジョン初期からいたとなると、相当な長寿だね。ハイ・エルフだったのかな?それでも少し長いような気もするけど」

「そこらへんは、『エリクサー(梅)』あたりを使っていたのかも。『西王母蟠桃の果汁』自体がこのダンジョンにあるので、前のダンジョン・マスターだった人もエリクサーの知識はあったみたいだし。あとの材料である魔石はもちろんのこと、『月下草』も群生しているところも第5層にあるみたいだし」


ミミコは、『西王母蟠桃の果汁』も『月下草』もレシピとスケジューリングでの生成にあることを確認しつつ話す。

それらは確かにリストに存在して、さらには


「あっ、すごい。『西王母蟠桃の木』もレシピにあるわ。生成の消費魔力量がとてつもないけど、実が手に入れば『世界樹のしずく』は生成品にないから『エリクサー(松)』は生成上限があるけど、『エリクサー(竹)』なら作れるわ」

「それは朗報だけど『エリクサー(梅)』でも十分すごいんで、無理して作る必要もないかな~」


と大興奮して、マルティもなにとウィンドウを覗き込む。


「おたのしみのところ、水を差してもうしわけないが。マルティ話いいか?」


余りにダンジョンの情報群に対して没頭するマルティとミミコに対して、少しあきれた声でカスミがふたりに話しかけた。


「私とミヤビは馴れているが、お嬢様お二方は困ってるよ。どうせあとでミミコが知る情報はわかるわけだし、そこはミミコに任せて今後の話の続きをこちらでしないか?」


マルティは少しバツが悪そうに


「ああ、そうだね。ごめん、結構新しいレシピが多そうで、夢中になってしまった。ミミコ、申し訳ないけど予定通り転移魔法陣の件、先に進めて」

「了解」


ミミコをのぞく一同は、立ち話もなんだからとまだ納めていないログハウスに移動した。

カスミがここでオレンジの香りのする紅茶を一同にいれてくれる。


「まずはこれね」


と、机の上にどシャリと音が鳴るちいさな革袋を20個、それよりも少し大きめの革袋を5袋ストレージより出して並べた。


「約束の素材の代わりのお金、210,000,000Mel。小さい袋は金貨100枚、少し大きいのに銀貨200枚ずつが入っている。確認してみて。全部大金貨でもいいんだけど、使い勝手を考えて小分けにしてしまったけど、大丈夫だよね」


金貨自体はお釣りの面で使いづらい場面も多く、細かいがその気遣いは姉妹もうれしかった。


「ありがとう。多い気もするけどお心遣いとあわせて、遠慮なくいただくわ」


カエデは遠慮なくそれをうけとる例を言う。


(それにしてもこの大金....)


カエデは金貨の袋をあけて眺めつつ、いままで見たこともない大金に頬が緩むのをとめられなかった。

手付でもらった金貨100枚のときも感動したが、そのさらに21倍のお金が、目の前にこともなげに並べられて、しかもそれがすべて自分たちのものなのだ。


マルティたちと出会う前は、銀貨だけしか手持ちがなく、その日暮らしに近い生活ばかりだったので2週間程度の稼ぎとしては破格としか言いようがない。

うれしくなくはない反面、大金すぎて持ち歩くのが怖い気もする。

ストレージがなかったら、重量的にも相当厳しかったと思う。


(にしてもこれほどの大金を、あっさり用意できているあたりもあきれる。いったいストレージの中にはどのくらいの金貨や銀貨が入っていることやら)


「あっ、そうだ。私たちに貸してくれている鎧やマント返すね。剣だけは地上にでて、新しいの買うまではまってもらうけど」


あらためて思い出したカエデが、マルティに申し出る。

買い取るという言葉が出ないのは、貸し出してもらった装備一式で稼いだお金の半分はなくなることが分かっていたからだ。


「それはいいよ。そのまま使って」

「えっ、でも」


どれもレジェンド級の品である。

代償もなしにもらえるものではない。


「仲間でいるうちは返さなくてよいから。剣については前もいったけど、魔力付与のお試しのものだし、まだまだストレージに試作品がいっぱいあるんで。なんでお代とか言われてもこまるよ。なんなら今回手に入った魔剣でも渡そうか」

「いやいや、それはいい。そんな国宝級の物、持ってるだけで生きた心地しないし使いきれる自信もない。いまの剣で十分。じゃあ遠慮なく借りとくね」


当初は必ず代金を支払うとか言っておきながら、マルティの言葉がブラフではなく本当に余って困っていることがわかったので、カエデは心苦しくなくうけとれた。

マルティたちの基準がすごすぎて、前の感覚が崩れてきているともいえるのだが、姉妹にはその感覚もなかった。


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