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サイドA-35 ワールドスキル[異次元ストレージ]

「クラウド・黒鬼・赤鬼ゴーレムたちは、少し使いどころを考えないといけないかもしれない。便利だけどこちらの楽しみが半減してしまうのは、ちょっと嫌だし」


ホクトがしみじみとつぶやく。

ホクト同様マッドクラブの足の素焼きを堪能しているミヤビも、今回の行程で思うところがあったのかうんうんとうなづく。

ある意味無理やりこの世界に連れてこられていとはいえ、彼女は彼女なりに冒険やダンジョン攻略を楽しんでいるようだ。


「それはそうだな。例えばパーティメンバーだけでは手こずるような魔物相手のときとかにつかうとか、か?」


エギルが現実的な提案をする。


「それでもいいけど、むしろ今回のような未走破の領域に移動するときとかに有効だと思う。たとえばいま別チームで攻略してもらっているベルゼ大樹海の探索とか。未知のエリアやダンジョンを索敵するにはクラウドの能力が相当役に立つと思う」


北斗は『多重自我』の残り枠をサブキャラにあてて、ベルゼ大樹海探索を敢行していた。

割り当てているのは、ネームドURキャラ「魔糸使い錬金術師:マルティ」だ。


SSRキャラでも良いのだが、未踏の未知領域の不測の事態に対応できるよう、最上位ではないにしてもそれなりのレベルのものをわりあててある。

このキャラを選んだのは、北斗が好きな異世界系小説の主人公が使う技に似た、糸を使っての攻撃を得意とするという、たんに趣味の問題だった。


レベルもミヤビより少し大きい6000でステータスも上位なのに加え、錬金術でポーションなど作るのも得意なので、ミヤビ同様ステータスで大概のことは押しきれてしまうだろうし、北斗の判断力が備わっているので問題はないのだが、移動時の索敵範囲といういみではこのゴーレムに劣るので、クラウドたちは有効と思えた。


ちなみにこのパーティには、あと二人サブキャラを割り当てていた。

ネームドURキャラのマツリとネームドURキャラのクリステーヌだ。


クリスティーヌは『多重自我』で一回北斗自身も入ったことのあるキャラで、白魔法系の回復と補助魔法を得意とするキャラだ。

回復系だけでなくレベルもたかいので、こちらも大概の戦闘は問題ない。


マツリははじめて使うキャラだったが、その能力ゆえに北斗は選択した。

その能力はミヤビと全く同じ次元魔法系で種族もおなじケット・シーだった。


双子キャラではないかと思えるほどスキルもステータスもレベルも似ているのだが、その外見はミヤビとはことなりブラウン種で、顔つきもやわらかい。

ミヤビが現実ではボンペイ種という精悍な感じの猫で、それに近い形で顕現しているが、もしこちらのマツリに同じように猫を割り当てるとしたら三毛猫とかマンチカンとか、おどけた感じ系のものになるような気もした。


(かといって、これ以上猫を飼う予定はないんだけどな。でもカスミ姉の件といいフラグ立っちゃってるよな....)


現実世界でフラグが立つとかの思考じたいが自体が、ゲームに毒されている北斗という人物を如実に表しているが、そう思ってしまう状況がそろいすぎているのも否めない。


ともあれマツリは、処理能力はもちろん転移能力を持つために、ベルゼ大樹海攻略のメンバーにいれている。

夜は拠点に帰って就寝できる利点は大きい。


「なるほどな。で、肝心のギルド報告はどうするんだ。あんまし詳細な地図を渡してしまうと、それはそれで第19階層の目的がうすれるぞ」


エギルが少し不安そうに、ホクトに確認する。


「それは大丈夫。攻略目的で、調査目的じゃないから。もちろんある程度の地図は渡すけど、行き止まりすべてを書くわけじゃないから、不明の部分は50パーセント以上はあるし、そもそも距離にしたって感覚的な感じでしか報告できないんで、こんな大距離の行程を把握できる資料なんかは、この世界の測量技術では作れないと思う。どうしても心配なら、君が一部陸地の順番を変えてしまえばいいだけだし」


ギルドマスターの得意分野だろ、とホクトはエギルを揶揄する。


「簡単にいってくれるよ。あれはあれでまちがって近道ができないようにするのが大変なんだぞ」


自分でもやりすぎたと思っている迷路形成の修正など、納品直前のアプリの仕様変更とおんなじで、気が重い作業だ。

エギルがため息とともに、対応したくない意思をあらわす。


「それはそうと、第79層の方は終わりそう?」


現実に帰ればダンジョンの製作進行状態はわかるのに、それでも聞かずには入れないホクトだった。


「まだまだ時間はかかるな、当初通りではあるが。でも一部の生産品、とくに穀物系は始められていることろは始めているぞ」

「そうか。そしたら若草姉妹も配置しだしたほうがよいかもね」


ホクトがいう若草姉妹とは、農夫職業をもつマーガレットとジョセフィーヌの二人のことである。

農作業に従事させる木人ゴーレムの配置・統括をするのに、ふたりのサブキャラが適任と考えている。


ホクトはこの名前を偶然の産物とは考えておらず、現実世界の『若草物語』から来ていると感じている。

今はまだいないが、そのうち同じような属性でエリザベスとエイミーというサブキャラも引き当てる予感がしている。


「それはお願いする。サブキャラ配置だけはホクトにしかできないからな。ただそろそろ帰還日時じゃないか?あれも試したいんだろ?」


エギルの言う帰還とは、現実世界への帰還というか起床である。


「あれね。うん、取説に表示されていることが本当なら、いままでの能力なん霞んじゃうくらいびっくりスキルだからね。こちらの世界の存在証明にもなってしまうし。実際どうなることやら不安だよ」


この世界、ネオアンバー・ソメイユワールドに今回北斗はひと月の滞在を予定している。

帰還タイミングはホクト・キャラのログアウトのみなので、外界に接触していないエギルはよいとして、ベルゼ大樹海攻略組とはタイミングの動機がとれないので、戦闘中とか誰かと会話中とかにログアウトしてしまうと、違和感が出てしまうことが想定されている。


なので、ログアウトはベルゼ大樹海攻略組とホクトの本拠地のファーラーン村北部の自宅で落ち合ってからの実行と決めていた。

そのためのマツリ配置で、ホクトの家に毎晩帰って来れるようにしてあった。


「まだログアウト予定まで3日あるけど、後回しにすると面倒なんで一度冒険者ギルドによって報告だ。たぶん素材買い取りの交渉とかと含めると三日かかるとはおもうんで」


やれやれと頭をかくホクトだった。


★★★


北斗は就寝前に、今回のログインで起きうる特典が何か発生する事は予感していた。

前回のログインで、ネオアンバー・ソメイユワールド滞在があちらの時間で2年を越えたからだ。

1年目と同様なんらかの特典は発生するだろうとの予測だけでなく、『多重自我』同様何らかのワールドスキルが来ないかとの期待もあった。


予想通りNEWのついたお知らせが2つ点滅していた。


『new 100日連続ログイン特典について』

『new ネオ・アンバーワールド2年間滞在特典について』


連続何日はおなじみすぎてるのですぐには開かず、2年間滞在特典をひらく。


『ワールド滞在960日達成特典。スキルポイント1000万点、URキャラ『飛龍ゴーレム クワンテ・トルト』、ワールドスキル『多重自我憑依(+2人)』、ワールドスキル『異次元ストレージ(10キロ)』 「うけとる」「あとにする」』


でた、と北斗は心の中で叫ぶ。

言葉からしてストレージの一種ではあるだろうが、スキルとして持っているどのストレージよりも容量は少なく、また名称も独特だ。


早速ヘルプで内容を確認する。


[異次元ストレージ]

・どのようなものでも、最大10キログラムまで格納可能

・ストレージに格納されたものは、ネオアンバー・ソメイユワールド内外で出し入れ可能

・ストレージに格納できるものは、ネオアンバー・ソメイユワールドのものに限定される

・ストレージ内では時間は停止する


北斗はこの2つ目の説明、「ネオアンバー・ソメイユワールド内外で出し入れ可能」の文字に引っかかる。


(これってつまり、こちらの世界のものが現実世界に持って帰れるって事?そんなバカなことができるのか?チートが現実世界でもおこりうるのか?)


この段になってもなお、まだこの世界の存在自体が北斗の願望が生み出している夢であることをぬぐえない北斗である。

この能力自体もひょっとすると、ただの夢の産物で現実に持ち帰ったつもりでも、何も起きない可能性がたかい。


(やってみるのはいいが、現実世界でそもそもどうやって取り出すんだ?)


いろいろ思うところはあったが、案ずるよりうむがやすし、次のログアウト時に少しだけものを入れての起床をすることにした。

10キロと総重量が少ないので、いろいろは持って帰れないが、最初の内容としてまだ6本しかない「エリクサー(松)」を1本と、リンゴに似た果物、小麦から作ったパン、自家製のハイ・ポーションを1本に、ブラッディーホーンブルの肉の燻製を少々格納した。

持っていけるとしても最初からオークやドラゴンなど空想の生肉は、衛生面も含めてリスクが高すぎると感じて排除している。

まずは持ち帰る実験に終始する。


『ゲームを終了して、ログアウトしますか?』


期待と不安をむねに準備のできたホクトは、自宅でマルティたちと合流後、いつものログアウトを敢行した。


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