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サイドA-34 オアシスゾーンと三体のゴーレム

「やっと大きな島についたと思ったら、小型の亜竜がうようよいるし、森は深いし山は越えないといけないようにされているし、うっとおしい羽虫タイプもわんさか配置されていて、どんだけ難易度高いんだよとかおもったよ」


ホクトのいう羽虫タイプとは、主に蜂の魔物のことであった。

特に1メートル大のジェットキラー・ビーンは、攻撃性と飛行速度が高く、虫とはいえ油断できない魔物だ。

2~3匹で行動するため、集団で来られるよりはましだが、上空から攻撃されるのは少々対応が難しい。


「まあな、でも数はいるけどそこまで強力なものは配置していないだろ。ようは進むのがうっとおしくなるようにこの層は作られているし、それが目的なんだから。まあ、亜竜はなかでも少し強力な魔物にはなっているが、ドロップ品はよかったろ?」

「たしかに」


この層に配置されている亜竜は2種類で、どちらもそれほどランクは高くない。

エギルはダンジョンにある魔物レシピの中の12ある亜竜のなかで比較的小さくランクの低い物を選んで配置していた。


この2種の特徴はランクが低いこと以外は、集団で行動するという点だ。

規模は様々だが、最低でも5~6匹で行動する。

エギルは大型の島々に、これら亜竜を200匹ずつ配置している。


ドロップ品は、これら亜竜の霜降り肉と肝や心臓などの内臓、中型の魔石をセットでそれらだけでひと財産だ。

単体ではそれほどではないが、集団という点が討伐難易度をあげ、かつ全匹倒した場合のドロップ品の獲得量をあげていた。


前述の魔物レシピというのは、ダンジョン内で配置可能な魔物の種類のことで、ダンジョンマスターはその中から配置魔力量を吟味して選択・配置するのである。

魔物レシピは、ダンジョンのレベルが上がるたびに増える他、ダンジョンマスターのセンス次第という難点はあるものの、オリジナルを作り出して追加することも可能だ。

ここら辺も、現実世界のゲームシステムに似たないようがあり、この世界の成り立ちに疑問符がたつような設定がある。


「あとあれもよかった。オアシスタウンは知られれば、それだけで冒険者が殺到するだろうね」


踏破の難易度が高い第19層には、行き止まりではあるが魔物がまったく存在せず、食料や水を確保できるセーフティーゾーンが3箇所存在する。

得られる食材としては、木の実や果物がメインだが、設定として住民が去ったあとの森に埋もれた村の廃墟として作ったので、それなりに休めるスペースや煮炊き用の台所跡地がある。


清潔さはともかくベットの類も廃墟の中に無造作に放置され、スライムを浄化システムに取り入れたトイレも設置されている。

行き止まりなので、あくまで休息と食料・水確保のために立ち寄る為の場所なのだが、ひとつだけ特殊な要素があり、それだけをもとめて冒険者がこの場所に赴くよう設計されている。


そりは町の中心にある泉だ。

ここの泉の水はすべて「ミドル・ポーション」と同じ効能をもった飲料水なのだ。

ポーションは超高級・高級・中級・低級・微級に大別されていて、普通の冒険者が持っているのは、低級または微級ばかりである。

理由としては単純にランクが高いものほど単価が高いからである。


「ミドル・ポーション」であれば最低でも金貨3枚は必要だが、それがこの泉では垂れ流しになっている。

冒険者としては、これを汲んで持ち帰りうるだけで、十分な実入りになる算段だ。


オアシスタウンは第19層の入り口から一番近いところで、普通の冒険者で約1日程度の場所にある。

ホクトはギルドへの報告に、オアシスタウンの情報とそこまでの経路を含めるつもりなので、その情報が広まれば第19層制覇を目的せずオアシスタウンとの往復だけを目的とする冒険者が増えることが予想される。


そしてそれはとりもなおさず第19層を越えていこうとする冒険者を少なくする役割を同時に満たしている。

二重のしかけで北斗が設定した、当初の目的を十全に組み込んだ層となっていた。


「汲んでくる必要もないんだけど、報告と買い取り用にある程度はもってきた」


と木の水筒をストレージより持ち出して、エギルにみせる。

その量は通常の「ミドル・ポーション」の5本分程度で、つまり金貨15枚、1,500,000Mel相当になる。

液体なので、ストレージを持たない冒険者たちは持ち運びできる量に限界はあるだろうが、それでも十分な実入りがこのポーションを持ち帰るだけであるだろう。


「この水筒があと9本ある。それと素材としてマッドクラブの身や甲羅、オアシスタウンでとった果物類とリーフ・ジャンク・ドラゴンの外皮と骨ぐらいはギルドに開示する予定。ほんとうは魚系で素材になるようなものもとってくればよかったんだけど、水中は今のところ手が出ないからね。なにかそれに対応できるスキル持ちがいるといいんだけど」


どんなにHPが大きくても、窒息に対応できるかは未知数である。

それで死んでしまったら元も子もないので、今のところ手が出せていない。


「まあ、岸から見えていて倒すことはできたんだけど、ドロップ品の回収が難しい。泳いで取りに行って、別の魔物に襲われたら対処できるか不明なんで」

「あれ、たしかSURのネームド・キャラで、環境対応できるスキル持ちがいたよな?あれは使えないのか」


ホクトはジト目でエギルをみて、


「わざといってるでしょ?あれは当面使わないてきめたじゃん」


エギルのいっているサブキャラは、数少ないSURネームドサブキャラの『カスミ』のことだ。

種族はハイ・エルフでレベルも120,000ととびぬけている。

おそらく魔王クラスの世界を征服できてしまうキャラだ。


エギルが言っているのは、その『カスミ』の特有スキルの一つ『万能環境適応』をいっているのことだと、ホクトはわかっている。

それを使えば水の中での行動も制限されないことはわかっているが、北斗自身がどうもこのキャラクターを自主性のないサブキャラとして利用することに抵抗があって、いまだ顕現させていなかった。


というのもミヤビの例からして、ひょっとすると自分の姉、香澄のために用意されているキャラではないかという予感があるためだ。

いつの日にか、この『ネオアンバー・ソメイユワールド』で香澄と一緒に冒険する日が来るのかもと思い、いまのところ意識のないサブキャラとしては利用しないことをきめていた。


もちろんさらに上の姉の名を関したキャラもいるため、同様の予感は無きにしも非ずとはいえ、こちらについてはあんまり一緒にということは考えたくもない北斗であった。


「それにしてもよくギルマスの指名依頼なんか受けたな。攻略依頼だっけ?」


エギルが相変わらずコンソールから目を離さず話しかける。


「ギルマスもホクトたちのランクあげたくてうずうずしているみたいだし、口実になる案件だったんじゃないか?」

「まあね。でもそこは案件の目的変えてもらったし、そもそも勝手に上げたらギルドやめるとまで宣言したから、多分大丈夫。ちょうど使ってみたいアイテムもあったんで、タイミングがよかったのもあって引き受けた」


「タイミング?ああ、ひょっとしてその後ろのゴーレムたちのことか」

「そっ」


ホクトの背後に、ゴーレムが三体佇んでいる。

ゴーレムといっても人型のそれではなく、三体すべてが4足歩行の動物の形をしていた。


一番大きなゴーレムは、車でいうところのミニバンサイズに長いしっぽが生えた真っ黒い巨体のゴーレムである。

全身を金属で形成された豪毛でおおわれており、体躯フォルムもスリムではないが飛び出た口元から何に近いかといわれればウルフ種のようにみえる。

特徴的なのは正面を見据える2対の金色の瞳であろう。

ネームドSSRのガチャアイテムで、名前を「クラウド」といった。


クラウドにくらべてだいぶほっそりとしたフォルムの他二体は、同じくネームドSSRのガチャアイテムである。

黒くて長いしっぽをもつパンサーフォルムのゴーレムは名を「黒鬼(コッキ)」、渋い赤茶で体に島が入っている足太のタイガーフォルムのゴーレムは名を「赤鬼(セッキ)」といった。


どちらもクラウドと同じく金属で形成されたゴーレムである。


「クラウド」は、体に似合わず瞬時に高加速運動が可能で、重金属でできたその体躯と防御魔法の展開を利用して突進攻撃が得意である他に、表面の毛を羽虫大の端末に変化させ分散させることで、広範囲索敵が可能だ。


対して「黒鬼」と「赤鬼」は高速に移動できるだけでなく、跳躍を得意としており5メータ程度の壁の飛び越えや爪を利用した垂直壁の登坂、30メートルぐらいまでの降下もなんなくこなせる。


四肢の爪はアダマンタイト製の鋭利な武器であり、加えて「黒鬼」は『烈風刃』を「赤鬼」は『雷撃』の魔法も駆使できる。

強さもそうだが、「クラウド」と比較して有利なのは人をのせる事ができる、騎乗タイプのゴーレムである点だ。

「クラウド」は表面の金属毛を索敵に展開することとそもそも体当たり攻撃が得意なので、騎乗にはむかない。


どの個体もSSRというたげあって、レベルもそれぞれ3500、2500、2500とSSRネームドキャラと同じくらいあり、単体でも十分な強さをもっている。


「黒鬼と赤鬼を駆使したんで、1週間で終わったのもあったしね。でもミヤビがね、あんまし乗りたがらないので説得するのが大変だった」

「当たり前にゃ。瞬時の行動のために自分の足で移動するのが一番しっくりくるにゃ。乗り物は性に合わないにゃ」


「こんなさ、第19層で一番苦労したのが、騎乗説得というわけ」


「実際に使った感想は?」

「すんごく使えると思う。クラウドの索敵は俺たちがスキルとして持っている索敵と比べて地形によらないし、端末が現地にいるんでより詳細な情報がわかる。それを移動しながらすきな範囲で常時展開できるのはありがたい。今回黒鬼と赤鬼に騎乗しての移動だったんで、先行している端末の移動速度限界でせいぜい1.5キロ先までだったんだけど、歩いての移動なら5キロは覆えると思う。黒鬼・赤鬼にしても移動速度はもちろん早いんだけど、レベルが半端ないんで並みの魔物では全く歯が立たない。今回遭遇した亜竜程度なら瞬殺だったよ。クラウドの魔力をまとっての体当たりなんて、対象が粉々になんだから、後半は戦闘になったら後方にひいてもらったよ」

「そりゃすごいな」

「だろ、加えてだこの三体はディーエッグとことなって、なんとパーティ登録できてしまうんだ。つまり三体が討伐した経験値も、俺たちに分配される。いいことづくめだけど、難点はまかせておくとこちらのやることがなくなって物足りなくなるんだ」

「それは確かにつまらんかもな」

エギルも深く共感して、うなづくのであった。


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