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サイドA-4 実験とガチャ

ログイン後、あいも変わらずあの同じ部屋で意識が覚醒した。

「ヘルプ」の「ログアウト」の説明どおり、時間は4日前とほとんどかわらない。

のどの渇きと、空腹もやはりまだ感じていた。


ステータスウィンドウ内で、確認したい項目もまだまたあったが、今日はまず部屋の外に出て外部の確認をするつもりであった。

環境と体感に慣れてくると、自分のというか夢の中の自分の置かれている環境確認がもっとも重要であることに気がついたのだ。


全く時間が経過していないが、有害なものが扉の向こうに存在するかもしれないし、そうでなくても誰かいるかもしれない。

「ヘルプ」での説明では、ホクトは村外の森の中で一人暮らしのはずだが、同居人がいないとも記載されていなかったので、他人がいないことははっきりさせたかった。


扉に近づいて、物音を確認する。

しんとして、人の気配は感じられなかった。

思い切って鍵のないドアを開けてみる。

そこはいままでいた寝室同様、簡素な部屋であった。


椅子が2つの机がひとつ、二人かけのソファがひとつに、その下にひかれた何かの毛皮らしきラグ。

淡く青色に輝く観音開きの背の高い箱と、7段あるチェストが一つだった。


扉は、今開けたもののほかに3つあり、そのうち一つは横についた木窓から、外界へ通じるものとわかった。

ホクトは、これらの景色を、知っていた。


厳密には、扉を開けた瞬間に白紙だったマップが色を成すように、一気に知っている範囲となったのだ。

例えるなら、RPGゲーム等で移動した分だけマップが生成されていくような、そんな感じだ。


外にはまだ出ていないが、扉をあけた瞬間に周囲が既知の景色に代わることを、ホクトは確信した。

想像だが、近隣の村への道中も、村でさえ触れた瞬間に既知のものになるであろうことも、ホクトは予感した。


淡く青く光る観音開きの箱を、ホクトは片側だけ開いた。

中から冷気が下りてきて、なかには何かしらの食材、パンや何かの肉、そして水差しに入った桃色の液体がみえた。

そう、その青色に輝く箱は、冷蔵庫であった。

もちろんホクトはこの部屋に入った瞬間に、それが冷蔵庫であることを知っていた。

これは、亡き爺様が作った、この世界でも特異な魔道具のひとつであった。


ホクトの爺様ことジーノは、このような便利な魔道具をいくつか独自に編み出していた。

この冷蔵庫も、魔石による魔力を与えることによって冷気を発する石板と、結界魔法による空気遮断層で内側をおおった、オリジナル魔道具であった。

この小屋には、このほかにもオリジナルではないが、魔石による魔道コンロや飲み水やお湯がコックをひねるだけで無限に出てくる魔道蛇口、魔石をセットするだけで室温を調整できる魔道送風機などもあった。

ジーノ爺さんは、優秀な冒険者であると同時に、魔道についての応用も得意な錬金術士でもあった。


これらを見た瞬間、ジーノ爺さんの偉業もなんとなくだけど知識として獲得したホクトであった。

ホクトは、慣れた手つきでコップに冷蔵庫の水差しの液体をつぎ、飲み干す。

さっぱりとフルーティな味わいだった。


飲料水に少し果実を絞った汁を加えた、ホクトの認識した知識にある、の見慣れた飲料水である。

とりあえずこれでのどの渇きが癒されたホクトは、次に外界に出る以外の扉を順番にあけた。


ひとつめは、ホクトが最初にいた部屋と同じような作りで、簡素なベットに机、ベットわきの収納であった。

これは、ジーノ爺さんが生前使っていた部屋と、ホクトは扉を開けた瞬間に知った。


次の扉は、トイレと浴室であった。

こちらも同じように、扉を開けた瞬間に、ホクトの既知の部屋となった。


最後に、外界へ通じる扉をあける。

そこには木の柵に囲まれた小さな庭と、眼下に広がる深い森が広がっていた。

ホクトのいる小屋は、岩肌の少し高い位置に建築されていて、森には梯子を使って上り下りするようになっていた。

出入りの不便さは、魔物侵入に対する対策と認識できた。

いまは、あたりには森特有の雑音以外がある以外特異な騒音もなく、特に警戒すべきことは見渡した限りではなかった。


ホクトは室内に戻り、冷蔵庫から黒パンと薄く切った肉を取り出し、フライパンで焼いて塩で味付けをすると、おなじくフライパンで少し焼いた黒パンに挟んで、それを昼食として味わった。

塩もただの塩ではなくて、ジーノ爺さん特性の風味を備えた調味料で、それをかけることによって肉はまあまあの味になった。

とはいっても、日本でホクトが味わっている料理とは比べ物にならない。

改善するとしたら、せめてマヨネーズはほしく、この世界に卵さえあれば、実現可能と思われた。


とりあえずのどの渇きと空腹については、対処することができた。

時間的に、いまは11時30分くらいで、まだこちらに来て30分程度。

計画では8時間ぐらい滞在する予定なので、夜7時まではまだまだ余裕がある。


すこし心配していたのが、あちらの世界では仕事で疲れて就寝に入ったばかりのところなので、その疲労がこちらでも引きずって、起きていることができるのか不安ではあった。

結論として、それは杞憂におわり、眠さは全くなかった。


果実水をもう少しコップに次いでソファーにつくと、おもむろにステータスウィンドウを開き、先々日の続きをホクトは始めた。

ステータスウィンドウをながめていて想起されたのだが、気になっている文言が、最初のオープニング画面?あったのを思い出した。

「つづきから」の画面ではその文言は消失していたので忘れかけていたのだが、すごく重要でかつあまりにゲーム的な内容だったので、勘違いかとも思っていた。


そう、『いまログインすれば300連ガチャ無料』の文言だ。

ステータスウィンドウをオープンさせ、歯車印のシステムメニューを表示する。

すると、『おしらせ』の横に『New』の文字が点滅していた。

たぶん最初から点滅していたのであろうが、すぐにログアウトすることに気が向いていたので、気が付いていなかった。

おしらせをあけてみると、


「あ、あった」


そこには、『new 300連ガチャプレゼントについて』の文字が。

ただ..。


「なんじゃこりゃ」


ホクトはあきれた


『new ネオ・アンバーソメイユワールド1st登録者特典進呈について』

『new 3日連続ログイン特典について』


さらにふたつのお知らせがあった。

300連ガチャは、登録初回の得点そのままの意味なので理解ができるが、そのほかの特典は、ちょっと意味が不明なホクトだった。


(「1st登録者」てなんだ?いままで誰もこの世界に来てないってことか。というかまだあとからも誰か登録する可能性があるのか?)


300連ガチャは置いといて、まずは1st登録特典のほうをひらく。


『ネオ・アンバーソメイユワールドへようこそ。あなたはこの世界にログインした最初の登録者です。特典としてスキルポイント3億を進呈します。「うけとる」「あとにする」』


そこには初登録者にしても、ありえない数値が書いてあった。

宝くじでも、一生目個人ではお目にかかれない数値だ。

しばし硬直したホクトではあったが、受け取るタイミングかいまがベストかどうかまだ情報が足りないので、いったん「あとにする」を選択した。


次に3日連続特典をひらく。

3日といっても、ホクトの現実世界基準でいうと4日目なのだが、こちらの世界にはまだ3時間程度しかいないことから、この特典の基準は現実世界の日数と判断した。

もっとも寝れば強制的にログオンさせられるのであるから、連続もへったくれもないのだが。


『ログイン3日連続達成特典。ガチャチケット10枚進呈「うけとる」「あとにする」』


ガチャについて調べていないが、チケットというからには、スキルポイントと違って受け取ってすぐということはないだろうと判断し、こちらは受け取るを選択した。

すぐにお知らせのページにもどると、項目は消えていて、のこり2行となっていた。


ガチャチケットはどこで使うのかと、元の画面に戻ると、システム画面に「ガチャ」の項目が増えていた。

そのメニューを開けると、『通常チケット:10枚』の文字が、チケットらしいアイコンとともに表示されていた。

ホクトは、物は試しと通常チケットを利用してみる。

『何枚使いますか?』の問いに、1枚カウントして『決定』を押した。

画面の中で、カードが閃光とともに割れるエフェクトが表示され、文字と物の絵が表示される。


『「力の実(上)」 100粒を獲得しました』


ソファ前の机の上に、手のひら大の麻袋が出現した。

閉じ紐をとくと、アーモンドに似た黄色の実が詰まっていた。

名前からして、たぶんSTRパラメータを増やしてもらえるものだろう。

『ヘルプ』で探せば載っているかもしれないが、あたらしい者が出るたびにいちいち探すのは大変そうなので、いまは保留した。

同時にホクトはヘルプの代わりになりそうなスキル、たぶん『鑑定』だか、があれば獲得しておこうと思った。


同じ手順で、今度は一気に9枚のガチャをしてみる。

獲得したのは、


「知恵の実(上)」100粒

「魔力の実(上)」100粒

「体力の実(上)」100粒

「素早さの実(特上)」 100粒

「幸運の実(特上)」100粒

「守りの実(上)」 100粒

「ハイ・ポーション」 10本

「ケイネスの指輪」

「ディアーナの首飾り」


特上のついた実と「ハイ・ポーション」「ケイオスの指輪」「ディアーナの首飾り」など、出現するときのエフェクトがそれまでよりも派手なものがあった。

レア度が高いものほど、エフェクトが大げさになるのであろうと、ホクトは納得した。


まだ、利用方法が不明なものもあるので、うかつに身に着ける、装備するのはさけた。

獲得したものは、現実のゲームと違ってすべて実態化しており、机の上からあふれそうになりながらも、なんとかのっていた。

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