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サイドA-29 ダンジョンマスター誕生

ホクトとミヤビはファーラーン・ダンジョンに再突入していた。

レベル上げの目的ですでに20周回している成果か、当初は3日かかっての最終階層制覇だったのが、いまでは1日でこなせるようになっていた。


ただ低層階のダンジョンでは、フロアマスター以外はホクトのレベルではあまり経験値の足しにならないので、70階までは最短距離を移動中に遭遇する魔物以外はすべてパスしている。

他の潜航している冒険者はというと、18層のフロアボスのコボルトリーダーとその子分のコボルト軍のクリアが難しいらしく、19層以降にはほぼいない。

なので19階層まではミヤビとホクトの二人での走破であるが、それ以降はスピードをあげるために、サブキャラを出してより効率的に進めるようにしていた。


ダンジョンもホクトたちの影響を受けて、より多くの魔物を配置させるようになっていたため、進むのに時間がかかるようになっていたので、数には数ということで、サブキャラでおなじく数を増やしたということだ。

今回は北斗が中に入っているエギルとクリスティーネを、配置した。

まわりの冒険者に見られないようにと、念のため21階層の階層ボスを倒すまではミヤビと二人で行軍し、それ以降は4人体制にした。


『ディー・エッグ』を先行・旋回させて雑魚キャラを退治させつつ進んでみたこともあったのだが、効果としては問題なかったものの、経験値がホクトに入ってこなかったため、やめた。

おそらくであるが、パーティメンバーによる討伐の経験値しか共有されないのが基本で、アイテムによる討伐は含まれないということだとホクトは想像した。


「私にさせてくれ」


第80階層のダンジョンボスのジャイアント・ファイア・タートルをホクト単騎でも倒せるようになっていたので、毎回交代で挑戦していたのだが、今回はエギルが申し出た。


「ホクトの経験で、この魔物も強さはわかっているが、ダンジョンマスターに据え付けられる私・エギルとしての経験として積んでおきたい」

「わかった。といっても、対して感触は変わらないと思うけど」

「そういうな。それにこのキャラの特性にも、もっと慣れていたいのだ」


エギルはそういうと、ひとりファイア・ジャイアント・タートルに向き合った。

ここは森や虫などいないため、エギルの得意なドルイド魔法系はあまり活用できない。

となると風系魔法となるが、ホクトが以前つかった『烈風刃』では表面に傷しかつけられなかったので、殺傷系の魔法では無理なこともわかっている。

ただ、エギルもSSRとはいえレベル3000のつわものだ。

レベルだけでいえば、ホクトを凌駕しているうえに、名前付きということでミヤビ同様固有スキルがあるのかもしれない。


前回獲得したキャラが多すぎて、細かいスキルまでチェックしていなかったが、なにか強力な風魔法でも持っているのかもしれなかった。

いまは分離してエギルの思考まではわからないホクトであったが、自分自身がエギルの特性を生かしてどのように戦うかホクトは興味津々だった。


正面のエギルを確認すると、ジャイアント・ファイア・タートルはお得意の火の玉攻撃を連続して浴びせ始めた。

エギルはこれを

『多重風障壁』を発生させて、難なくさばいていくだけでなく、障壁の構造を魔物側にむけて湾曲させ、火の玉のベクトルを変えることで、ジャイアント・ファイア・タートル側に返すように仕向ける。


障壁で威力が削減され、コントロールが定まらないので自身に直接かかるものはすくないものの、うっとおしい事には変わりないようで、自身に火の粉がかかるたびに攻撃が中断した。


「『竜巻(トルネード)』」


エギルは自身の杖に魔力を蓄積し、小型だが強力な竜巻をジャイアント・ファイア・タートルの下に発生させた。

数トンはあろうその巨体があっというまに回転しながら空中に巻き上げられ、さらにエギルの追加魔法により回転しながら巨体がひっくり返り、そのまま天井近い数十メートルのたかさから、轟音を伴って落下した。


甲羅側から落下したジャイアント・ファイア・タートルは、死なないまでも高ダメージを受けたらしく、大口をあけたままこちらに横たわる。

エギルは、流れるように3本の弓をつがえ、ドルイド魔法により矢先に何かの属性をもたせ、はなった。


「『デッド・アースニック』」


3本の矢は、狙いたがわずジャイアント・ファイア・タートルの口に吸い込まれ、次の瞬間の若干のけいれんの後倒れた。

クリアしたことは毎回同様に魔物のかわりにあらわれるドロップ品と、宝箱が出現することでわかる。


「まあ、こんな感じだな?」


自信はあったらしいが、それでも一息つくエギルであった。

ジャイアント・ファイア・タートルの特性を知っていたとはいえ、新しいキャラでの挑戦としては見事な結果だった。


「最後の何なのにゃ?」


ミヤビは矢につけられた特性に興味をもった。


「あれは矢の先に、すぐ死に至る猛毒の特性を付与した。体内に入ったそれは、すぐさま四散して内部からあいつを毒殺したのさ。もっとも毒につよい魔物だったら、勢いをちょっと止める程度だっからも知れないんで、かけではあったんだけどな」


「ふーん、それがエギルの固有魔法なのかにゃ?」

「というか、高等ドルイド魔法の1種だな。固有スキルは別にあるよ」


へーとさらに興味をもつミヤビであったが、ホクトとしては今日の目的は別にあるので、さっさとドロップ品と宝箱のなかみ、今回も魔剣が1本だったが、を回収してミヤビを促して、ダンジョン・コア・ブロックへと急いだ。


★★★


[ダンジョン・マスター登録しますか?「はい」「いいえ」]→「はい」

[ダンジョン・マスターは、操作者のエギルでよろしいですか?「はい」「いいえ」]→「はい」

[ダンジョン・マスターの登録解除はできません。ダンジョンマスターの死をもって、自動解除となります。

ダンジョン・マスターはダンジョン内であればどこでも移動可能ですが、ダンジョンから出ることはできません。

これら条件を理解したうえで、ダンジョン・マスター登録を実行しますか?

※最後の確認です。この操作後は解除はできません。

「登録」「やめる」]


まるで、ネットで旅行を予約するときのような確認方法だなとエギル=北斗はおもいつつ、まよわず「登録」を操作した。

内容的には旅行の予約ほど軽いものではなかったが。


[エギルをダンジョン・マスターとして登録しました。末永くこのダンジョンの管理をよろしくお願いします]


最後の登録完了のメッセージとともに、エギルの中でダンジョンに関する知識、管理や創造方法、創造のためのプログラミング言語のような知識がわっと流れ込んだ。


いちどに詰め込まれたせいで、エギルの脳は処理許容量を超え、一時的に気を失うもののすぐに回復してコンソールに向き直る。

それまで操作に対する反応は全くなかったコンソールの類は、エギルが手をそえて起動を心におもうだけで、一気に稼働をはじめた。


エギルの正面、コンソールの上には多数の透明なモニター映像が浮かび上がり、さながら株取引のトレーダーのような様相を呈している。

表示されている内容は、各階層の平面図やモンスターの分布状況や詳細動向、ダンジョン内で活動中の外部の人間の数や位置、魔物の討伐や宝箱の開閉、トラップの発動のログなど多岐にわたっている。


さらにはエギルが詳細を求めることで、ダンジョン内の魔物の詳細スペックの表示だけでなく、外部の人間の魔物討伐数やある程度のスキル、剣士なのか武闘家なのか魔法使いなのか僧侶なのかぐらいの力の分析と使用した魔法のログなども見れるようになっている。


「どう?いろいろやりたいことできそう?」

「まだ頭に詰め込まれた知識が多すぎて、なんというか目次だけ見ているような感じで、中身についてはいまから紐解いていくんだが、まあ大方思っていたことはできそうな感じだな」


ホクトの問いに、コンソールから目を離さず答えていくエギルはモニターの中のいろんな情報から、もっとも探したい項目を必死に探しつつ、あったと声を上げた。

同時にすげーと声をあげた。


「ホクト、ここをみてくれ。この数値だ」


ホクトはエギルの指さす、一番下の比較的小さなモニターの端の数値をさしていった。

そこには、


AGE: 1352year

DMP 8,700,400,280,019 (1,500,000/h)


と記されていた。


「これは?」

「AGEはその名の通り、このダンジョンができてから本日までの年数だ。1300年たっている。次がこのダンジョンの現在の保有魔力量でかっこの中が1時間当たりのダンジョンの魔力生成量をさしている」


人間の魔力MP値とは基準が異なる可能性があるものの、蓄積量/保有量ともにとてつもない容量数値であった。


「ダンジョンができた当初からこの時間あたりの生成量だったわけではなく、ダンジョンが成長して大きくなるに連れてこの数値も大きくなっていったと思う。この数値が大きいのか小さいのかは比較できる対象がないので何とも言えないが、80階層あるとはいえ魔物もダンジョンの各層の大きさもそれほどでもないことから、このダンジョンはまだまだ発展途上なんだと思う」


つまりは、保有魔力量はともかく、時間当たりの生成魔力値はもっと大きくなるはずだと、エギルは結論付けた。


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