サイドA-23 ガチャをひきまくる
「ふぁー」
ホクトは大きなあくびをひとつすると、ベンチにこしかけ、眼下に広がる畑を眺めた。
以前にスキルと剣技のお試しの際に切り開いてしまった、自宅前のサッカーコート4つ分の平地を耕して作った畑である。
畑には見える範囲で、トウモロコシ・レタス・人参・かぼちゃ・ジャガイモ畑が広がっており、地中にあるものをのぞいて収穫まじかの様子を呈していた。
それよりはるかのところでは、木々が横一線に並び、さらにその先の平地は金色の畑が見て取れた。
木々は、柿とイチジク、あけびに似た果物類が生える種類の木々で構成され、その林の先は一面麦畑だ。
果物の木々はまだ実をつけていない。
手前の畑では、農夫姿の若い女性が二人と、その指示を受けて動くほっそりとした人型のウッドゴーレムが十数体、農作物の収穫にあたっている。
収穫物を置くために広げたシートの様子をみると、豊作なのは間違いなかった。
あとで刈り取ったものを配分して、畑で働く女性二人とホクト・ミヤビのユニット・ストレージ(松)に、格納する予定だ。
量は多くても種類が少ないので、それぞれ5個もユニット・ストレージを使えば、永久保存として新鮮なまま格納可能だ。
「平和だね~」
ホクトは、その風景をみてぼんやりつぶやいた。
ホクトたちはダンジョン攻略後、ダンジョン・マスター登録することなく、地上へと帰還した。
やはり、ダンジョンに一生とらわれてしまうという条件は、どう考慮しても飲めるものではなかった。
生還すると、最初のダンジョン攻略者としてファーラーン村を拠点とする冒険者たちからの称賛の嵐が続いた。
ダンジョンを見つけただけでなく攻略したとして、ギルドより攻略報酬をもらっただけでなく、この村のギルドで可能な限りの素材購入、皮や肉などが中心であった、がなされた。
ギルドマスター・ケビンからのダンジョン調書を受けるだけでなく、この世界では珍しい字の読み書きができるホクトは、より詳細を書類にまとめて報告した。
出来上がった報告書はギルド職員から大絶賛を受けたが、仕事でワープロと手段はことなるが企画書を書きまくっているホクトにしてみたら、想像力を使わず事実だけを淡々と連ねる報告書など、児戯にも等しい作業であった。
報告書にはダンジョン・コアルームへの移動方法や、ダンジョンコンソールについては、一言も触れなかった。
自身ではまだできないが、誰かに先にダンジョン・マスターになられるのも業腹である。
あのジャイアント・ファイアー・タートルを攻略できる冒険者は、当面はあらわれそうになかったので、いらぬ心配かもしれないが、念には念を、とホクトは判断した。
とはいえ、ダンジョン・マスターになってダンジョンをいろいろ改造したいのはやまやまであった。
だがダンジョンにとらわれずに、ダンジョン・マスターになる方法は、今のところ思いついていない。
たとえばミヤビのようなサブキャラが割り当ててダンジョン・マスターにし、自分がいろいろ指示することを最初に考えた。
まだUR確定・SSR確定を含むひいていないガチャ券はたくさんある。
そのなかで、サブキャラが出てきたらダンジョンマスターにあててもよいとも考えたが、その考えはすぐ捨てた。
雅が入る前のミヤビは、言われたことしかできないNPCであり、想像力というものは欠如していたとホクトは思う。
つまり、そのようなキャラをダンジョン・マスターに配置しても、ホクトのやりたいことがほとんどできないと想像されるからだ。
いわくダンジョン・マスターが触れたことのある物、詳細に想像できるものしか、ダンジョン・コンソールを通して具現化できない。
現実世界でいろいろな知識をもち、人生経験をもち、ゲームなどを通してのファンタジーによく精通している北斗がダンジョン・マスターになるのがもっとも効率的で、理想的なのだ。
ミヤビのように現実世界の者が憑依していたとしても、そこらへんは猫には限界がある、というかできない。
それに見合った人物がこの世界に存在して、ダンジョン・マスターになりホクトの手足となってくれるかというとそれも可能性としては低い。
打開策のないまま森の自宅に帰還したホクトは、藁をもつかむ思いで一度はおもいなおしたガチャの可能性に頼ることにした。
サブキャラだけでなく、なにか有効なアイテム、例えば「ディー・エッグ」のようなこちらの想定していないような物も出てくるかもしれないし、もしくは別の方法でいまのホクトの問題を解決してくれる、固有スキルをもつキャラも出てくるかもしれない。
ホクトは、初回ログインしてから現実時間で3週間、こちらの世界時間で4ヶ月160日が過ぎており、区切り区切りで特典が付くため、通常ガチャチケットで370枚、UR確定チケットで21枚、SSR確定チケットで47枚がステータスメニューに表示されている。
通常ガチャチケットとSSR確定チケットはほどほど使っていたホクトだったが、ここはUR確定を優先して使うことにした。
全部使うのにネオアンバー・ソメイユワールド時間で、1週間ほどかかった。
相変わらず、目新しいアイテムやキャラが出るたびに、HELPを利用して特性を調べたり、そのキャラのスキルチェインを確認していたからだ。
UR確定ガチャとSSR確定ガチャの結論としては、以下になった
[サブキャラ 62人]
SUR 4人
SUR(非ネームド) 2人
UR 6人
UR(非ネームド) 7人
SSR 18人
SSR(非ネームド) 2人
SR(非ネームド) 14人
[アイテム(SSR以上) 82個]
EX 1個
SUR 2個
UR 22個
SSR 57個
通常のガチャチケットでは、さすがにサブキャラは出なかったが、大量に利用するとSSRのアイテムがたまに出現した。
サブキャラ(協力者or従者)は、今回名前付きと名前なしのキャラの2種がでてきた。
どうやら初めから名前のないキャラもあったらしく、ミヤビはネームドだったということだけらしかった。
非ネームドは、ネームドと異なり顕現はせず、そのままステータスメニュー内に保留として残された。
顕現させるには名前が必要らしい。
一方顕現したネームドさんたちの中で、SUR設定のものたちは、ミヤビをはるかに超えるLv.10000~12000のキャラ達だった。
それぞれがすざまじい存在感で、いまのレベルでさえこの世界では無敵に近いホクトでさえ、まったく足元にも及ばない。
とはいえ、そんなネームドさんたちは、指示しなければただ突っ立っているだけで邪魔なので、申し訳ないがすべてストレージにホクトは格納させてもらった。
ちなみに気が付いたのだが、サブキャラクターたちは、ストレージとはいってもスキルであとから増やしたものでなく、それ専用のストレージがあることが判明した。
ただしこのストレージは、ホクトキャラのみが持っているストレージで、つまりサブキャラクターたちの格納ができるのはホクトだけということになる。
ためしにミヤビにサブキャラクターをストレージに格納してもらおうと試みたが、実現はできなかった。
らさに気になることといえば、SURとURのネームドキャラ、SURはハイ・エルフ(女性)、URはハイ・ヒューマン(女性)二人に、北斗の姉の名前がついていたことだ。
ミヤビの前例があるので、なにかのフラグのような気もしなかったでもないが、下の姉はともかく上の姉がこの世界に壇登する可能性があることに、北斗は身震いさえ感じた。
はっきりいえば、絶対そんな事態になるのはいやだった。
北斗の楽しみの中に、上の姉の入る余地は心理的にはありえない。
物理的には、ありえそうなので、まずは絶対に知られてはいけなかった。
通常ガチャチケット20枚を残して、いろいろ手持ちをふやしたホクトではあったが、それでもダンジョン・マスターに自身がならなくてもすむ方法は、ついに見つからなかった。
それでもあきらめきれないホクトは、サブキャラに自分自身が入れないかを検討した。
作戦としては、
・適当なサブキャラ(SR程度)を見繕って、ミヤビ同様憑依してログインする。
・そのキャラでダンジョン・マスターとして登録する。
・ダンジョンの設定や創造作業の場合は、そのキャラで過ごし、ある程度ダンジョン作業がなくなってきたら、ホクトにログインしてこの世界を楽しむ。
つまりキャラの掛け持ちを行えないかと思ったのだ。
それができれば、ダンジョン・マスターとしても活動できるし、かつこの世界も自由に冒険ができるとホクトは考えた。
この案もしかし失敗する。
ログイン画面で、ミヤビ以外に割り当てのコマンドはでてこず、システム的にホクトが考える方法は無理だったのだ。




