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サイドB-19 野菜と果物とワイバーンと

第11階層の探索は、次の日も続いた。

相変わらず変化のない景色を疾走しつつ、ブラッディホーンブルの群れをかってしらみつぶしに探していると、入口から見て右手方向の内側に入った部分に、地下へ続く階段が見つかった。


階段をおりきったところには扉があり、その内側には階層ボスとして、10階層と同じヒュドラがいた。

10階層と異なり、頭は7つある、ヒュドラの中上位種族であった。


ヒュドラは再生する魔物で、頭7つを同時につぶすか切り離さなくてはならないらしいが、今回はマルティ、カスミ、ミヤビの三人の技が決まって、ほぼ瞬殺に近かった。

ドロップ品は、10階層とほぼ同じであったが、ヒュドラの体内から伝説級の魔剣と魔槍が一本ずつ出てきた。


ちなみにカスミの使う魔法は、今のところ風系の物ばかりで、真空波や雷を利用したものばかりだった。


「今回はなんの情報もなかったですが、二日で済んでよかったですね」


屈託なくいうツバキを、カスミとミヤビがじっと見つめた。


「な、なんですか?」

「いやその」

「純粋だニャーと思って」


「どういうことですか?」

「いや、別の方法をとれば1日でなんとかなったと思うよ、この層は」

「マルティが、二人の経験値という大義名分を上げて、単にブラッディホーンブルの肉が、たくさんほしかっただけにゃ」


11階層は凹凸がない分、次の階層またはダンジョン主の部屋は普通なら見つけにくかったかもしれない。

だがクラウドの能力をフル活用すれば、半日で12階層突破の口は見つけられたというのだ。


たしかに、やたらと魔物の群れに遭遇したし、二日間で500体以上は狩ったと思う。

ふつうの冒険者であれば大偉業なのだが、なぜか個人の趣味に付き合わされている感じがしてきたツバキであった。


★★★


第12階層は、これまでと全く趣の異なる階層であった。

小さな林や丘、湖が点在する適温の気持ちの良いフィールドであるにもかかわらず、魔物がおかしかった。

巨大な野菜や果物に口や目、手足が付いたような化け物ばかりだった。

かぼちゃ、大根、白菜、ジャガイモ、人参、トマト、トウモロコシ、パプリカ、キャベツ、ネギ、キノコ、りんご、イチゴ、桃、梨、栗、あけび、イチジクなどの魔物であった。


姉妹どころかマルティたちもこのような魔物に遭遇するのは、初めてであった。


「この階層は、食料が減ってきた冒険者たちの為にあるような層だね」


マルティはのんきにいっていたが、巨体を生かした押しつぶし攻撃は、なかなかてこずる手法であった。

気が付くと頭上に影があり、パーティを圧死させようと攻撃に入っているのだ。

見た目と違って高速移動できるのも、実力を見誤る要因となっていた。

コミカルで、どうも緊張感が大きさ意外で感じないので、おそらく普通に対峙したら、囲まれて逃げ場がなくなり、圧死の結末を迎えると思われた。


とはいってもこのパーティが危うくなる場面は一つもなく、ドロップ品で大量の野菜や果物、根菜が取れるのをまたマルティが喜んでいる気がした。


(ある意味、この層もマルティさんが好きそうな層なんだ)


ツバキは、この層についても経験稼ぎという名の建前のもと、マルティの採集作業がフルで行われるのかと、ある程度の予想は立てた。


「うーん、あとは小麦とお米の魔物がほしいところだな」


想定通り、マルティは魔物を採取対象としか見ていなかった。


カエデとツバキの姉妹は、まだ数日ではあったが、赤鬼と黒鬼をより乗りこなせるようになっていた。

二体とも走る速さだけでなく、高い樹木を超えれるほどの跳躍力をもっていたため、空中にある果物をすり抜けざまに切り捨てたり、ツバキに関しては覚えたてのホーリーレイを魔物頭上より撃ちぬいたりした。


結局第12層も二日間かけて探索し、計ったように二日目の夕方に階層主部屋が見つかった。

階層主は、藁人形のようなパペットの集団と、色々な野菜が合体した高さ10メートルもある複合魔物であった。

12本あるツタのような手には、大型の剣や斧、杖が握られており、別々に動いて攻撃された。


とくに杖からはこのダンジョンで初めてといってよい魔法攻撃が繰り出された。

アイスランスが雨あられと降り注がれ、防御や回避にも力を割かなくてはならなかった。

とはいえ、マルティ、カスミ、ツバキの遠隔攻撃魔法や魔糸にはかなうべくもなく、いつもより少しながく時間はかかったが、圧倒的な差で勝てた。

藁人形パペットは、すべて姉妹に任され、こちらも無難に倒すことで攻略は完了した。


「やったね、お米だ」


百体程度いた藁人形パペットは、ドロップとしてすべて米俵に変化していた。

喜ぶマルティを、なぜかジト目で見つめる一同であった。


★★★


第13階層は、がらりと様相がかわり、渓谷と合間を流れる大河、その淵に申し訳程度に存在する小さな森の荒野フィールドであった。

存在する魔物もグリーンファングという亜竜と、天空に行きかうワイバーンであった。

どちらもドラゴン種ではないものの、1体でもA級パーティが複数で対応する危険種であった。

それらはある程度の個体数でまとまって動いてるため、危険度はさらに上がっていた。


比べるつもりはないものの、見た目にも危険度においても前の階層とは明らかにランクアップした魔物たちであるとカエデは感じた。

ステータスが大幅にアップした自分たちでも、命のやり取りをしてやっと勝てる程度だと予想した。

ただ、マルティたちにとっては、やはり食材と素材としか見れていないようで、なかでもグリーンファングの牙や骨の加工品は骨董価値が高く、そのグリーンエメラルドに輝く鱗でおおわれた皮膚は、軽量の武具材料として一級品らしい。


「それにワイバーンはともかく、グリーンファングくらいなら君達でもなんとかなると思うよ」


とマルティは、当たり前のように姉妹にいった。

マルティにはめずらしい軽口だと思ったのだが、実際にグリーンファングの集団と対峙した際、その考えは変わった。

妹のツバキが放ったホーリー・レイが、グリーンファングの頭部を一撃で貫き、倒してしまった。


「おねーちゃん、やれたよ」


当の本人も自身の戦果にびっくりしていた。

ツバキのホーリー・レイは、最初に獲得した時よりも少しずつレベルを上げて、いまではLv10になっていた。


増大させた魔力量のおかげで、Lvアップしたにもかかわらず、当初1時間あたり4発までの制限が、いまでは100発までにあがっていた。

無詠唱も獲得しているので、発生時間は魔力を溜める時間だけなのだが、それでもそこまで連続で撃てる速さではなく、そもそも発動対象がそんな短周期でいるわけでもないので、実質ツバキの実力内での無制限使用となっていた。


さらに加えると、ホーリー・レイを含むほとんどの魔法は、発動者が発動Lvを決められ、威力に比例して発動時間も使用魔法量も低くなるため、小物相手なら連続発動の対応も可能となるので、状況判断さえ着実にできるようになれば、ツバキは上位ランクの冒険者に到達しているといっても過言ではなかった。


そんな成果を横目に、カエデにもグリーンファング2体が迫っていた。

カエデが二体に注視して戦闘態勢に入った途端、それらの動きがゆっくりとなる。


素早さのステータスが上がっているので、相手より早く動けるようになることは理解していたが、それに伴って思考も早くなることはマルティにレクチャーされても理解できなかったが、こうして実感することでカエデもやっと理解できた。

この思考高速化は常に起こっていると不便極まりないが、こうして必要な時だけ発現してくれるのはありがたかった。


二体の突進を紙一重でよけつつ、マルティから新たに借りた魔剣を一体の首に真横から振り下ろす。

魔剣の切れ味なのか、ステータスアップによる強さの賜物なのか、堅牢で知られる亜竜の首にほとんど抵抗なく吸い込まれ、地面に到達するほどに振り切れてしまった。

おろした剣をそのまま軌道を変えてふりあげ、取って返したもう一体の首も切り飛ばした。


勝負は一瞬で決して、二体はドロップ品へと変化した。

自分で行ったことはわかっても消化が仕切れないカエデは、しばし剣を振り上げたまま呆然とする。


その後ろで、雄たけびと悲鳴が起こり、すぐにどさりという音とともに静かになる。

ツバキのホーリー・レイが、背後から襲い掛かったグリーンファングを仕留めていた。


「おねいちゃん、大丈夫? どこか怪我した?」


ボーと突っ立ていた姉を気遣うツバキの声で、やっと我に返る。


「あっ、大丈夫。ありがとう」

「いきなり動きが止まるから、びっくりした」


「いや、自分にびっくりしていて、ちょっと混乱していたというか...。私、亜竜を二体も同時に倒したんだね」

「うん、そだよ。きれいに斬ってたよ」


「やっぱりそう...えーと」

と周りを見渡す。

そこにはマルティたちの姿と、地面に転がるドロップ品しかなかった。


「もうおしまいみたい。あとはマルティさんたちが全部片付けてるよ」


たしか30体程度いたと思ったのに、姉妹が4体倒す間に、ミヤビはもう半分程度のドロップ品の回収を終えて、あるき回っているところだった。


「なんというか、私たち、本当に強くなったんだね。まあ武器のおかげも大きいけど。実感がわかない」

ダンジョンに入ったころの二人であれば、4体どころか1体にも瞬殺されていたような相手だと思う。

それが、いまでは逆に短時間で討伐しているのだ。


ミヤビが、自分たちの戦利品、牙、皮、肉類を自分たちで持つかどうか聞いてきた。

ツバキのストレージも増えているのと、今回のは記念すべき初亜竜退治の成果である。

自分たちで持っていくことを選択した。

ストレージに格納する行為自体も、ダンジョンに入ったころの二人には考えられない成果であった。


「おねいちゃんの言う通り、マルティさんたちについてきて正解だね」

ツバキがぽつりと姉にだけ聞こえる声で、つぶやいた。


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