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サイドB-16 マルティたちの目的

ダンジョンコア、それは謎に包まれた物体の名前である。

ダンジョンを形成する物体として、過去から必ず存在するといわれてきているが、それ自体を見たという人間・亜人はいない。

ならばどうして確実に存在するかといわれているのか?

そのような物体が存在しない限り、ダンジョンという不可思議な空間が突如存在して、変化して、成長することに説明が付かないからである。

大昔の魔法学者がダンジョンコア説を語り始めたというが、いまでは一般的な定説であって、誰が言い出しっぺかもわからないくらい過去からの伝承である。

ダンジョンコア自身が精神体で、個々の思考が可能なため、発生させる環境や魔物、設置された罠や宝物がダンジョンごとに特色があるともいわれている。


ダンジョンコアの定説には、ダンジョンマスターという言葉も継がれている。

ダンジョンマスターとは、ダンジョンコアを操り、自身の思い通りに形成させて、ダンジョンを大きくする存在といわれている。

ただそれも言い伝えであり、ダンジョンマスターなる人物がいたという記録もない。


マルティたちは、そのあるかないかもわからないダンジョンコアのもとに行きたいといっている。

姉妹は、つなぐ言葉が見つからなかった。


「何言ってるの? 本気? ダンジョンコアなんてただの伝説でしょ?」

「そうですよ。確実にあるとか、そんなことあるわけないじゃないですか。現にダンジョンコアを見つけたという話は、どこに行っても聞いたこともありません。最下層をクリアされたダンジョンも数が少ないですがありますけど、それでもダンジョンコアの確認はされてないはずです。見つけたなんて事実があれば、もっとだれでも知っている大きな情報になってると思います」


定説ではあるが、確認情報がない以上、限りなくそんなものは存在しないと断言する姉妹であった。


「それにですよ。仮にそのようなものがあったとして、少なくともこのダンジョンの最下層のダンジョンボスを倒さないといけないわけじゃないですか。でもこのダンジョンは未走破ですし、情報だって第14階層までしかありません。最下層まであと何層あるか全くわからないんですよ。そして私たちの約束は第11階層までです。いろいろ守ってもらったり、成長させてもらったりありましたが、あのヒュドラをみてさすがにここが限界と感じました。これ以上は無理です」


ツバキが、これまたド正論でまくし立てた。


「ツバキ、だから相談だ。君たちとの約束は第11階層まで同行してもらうこと。で明日からその第11階層だから契約はここまで。君たちには帰ってもらおうと思う。ダンジョンに入る条件がDランク以上3人とはいってるけど、出るときも3人以上とはいってないので、規約違反じゃないしね」


「私たちだけで帰る? それこそ不可能だわ。あなたたちと一緒だったから突拍子もない速さで10日程度で来れたけど、ふたりだとかかる時間はともかく、あれだけの魔物の群れを突破するなんて不可能よ」


反論するカエデに、マルティはほほ笑んだ。


「それは問題ない。ここから一気に第3階層まで飛べるから。最初にして唯一のこの階層までたどり着いたパーティのこと話したけど、彼らもその移動手段、一方通行の転移ゲートで帰ってるから。気が付いてないかもしれないけど、この階層主の部屋と第3階層への階段の間に、それ用の魔法陣の書かれた部屋があるんだ。ツバキがちょっと魔力を与えるだけで起動するよ。それにね、最初の二人ならともかく、今の二人なら第1~3階層ぐらい、1日で走破できる実力もあるしね」


「あっ、そういうこと」


姉妹二人は納得した。

最初にこのダンジョンに入った時であれば、たしかにそこら辺を走破できる実力は持っていたが、それでも数日はかかったろう。

だけど今の二人の実力であれば、地上に出るだけであれ1日どころか半日でも問題ないとおもう。

マルティが二人のレベルアップやスキル取得に協力してくれたのは、そういう一面があったことに気が付いた。


「もちろんそれだけの目的のために、ふたりの強化に協力したわけじゃないけどね。単純に二人を強くしてあげたかった僕の希望さ。こっちも、その過程で普通の人がレベルアップとかの仕組みをしらないとか知ることができたしね。もちろん今夜も休憩時間を多くとったのは、スキルを取得可能な経験をヒュドラ戦で獲得できたんで、できる限り二人のスキル取得に協力したいと思ったからさ」


あってまだ10日足らずではあるが、マルティの自分たちに対する対応を思い出して、好意による部分が多かったのは感じていた二人だったので、その言葉は素直に信じられた。

ただ、なんとなくではあるが、いきなりの解散宣言が釈然としない。


「でも、じゃあもう一つの約束、獲得した素材を全部私たちにくれるっていうのはどうなるのよ。いっとくけど私たちの貧弱なストレージ数じゃ絶対全部は無理よ。かといってここで別れたとして、あんたたちが生きて帰ってくる保証もないし、最悪持ち逃げだってできるわよね。自分たちだけで行くのは勝手だけど、そこはちゃんと地上に一回もどって渡してくれるのが筋じゃないの?」


マルティたちが持ち逃げをしないことも、たぶんダンジョンを制覇して生きて戻ってくることも、カエデは全く疑ってなかった。

ただ釈然としない気持ちが、どうしてもそのような意地悪な言葉になって出てしまっていた。


「うんわかってる。それも相談事だ。ここで別れたらそれを反故してしまうことになるし、かといって現物が持ちきれないのも理解しているから提案。君たちの素材を、金貨2100枚、210,000,000Melで買い取らせてもらいたい。金貨ならストレージに入るだろう」


その金額は、住む場所にもよるが、二人が少し贅沢に暮らして50年~60年はもつ金額だった。

最初に金貨100枚もらっているので、それを考えても1回の冒険で得られる金額をはるかに超えていた。


「どうだろう、買い取らせてくれないかな?」


至極まっとうで最大によい提案だった。

きっとマルティは、この展開をすべて最初から思案していたにちがいない。

言葉に迷いが全くなかった。

ミヤビについては相変わらずの態度でマルティの話に違和感を感じていないようなので、あらかじめ知っていたと思える。


ツバキは少し悲しそうな顔をしながら、黙ってしまった。

カエデは、理路整然と突っ込みどころのない提案と理解しながらも、なぜか胸のむかむかとまらなくなってきてしまっていた。


「あんたさ、本当にこのダンジョン制覇できると思ってるの?ここらか何階層あるかわかんないんだよ。未知のより強力な魔物も出てくるだろうし、あんたの潤沢なストレージの食料もなくなるくらい遠くかもしれない。それでも本気でかえって来れるとでもいうわけ!?」


なかば怒鳴り声に近いカエデであった。

カエデのムカムカの原因は、ここでサヨナラすることへのショックだけではなかった。

マルティたちを本気で心配していたのだ。


「うん、問題ないと思うよ」


カエデの思いを知ってなお、マルティは満面の笑顔でしゃあしゃあと答えた。


一瞬ひるみかけたカエデじてはあったが、カエデも幕し返した。

あとで思うと、なんであんなに強情はったのか、自分でも不思議なほどのまくし立てと思い付きの行動であった。


「だ、だったら私たちを今まで通り連れていくことも可能よね。あんたたちのことだもん、この先も魔物相手に無双して、ガンガン素材と経験を手に入れていくんでしょ。そ、そこに私たちもいればついてくだけでレベルバク上がりじゃない。もちろん約束なんで素材はこれ以上はいらないけど、それだけでも十分メリットはあるわ。スキルだってあんたがいなけれりゃあげることできないし、だいいちいきなりお別れで、じゃあ私たちはオムライスもホワイトシチューもタン塩も食べ納めもできずに、この先あの味を求めて世界をさ迷えっていうの?冗談じゃないわよ。舌が肥えたのはあんたのせいよ、責任取る必要は十分あるわよ。最下層までついていくわよ、絶対、いいわねツバキ」


いうだけ言うと、マルティに反論をいわせる隙も与えず、妹を引きずって自室にこもったカエデだった。

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