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サイドA-21 ジャイアントファイヤータートル

それは80層の階層ボスの部屋に現れた。

現実世界でいえば、大型ダンプトラック大の亀だ。


ホクトの鑑定で「ジャイアントファイヤータートル」とでた。

対物理耐性(DEF)が極端に高く、ある程度の剣でも傷一つつけられるのか?という硬質さが感じられた。


スイカ大の火球を発しての攻撃を主体とし、動作は比較的のろいが数トンはある硬く太い足に踏まれれば、ホクトたちであれば圧死しないまでも相当なダメージを負いそうだった。


カメといえば飛び出している頭や足がダメージポイントと想像できるが、実際見ると硬質たっぷりの皮膚と頭に関しては鎧のような構成、ワニ亀をさらに強化したようないで立ちから、ウィークポイントといえるかどうかはなはだ疑問だった。


「うわー、重そうだにゃ」

ミヤビは、ジャイアントファイヤータートルを正面に見据えつつ、のんきにつぶやいた。

それはこちらに大口をあけた。内部から炎の気配がしたかとおもうと、火球が高速で飛んできた。

ホクトとミヤビは、これを左右に分かれて回避する。背面で轟音がひびいた。


「どうやるにゃ?」


「どうしようか」


ホクトは続けて吐き出される火球を避けつつ、考える。

鈍重さや、あの火球の威力ぐらいでは負ける気は全くしなかったが、さりとて持ち手のスキルや武器で、対応できる気もしなかった。


「試しに」と、烈風刃で前足を攻撃してみる。

魔物の右前足表面を薙ぐように風の刃は通り過ぎた。

傷はできたようだが、貫通するまでは行かず、大したダメージではなさそうだった。


繰り返し攻撃すれば、右足ぐらいは切り離せそうだが、討伐までには至らなさそうだ。

手持ちのの剣でも、あれほどの大物相手では甲羅などは切れても表面だけだろうし、手足や首など皮膚の出ている部分については切れるかもしれないが、太すぎて一回というわけにはいかなそうだ。

手持ちのミスリル剣で断ち切ることも可能かもしれなかったが、それを試して唯一の剣を駄目にするリスクを負いたくないホクトであった。


と、ドスンと大きな音に、続けて火球を吐き出そうとしていたジャイアントファイヤータートルの口が押し付けられるように、閉じた。

ドタバタとしだすが、頭を抑えられているので、動くに動けない様子だ。


「とりあえず火球がうっとおしいので、閉じてみたにゃ」


ミヤビが重力技で、押さえつけているらしい。


「どうしたらいいと思う?」

「うちだけで倒していいのかにゃ?」


簡単にいうミヤビに、ちょっと唖然とするも、ああと答えるホクト


「じゃあまずは」

と、魔力の奔流がミヤビの手から発せられ、同時により押さえつけられたジャイアントファイアータートルが、身動きできなくなり、地面にめり込む。

重力技のランクをあげて浴びせた結果である。


「『神眼』で、心臓の位置を見てみるにゃ」


巨体を魔法で押さえつけているミヤビに聞かれた。

重力技で押しつぶすつもりかと思ったホクトは、ちょっと心外ではあったが、言われる通り『神眼』で魔物を鑑定した。


新たに取得したスキル『神眼』は、相手のステータスやスキル、基本の説明のほかに、対象物の全構成を確認できる能力をもっている。

この対象でいえば、皮膚の厚さや強度、重量や甲羅の硬度や特性、弱点や個体としての秀でている点などもわかる。

今回要望された内臓構成もその情報にはいっている。


内臓に焦点をあてて見てみると、こぶし大の魔石を取り囲むように4つの心臓にあたる部位が、山となっているカメの甲羅の中心にみえた。


「甲羅の中心に魔石を囲むように心臓が、4つ固まってある」


それをきいたミヤビは、押さえつけられてちょっとでも動けないジャイアントファイアタートルにとことこと近寄ると、魔力を出し続けている手を甲羅側面に充て、さらに魔力を放った。


瞬間、4つの心臓が粉砕され、魔物のHPはゼロになり討伐完了、ドロップ品が現れた。

ドロップ品は、中身のなくなった大きな甲羅がそのままと、こぶし大のグリーン色の魔石だった。


「『次元刃』で直接心臓を破壊したにゃ」


ホクトが聞く前に、ミヤビが説明した。

なるほど、出現場所を選ばない『次元刃』であれば、内臓も直接狙えるということだ。

風魔法では、どうしても移動空間が必要であるが、それなら体内にも直接攻撃可能というわけだ。

聞いてみれば、何のことはない、ミヤビの持っている普通の技で倒せる相手であった。


「魔力耐性のある魔物で通用するかはわからなゃいが、この魔物は大丈夫だったにゃ」


ホクトはレベルが上がるのを感じた。

ステータスウィンドウをひらくと、一気に30も上がっていた。

スキルポイントも、30000とおいしい対象だった。


「発想の転換だな。そういう攻め方なら、僕にもやりようはあったな」


例えば内臓をねらうという意味で、レーザーのような『水刃』で口から一直線に心臓を貫くなどの戦法である。

無理に硬い甲羅を攻略せず、弱い部分から内部を攻撃する方法もあった。

火球は邪魔だが、速度的にはこちらの方が数十倍速く、口を開けた瞬間に狙えばいいだけだった。


また『神眼』鑑定して分かったのだが、ホクトの持っているミスリル刀であれば、首の根元を切ることは十分に可能であった。


「もう何回か攻略したいな」


倒し方さえわかれば、経験値もドロップアイテムもおいしい対象だった。

リポップがどのくらいの時間かかるか不明だが、何回も攻略すべき対象で、おそらく自分は何回も周回するだろうとホクトは考えた。


「ホクト、こっちに宝箱が現れたぞ」


そこにはミヤビの宣言通り、大きな宝箱が出現していた。

一応『鑑定』で、罠がないかを確認する。


『ダンジョンボス討伐の宝箱 罠なし』とあった。


「ダンジョンボス! ということはここが最深層か」


ホクトがまわりをきょろきょろと見回すと、閉じたままのボス部屋入り口の扉の横に、魔法陣が出現していた。

あれはおそらく地上への転移用魔法陣だろう。

『鑑定』するとやはり地上への転移魔法陣とあり、ここが最下層であることが確定した。


ともあれ、まずは宝箱を開けてみる。

そこには鈍い銅色の金属インゴットと、大ぶりの両刃剣、バスターソードが一本入っていた。


インゴットのほうは鑑定すると、「アダマンタイトのインゴット」と出て来た。


(これがファンタジー定番のアダマンタイトか。そのうちヒヒロイカネや賢者の石も出てくるのかな)


もう一つのバスターソードは、「魔剣 ギランティア(アダマンタイト製)」とでた。

これが先に手に入っていれば、ボス戦も単騎でこなせたのにな、とホクトは考えた。

どちらもストレージに格納する。


「ダンジョン攻略にゃ。すぐ地上に帰るにゃ」


転移魔法陣へ向かおうとするミヤビを、ホクトは手で制した。


「いや、まだだ。俺たちはここでやることがある。そのために最深層まで来たんだから」


少し残念そうな表情を浮かべるミヤビをよそに、ホクトは壁一面を細かく「神眼」で観察し始める。

ホクトにとってはここからが、本番だった。


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