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サイドA-18 ファーラーン・ダンジョン

ダンジョン、それは迷宮を表す冒険者のフロンティア。

北斗が現実世界で読み漁っているファンタジー小説では、魔法と剣とあわせてかならずセットで出てくるファクターであった。


ファンタジーで重要な要素である理由は、冒険の攻略場所として、お宝の回収場所として、経験値を稼ぐことのステージとして、過去の亡霊と呼ばれる賢者や僧侶の変異したリッチーの生息場所として、古のドラゴンの眠る場所としてと、使い道が半端ではない。


冒険譚としてのドラマが語れやすい場所というだけではなく、物理法則や魔法法則の設定もバリエーションが無限、というかあとづけ設定可能であるため、ダンジョンを題材にした作品が、ファンタジーやゲーム舞台として数多く排出されているのも、そういった理由からだとホクトは思っていた。


ホクトとしてはゲーム感覚の世界だとしても、この世界にそれが現実として暮らしている人々にとっては、ダンジョンが近くに存在することはその地域に暮らす人々にとって福音以外の何者でもないとおもっている。


今後ダンジョンで得られるの富と名声をもとめて、たくさんの冒険者がファーラーンに訪れるだろう。

ダンジョンで得られたお宝の買い付けや、各地から集まってくる冒険者に対する商売をもくろんで、たくさんの商家も村に拠点を作っていくだろう。

またそれによって、今以上の金銭流通や物流がおこり、それを享受できるこのファーラーン村は大きく豊かになっていくだろう。

ダンジョンが近くにあるというだけで、ファーラーンは確実に大きな発展をたどることはホクトにも容易に想像できた。


もちろんダンジョンがもたらすのはいいことばかりではない。

ダンジョンからまれに発生するスタンピード、魔物の大量発生による暴走発生の可能性も高く、村にとっては看過できない災害である。

ただそのリスクを受け入れても有り余る恩恵がダンジョンにはあるということだ。


魔法が存在して、魔術体系を研究している魔導士や魔法学者が実在するこの世界においても、まだダンジョンの発生理由は明確にはなっていない。

が、通説というか最も可能性が高いとされているのが、魔力が蓄積されやすいところを拠点として生まれるのではないかということであった。

魔力が溜まりやすいところとはどういった場所かというところまでは、魔法学としてもまだ明確な回答を得られていないが、まあ普通に考えてもファーラーン村をとりまくファランドール大樹海やベルゼ大樹海は、その条件を十二分に満足しているとおもわれ、現に住人は日々魔物との生存競争、生活圏の取り合いを行っている。


つまりファーラーン村の人間にとっては、ダンジョンの危険性という敷居は通常ベースのことであり、いまさら確認する必要もなかった。


ホクトにしても、今回のダンジョン発見は非常に心躍る出来事であった。

長年夢見てきたダンジョン生成と生産職の融合が可能である可能性が出てきたからだ。


現実世界の北斗は常々ダンジョン系と生産系のゲームに不満があった。

それぞれがそのゲームの特性に特化しているのはしょうがないのだが、これら二つをうまく融合させたゲームで、北斗の求めるものにどんぴしゃりとあてはまるものが、すくなくともいままでは無かったか見つけ切れていないからだ。


生産系はサバイバルから単純にクラフトを楽しむもの、ストーリーが存在して最終的にクラフトのみに移行するものなのだが、それとダンジョンを絡めたものは存在しない。

だれでも思いつきそうなものなのに、設定の敷居が高いのか、ゲームバランスや目的の決め方が難しいのか、とにかく存在しない。


ダンジョン物で、ダンジョン自体を成長させるものはあるが、それは鉱物を搾取して材料を得たり、それによってダンジョンを広げたり、モンスターを配置したりといったものがほとんどだが、そこに「農耕」という要素は存在しない。


なんとかこれらを組み合わさったものがないかと、いろいろなゲームプラットフォームを日々ザッピングしてはいるものの、いまだこれといったものに出会えていない。


かといって、制御系とバックエンド系プログラマーの北斗に、そこまでの膨大な作業量の発生するゲームを自ら作る伝手も気力もない。

なので紋々とはしていたのだが、誰かそういうゲームを作ってくれることばかりを祈っていた北斗であった。


ところがだ、ダンジョン発見という事件が、ホクトの長年の要望を実現化する可能性に一気に現実味を帯びさせた。

この「ネオ・アンバーソメイユワールド」で過ごすうちに、北斗はいままでのゲームシステムに対するフラストレーションを一気に解決する可能性があることは、うすうす感じていた。

というのも、まだ獲得はしていないがスキルの中に生産系のものが存在すること、ホクト自身もある程度レベルを上げて魔物の心配がなくなったら、畑づくりを始めようと思っていたことに加え、この世界はそもそもゲームシステムなるものがスキルと経験値以外は現実であるため、ホクト自身でそこは実践して構築ができるということだった。


簡単に言えば、最低限のルールと人が生きていくためのルールは存在するが、それ以外はこの世界をゲームにたとえたときに、ルール設定者はホクト自身であるということだ。

この世界を想像して、ホクトに与えた神なのか何なのかはいることは間違いないとは思うのだが、ホクトがログインしていないこの世界の時間は進んでいないこと、ホクトだけにゲームのようなガチャシステムが存在することが、この世界自体がホクトの為に用意されたMMOではないオフラインゲームといえるのだった。

しかもストーリーもイベントも決まっていない、もしくは設定されていても出くわしてないだけかもしれないのだか、ホクトの自由意思でこなしていける、オープンワールドゲームときている。

もう自由にやってください、といわんばかりの場面設定だった。


★★★


それからが、怒涛のような日々をファーラーン村をあげて過ごすようになった。

ギルマスのケビンは、まずダンジョン発見の報告を、魔道通話システムを利用して、イオシスにある本部に行った。

イオシスの本部もそれにこたえて、ダンジョン管理用の職員をファーラーン支部になるべく急いで送ることを約束した。


また、ファーラーンに滞在する冒険者たちにダンジョン発見を通達、最初の依頼であるダンジョンマップ製作クエストもあわせて行った。

害獣駆除ばかりを行っていた冒険者たちは、一気に色めき立った。


未踏破というだけでなく、最初にダンジョンに潜るには、相当のリスクが存在する。

マップ情報がゼロであるだけでなく、内在する魔物の種類や危険度が未知、罠の有無や発動の仕組みも不明、フロアボスの存在も不明、そもそも何層存在するかも不明なのだ。

最初の層だからといって、ダンジョンテンプレの弱い魔物とか、罠も少ないなどの保証もなく、不用意に突っ込もうなら、容易に命を落とす可能性だって高い。


それでも、マップ製作の報酬は非常に高額で、お宝だって早い者勝ちである。

一攫千金をねらう冒険者たちにとっては、めったにないチャンスとばかり、こぞってダンジョンに挑んだのだった。


ホクトの最初の役割は、土魔法による頑丈な橋作りであった。

ダンジョンを外界から遮断する為に穿った外堀は幅10メートル、深さ30メートルもあるため、飛び越えそこなうと死の危険があった。

そこでケビンはホクトに相談し、人間が無事に渡れるが、魔物が集団でわたりにくいような、頑丈でかつ人間二人が並べる程度の土の橋設置を依頼した。


橋ができると、我先に冒険者たちがダンジョンに潜り始め、マップ製作とお宝探しを競うように開始した。。

ホクトととミヤビも同じようにダンジョンに潜ったが、目的は別で、最初からダンジョン踏破をもくろんでいた。


まわりには申し訳ないが、ふたりはまわりの冒険者と比べてはるかに実力が高いことに加え、ストレージの恩恵で何日潜っても食料等がつきない量を持ち歩いている。

なによりホクトの目的であるゲームシステムの構築には、ダンジョンを踏破することでしかその可能性ありなしの判定ができなかったからだ。


もうひとつ、厄介なことを避けるためにも先行して進む必要があった。


ここ数日しかないが、ふたりが冒険者登録後にいきなりDランクに上がったこと、魔の森を信じられない速度で伐採してダンジョンまで発見してしまったことが、冒険者ギルド職員が率先してまいたわけでもないのに、うわさとして冒険者の間で広まってしまった。


ミヤビがここら辺では珍しい猫人族ということも悪目立ちして、噂に拍車をかけた。


「ホクトよ、わがCランクパーティ『雷の鎧』の末席メンバーに加えてやるぞ」


「ミヤビちゃん、ホクトみたいな小僧はやめて、このBランク冒険者『銀色騎士』ことゲル・ゲランとパーティ組もうよ」


「ホクトさん、お願いします! この私をパーティに加えてください。ランクはEですが攻撃系風魔法が得意です。荷物持ちも自分の体重まではできますし、料理も得意です」


と、上から下からとスカウト合戦が始まってしまった。

最初は、冒険者度同士でけん制しあっていたのだが、空気を読まない上位ランクパーティのリーダーが、当然とばかりに声を二人にかけたとたん、我も我もと続けざまにアピールやら押し付けが爆増した。


(冗談じゃない。まだまだ確認や試さなければいけないことがあるのに、他のメンバーの目を盗んでなんて芸当できるわけない)


もとより特殊なパーティである二人は、離れることも誰かを加えることも想定しておらず、お仕着せがましくしつこい勧誘を、連日ダンジョンに潜航するまで振り切らなくてはならなかった。


ダンジョンに入ってしまえば、厄介な連中を振り切るのは造作もなかった。

レベルだけでなく、スキルの所有数やスキルレベルにしても、ふたりのそれは他の冒険者と隔絶していたのだ。

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