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サイドB-10 レベルアップで全快

ダンジョンに入って3日目、マルティたちはひたすら魔物討伐しつつ、次の層にむけて突き進んでいた。

さすがに第5層は広く、その日だけでは走覇することはかなわなかった。


距離もそうだが背の低い木の率が多く、下映えの植物も多かったことから、草原を突っ切るのと同等のスピードは出せなかった。

加えて、索敵が広範囲に及んでいるので回避できそうなものだが、なぜか昨日以上に魔物との遭遇も多かった。

マルティたちがあえて魔物にぶつかっていくような感じを、姉妹は感じずにはいられなかった。


魔物も、より強力な個体と遭遇し始めた。

レッドタイガーやエビルエイプ、マーダーベアにアークサーペントなどにも出くわしていった。

大物に関しては、姉妹も連携に加わることが多くなってきた。


前衛のカエデは、全くの無傷で済まないことも多くなって、そのたびに妹の回復魔法やマルティたちのポーションで回復していた。

せっかく取得したストレージを使いなれるようにと、マルティより姉妹それぞれにポーション10本と軽食と水筒数本が渡された。

軽食はカエデのストレージでも劣化しにくい、「せんべい」なるコメをつぶして焼いたものを100枚ずつ手渡された。

ストレージにいれておけば、カエデのストレージ属性でも10日程度は持つらしい。


暗くなるってくると、ミヤビが再度ログハウスを設置した。

この階層ほど奥深くになってくると、ほかの冒険者パーティはいないことはないか、数はめっきり減っており、かつ広いフィールドなので、前日ほど他の冒険者から離れるなどの場所選びに時間はかからなかった。


シャワーと浄化装置で衣類の洗浄、暖かい夕食と3日目にもかかわらずルーティン化してしまった手順を踏んで、早めの終身をした。

ちなみに今夜の夕食は、前日にドロップしたレッドボアの香草風焼きとつけ添いのキノコのボイル、ごはんに野菜スープであった。

カエデはまた全品お替りした。


「ねえツバキ、今日ちょっと変な体験したんだけど」


カエデは本日の戦闘で、不思議な体験をし、ひとり抱え込んで悩んでいた。

姉妹にあてがわれた寝室に入るなり、妹に打ち明けだした。


「どしたのおねいちゃん」

「あの午後一番に遭遇したレッドアークサーペントの戦いのときなんだけど」

「ああ、あのチョーでっかい蛇ね。一口で人間5~6人は呑み込めそうだったね。それがどうかした」

「私、回避に失敗して、あれの尻尾の一撃で思いっきり飛ばされたじゃない。あの時実は木に打ち付けられて、腕とたぶん胸の骨が折れたと思うんだ」


ツバキは、えっと驚いた顔をした。


「えっ、そうだったの。あれ、でもあの後普通にしてたけど。もらったポーションで直したの」

「そう、さすがにやっちゃったなと思ったんで、ポーション飲まなきゃとおもってストレージから出そうとしたんだけど、慣れてないせいか戦闘中であせってて、うまく取り出せないでいたの。でね、やっとこさ取り出して飲もうと思ったら、どこもいたくないし、損傷もなかったの」

「どういうこと? そんなことある?」

「あったのよ。自分でも不思議におもって再確認してみたけど、やっぱりどこもいたくないし、傷もみつからない。むしろ戦う前よりも体の調子がよくなってて、なんだがスピードも力もあがっているような気さえしたのよ。どう思う?」

「うーん、そうか、気のせいじゃなかったのか....」


ツバキは答えず、考え込んでしまっていた。


「ツバキ?」

「おねいちゃんほど顕著ではないんだけど、少しおかしいなと思ってたことは、私もある。このダンジョンに入って、数回なんだけど、戦闘が終わったと思ったタイミングで、なんか自分の魔力量が上がったような気がしていたことがあった。私はほとんど戦いに参加していないし、補助魔法だっておねいちゃんにしかかけていなかったから、それほど魔力がへったとは感じられてなかったんだけど、たしかに今日のあの大きな蛇との戦いの後に、いきなり魔力が復帰したような感じがした。あとね、お姉ちゃんを見てても、ちょっと違和感はあったんだ。おねいちゃん、魔物を倒すのが早くなっているのに、気が付いてる?」

「早くなってた?まあ、ダンジョンの魔物たちに、慣れてきたような気はしているよ。いざとなればマルティたちが助けてくれると思っているから、おもいっきりできているだけだと思うんだけど」

「でも魔物のレベルも上がってるんだよ。ふつうなら、慣れたとしても段々倒せなくならない?」

「そうも言えるかも、だとしたら私の技術が向上してるってことで、喜ばしいね」

「いや、そういう話じゃなくて、なんというか基本的な力量がアップしているように思えない?」

「...思えなくもない」


★★★


翌朝、朝食の場で姉妹はマルティに自分たちの疑問を確認した。


「レベルが上がるときに、全回復するのは、普通のことだよ」


マルティは、知らなかったの? と、二人の疑問が疑問でないようにこたえた。


「...ごめん、言っている意味がわからない。レベルがあがる?レベルって何?熟練度のこと?」


マルティは、困ったように説明する。


「ごめん、僕の方が意味がわからない。レベルを知らないの?」

「聞いたことないわ」


お互いに、見つめあい無言になる。


「そうか、そういうことか。だからみんなスキルチェインを活用していないんだ」


マルティが、一人納得するように、つぶやいた。


「なに、どういうこと」

「いや、認識の違いだとわかったから。説明するね。冒険者にかかわらず、すべての人や亜人、魔族や魔物はある程度の経験を積むと、体力・知力・魔力・俊敏性・幸運・防御力・対魔力等の特性、僕はステータスてよんでるんだけどが上がるんだ。その上がるカウントをしているのがレベルとよんでいるものだよ。レベルとステータスは、その人その人で固有の特性があるので、比例はしないけど、それでも経験を積んでレベルがあがれば、それぞれのステータス値の最大値があがっていく。レベルが上がるとき、全ステータスの最大値上昇にともなって、特典として消費するステータスや体の異常が全回復するんだ。だからカエデのけがが全回復したのは、魔物を倒して得た経験が、ある一定値に到達してレベルアップしたからなんだ」


この世界の不文律は、相手のスキルを詮索しないということ。

マルティもそのことを熟知していたため、あえてスキルについて話すことはなかったが、人々がレベルについても何も話題にしないので、それも不文律の範囲なのだと勘違いしていた。


しかし、その認識自体が間違っていた。

あえて話さないのではなく、レベルという概念がなかったのだ。


同時にマルティは、二人が混乱しないように、レベルアップ時に獲得するスキルポイントについては話さなかった。

スキルポイントを利用して、新たなスキルを獲得するしくみがあるのだが、レベルも知らないこの世界の住人には、その認識がそもそもないと推察したためだ。

なのでスキルポイントをごちゃまんとため込んでいる、高レベルの冒険者たちがいることを、マルティは常々不思議に思っていたのだが、これで疑問が解消した。


スキルを獲得できる系統は、その人その人で異なるが、誰にでも上位のスキルチェーンを持っているため、適切な解放手段を経ることで、すべての生物に無限の可能性があることを示していた。


でも、とマルティは思う。

スキルチェーンによるスキル獲得は、反面危うい面をもっている。


誰でも獲得可能というのは、善悪関係なく強くなれるということだ。

解放した力をよいほうに使うのならともかく、悪事に利用されたのでは、情報を公開した側としては、けっして寝覚めのよいものではないだろう。


為政者に独占される可能性も高い。

情報をむやみに開放するのは、少し危ない気がした。


レベルの話はともかく、混乱するというだけでなく、流布するには危ない情報だと思い、二人には話さない決心をする。

ただ、別の方法、例えばふたりにしたストレージスキルと同じように、スキルチェーンの解放と認識させないで、それらを解放させる手はあるなと感じた。


マルティは自分が正義の基準とは思っていないが、特別な人間が増えすぎて混乱しないようにする良識ぐらいは持ち合わせていると思っている。

マルティ自身が、スキル解放する人間の精査をすることで、あまりひどいことにはならないだろうと考えた。


「レベルというのは、なんとなく理解したわ。でもいままで結構冒険してきたけど、急に怪我が回復するとか、魔力が回復したとか初めてなの。ツバキの話だと、それがこのダンジョンでは数回感じられたといってるし、なんでこのダンジョンだけで、レベルアップとやらを実感することができたの?」

「それも説明がつくよ。すごくシンプルにね。君たちが僕とパーティーを組んでいるからさ」


マルティは、この話からも、レベルアップの常識がもうひとつ、この世界の人々に知られていないことを確信した。


「パーティ?」

「まさかと思ったけど知らないみたいだからいうね。パーティを組んで魔物討伐すると、レベルアップに必要な経験がパーティ内全員に均等に与えられるんだよ。そして経験は相手の数が多ければ多いほど、相手の討伐レベルが高ければ高い程、たくさんもらえる。昨日のレッドアークサーペント討伐の経験は、君たちのレベルだと、おそらく3~4レベルは一気に上がるくらいのものだったよ。今の時点でも各ステータスが、ダンジョンに入った時より倍にはなっているはずだよ。なんとなく感じてるんじゃないかな?」


カエデ・ツバキ姉妹は、またもや信じられないという表情でだったが、思い当たる節がないわけではないので、黙っている。


「この先もっと高位ランクの魔物もじゃんじゃん出てくるし、僕も行軍スピードが落ちない程度に、高レベルの魔物を討伐するつもりだから、このダンジョンを出るころには二人ともレベル的には10倍程度、ステータスの最大値も5~10倍になっているとおもうよ」


本当のことなのだろうが、にわかには信じられない。

実力が上がるのは、二人にとって、経験を積んでかつ自分たちで努力した結果だと思っていた。


「最初に言ったでしょ、僕たちとパーティを組めば、報酬以上に君たちのためになるって。そういうことなの」


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