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サイドB-9 ストレージスキル獲得

「まずは概要からね」


食後、ストレージスキルの伝授を開始するといわれ、4人はリビングに集まった。


「ストレージスキルは、転移魔法とおなじ空間魔法に属する。転移魔法と異なるのは、一回発生するとずっとその効果が続くんで、魔法なんだけどスキルに分類される。ずっと効果の消えないスキルのことを、パッシブスキルという。パッシブスキルには、有名なので状態異常無効とか毒無効なんてものがある。で、ストレージにもどると、このスキルは1回発生させると、その人が死ぬまで永久に持続されるんだけど、魔法の一種なんで常に魔力が必要になる。消費する魔力量は小さいんだけど、それでも魔力回復量を超えてしまうと、いつかは枯渇してしまうからやみくもにスキルを獲得させてしまうと、魔力枯渇でその人の活動に影響が出てしまう」


魔法を主に使うツバキは、その現象をよく知っている。

自分も魔法を覚えたての頃、何回か経験している。


「それって、気絶してしまうって事ですよね」

「そうだね、経験ある?」

「はい、最悪です。復活したあともしばらく頭痛はするわ、ふらふらするわで、まともに動けません。ですので、戦うときにはマージンを残しつつ魔法を使っています」


過去の苦い経験を思い出したのか、ツバキが自称気味にいった。


「でもさ、妹はもともと魔法が使えるからいいけど、私は魔法は使えないよ。てことは、ストレージスキルは獲得できないってこと?」

「そこは、心配いらない。魔法がつかえようが使えまいが、魔力というのはだれでも持っているものだから。人によってその量に大小はあるけど、全く持っていないということはないんだ」


「でも常に消費して、切れたらまずいんでしょ」

「そう、だからこのスキルを習得する際には、自分の許容できる魔力量を見極めることが、とても重要なんだ」

「そんなのどうやってはかるんだ」

「それは道具がある。ミヤビあれお願い」


ミヤビはストレージから、ひとつの卓上鏡を取り出した。


「なにこれ?」

「これは魔力量をはかる事の出来る鏡だよ。冒険者ギルドにも同じようなものがあるけど、あれは魔法属性を調べるためのもので魔力量まではわからない。けどこの鏡は魔力量の最大値と現在値、時間当たりの回復量がわかる。これをもとにしてストレージスキルの容量をきめる。カエデ、ためしに手をかざしてみて」


カエデは、いわれるがままに、鏡に手をかざした。

しばらくすると、覗き込んでいるカエデの顔意外にかがみに数値が3つ浮かんできた。


「それは当人しか見えないから、よんでみて」

「ああ、えーと54、55、3かな」

「まあ、剣士ならそのくらいか。真ん中の55がきみの最大魔力量で、54が現在の魔力量、最後の3が起きている場合の1時間あたりの魔力回復量だよ。ストレージスキルに利用する魔力量は時間当たりひと枠0.01で、使用の目安として回復量の1/100くらいがいいんで、B子は3枠ぐらいかな」

「枠って何?」

「ストレージスキルの箱の数のこと。ストレージスキルって2種類あって、枠で管理する方法と重さで管理する方法があるんだけど、前者のほうが僕は便利だと思うので、そちらを教えるつもり。枠管理は重さではなく種類で管理する方法。例えばドロップ品で仮にボア肉が100kgあったとする。重さ管理でストレージ容量が100kgの場合、それでもうストレージは目いっぱいになるけど、枠管理の場合は重さでなくて種類で管理するから、1枠ですんでしまう。そしてその後ボア肉をどんなに格納してもひと枠で終わってしまうので管理的にも容量的にも有利なんだ。半面単品でしか存在できないものは、どんなに軽くても1枠使ってしまうので、収容効率はわるくなってしまうけどね」

「で、私は3枠なんだ」


カエデは少し、がっかりした表情をみせた。


「腕力とかと同じで、魔力も使えば使うほど、全体として増えてくるよ。ストレージスキルもパッシブスキルとはいえ魔法の一種だから、持続して利用するだけで増えてくるから、そのときにまた枠を増やせばいいよ」


マルティは、筆と紙をとりだして、文字を書いた。


「カエデ、これよんでみて、意味じゃなくて書いてある通り発音することだけ心がけて」


カエデ・ツバキ両名は、その文字字体は読めたが、書いてある言葉の意味はでたらめで全く分からなかった。


「これがストレージスキル獲得の呪文ですか?」


ツバキが興味津々で、覗き込んでいる。


「そんな感じ、ただカエデ専用に調整した呪文だから、ツバキは間違っても発音しないでね」

「こんなでたらめなので、獲得できるの?」

「そうだよ、さっ、声に出してよんで」

「じゃあ....『ストレージユニット(梅)3追加』」


姉妹二人には、まったく意味が不明だった。

なぜならその言葉はこの世界の言葉ではなく、日本語だった。

カエデは自分の中で、何か異質なものが生まれる感じがした。


「口に出しても心の中で言ってもよいので、ストレージオープンって唱えてみて」


いわれるままに心の中でとなえると、認識として3つの枠がが出現した。


「なんか、でた」

「試しにこれをいれてみよう。空中に出し入れ口があるとでも思っていれると考えて」


手渡された麦茶の入ったゆのみをもち、入れると念じる。

すると一瞬黒い枠が出現し、そこに吸い込まれるように湯呑が消えた。


カエデの認識の中の枠のひとつに、湯呑のデフォルメされた像が書き込まれ、その横に1の文字が書かれていた。

意識を合わせると「麦茶の入ったゆのみ」とわかった。


「今度は、この枠の中の物とかここのひとつとかなんでもいいんで、取り出すと考えて手を差し伸べてみて」


いわれる通りつかみだすしぐさをを行うと、ゆのみがあらわれ、枠は空っぽになった。


「す、すごい。できた出来たよ、ツバキ」


あまりにあっけなくできてしまったので、喜びもひとしおだった。


「慣れてくれば、感覚でアバウトにできるようになる。出し入れに追加の魔力は消費されないんで、慣れるためにジャンジャン出し入れしてみるといいよ。さて次はツバキだね」


ツバキもいわれるままに、魔力測定鏡に手をかざした。


「えっと、400、520、26です」

「うわっ、私の10倍弱もあるじゃん。ということは...いきなり26枠!」


カエデがうらやましげに言う。


「ツバキは魔法職だからね、それくらいはあってもおかしくないよ。でね、ツバキに確認だけど、枠数が多いのと、少し枠数が少なくなっても付属属性が付くのと、どちらがいい?」

「属性?」


そう、とマルティが相槌を打った。


「カエデの獲得したストレージスキルは、実は属性なしのストレージなんだ。ストレージの属性というのは、ずばり経過時間属性。カエデのストレージに格納されたものは、中においてても時間経過だけは外においておくのと同じように進む。これがストレージ属性を付加すると、消費する魔力量は増えていくけど、時間経過を遅くしたり、全く止めたりができるようになるんだ。食料系を格納するにしても当然時間経過がないほうが長持ちさせれる。カリンが出して見せたように、出来立てをそのまま保持することも可能なんだ。属性は3段階あって、時間経過あり、時間経過はあるけど1/100のスピード、そして時間経過全く無しから選択できる。それぞれの継続魔力消費量は0.01 , 0.03,0. 1になるよ。たとえば2つめの1/100の速度を選択すれば、1週間で腐ってしまう食料も700日、2年くらい持たせられることになるよ。どうする?」

「ちょっと。あたしの時には、何にも聞かれてないんだけど」


カエデがブーたれる。


「カエデの魔力回復量じゃ、選択肢がなかったから。変えてもいいけど、これ以上だと枠数は1個になるよ」


どうせ私はそれ以外魔法使わないから、もう少し増やしてもと、ぶつぶつとつぶやいていた。

ツバキはしばし考える。


「枠数だけでなく、属性もあとから変更可能ですか?」

「僕がいれば可能だよ。どうする?」

「ではとりあえず経過時間1/100の属性で。えーと枠数は8でお願いします」


つまり、消費魔力数は0.24となり、回復魔力量の1/100以下になる。

マルティの助言通り、堅実な数値をだした。


「了解」


マルティは再度さらさらと、呪文を紙に書いた。


「では唱えます。『ストレージユニット(竹)8追加』」


時間経過は確認できないが、出し入れ可能なことを確認して、ふたりが狂喜したところでその日はお開きとなった。


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