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サイドB-8 今日も快進撃

ダンジョン二日目にあたる次の日は、早朝から前日以上のハイペースで一行はすすんだ。

全員が家の前にでるとミヤビは馴れた当たり前のことのように婿んでストレージに家を収納して、ホクトともども特別なことなどないようにして、姉妹には違和感しかなかった。

ちなみにダンジョン内では、ダンジョン内のもの以外は吸収されることを知っていた姉妹は、なぜその家が底部だけでも吸収されなかったのかときいたところ、


「あの家置いているように見えるけど、じつはほんのちょっとだけ浮いてるんだ。地面に触れていないからダンジョンに吸収はされない」


だそうだ。


姉妹には朝食時にまた例の水色の液体の入った小瓶を、それぞれにわたされた。

飲むと、二人の全身に強化バフがかかったようになり、自分たちでも驚くほど高速移動が継続できた。

疲れないわけではないが、足が勝手に走っているような不思議な感覚だった。

薬によりバフをかけるとはこういう感覚なのだと、姉妹は初めて理解した。


出現する魔物は昨日とほぼ変わらず、マルティたちは瞬殺を続けていた。

昨日と変わったことといえば、回復魔法の行使がほぼ必要ないと判断したツバキが、その分強化の魔法をつかって、カエデの実力の底上げをするようになったことだった。

マルティの指示ではあるのだが、昨日は1体討伐するのがやっとだったカエデが、気付けば複数体討伐できるようになっていた。

そんなカエデを、マルティは「ほらね、言ったとおりでしょ」と、ニヤニヤしてみていた。


「ストレージスキルは、いつ習得させてくれんのよ」

「それなりの準備が必要で、今してるからもう少しまって」

「もう少して、どのくらい?」

「はやければ今夜にも」


強行軍は問題なくすすみ、夕方には第4階層ボス部屋の扉の前までたどり着いていた。

他の冒険者グループが挑戦していなかったので、カエデの心の準備云々の時間かせぎをマルティに却下されて、すぐさまボス戦に突入した。


階層ボスは、ブラッドラージアリゲータが1匹と、それを取り巻くラージアリゲータの群れ、10匹程度であった。

ラージアリゲータ1匹1匹が、クラウド並みにあるのに、ボスのブラッドラージアリゲータはその大口で荷馬車1台を呑み込めるのでは、というくらい大きかった。


だが、この相手でも、マルティ単騎であっさりと討伐していた。

恐怖などなく、むしろ嬉々として挑んでいるように姉妹には見えた。


第4層ボスのドロップ品は、こぶし大の緑の魔石と大人の足ぐらいある牙が数本、そして、小さいが宝箱も出現しており、中には小さいながらもルビーとサファイアが数粒入った麻袋があった。


一行は、停滞することなく、第5階層にすすんだ。

第5階層も第4階層とおなじ、平原と森のフィールドダンジョンである。

事前の調査により、第4階層よりも数倍広く、魔物も第4層からさらに増えることがわかっている。


「ワニ肉とボア肉は、ドロップでたくさん手に入ってるから、今度はオーク系やブル系、鶏系がほしいな」


マルティはのんきに魔物のリクエストまではじめた。

そのおかげかどうかは、明るいうちに距離を稼ごうとして進んでいると、オークの集落にぶちあたった。

オーク数十匹に、オークメイジ、はてはオークキングまで存在した。


もちろん索敵済で、あえてマルティたちは集落に突入したのだった。

戦闘の準備も、姉妹のこころの準備も万全?であった。

オークキングは、ゴーレムクラウドの超突進により、10メートル以上も吹き飛ばされた上、すかさず跳躍で落下地点までとんだクラウドの体下で圧死した。

やっかいなオークメイジも、マルティが出会いがしら飛ばした魔力釣り糸に輪切りにされて、魔法一つ撃てることなく全滅した。


姉妹も協力して、オーク5体を自力で討伐した。

カエデは全くの無傷ではなかったが、ポーションで復帰できる程度の軽傷で済んだ。

マルティとミヤビについては、通常通りの無傷であった。


一行はドロップアイテムを回収すると、日のあるうちに距離を稼ぐために、先を急いだ。

マルティは、ドロップ品としてオーク肉が大量に獲得できたと、ほくほく顔であった。


あたりが暗くなってきたころ、まわりに冒険者の野営地がないところを選んで、ミヤビが前日同様ログハウスをとりだす。

姉妹はまたシャワーをもらい、大量のあったかい夕食を頂いた。

今夜は、新鮮なサラダに黒糖パン、牛乳と小麦で作ったというホワイトシチューであった。

シチューには、ニンジンや玉ねぎ、ジャガイモのほかにジャイアントモアのもも肉が煮込まれており、ジャイアントモアのそれは驚くほど簡単に口の中でほろほろと砕けたやわらかさに仕上がっていた。


マルティはホワイトシチューを、あの「ごはん」にかけて食べており、おいしそうだったので姉妹も真似してご相伴に預かった。

カエデはまたまたお代わりした。


さらに筋張ってあまりおいしくないと評判のフォレストウルフの肉についても、甘辛く煮た料理が提供された。

フォレストウルフの肉は筋張ってて煮ても焼いても硬く、臭みも独特で安さだけが命の食材なのだが、提供された料理は硬さはあるがかみ切れる程度で、かつ咀嚼するたびに出汁と肉のうまみが口いっぱいに広がって、気が付くとずっと食べ続けている、なんか癖になる料理であった。


マルティ曰く、「フォレストウルフのスジニク煮込みね」とまたまた姉妹が聞いたことのない料理だった。


「ここ、ダンジョン内よね。なのになんだろう、いつもより裕福な生活してる気がする」


カエデがあきらめ気味につぶやいた。


「おねいちゃん、その事実は気がついちゃダメな奴だよ」


ツバキも迎合する。


料理もだけどドロップ品の数だけでも考えると、姉妹としてはとても信じられず夢でも見ているようだった。

その本日の魔物討伐数は、カエデの感覚でざっくりだが


 フォレストウルフ22体

 ラージレッドウルフ1体

 フォレストボア17体

 ブラッドラージアリゲータ1体

 ラージアリゲータ35体

 オーク22体、

 オークメイジ5体、

 オークキング1体、

 コカトリス3体


で、マルティの要望には一つ足りないが、ボア系、オーク系、鳥系の肉のドロップ品が得られた。


フォレストウルフ以外は、食材としても優秀でそこそこ高額で買い取ってもらえる品が多く、ドロップ品なので死体を解体するよりも量も部位も減ってはしまうものの、今日の分のドロップ肉だけでも4人が2カ月かかっても食いきれないほどの量で、それがミヤビのストレージで永久に腐らないそうなのだ。


ドロップ品は、各部位の肉や毛皮や羽、牙や内臓や嘴、そして一番お金になる魔石だ。

本日の獲得した中で最も大きいのが、オークキングとブラッドラージアリゲータの魔石で、こぶしぐらいのサイズの大魔石に分類される。

おそらくこれ1個で金貨10枚にはなる高級品。

魔石は大きくなればなるほど、希少性もあって相乗的に買取価格があがっていく。


ふたりが夢見心地で本日のドロップ品の換算をしているよこで、マルティは、ブル系がいないね~と、余り残念そうではない声でぼやいていた。


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