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サイドA-17 森を取り開いてみる

ホクトは顔なじみと記憶している北門の門番に挨拶して、村の外に出ると森に少し分け入って、メニューのスキルチェイン項目をあけた。


そのなかでまだ全く未取得の土系魔法の中から、以下の魔法を取得した。


『土壁』Lv10

『土穴』Lv10

『流砂』Lv10

『砂化』Lv10

『土硬質化』Lv10


スキルポイントを5000消費した。まだまた潤沢にはあるが。

取得した魔法スキルは、どれも攻撃というよりは拠点設営や罠に活用できそうなスキルであった。


「ちょっと実検したいことがあるんで、周りの警戒お願いね」

「わかったにゃ」


ホクトは一番近い木に手を当てると、それをストレージ『ユニット(梅)』に入れと念じた。

木はストレージに収まる気配はなく、佇んでいた。


「やっぱりこれでは伐採は無理か。ならこれはどうだ」


ホクトは、『土穴』をLv3程度で発動させる。

木の根元を中心に、半径3メートル、深さも3メートル程度の穴がぽっかりあいた。


『土穴』はその言葉の通り、穴を掘る魔法だ。

掘った土は、どういう仕組みかストレージに自動的に入る。


支えを失った木は、その場で穴に落ち込んで傾いた。

ホクトは先ほどと同じように、ストレージにいれる挙動をし、こんどは若干の残しもの、自重で折れた木の根の末端は残ったものの、ストレージユニットに収めることができた。


「よし、いけるな。次はと」


今度は別の木に近づいて、『流砂』をLv3程度で発動した。

術の発動と同時に木がかしいで、沈みだす。

『流砂』も言葉の通り、土を流砂状にする魔法だ。

土が流砂化したせいで、木が立ってられなくなったのだ。

ホクトは傾いて沈みだした木をストレージ・ユニットにいれる想定をし、こちらもうまく収まった。

木の体積が抜けた分、土は一瞬穴が開いたが、それもすぐにならされた。


『流砂』の状態は、およそ5分程度でもとに戻ることをホクトは知っていたので、そのまま放置する。

どちらの方法でも、木を切り倒さずに収納することが確認できたので、ホクトは満足した。


最初は、ホクト自身とミヤビの魔法『列風刃』と『次元刃』で、伐採していくことを考えていたのだが、それだと切株が残ってしまい、切り開いても再利用の際にそれを取り除くのが一苦労なことを経験上知っていたので、別の方法がないかと考えていて、この手法を思いついた。


どちらも大した魔力量を費やさず、簡単に木を取り除けるので良いのだが、『土穴』はそのあとに大穴が残ってしまうデメリットがある。

もちろんストレージに入った土を戻せば良いのだが、それはそれで手間だ。


一方『流砂』は、木の体積分土は減ってしまうが、ほおっておけば元の状態に戻るだけでなく、土自体もを掘り返したのと同じになるので、あとあとの開墾がしやすいと感じたので、森を切り開くのはこちらを使うことに決めた。


「じゃあミヤビ、この方法でどんどん木を回収していくから、出てくる魔物はすべて対応お願いな」

「わかった」


ホクトは、『流砂』とストレージ・ユニット格納を1分に1~2本、1時間で100本ぐらいのペースで森を切り開いていった。

その日は昼からの作業だったため、暗くなるまで4時間程度しかなかったが、それでも400本程度は木を取り込むことができた。

途中、切り開いた森のなかから、ホーンラビットに数体遭遇したものの、つねに討伐が行われている村に近いこともあり、大した大物には出くわさなかった。


ホクトは夢中になっていて、村の門が閉まる時間を越えてしまったが、それ幸いと野営したことにして、ミヤビの『転移』で自宅の小屋に戻った。

次の日も朝から伐採を繰り返して、夕方まで頑張り、門が閉まる少し前にファーラーン村に入って、約束通り雑貨屋を訪れていた。


店主のシェリーは約束通り、前日以上大量の自家製ひねりパンと野菜や果物、肉をあげたお礼のオーク肉の干し肉を大きな麻袋で3袋ほどくれた。

ホクトは、パンと野菜と果物の代金として金貨1枚と、また追加でフォレストボア1頭分、精肉部位の1500キロを渡した。


「村の外がすごいことになってるって、村中うわさになってるよ。ふたりで木の伐採してるんだって?」


「依頼でね。明日までにできるところまでやるつもり」


村の外の景色が、みるみる変わってるのだから、隠しようもないのだが、そこまで関心を集められているとは思っていなかった。

ギルドと約束の30本はとうに集め終わっているのだが、凝り性ゲーマーのホクトとしては、期日まできっちり開墾を続けて、報告するつもりだ。

そして体利用に集めた木材も、解体スキルで製材して買い取ってもらう予定だ。


★★★


「何だこりゃー」


冒険者ギルドマスターのケビンは、目の前に広がる平地をみてさけんだ。

村のわずか先で始まっていた森の端が、いまははるかかなたまで、後退していた。


面積にして、村全体が10は軽く入りそうな平地である。


「3日では、これが限界です。満足いただけたでしょうか?」


ギルマス・ケビンは、ゆっくりとホクトたちを振り返った。


「満足だあ? 3日ではこれが限界だあ? 想定外なんだよここまでとは。魔の森だぞ。すんごく硬い木なんだぞ。伐採しただけでなく切株さえ残ってねえ。いったいどうやったら、こんなことができるんだ」


ホクトは、切り倒したのではなく『流砂』魔法を使って、ストレージに格納したことを説明した。


「木の種類も5~6種類ありましたが、ストレージは同じ種類のものは同じユニットに無限に納められるので、6個のユニットが埋まるだけで助かりました」


「で、何本刈り取ったんだ?」


「全種類あわせて。3千本弱です。あとついでだったんですが、伐採過程で遭遇したゴブリンやフォレストウルフ、フォレストボアも全部討伐いたしました。ゴブリンについては、30体程度の集落も2つありましたので、集落も含めてつぶしておきました」


まったくと、悪態しか口にできないギルマスに対して、達観か割きりか不明だが受付嬢のハンナがギルマスをまあまあとなだめている。

事務処理一般のサブギルドマスターともいえるトーマスは、目の前の驚嘆的出来事よりも、伐採3千本と聞いて買取の合計について財政的な苦悩に、内心ざわざわしている。


「きょうわざわざ時間をとってもらったのは、じつは見てほしい物があるからなんです。ちょっと遠いですけどだいぶ重要な案件と思うので、見てください」


何を見せたいのだと問うギルマスに笑って答えるだけで、ホクトは広げた平地の左方向に沿ってすすんだ。

平地の端に近づくと、端に沿って壁のようなものが見えてきた。

遠目にも、5~6メートルくらいの高さがあるのがわかる。

その壁は、広げられた平地の端にずっと続いていた。


「壁があるようだが、まさかあれもお前の仕業か?」


ホクトは先頭を歩きながら、振り向いてうなずいた。

「広げたはよいですけど、この森の侵食速度は並外れています。たった3日間でしたが最初に広げた土地のあたりが3日目には小枝が芽吹いていました。この森でもっとも本数の多いカブラの木ですが、根がつながっているんです。おそらくは種ではなく根を伸ばして繁殖するタイプかと。なので土魔法で壁を作って、硬質化させておきました。合わせてカブラの進行を遅らせるために、ここからは見えませんが壁の外に5メートル程度の穴をほって、こちらも硬質化させておきました」


「広げた平地の周り全部か?」


ギルマス・ケビンの問いにまたもうなずくホクトであった。


「ギルマス、これはもう伐採などではすみません。明らかに村の拡張ですよ」

「だいいちそれだけの壁や穴を掘るなんて、普通の魔法使いでは魔力が持たないわ。ホクト君、これもミヤビさんがしたの?」


興味深そうに、ハンナが問いただした。


「いやハンナ。これは僕の魔法だよ。確かに広いけど、土魔法の穴掘りと壁つくりはそれほど魔力を必要としないので、魔力が枯渇することは無かったかな。土の硬質化のほうは、人が穴に落ちても、のぼれる細工を所々にするのが少々手こずったけど」


ホクトは数十メートル間隔で、穴の内側側面に森の方にだけ登れるよう、人間の足の幅での階段をつくっておいた。


「もはやお二人は、ランクS級のの魔力量では....」


トーマスがぽつりとつぶやいた。

残り二人もそれに反論する根拠を持たず、黙っていた。


「で見せたいものってのは、あの壁と堀か?」


ケビンが気を取り直して、聞いた。


「いえ、見せたいものはもう少し先にあります」


ホクトの感覚では、もう少しだったのだが、一行はたっぷり30分は速足で歩かされた。

広げた土地の最遠端、左方向の壁に沿っていったその先に、ひときわ高い土壁の棟のようなものが見えてきた。


「見せたいものはあれです」

「なんだ、村を拡張した時の為の高見櫓でも作ったのか?」


それは的を外れていた。

その棟は南側と北側にのびる街道の位置とは大きく外れていた。


「いえ、違います。あれは櫓ではありません。あれは防壁です。ほかに作った壁よりも3倍以上厚くしています。囲まれて見えませんが、さらに内側には円形に、30メートルの深さの外堀を作っています」

「なんでまたそんなに、厳重に」

「中心に、入り口があります。ダンジョンです」


ホクトが気負いもなく、爆弾を投下した。


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