サイドB-7 もらえるドロップ品が多すぎます
姉妹はシャワー室と、衣類浄化BOX、浄化魔法が付与された箱の使い方をおそわり、心身ともにさっぱりした後、4人で食堂にて食事をとった。
服装もマルティの用意した「スウェット」なる、寝やすい服装になっていた。
(これも知らない素材。でも肌触りはとってもよくて、動きすく軽い。鎧を着たままじゃないのはありがたいかも)
ダンジョンで鎧を脱ぐのは、なんだがぞわぞわしないでもなかったカエデ達だが、もう非常識を地で行くマルティたちに合わせても問題ないと、常識を唱えるのはあきらめた。
晩の献立は、ミンチ状にしたレッドブルを野菜とパン粉でこねて焼いた「ハンバーグ」なる食べ物と、パン代わりに東邦の主食であるという「ごはん」という植物の種を炊いたものとコーンスープであった。
スープ以外は初めての料理であった。
料理は、当然のようにすべて出来立てであった。
見た目もにおいも、食欲をそそるものであった。
「おねいちゃん、これおいしい!」
食べ物には、よほどのことがない限り積極的なツバキが、マルティたちにしたがって姉より先に口を付けた。
姉の見る限り満面の笑みを浮かべて、ほいほいと口に運び出している。
カエデもあきらめて、口に運んだがすぐに表情がかわった。
「おいしい、というかこんなおいしいもの食べたことない。シチューに似てるけど肉の塊というか、なんで肉なのにほろほろ崩れるの?」
咀嚼をわすれて、唖然とする。
「おねいちゃん、このごはんだっけ、それ自体もおいしいけど、マルティさんたちみたいにハンバーグと交互に食べると、おいしよ」
ツバキの言葉にカエデも従い、妹の言葉に嘘がなかったと知る。
二つの食材が、あわせることによってコクのあるものとすっきりしたもののハーモニーを奏でで、相乗的においしくなっている。
結果二人の食欲は万然に満足させられただけでなく、、姉妹はハンバーグとご飯を遠慮せずお代わりした。
「ねえ、ミヤビのストレージ、ちょっと大きめじゃないわよね」
食後の「麦茶」なるあったかいお茶をのみつつ、カエデがマルティに、声に剣をふくませていった。
「そうかな、僕の感覚では、ちょっと大きめなんだけど」
嘘はいっていないの主張であった。
もっとも本当のことも、いっていなかも知れないが。
「ちょっと大きめ」という定量的でないその言い方では、個人の勝手な思い込みになる。
姉妹は、ルビーレッサードラゴンを、花梨のストレージに入れて持ってきたと聞いたため、それが数体入る程度の大きさと、かってに解釈した。
それでも十分大きいのだが、まさか家一軒はいる大きさとは、おもいもよらなかった。
「どうもおかしいと思ったのよ、今日だってどんだけドロップ品を入れたと思ってるの。少なく見積もっても荷馬車の3~4台分は回収したわよ」
マルティの予告通り、この第4層の1/3は進んだらしい。
昼に告げられた通り、若干ペースを上げたので早くはなったのだが、それ以上に魔物との遭遇時間が、極端に少なかったからだ。
といっても魔物と出会わなかったのではない。
ダンジョンも第4層となると、その出現率は格段に上がっていた。
現に第4層に突入して、半日で少なくとも20回は魔物と遭遇した。
そのなかにはマルティが一人で片づけてしまった、ラージアリゲータの群れのように、10頭以上の集団も複数いた。
だが、クラウドの索敵能力と、マルティ・ミヤビ・クラウドの戦闘能力の高さ故、出会っても数分で片がついてしまうのだ。
そしてミヤビのドロップ品の収集速度も、ただ付近を歩くだけという通常では考えられない手法によって、こちらも数分で終わってしまう。
1~3層の件もあわせると、今日だけで大小あわせて100体以上の魔物を討伐し、ドロップアイテムを回収したことになる。
これが普通の冒険者であれば、だいたい日に2~3回程度の戦闘しかできず、かつマルティが単独で相手をしてしまったような魔物の集団は、避けて通るのが定石なので、迂回時間もかかるのだ。
カエデ・ツバキ姉妹は、今回のパーティ参加を決めたのは、ルビーレッサードラゴン討伐の件から、おそらくマルティたちがランク以上の実力者であろうと予想を立てての参加であった。
なのである程度はこの状況を予測していたものの、予想をはるかに超える戦闘力と、想定外のスキルを垣間見て、訳が分からなくなってきていた。
同時に自分たちが、本当に数合わせであることも感じており、約束されたドロップ品を本当に自分たちですべて受け取ってもよいのかとさえ思い出していた。
自分たちではとうていそこまでドロップ品を獲得することはできず、かつその量もまだ第4層と半分も来ていないのに、すでに自分たちの数年間で稼げる以上の実入りになること確実になっている。
これからさらに第11層まで進めば、より高価な素材が出てくるだろうし、たぶんだがマルティたちは難易度の魔物が出てきても、あっさりと倒してしまうことが予想された。
そしてドロップ品がどんなに大量でも、ミヤビのストレージがあふれることはなさそうな気もした。
「ミヤビのストレージの容量のことも、クラウドの索敵能力やあなたたちの実力をもう少しちゃんと説明してくれてれば、ドロップ品については、こちらも了承する条件が変わってたと思うわ」
カエデは、勝手な言いぐさであることは分かっていたが、言わずにはいられなかった。
「もらえるドロップ品が多くなるのはうれしいですけど、そのなんというか、なにもしてなくてついて行ってるだけなのに、働きに見合っていないようで、少し後ろめたいんです」
ツバキがぼそりと心中を口にした。
「なんだ、そんなことか」
「そんなことって」
姉妹の言は単に後ろめたいだけではなく、冒険者としてのプライドの問題でもあった。
が、マルティは二人の胸中を歯牙にもかけず、つづけた。
「君たちの予想に反してドロップ品が多いとしても、気にすることはないよ。こちらのほしいものはきっちりもらうし、それは確実に今回手に入るドロップ品すべてよりも高価なものだから。そもそも君たちがいなければ、僕たちはダンジョンに入ることもできなかったし、仮に君たちが辞退していたとしても、やっぱり別の誰かと組んで潜って、その誰かが同じ条件を享受してただけだよ。それにさ」
と、改まって二人に向き直り
「この潜航で僕たちと一緒に行動することは、君たちにとっても絶対に損じゃない経験になるよ。それはドロップ品から得られる資産だけではなく、たとえばストレージのスキル。僕と組むまでは自分たちにそのスキルが獲得できるなんて、想像だにしなかったでしょ」
「それはそうだけど...」
「あと、働かないなんてとんでもない。いくら僕たちでもこの先に進んでいけば、今まで以上には手こずる場面も出てくると思う。そんな時に君たちの助力は、きっと必要だよ。そして君たちの実力も上がってくるしね」
「戦いもしないのに、実力が上がるわけないと思うんですけど」
まだ納得がいかない二人であった。
「もう少し僕を信じて、ついてきてくれないかな。きっと後悔させないんで。それに当初の約束通り、どうしても無理だと思ったら、すぐ地上にもどるからさ」
しばし、考えるふたりであったが、カエデが
「そうね、すくなくともストレージスキルについては習得したいね。第一また1日しかたってないし、いくらなんでも早すぎか。しゃーない、いけるところまで付き合うわ。いいよねツバキ」
ツバキも、時間はかかったが、こくんと縦に頭を振ったのだった。




