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サイドB-5 ピクニックじゃないんだけど

素材をミヤビがすべて回収後、第3層ボス部屋を後にした一行は、ダンジョン第4層に突入した。

第4層はフィールドダンジョンだ。


少し高台であった入り口から、見渡す限り草原と河川、その奥に森林が続いている。

ダンジョン内にもかかわらず、空があり、太陽に相当するものはないが、外の世界同様全体があかるかった。


入り口での職員は、しばらく水等は手に入らないと言っていたが、この河があれば水は手に入りそうなもんだが、そこをマルティにかくにんしたところ


「いや、あの職員が言ってたことは正しいよ。この川の水にはアメーバー系の生物がたくさん生息していて、とてもじゃないけど飲めたもんじゃないよ。まあろ過して飲料水を作る方法もあるにはあるけど、労力がかかりすぎるよ。普通冒険者は生活魔法で、飲み水を出すことができるから、そもそも水は必要ないんだけどね。体をあらうぐらいと言いたいけど、それもこの川の水はあんまりお勧めしないよ」


だそうだ。

よって河があれば、水浴びはしようと考えていた姉妹の野望はついえた。


ダンジョン入り口からここまでは、半日の工程であった。

ダンジョンに潜ったことのない姉妹ではあったが、マップが分かっているとはいえ、相当速いペースできていることは想像できた。


「ちょうどお昼時だし、食事をかねた休憩にするけど、大丈夫だよね」


空腹と少しの疲労を感じだした姉妹に異論はなかった。

ミヤビが空中に手をかざすと、そこには大きなバスケットがふたつと、鉄でできたらしい寸胴鍋が出現した。

さらにミヤビは、手に収まる程度の小瓶をふたつと、木製の低机といす、木皿に木コップ、木スプーンを4つづつ出現させ、並べた。

バスケットになかには、パンに野菜と肉と黄色い何かを挟んだ食べ物が、それぞれ紙につつまれて、ぎっしり入っていた。

もう一つのバスケット内からは水差しが、寸胴のふたを開けるとオニオン風味のスープが湯気を立てていた。


「いっぱいあるから、遠慮しないでね」


カエデは内心唖然としたものの、これもありかとすぐに納得した。

何体かは言明されていないが、あの大きなルビーレッサードラゴンを数体格納できるほどのストレージだ。

このくらい大した量ではないのだろう。

ただ..


「おねいちゃん、このスープ湯気がたっている。それにこの水差しの中の飲み物、とっても冷たい」


パンもほんのりあったかいと、びっくりしている。


「ミヤビのストレージは、時間停止属性がついているからね。料理を作ってすぐ格納しているから、どれも出来立てだよ」

「おねいちゃん、この黄色いの、食べたことない味だけどおいしい」


ツバキに促されて、カエデもおそるおそるほおばった。

薄くスライスされた肉のしっかりした味と、しゃきしゃきのレタスのみずみずしさ、少しピリッと来る黄色のソースが、やわらかいパンと愛称よくまとめられていて、おいしかった。

確かにソースは食べたことのない味だったが、絶妙なバランスで、飽きにくく感じた。


「それは新鮮かつ浄化した鶏の卵の黄身と菜種から搾り取った油、塩をシェイクしてつくったソースに、粉からしを混ぜたものだよ。名付けてからしマヨネーズ、うちのシェフ自慢のソースの一つだね」

「うちのシェフ?」

「今回は来ていないけど、僕の仲間の一人だよ」


そのメンバーとやらが、どんな人物でなんで今回は同行していないか気にはなった。

そのメンバーがいれば、自分たちはそもそも必要なかったのではないか?

ただ、それよりも目の前におかれた品々、野菜と肉を挟んだパンも少し甘い飲料もオニオンとキノコの風味たっぷりのスープも、すべてが逸品で、ついつい食べ過ぎてしまう二人であった。

だがそれでもバスケットのなかには、まだまだ大量の食材が残っているのだった。


「なんか、ダンジョン内じゃないみたい」


カエデのきいていたダンジョン内の様子とは、大きく異なっていた。

ダンジョン内は魔物だらけで、常に油断がならず、食料も日持ちのする少しの硬いパンと干し肉、ぬるくまずい水で周囲を警戒しつつしのぎを削って、攻略するものと聞いていた。


なのにこなんにおいしく出来立てのものを、おなか一杯たべて、陽気もよくピクニックにでもきているような塩梅なのだ。

適度な風がきもちよく、このままお昼寝したい衝動に駆られる姉妹であった。


「食事がおわったら、これも飲んでおいてね」


先ほど花梨がストレージからとりだした小瓶を、マルティはふたりにわたした。


「なにこれ?」

「滋養強壮剤。ポーションの一種と考えてもらってもいい。僕が錬金術で作った元気になれる飲み物だよ。これから少しペースを上げるんで、ふたりがへばらないための準備」

「ペースあげるって、ここまでも十分はやいような気がするんだけど」


カエデは控えめに言ったが、実際は相当早いペースだと感じていた。


「この第4層は広いから、なるべく明るいうちに距離を稼ぎたいんだ。できれば暗くなる前に、この層出口までの1/3程度は進みたいと思ってる」

「そんなにうまくいくの?魔物が少ないってこと?」

「いんや、たぶんこの層から魔物はたくさん出てくると思う。まだ第4層なんで、大したものは出ないだろうけど。でもその遭遇時間を考慮しても早く先に進みたいんだ。この層で素材集めするなら、遅くてもいいんだけどねと」


ふーんと、うなずいて、マルティからもらった小瓶をしげしげと眺めた。

ビンの色が緑がかっているので、実際のいろはわからないが、たぶん黄色に近い色だと思った。

なじみのポーションが緑系、毒消しが赤系なので、黄色はしらないの色だ。


「なんで私たちだけ?変なもの、入ってないでしょうね」

「僕たちは早い移動になれているから、いまのところ必要ないから。しばらく進んだら使うかもだけど。心配ならひとりずつ飲んでもらってもいいよ」

「おねいちゃん私が飲む」


とカエデが制止する隙ももらえず、ツバキが一気飲みする。

飲んだとたん、ツバキは破顔した


「これ、すごい! 疲れが一気に取れた感じ。足も軽い。それにお薬っぽいけどおいしい」


にこにこしながら、姉に向かって言った。

カエデも、しばし小瓶を見つめながら思案していたが、さいごには思い切りあおる。

途端に、妹の言っていた事が正解であること、いやそれ以上の効果を感じ取ることができた。


「じゃあ、進もうか」


マルティの掛け声のもと、パーティでの怒涛の快進撃がはじまった。


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