サイドB-4 ミヤビはストレージもち
二日後予定通り、一行はダンジョンに潜航した。
このダンジョンの1階層と2階層は洞窟然とした迷路になっていて、広さもそれぼとなく、ポップするモンスターもスライムやコボルトといった低レベルの魔物しか存在しない。
途中何回か魔物の群れに遭遇したが、集団で囲まれないようだけ注意すればよかったので、マルティたちは労力をかけずに討伐してはすすんだ。
1階層と2階層は階層ボスもおらず、姉妹のダンジョンに対する警戒感をまったく感知せず、マルティとミヤビはさっさと通過した。
それにしても、とカエデは思う。
無口でほとんど会話をしていないミヤビという猫人族の女性、魔物と出会うや否や即座に対応しては瞬殺していた。
前衛はカエデとふたりで担当しているため、カエデもまったく戦っていないわけではないが、ほぼミヤビが対応していた。
代わりに、マルティとツバキ、しんがりを進むクラウドというゴーレムは、1~2階層ではまったく戦闘に参加していない。
必要がないほどに、ミヤビが一人で対応してしまっていた。
マルティはもとより、ゴーレムの働きを見たい姉妹としては、楽ではあるが残念な状況でもあった。
3階層になると、さすがにポップする魔物のランクが上がり、前衛二人だけの対応ということはなくなるだろうと、カエデは考えていた。
3階層の主な魔物は、ゴブリンファイター、ゴブリンスレイヤー、コボルトファイターなど、1~2階層の上位種であった。
全員で対応するといっても、それほど状況が変わったことなく、あいかわらず前衛の二人以外には、ほとんど仕事はなかった。
(下手すると、私もいらないな)
あまりのミヤビの対応のはやさに、カエデは内心でつぶやくのだった。
3層の階層ボス部屋、ボスであるオークナイトと数十体のコボルトナイトとコボルトファイターとの戦いでは、ミヤビの双小刀剣技と、ウルフ形ゴーレム・クラウドの体当たり攻撃により、数分で片がついてしまった。
飽きれるくらいあっけなく、カエデが1体のコボルトナイトを相手している間に、雌雄は決してしまった。
マルティとツバキについては、なにもせずに終わってしまった。
ダンジョン層が浅く、低レベルといっても、規格外の戦力であった。
ミヤビには、もうひとつ驚かされる能力があった。
3階層ボス部屋には、コボルトの皮や鉄剣等ドロップ品がまあまあ転がっていたのだが、マルティの指示のもと、ミヤビが自身のストレージに収納した際、それはわかった。
ミヤビがドロップ品の横を通り過ぎるだけで、それらが消失していくのだ。
またしても姉妹が、その様子に驚いていると、
「ああ、ミヤビのストレージは、ある程度物の距離に近づいてミヤビが入れと思うだけで、収納できるちょっと特殊なストレージなんだ」
姉妹は、事前にミヤビが大きなストレージもちであること、ストレージ内時間が停止していることを、マルティより説明されていた。
ただ、通常のストレージは、空間に取り出し口のような穴が開いて、持ち主が手で入れたり出したりするイメージがあったため、その光景に面食らった。
「私たちの知っているストレージでは、絶対にないわよね。ひょっとして特殊スキル?」
「違うけど、ある意味間違っていないかな。あれは彼女の特異な魔法のひとつなんだ。ただ特殊な系統の魔法で、その系統の魔法を操れることが、彼女の特殊スキルといえばそうかな」
「特殊な系統?」
「そっ、特殊な系統」
マルティは、それ以上言葉は続けない。
続けない以上、カエデもそれ以上は聞けない。
スキルに関する詮索は、冒険者の生命線ともいえるものなので、本人が進んで話す以外ではタブー視されている。
「スキルか~。なら真似しようと思っても無理だね。でもストレージは便利だよね。とくにダンジョンとかでは」
カエデはダンジョン入り口での出来事を思い出していた。
ダンジョン入り口には検問所があり、許可証の確認と一応の目標層の申告がされる。
マルティが予定通り第11層を申告したとき、ギルド職員は妙な顔をして確認してきた。
「何日ぐらい潜る予定なんですか」
「えーと、進みにもよるとは思うけど、最大でも2週間ぐらいかな」
「...ダンジョンにはいるのは、今回が初めてですか?」
「ここは初めてだけど、他でも入ったことがあるんで。3つ目かな」
ギルド職員はしばし沈黙し、いうべきかどうかまよったあげく
「いままで潜られたダンジョンがどうかは知りませんが、ここのダンジョンではなかで食料や水は深い層までたどり着かないと手に入らないですよ。あと第11層の最短到達記録は、1カ月です。2週間分の準備では不足します。なにより、持ち込まれる物資がほとんど無いようなのですが、大丈夫ですか?」
ギルド職員が指摘するのも当然と、姉妹は思った。
同じことを、姉妹も今朝指摘したからだ。
マルティはもちろん、同行のミヤビもゴーレムも、荷物らしい荷物を持っていなかった。
というか腰にさげた武器とショルダーバック意外、手ぶらであった。
「1カ月? おもったより難易度高いんだね。じゃあもう少しかかるかも。食料も1年は大丈夫なくらいは用意している。この子がちょっと大きめのストレージを持っているんでね」
対応していたギルド職員だけではなく、背後にまつ冒険者たちからも、どよめきが走った。
「ストレージもちだって」
「しかもパーティ1年分でどういう量だよ」
「うらやましい」
ストレージもちの冒険者が、世の中にいないことはない。
ただ知られているストレージの容量は、大きなものでも馬車1台分程度で、その他はもっと少ない。
ストレージの代わりにマジックバックなるマジックアイテムが、大量携帯用具として存在し、そちらは大容量のもので馬10頭以上が係留できる馬小屋1棟分とストレージよりもはるかに携帯できる量が多いが、希少で超高価であるため、普通の冒険者が手に入れられるものではない。
ストレージは、つまり実用的な能力ではなく、ちょっとした武器や食料を入れるためのものというのが普通の認識だ。
1年分の食料がどんなに大量になるかは、背後に並ぶ冒険者たちの背負った荷物の大きさを鑑みれば、「うらやましい」の言葉もでてこようというものだった。
「ミヤビのストレージは特殊なんでまねはできないけど、もっと小さくていいなら、スキル獲得方法教えてあげるよ」
「えっ、ストレージて獲得できるスキルなの?」
「できるよ。現に僕もミヤビほどではないけどもってるし、もっというとクラウドにも付与しているしね」
「ゴーレムも持ってるの?」
「うん、じゃあこうしよう。ダンジョンにパーティとして参加してもらう条件として、ストレージ・スキルの伝授も行う、を追加ということで」
姉妹は、手を合わせて喜んだ。
金貨や素材も魅力的だったが、これが一番の報酬と感じた。




