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サイドC-26 会談_ガガとホクト

「そりゃどうことだ?管理者ってなんだ?」


ガガではなく、テツガが思わず声を上げる。

ダンジョンの管理者?

冒険者ギルドのことをいっている?

なにを言っている?


唖然とするレッドサンダーメンバーをよそに、ホクトはとぼけるでもなく話をもとにもどす。


「それは後ほど。話を元に戻します。僕たちに何の用事ですか?」


ガガはホクトの言葉が強力すぎて、次の言葉が出てこない。

じっとガガのことばをまつホクトたちに、やっと言葉を紡ぎだす。


「...珍しい猫人が二人もいるパーティがあると噂できいた。しかもその二人は冒険者としても優秀だと。すくなくとも片方の猫人は大容量のストレージ持ちだと。見てわかる通り、俺たちは獣人のパーティだ。お互い獣人ということで、よければこちらのパーティに誘おうかともおもって....」


ガガは言ってるそばから、自分の言葉ながらなんとしらじらしいのだろうと思った。

とってつけたような面会理由であることは状況からしたら明白で、思ってもいない言葉は相手にも伝わるわけがない。

げんに猫人である二人は興味なさそうに聞いている。


「だってさ、ミヤビ、マツリ。Sランクパーティのお誘いだけど、どう思う?」

「引き抜かれてほしいのかにゃ?」

「いや、大事な家族だよ」

「だったらきくにゃ」


冒険者ギルドで難しそうだといわれていたが、今のやり取りでそんなレベルでないことが、ガガたちにもわかる。

もとより口実に過ぎなかったため、ガガたちもそれ以上熱心に誘う気もなく、会話が途切れた。


「さて、僕たちに逢う目的も完了したところですし、少し別の話してよいですか?」

「ああ、さっきの続きか?」

「はい。唐突な話で信じられないかもしれませんが、このダンジョンには管理者がいます。管理者というか管理意識体ですね」

「...ダンジョンに管理者。はじめて耳にする言葉だ。冒険者ギルドのことではないよな。どういう存在だ?」

「その名の通りダンジョンを管理する者です。意識体といったほうがよいですが、主にダンジョンの維持・形成・管理を行うものです。本来その意思はダンジョン・コア単体で行う場合が多いのですが、まれにダンジョン・コアに同調する意識体が接触して融合した場合、その融合したものの考えを反映したダンジョンを形成する調整が行われます。その意識体は動物や植物であったり、まれにヒューマンや獣人、亜人だったりもします。私たちはそういう存在もしくは意識体をダンジョン・マスターと読んでいます。このダンジョンにもそうして同調した意識があります。もとはエルフです」


さらりと説明されたが、内容はとても信じがたいものであった。


「そういう存在が仮にいたとして、だから何なんだ?」

「それがあなたたちの探す回答でからです。『カメヤマシャチュウ』商会で売っている品は、その大部分がこのダンジョンで生み出されたものです。ダンジョン・マスターのおかけで『カメヤマシャチュウ』をとおして、この国は以前よりも潤っています」


ホクトはガガたちがなにか言いたそうにしたのを遮って続ける。


「さきほども言ったようにここのダンジョン・マスターは以前エルフでした。ですので圧倒数の魔物に脅かされて細々と暮らす人たちを何とかしたいと願っていました。そこで一生囚われの身になることを覚悟の上、このダンジョン・マスターとなりダンジョンを大改造しました。詳細は省きますが、そのかいあって『カメヤマシャチュウ』にはダンジョンで生み出される大量の食料や魔石や鉱物が定期的に納められています」

「では、第79階層というのは」

「はい、それらを生み出しているところです。だから部外者には入られたくありません。これがダンジョンと商会『カメヤマシャチュウ』との関係です」


断定された言葉は、ガガたちには到底理解できない。


「でもなんで秘密にする?この国にとっては有益なことじゃないか?秘密にする必要を感じないが」

「いえ、そうもいきません。業突く張りはどこにでもいますから。人も国もです」

「どういう意味だ」


ホクトはここでふう、一息つく。


「ダンジョンは基本的には国の資産に分類されます。入退室や状況把握などは冒険者ギルドが管理はしていますが、それを取り巻く環境は基本的には国が管理しています。国といっても中央部がそれを管理するわけにはいきませんから、自然その地方の貴族なり役人なりが直接の管理者となります。そういう権力を持った人たちが、今言ったことを聞いたらどうなると思います?おそらくですがそこに利権を見出し、利益の分割や独占が発生します」

「それはしかたないな。どうしても権力者や管理者に利益が集まるのは。でも利権という意味では同じことが『カメヤマシャチュウ』でもあてはまるんじゃないか?」

「たしかに商会として儲けることも目的の一つです。でも反面そういうダンジョン・マスターの思いから作った商会でもありますから、利益率は低いです。商会をご利用になったと思いますが、高かったですか?」

「...いや、全体的に安かったな。高くなりがちな塩や高級品の砂糖でさえ、庶民が購入可能な設定金額だったな」


主食である麦・大豆・米にはじままり、魔獣の肉や調味料、コンロなどの魔道具や冒険者の武器に至るまですべて格安で、かつ燃料費も安く設定されていたのをガガは思い出していた。

プラティアがかの商店の食堂でバカ食い、バカ飲みをしても驚くほど請求金額が安かったのは、これのおかげだったのだ。

魔石も格安の極小を使う魔道具が多く、それだけでもこの国の人々の生活を支えてるのがわかる。


「『カメヤマシャチュウ』商会は、これらダンジョンの品を売るため立ち上げた商会です。そうなるのもあたりまえなのです。そしてこのおかげで特定の人間たちだけが利益をえることなく、人々がその恩恵を受けられているのです」


詳細はしらされなくとも、それがほんとうであることはガガたちにもなんとなく理解できた。

カスミがいっていたおせっかいというのは、まさにこのことだったのだ。

深く考えられていない行いは悪意ではなく、純粋に好意からではあったが、それがフィオナ王国の国益に反してしまったため、今回のような誤解がうまれたということなのだろう。

また今の話からすると、『カメヤマシャチュウ』はダンジョンの生産物を売るために作られた商会ということになる。


「追加でふたつ聞いていいか?」

「どうぞ」

「俺たちの記憶を消そうとしたり、帰れないように軟禁したりして秘密にしていたことをなぜ急に話してくれた?あとなぜお前たちがそのような関係性をすべて知っていて、当人たちではなくおまえが今こうして俺たちに説明している?」


ホクトはガガの言葉を待っていましたかのように、蔓延の笑みをうかべ、のりだした。


「ガガさん、あなたは話が早くて助かります。まずこのことを話したのは、ダンジョン・マスターたる彼も『カメヤマシャチュウ』商会も、あなた方が心配している戦争勃発なんかこれっぽっちも望んでないからです。戦争は物的資源だけでなく人的資源を無駄に消費するだけの最悪の行いです。しかもいざ始めてしまうと人々の恨みの連鎖でなかなか止められなくなります。そんな事態にはしたくないのが、僕らの意思です。ガガさんあなたは冒険者であると同時にフィオナ王国の貴族です。しかも国の行く末をになうひとりです。そういう二面性をもつ方であればわれわれの意図をただしく汲んでいただけると信じてお話しています」

「二面性?」

「そうです。あなたが貴族という肩書しか持たない方であれば、もっとややこしいことを僕たちはしなくてはなりませんでした。けれどあなが本質は冒険者であると確信できたので、このようなお話ができるのです」


北斗がそう確信できたのは、カスミによるプラティアからのヒヤリングのおかげである。

ダンジョン内でどこでも聞き耳をかけれるエギルに二人の酒席をのぞき見てもらい、その内容から判断した結果だ。


「純粋な貴族であれば国のもしくは自身の利益のためだけに、ここを利用しようとするかもしれません。でもあなたは基本は冒険者だ。そういう貴族のいやらしい一面を疎ましく思っていらっしゃると信じてお話しする気になりました。だからぼくがこのようにダンジョン・マスターと『カメヤマシャチュウ』商会のスポークスマンとしてはせ参じているというわけです」

「スポークスマン?」

「はい、仲介者とでもいったほうがよいですね。あなたとの、いえフィオナ王国との交渉の全権を任されているといってもよいでしょうね」


一介のD級冒険者が一国の貴族と交渉?

そんなはなしは聞いたことがない。

なぜなら一国の国相手に対等に渡り合えるバックボーンをもつ冒険者などいないからだ。

S級のガガたちでさえ、冒険者という肩書では国に使われこそすれ、国を相手取っての交渉など想像だにできない。

すくなくともガガ自身は思っている。

だが、目の前の青年は、それがさも当たり前かのように話している。


「スポークスマンというのは理解したが、おまえの立場、あとの質問の回答はまだもらっていないんだが」


この質問にもホクトという青年は笑顔で返す。

次の言葉がガガたちの想像を越えているとも、すこしも思わずに。


「このダンジョンのダンジョン・マスターは、もともと僕たちのパーティメンバーでダンジョンに永久にとらわれたいまも仲間です。彼をダンジョン・コアまで連れて行ったのも僕たちです。そしてここで生み出されるものの販路として仲間内で話し合って『カメヤマシャチュウ』という商会を立ち上げました。代表も僕たちの仲間です。現在でも『アンバーチャイルド』の大きな仕事のひとつは、ここで生み出される物資を定期的に『カメヤマシャチュウ』に届けることです。つまりこの一連のシステムは僕たちによって作り出されたということです」


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