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サイドC-25 ガガの生い立ち2

ある朝ガガの逗留先の宿に、貴族が二人訪れた。

ガガの実父であるビリア・ルクレール本人と、妙齢の婦人であった。

南方を守護する諸侯として勇猛の名をはせていたビリアは、ひどく老け込んでつかれているように見えた。

付き添いの夫人もガガは見覚えがあった。

ビリア候の次男の母親で、こちらも歳相応以上に老けこんで見えた。


それまでは使者の言葉を全く聞かず丁重に追い返していたガガであったが、さすがに侯爵自身が訪れたとあっては無下にできずに対応した。


「おまえが家督をつぐのを拒否したい理由はよくわかる。いまさらだという気持ちも当たり前であろう。だがこれだけは考えてほしい。お前が家督を継がない場合、お家取り潰しは確実となろう。そうなった場合、領民15万が路頭に迷うこととなろう」


安宿の粗末な椅子を勧められた侯爵は、開口一番これもつかれたように言った。

ガガにしてみれば、隠居したとはいえ自身が侯爵に復職して、今からでも子をなせばよいように思う。

なぜそれほどまでに庶子であるガガにこだわるかがわからなかった。


「それはあの子の願いでもあるからです」


口を開いたのはガガの兄であり、長年を側仕えで過ごした次男の母であった。


「あの子はあなたが遠ざけられた時、なぜと繰り返し私に聞いてきました。本当のことを私は言いませんでしたが、どこかからあなたが腹違いの弟であろうことを知っていたのでしょう。死に際にあの子は家のためにあなたを呼び戻してほしい、そう遺言を残したそうなのです」


ガガは兄と二人きりで王都で暮らしたことを忘れたことはなかった。

兄とはしらなかったが、その関係は兄弟のようなものを二人は感じていた。

ガガもルクレール家にはそれほどの思いはなかったものの、彼のために生涯尽くそうとの思いだけはいまも心に残っていた。


そこで仲間と相談させてほしいとその日は辞去してもらい、次の日に冒険者としての活動と兼用させてくれるのであればと回答し、家督を継いだのだった。


「最初冒険者を続けつつもという回答に、旧侯爵はたいそう難色を示されてたらしいですけど、でなければこの話はなしという断固たるリーダーの意思に、あちらさんが折れたというわけどすわ。ですから先ほどのネエさんの質問は、リーダーは冒険者に重きを置いとると言ってもよいと思いますわ」

「そうなんだ...」

「まあ、そんでも収穫期は税の問題とか領民のいざこざの仲介とか忙しゅうしてはるんで、冒険者活動は夏と冬に限定されとりますがな」

「へーえ。じゃあ他の三人はその間休んでるんだ」

「まさか。Sランクの冒険者は何かと大きな指名依頼が国からありますんで。リーダーがいない程度で休みなんかおまへん」


その大部分の依頼がガガからくる魔物討伐というから、意図的にやっているとしかおもえない。

俺も忙しいんだから、おまえらもあそんどくな、といったところか。


「でもまあ、大きな依頼はさすがにリーダー抜きではしませんさかい、大型魔獣退治や魔獣群れ対策ぐらいですけどな」


プラティアとしては魔力を使えば使うほど魔力量が大きくなることは感じているので、お金ももらえて訓練もできると願ったりかなったりだという。

カスミはそんなプラティアのストイックさを、現状に満足しない人柄に感心する。


「ところでカスミ姉さん、おしえてほしいんどすが、なんであないに魔力をもってはるんどすか?どないしたら姉さんみたくなれますか?」

「なに、藪から棒に」

「そうは見えへんかもしれまへんが、うちはこれでも相当へこんでるんですえ。さきほどもいったとおり自分が最強とうぬぼれる程度にはつようおます。いままでは。それが姉さんに対しては赤子同然や、手も足も出えへん。魔力を増やすコツがあれば、教授してくれまへん」


カスミは困った顔をする。


「教えるも何も最初からこれだし、とくに訓練とかは使い方に馴れるようにしただけだし...」


まさかスキル付きのキャラに精神だけが入っているなどとは言えない。

しかもその枠が、最強で自分でも持てあましているのが現状なのだ。

車でいえば走りや仕様なみにチューンナップされた市販車を購入しながら、スーパーに行く程度の普段使いしかしていない感覚なのだ。

魔力はガンガン発生してはストレージに溜まっていくし、固有スキルが発動するほどの魔獣や相手にもほとんど会えない。

このスーパーアカウントの体をつかいきれているとは言えないので、プラティアに教授する自信もない。


「まあ、でも普段からそこまで努力してるんだったら、ホクトなら劇的にあなたを強くできるかもね」

「ホクト?ああたしか『アンバーチャイルド』のリーダーさんでしたか。なんで姉さんが彼らを知ってはりますの?」


おそらくだが、プラティアを含む『レッドサンダー』の面々は普段から相当厳しい魔獣討伐を繰り返しているのであれば、スキルポイントも相当溜まっているはずである。

そうすれば、スキルチェインから上位のスキルも複数獲得したりできるはずだし、魔力に関していえばカスミ自身は必要ないので使ったことがないが『魔力の実』なる魔力量を単純にあげるアイテムもたしか持っていたはずである。


カスミのキャラでも最初から鑑定能力を越えた神眼までは使えるのだが、スキルチェインについては自身もふくめ見ることはできなかった。

スキルチェインはなぜかホクトとホクトが憑依しているサブ・キャラにしか見ることができないのだ。

それをみてホクトがカスミなりこの世界の住人に、その人物が持っているスキルポイントを利用して習得させることができるのは、カエデ・ツバキ姉妹ですでに実証済みである。

プラティアもホクトに鑑定してもらえば、おそらく可能だろう。


「まあこのダンジョンつながりでいろいろね」

「そうですの....なあ姉さん、うちと組みまへんか?」

「組む?」

「そう、うちと二人でパーティ組んで冒険者しません?姉さんやったらあっというまにSSランクや」

「ふたりって...あんた『レッドサンダー』どうすんのよ」

「やめます。姉さんとふたりのほうが、より強うなれそうですし。なにより姉さんと一緒にいると、楽しそうですし」


印象としては凛としている場面が多そうなプラティアの声に、少し艶がはいったのをカスミは感じた。

いやいやとカスミは思いもよらぬ提案に内心頭を抱える。

私はノーマルだ、ユリ展開はやめてほしい....。


★★★


「まずはメンバーを紹介させてください。右から猫人のミヤビにマツリ、剣士のカエデと魔法士のツバキです。後ろにいるのは僕のゴーレムで、名をクラウドとしています」


ホクトはロビーのソファーにガガたちを誘導して、座らせた。

自身たちはホクトを中心に両サイドに剣士と魔法士をすわらせ、その背後に猫人二人とゴーレムを立ったまま配置している。

メイドのタウにガガたちの紅茶を用意させて、メンバーを前によどみなく話始める。


「あなた方のおうわさはノースランドまで響いております。リーダーのガガさんに、竜人のテツガさん、兎人のかたはレンジャーのラン・ムーさんですよね。ハイ・マーメイドのプラティアさんはいらっしゃらないようですが」

「ああ、いまちょっと出ている」


突然の『アンバーチャイルド』の登場に戸惑いつつも、ガガはきわめて平静をよそおいつつ答える。


(なんでここにいるんだ?それにこれがDランクパーティー?冒険者ギルドの面々の目は節穴か?)


表面上の態度とは反面、ガガの心の中ではいろいろな思考が忙しく行きかっていた。

目の前の連中の雰囲気はどうとらえてもただものではなかった。

内心の葛藤を気取られないように、彼らの観察を続ける。


リーダーと名乗るホクトは、ごく普通のヒューマンの青年だった。

獣人であるガガにヒューマンの年齢はもともとわかりにくいのだが、おそらくガガよりは若いであろうと思われた。

ガガ達に比べれば小柄で、とても歴戦の勇士にはみえないが、長く戦ってきた経験がかもしだすそれは見かけ通りではないことを感じた。

装いも珍しく軽そうだが見たことのないタイプの軽鎧にはガガの知らぬ金属がふんだんに使われており、腰に下げた剣も使い込まれた握り手をみるに業物とおもわれる。

笑顔を絶やさぬそのやわらかい物言いに敵意はなく、それでいて通る声には自信があふれている。


その左右の姉妹、剣士と魔法士はさらに若く見えた。

だが、ホクトほどではないにしても歴戦の雰囲気を醸し出している。

メンバーのなかでこの姉妹だけがガガたち相手に警戒しているらしく、女剣士からはさすような剣気が発せられていた。

だがその背後の面々に比べれば、まだましな方であった。


黒毛のミヤビと茶毛のマツリふたりは警戒なく立っているらしいのだが、ガガたちをただ見ているふうだけで、ガガたちには緊張が走っていた。

両腕を組んで立つミヤビは、完全にリラックスしているにもかかわらず、ガガたちには先日のヒュドラ以上の危うさが感じ取れるほどのオーラを発していた。

もう一人のマツリはそこまでと感じないのは、どうも彼女自身がガガたちにまったく興味がないためだと気が付いた。


(それにあのうしろのゴーレム。テツガが竜化したとして、はたして勝てるのか?)


本来無機質であるはずのウルフ型ゴーレムも、恐ろしいほどの危険を感じる。

二人の描人以上にオーラがふりまかれていた。


「さっそくですが、僕たちに用事があるということでしたが、どのようなことでしょうか?」

「それを聞く前に一つ確認させてくれ。お前たちはどうしてここにいる?どうやってここまで入ってきた?いや、どうしてここにいることが許されている?」


ガガたちのように足止めされているわけでも、記憶を操作されそうになっているわけでもない。

なのに彼らにはここにいることが当たり前で、制限があるようにはみえない。


「ああ、なるほど。そりゃそうですよね。ええ答えれますよ、僕たちはここの管理者に協力しているんです。国とかではなく個人として」

「管理者?」

「はい、ダンジョンを管理している管理者です。だからここに入ってくることも、このまま帰ることも制限なく許されています」


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