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サイドB-49 サーマルス・ロード姉弟との契約

「ところでずいぶんと忙しそうだね。なにかあった?」

「それですけど、いままであなたが連れてきたあの異国のご姉弟と接見してました。実は今も待たせています」


異国の姉弟といえば、例のサーマルス・ロードから来たというあの二人だろう。


「ああ、あの姉弟ね。それは僕も気になっていたんだ。買ってほしいものって何だったの、結局?」


オリョウはここで深いため息をつく。


「はあ、あのお二人は本当にお気の毒です。どうしてこうあちこち回らなくてはいけなかったのか...すでにアースワンの町で解決してましたでしょうに...」

「どういうこと?」

「まあ、あの方たちにしたら、うちの優れた魔道具のほとんどをマルティの設計で作っていることなんて知りようもないですし、しょうがないですけど...こればかりは秘密保持にかかわることなので、私が仲介という形で紹介しますので直接聞いてあげてください」

「それってつまり...」

「そうです。アースワンからの馬車旅程で、お二人があなたに相談していれば、こんなに遠いところまで来る必要はなかったのです。かれらの望みは魔道具に関することだったのです」


別室で三人が待っているということだったので、マルティ一行はオリョウに案内されて、早速の再会となった。

オリョウとともに入室したマルティたちに、双子の姉弟ネネとカロン、連れ添いで戦士のルーバートとは少し怪訝な顔をした。


「こんにちは。また会いましたね」

「昨日はありがとうございました。でもマルティさん、どうしてここに?」

「このマルティが先ほどお伝えした魔道具に精通している方です」

「えっ、それってどういう...」

「うちの商会で売っている魔道具のほとんどは、製造はすべてではないですが、付与する魔法陣の設計はすべて彼によるものです。彼の職業は冒険者であり錬金術師なのですが、魔道具の設計から魔力付与の為の魔法式のプロフェッショナルです。あなた方のご希望ににそう能力者としては、彼が適任とおもいます」


オリョウの言葉を聞いて、複雑な顔をするカロン、深いため息を吐き出すネネがいた。


「つまりはあれですね。私が最初の旅程でマルティさんに売るものを聞かれた際に、正直にお話していればことはすんだかもしれないという事ですね」

「お話の内容によるとは思いますが、まあその可能性は高いとおもわれます」


自嘲気味にいうネネに、オリョウが気遣うように相槌をうった。


「とはいえ詳細はあなた方の機密にかかわることですので、あなた方の了解を得るまではとおもい、詳細については一切話しておりません。了承を得られるようでしたら、再度で申し訳ないのですが、最初から説明していただけますか?」

「ええ、でもまずは秘密を保持するためのお話からさせてください」


立っての話というのもなんなのでと、オリョウが席をすすめる。

ただ席が足りないため、メインのソファーにはオリョウ、マルティ、ネネ、カロンが座り、背後にあとから用意した席にカエデとツバキ姉妹がすわった。

ルーバートとミヤビ、イータは座らずそれぞれのグループの背後に立つ。


「あの夜軽くお話ししましたけど、私たちはこの大陸から海を隔てた王国、サーマルス・ロードから来ました。あのときは私たちの家で問題が発生しそれを解決する手段を見つけるために、この国にきたと告げました。覚えておいでですか?」


ネネの言葉にマルティは深くうなづく。

覚えていた程度ではなく、ずっと気になっていたのだから。


「ええもちろん。それで売りたいものは物ではなく、ほしいものはお金でもないとも聞きました」

「その通りです。あの時お話ししなかったのは、あなたの能力を知らなかったのもありますが、相談の内容がわが家、いえ正確に申しますと我が国の重要機密にあたることに触れていますので、失礼ですが一介の冒険者に軽々しくお話しできませんでした。もっと信頼に足る、機密を守っていただけるような方を探す必要があったのです」

「それに白羽の矢が立ったのが『カメヤマシャチュウ』というわけですか...」


なるほどとマルティは再度うなづく。

おそらくだが、風聞でこの商会で販売している魔道具の性能が、他で売っているものに比してよいことを聞きつけたのだろう。


「おっしゃる通りです。私たちは色々な町をまわってどこに魔道具の相談をしたらよいかを調査しました。その結果大多数の方々が『カメヤマシャチュウ』商会の魔道具が優れていることやその魔道具自体も商会で作られているであろうことを知りました。情報をえた町から一番近くにある商会の支店がアースワンだったというわけです」


そのあとのことはマルティも知っている件だ。


「思えばあのような馬車やゴーレムを所持されているという時点で、少しは気が付くべきでした」

「まあ普通は気が付かないですからお気になさらない方がよいかと...それで機密保持についてのお話とは?」

「はい、それですが内容は私たちの国の機密にかかわります。我が国独自の技術ですので、流出させる範囲も限定したくおもっています。そのお約束をしていただきたいのですが、口約束では心もとないので、有効かどうかはともかくとして、これにサインいただけますか?」


と、ネネはさらりと一枚の用紙を取り出した。

彼女もまたストレージもちと知らなければ、ちょっと戸惑うところだろう。


「これは...機密保持契約ですね」


北斗としては現実世界でなじみ深い内容の書類だったが、それをこの世界でみることは意外だった。

内容としては、提示される魔道具の仕組みや魔法式については、サーマルス・ロード家の許可なく外部に共有することの禁止、それを破った場合の措置についてかかれていた。

同時に共有した機密の再利用の許可と改変することの許可、その魔法式を応用した製品のパテント料についてもかかれていた。

罰則としては、賠償金の支払いと共有した機密の利用の即時停止、およびサーマルス・ロード王国への入国禁止などが書かれている。機密保持だけではなく、ライセンスについてもかかれていることが、北斗の知る機密保持契約とちょっと異なると感じた。


「契約とはかかれていますが、この国にはおそらくこの内容をしばる法律が存在しないと思われますので、口約束より少しましな、気休めといえば気休めですが....」

「いえいえ、もしサインしたらちゃんと履行しますよ。まあ、信頼してもらうしかないですけどね」

「なら私が商会として裏書いたしましょう。それならいかがですか?」


オリョウがここで提案をした裏書とは、両者の契約に際して、商会としてその内容を把握して保証するということをサインすることを指す。

法的根拠はなくても、第3者として監視することを『カメヤマシャチュウ』として行うことを宣言するに等しい。


「わかりました。そこまでしていただけるのであれば...マルティさんも後ろの方々もそれで了承していただけますか?」


いきなりつっこまれた当人たちは、混乱する。


「いや契約とかよくわかんないし、なにをすればいいの?」

「ようはいまから打ち明けられる内容を、ここにいるメンバー以外にしゃべらないし、資料とかも他に見せたり渡したりしなければいいってことだよ」

「なんだそんなこと」


ミヤビを含めてちょっと安心する。


「よく考えたら、魔道具のことなんてよくわからないから、知っても伝えようもないわ。魔法式ならツバキは少しは読めるかもしれないけど」

「そうね、お姉ちゃん、魔法は付与も含めてカラキシ駄目だもんね」


後ろから妹に撃たれて、カエデは撃沈した。

そんな感じのやり取りのあと、機密保持契約書にマルティはパーティ名と自身のサインを、『カメヤマシャチュウ』の名前でオリョウが裏書をそれぞれ2部行った。

オリョウに関しては『カメヤマシャチュウ』の商会印も押印して二人を安心させた。


それぞれに一部ずつ契約書を保存するのだが、そこにかかれているネネの名前をみて、マルティもオリョウも納得する。

その様子をみて、ネネが改めて宣言する。


「サインをみてお判りでしょうが...私はフルネームをネネ・ミカミ・サーマルス、サーマルス・ロード王国の第2王女です。こちらの弟は同じく第3王子でフルネームをカロン・ミカミ・サーマルスです。身分を隠す必要がありましたので、正しい名前をお伝えしていなかったことはお詫びします」

「まあ、なんとなくですけど、高貴な方だろうなとはおもってましたよ。僕だけではなくパーティーメンバー全員ね。貴族の方で苗字を隠されているんだろうなくらいには。それにしても王女様と王子様ですか」

「王子とっても第3なんで、いてもいなくてもいいような存在ですけどね」


カロンがここで自嘲気味に言う。


「で、本題に入りましょうか。相談事とはなんでしょうか?王家の方々がわざわざ海をわたってまでこられた理由とは、いったいなんでしょうか?」


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