サイドB-46 錬金術師マルティ
北斗はマルティのスキルで錬金術のひとつである『ビンの中の生物』でしられる人工生命体生成、いわゆるホムンクルス生成でいろいろと実検していた。
SSR以上確定ガチャを用いてサブ・キャラとしてマルティを取得した際、鑑定とヘルプをつかってまず目を引いたのはレベル8000というランクもさることながら、北斗の好きな小説の主人公が使う妙技に似た技、魔糸つかいというころにひかれた。
ただ、じっくりとキャラを調べていくうえで、それらの主要スペックを上回るくらいのスキルの多彩さに興奮した。
錬金術師の職業をもつサブ・キャラは、他にも数名いたがマルティほど多種の錬金スキルを極めたキャラは存在しなかった。
例えばアースワンのダンジョン・マスターにすえたサブキャラのミミコも職業的には錬金術師である。
彼女の錬金術師としての特殊能力は、エリクサーやハイポーションなどの薬をほぼ100パーセントの高確率で生成できる点だった。
マルティもこれらの薬品をつくるスキルはもっているが、例えば最高の妙薬といわれるエリクサーの生成確率は20パーセントを切る。
つまり同じ錬金術師として、似たようなスキルを持っていても、どこかに特化しているのが普通でミミコはそれが薬品生成系だけに特化しているのだが、マルティの場合はそれがホムンクルス生成、武器や防具への魔力属性付与に特化しているだけではなく、魔道具生成にもスキルチェインがのびていて、それはまだ最高に到達していなかった。
加えてマルティには、魔道具生成の枝スキルとして『構造解析』という武器・防具・道具・魔道具等の非生命体の製造物の設計図を自動的に作りだして記憶する能力があり、発現原理を解析して完全にその動作手法を理解・再生できる専用スキルも存在した。
北斗はこのハイスペックなキャラを使いまわしたくて、『多重自我憑依』でベルゼ樹海という魔の森探索させていたが、ネオアンバーソメイユのワールドスキル『多重キャラ割り当て』を取得した際には、迷わずマルティをホクトのかぶせとして割り当てた。
このキャラを多用することで頑張ってレベル上げしていたホクトの出番が少なくなり、レベル上げも滞る事がわかってはいたが、ホクトもレベル3000を少し越え、それだけでもこの世界では無双できそうと思い、欲望のほうを優先させた。
北斗はマルティの特スキルである、武器や防具への属性付与とホムンクルスを作成に熱中した。
ホムンクルスについては、とくに疑似的にも自立動作できることから、NPCのサブ・キャラよりも使い勝手があると判断して、力をそそいだ。
ホムンクルスを作る際、特性として日時用生活の補助的なところを重視するか、それとも冒険者仲間として戦闘的なところを重視するかを北斗はなやんだ。
どちらも方向性もサブ・キャラたちで賄えないこともないので、悩んだのだ。
なのでどちらがより自立で動いてくれた方が都合がよいかを考えた際に、日常の補助的なところを優先した方がよいとの考えに至った。
戦闘に特化してしまうと、暴走したときにホクトやミヤビで処理せねばならず、つまりサブ・キャラと同じくらい監視していないと人に対する場面では使えないと判断したのだ。
とはいえ最低限自分たちを守れる程度には戦闘能力を有させるのも必要と考えたので、日常スキル8に戦闘スキル2の割合で作ることを決定した。
とはいえ、ホムンクルスがどこまで強くできるかも興味があったので、日常スキル4に戦闘スキル6のちょっとだけ戦いに偏向させた個体もあとから8体だけつくった。
個体名をアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン、ゼータ、イータ、シータと名付けたそれらは、北斗のなかでは特殊なホムンクルスグループとなっている。
特にアルファとよばれた個体には、全ホムンクルスの指令棟としての役割をもたせて戦略的な思考もできるような個体に作ったつもりだ。
その特別なグループのうちの二体、アルファとイプシロンをファーラーンにあるパーティハウスの管理保持兼守護として配置して活用している。
「留守中なにか変わったことはなかった?」
「いくつかの冒険者ギルドからの来訪者と家屋への侵入者、こそ泥の類は何回がございましたが、主人様たちの不在を丁寧につげてお引き取りいただきました」
アルファがよどみなく報告する。
冒険者ギルドからは時々呼び出しがあるので、職員だろうとおもうが、こそ泥の関係への対応はおなじ「丁寧」とは思えず、たぶん痛い目をみての追い出しだろうと思えた。
マルティは不在時の悪意ある侵入者も想定はしていたので、アルファたちにとらえずケガをさせない程度に追い出すよう、ウッド・ゴーレム含めて命令してある。
とはいえアルファたちは相手の能力を肌で感じ取れるようにも作ってあるため、ほんとうにケガしないぎりぎりの加減で対応をとっており、ケガはしていないだろうが、二度と近づきたくないと彼らに思いしらせていることをホクトはしっていた。
そんな不穏な雰囲気を感じ取ってか、カエデが聞かずにはいられないことを小声で口にする。
「この二人、いや二体か。どんくらいのレベルなの?」
「そこまでではないよ。アルファが今だいたい2000ちょっと越で、イプシロンがたしか1800前後。まあ確かに君たちよりは強いけど、それをメインにさせるつもりはなくて、あくまで自己保存と建物守備が目的だしね」
見た目でもうわかっているとも思うので、装備品がいろいろ付与付きの特別性で、それだけでもステータスを上げていることは口にしなかった。
「このあとどうするんですか?」
「ちよっとお茶して休憩したら、この屋敷内を軽く説明して、昼食をとりにいこう。今空いているところを君たち専用の部屋として用意するから。そのあとギルドによって君たちのパーティメンバー登録かな。ギルマスにも挨拶しないといけないし」
「ランクDパーティには滞在報告の必要ないと思いましたが」
「ホクトの爺さんを通しての知古なんだギルマスは。ホクトとしてはこの町に入っていないんで、言付けになっちゃうけど」
「ことづけ?」
「ああ、ホクトは絶賛冒険中であることや、ホクトにたのまれてミヤビが預かっているという建前のものを届けるだけ。お菓子なんだけどね」
「おかしってなによ」
「ギルマスも甘党になっちゃってね。他では手に入らない『どら焼き』というお菓子をとどけるのさ。お茶のときにそれだすね」
そうこうするうちにイプシロンが紅茶を用意してくれていた。
紅茶の香りもさることながら、供してくれたティーカップも野草が見事に描かれた高級品であった。
ミヤビがストレージからだした『どら焼き』も同じようにデザインの皿に並べられ、姉妹は2個ずつ食べることで小腹を満たした。
小倉あんという小豆を甘く似た内容物が、外のふわふわの生地とマッチして、ひとつでは終えられない二人であった。
★★★
「どうなっているのよこれは。マルティ達だけの専売特許じゃなかったの?」
カエデは目の前に並んだ料理をみて、叫んだ。
4人で座る対面のテーブルの上には、小鉢とスープのついた生姜焼き定食が並んでいた。
「いやこのメニューは僕の持ちモノではないよ。なにをそんなに怒ってるの」
「なにを怒ってるかって?ツバキ、いってやんなさいよ。私たちだまされたって」
意見を求められたものの、妹のツバキはなんとも言いようのない複雑な顔で沈黙を続けた。
姉の気持ちもわからなくもないが、さりとて賛同もしかねる、という顔だった。
小休止のあと、パーティハウスを徒歩で出た四人は、昼食のためと冒険者ギルドへ向かった。
順番としてはマルティの勧めるレストランが先の予定だったのだが、『どら焼き』で小腹が満たせたこと、冒険者ギルドの方が通り道で近いこともあって、姉妹の方から予定を変更してはとの提案があり、冒険者ギルドで先に用事をすませてレストランにきたのだった。
冒険者ギルドでの用事は、ツバキ・カエデ両名の『アンバーチャイルド』での正式パーティ登録とギルドマスターへのホクトからの言付けだけだった。
ふたりのパーティ登録を申請された際、受付事務員はみためでわかるほど驚愕して復唱し、そしてそれを聞きつけたマルティ・ミヤビをわきで見ていた冒険者たちが一様にざわめいた。
事情をききつけた古株の受付嬢で、ギルドマスターケビンと同様ホクトになじみのあるハンナという壮麗の女性がかさねて確認にでた。
「リーダーのホクトくんの姿が見えないようだけど、この二人のパーティ参加は承諾しているの?ミヤビちゃん、間違いない?」
「間違いないにゃ。もともとこの二人はホクトが誘ったにゃ」
「そうなの、いやあれだけ他の人間をパーティに参加させるのをかたくなに断っていたのにね...どういう風の吹き回し?」
「それはこんどホクトにあった時に、聞いてほしいにゃ」
あまりのギルド内の騒ぎに、注目されている姉妹はとまどう。
マルティはあとで説明するからと姉妹をなだめ、さっさと登録をおわせて冒険者ギルドをあとにした。
ギルマスはあいにく不在ということで、そのハンナという受付嬢にマルティはホクトからあずかったとして、『どら焼き』を大箱いっぱいおいていくのもわすれなかった。
ギルドをでるとカエデは詰問しようとかまえていたが、まわりの冒険者たちの注目があまりにつよかったので、まずは移動ということでなじみというレストランにだまって移動した。
そして、レストランにつくやいなや、今日の定食を人数分と問答無用でたのまれて出てきた生姜焼きに叫んでいるカエデであった。




