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サイドB-45 ファーラーンの町

乗員たちにとって悪夢の飛行移動は、マルティの予言通り2時間で完了した。

下降に対してのみマルティはシートベルトの着用をみなに課した。


上昇時と同様防御結界のおかけで安全性は確保できているのだが、なだらかとはいえ下降による車体の傾斜に乗客たちがパニックに陥って暴れられても困るので、対策のためだった。

マルティの予想通り、下降時の軽い浮遊感に悲鳴をあげるメンバーがいたが、おかげで大きなトラブルは発生しなかった。


「ここで休息がてら夕食をとって、そのあと出発します。そのあとは前回と同じように夜どうし馬車で移動ね」


マルティがそう宣言して森の中で馬車を止めた時には、すでに日が傾き始めていた。

野宿よりは座り心地のよい席でモーフをかぶって寝た方が体に楽で、かつ安全ということを乗客たちも以前の経験でわかっていたので、指示に従う。

マルティが用意してくれた夕食は、今回も軽食でオークカツサンドにエッグサンドをメインにコンソメスープにジャガイモを細く切って揚げ、塩で味付けしたものだった。


みんなが地面の上にいれるありがたみをかみしめつつ用意された食事をとっている横で、マルティとミヤビがヘラジカ・ゴーレム4頭を外して片づけていた。


「もう6頭だてはやめるんですか?」

「ああ、これは地上を走るにはオーバースペックだからね」

「オーバースペック?」

「えーと、能力が余っちゃうという意味。このゴーレムは1頭でもこの程度の馬車なら十分引けるんだけど、馬車がちょっと幅があるからわざわざ二頭たてにしてるだけだしね。あと6頭でひいたまま街に入ると目立っちゃうでしょ」


ヘラジカ・ゴーレムもクラウドほどの能力はないものの、引くだけの力であれば1頭でもひけをとらない。

そして走る最高速度もツバキたちには言えないが、何の障害物もない空中では地面に見立てていた摩擦係数をわざと高くした防御シールドとの相乗効果で時速500キロまで出ていた。

つまり2時間で約1000キロを走破したことになる。


「あとどのくらいでつく予定ですか?」

「夜どうし普通に走って、何にもなくて朝にはつくかな。門が開くのが6時ごろだから、それにあわせる程度にゆっくり走るけどね」

「ゆっくりって...聞き忘れたんですけど、今どこらへんですか?」

「ミュートラムとファーラーンの間ぐらいだよ。ファーラーン寄りだけど」

「えっ、もうそんなに移動できちゃってるんですか?どんなに速く移動したとしてもミュートラム前だと思ってたんですけど...」

「明日はもうファーラーンだよ。さっ、早く夕食とってきな。1時間後には出発するよ」


ツバキは移動距離に驚きをかくせなかった様子を見せつつ元気に返事をして、食事の団らんに戻っていった。

それから1時間後、御者席にすわったマルティとミヤビは、改めてつけなおした手綱をとって出発した。


飛んでいるところを誰かに見られるわけにもいかないので、人気の少なそうな森の深いところを選択しておりたったので、地上移動もある程度長くしなければならないのはしょうがないが、飛行機使用にありがちな飛行時間に対して前後の工程が長くなるのは、どこの世界でもおんなじだなとマルティ=北斗は一人心の中でつぶやいた。


★★★


ファーラーンの門は、唐突に森の中に出現した。

実際は城壁から50メートルは、魔獣監視用の森とのギャップとして刈り取ってあるが、城壁自体が10メートルを越える高さで距離感がバグってしまい唐突に城壁が出現したように感じられたのだ。


「ついたみたいね、大きな城壁ね」


カエデ・ツバキ姉妹が馬車サイドの引き窓からのぞく。

何回かおどすれたことのある行商人たちは関心なく横目で見る程度だったが、サーマルス・ロードの人間たちについては、初めて見る森の中の景色に調味深げに自分たちのサイドの窓からのぞいていた。


「ああ、あれがファーラーンの第3城壁だよ。最初は木の柵しかない小さな村だったんだけど、ダンジョンが見つかって急速に人口がふえて、その分住居や商業施設もふえてね。いつの間にやら第3城壁をつくらなくちゃいけないほど町が拡大していったんだよ。ただ、人口が増えたので、治安や防衛のために軍隊も常駐させる話も出ているみたいだから、もっと大きくなるだろうね」

「へぇー。失礼かもだけどこんな僻地なのに、ずいぶん立派な作りと規模ね」


ホクトがその原型を作ったことは、話が長くなるのでここではあえて説明しないでおく。

そもそもホクトがダンジョンを発見したのは、ギルドからの森伐採の依頼の過程でのことだ。

第1城壁はおなじくホクトがダンジョンに対する防壁のために作った壁がベースとなっており、それを取り囲むようにこれもホクトが大量に伐採してひらけた土地がいまの町のベースである第2城壁内の町となっている。


「僕らが目指すブロックは、第2城壁を越えたことろだ。そこには行商人さんたちとカロンさんたちの目的地である商店『カメヤマシャチュウ』の本店と僕らのこの町での家があるよ。ついでに言うとこの町の冒険者ギルド支部もある」

「いえ?持ち家ですか?」


ツバキが乗り出すように御者席のマルティに問いかける。


「うん、僕たちパーティの拠点ね。ホクトがおじいさんとくらしていた家がここからさらに1日程度の北にあるんで、本当はそこがパーティの本当の拠点なんだけど、町に来るたびに宿屋をとるとか不便なんで、この町にも居をかまえたんだ」

「そうなんですね。私たちに見せたいというのは、ひょっとしてその家ですか?」

「それもひとつかな。見せたいものは色々あるんで、順番に消化させて」


そうこうするうちに馬車は第2城門前まで到達する。

第3城門から第2城門の間も建物が密集しており、大通り沿いには開店準備におわれている店やおそらく冒険者がたくさん泊まっていそうな宿屋が複数ならんでいた。

それでさえ姉妹とサーマス・ロードの人々を感心させるのに十分だったのだが、第2城門をぬけるとその華やかさはさらに絢爛となる。


大通りに面した建物だけかもしれないが、3~4楷建ての大きな建造物が連なり、移動手段と思われる馬車や馬が早い時間にもかかわらず行きかっていた。

高い建物で見通しの悪いせいもあるだろうが、第1城壁までの距離もあるようで、馬車は町中をしばらく歩き続ける。

そのうちひときわ大きな建物、幅も広く高さも7階建ての奥行が相当ある建物のが見えてきて、マルティはあれが商人たちの目的地である商会『カメヤマシャチュウ』であることをつげた。


「でか。でっかいよ。あんな建物イオシスでもみたことない。しいていえば教会の聖堂かな。嫌でもあんなに高くないし」


カエデがメンバーの感想を代表して口にする。

サーマス・ロード王国の常識はわからないが、それでも『カメヤマシャチュウ』商会の建物は大きいと感じていることはわかった。


「まあここが本店でこの町の商流をつかさどってるといってもいい商会の建物だしね。おいてあるものも多岐にわたるんで、これでもまだ足りないらしいよ」

「これで?いや首都のイオシスにもこんなでっかい商店はないよ」


自分の偉業なので、マルティの口調は自然自慢になる。

店の前につくと行商人たちはお礼をマルティにいい、そのまま商会のなかへときえていった。

マルティは今回特別に乗せたジョージに約束通り亜竜の肉を20キロ程わたして、しっかり口止めをする。

ジョージは肉に喜んで、まちへと消えていった。

守ってもらえるかどうかは微妙だが、今後の付き合いを考えれば、おそらく口をつぐんでくれるものと信じるマルティであった。


マルティは顔見知りの店員をみつけてサーマス・ロードの人々の事情を軽く説明し、ここの店主であり商会代表でもあるオリョウに取り次ぐよう依頼する。


「代表はここに住んでいてたぶんこの時間にはもう起きていると思うんで、あってくれるとおもいますよ。忙しい方なんで、すぐに会えるかどうかはわからないけど」

「いえいえ、この町まではイオシスから最低でも1ヶ月はかかるとうかがっていたんで、行程がすごく短縮されて2日ですんだことを考えれば1週間待ってもまだ早いんで。ほんとうにありがとうこざいました」


ここでも三人を代表して、カロンがマルティたちにお礼の言葉を告げる。


「それにしても前回の高速な馬車といい、今回の特殊な馬車とゴーレムといい、マルティさんたちは本当に不思議な冒険者ですね。ランクがDで余り認知度もないということでしたが、もっと知られていてもよいとおもうのでずが...」

「ああそれに関しては、知られていない方がありがたいんで、カロンさんたちもあまり僕たちのことを噂しないでくださいね。とくに今回の旅程につかった手段については、繰り返しで申し訳ないけど他言無用でお願いします」

「はい、それについてはお約束します。まあ仮にお話しても、信じてもらえない確率が高いと思いますけどね」


雑談しているうちに店員がかえってきて、とりあえず応接室へ案内する旨を告げられ、またと軽い挨拶でマルティたちとは別れた。

馬車はそのあと町の中心、ダンジョンを囲う第1城壁を横目に見ながら円をかくように移動していく。

途中『カメヤマシャチュウ』ほどではないが、そこそこ大きな建物の前を横切る。

マルティは姉妹にそこがこの町の冒険者ギルトであることをつげる。


「イオシスの冒険者ギルドよりも、たぶんだけど大きいわ」

「ダンジョンがある町の冒険者ギルドだからね。大量の冒険者とダンジョンの獲得物を裁かなくてはいけないから、職員も多くてこうなっちゃたんだと思う。僕らも落ち着いたらギルド・マスターのところに顔出さないと」

「ランクDなのに?逗留報告義務はランクB以上じゃなかったっけ?」

「ギルド・マスターがホクトのおじいさんのもとパーティメンバーだったんで、顔なじみなんだ」


そうこうするうちに、馬車は1軒の家の前へとつく。

横に長めの2階建て建物で一応外壁と小さな庭があり、馬車が止められる程度のエントランスはあった。

門にとびらはなかったが、代わりに門の両サイドに見覚えのある木人ゴーレムがたっていた。


馬車が止まると同時に正面玄関からメイドと執事が慌てるでもなく出てきた。


「アルファ、イプシロンただいま」


マルティの呼びかけに、ふたりは深いお辞儀とはいという短い返答で対応した。

メイドも執事も姉妹は初見ではあったが、見覚えのある雰囲気のメイド服に、ふたりが醸し出すオーラにはなんとなく既視感があった。


「紹介するね。右の金髪のメイドがアルファで銀髪の執事がイプシロン。ふたりには留守中の建物の維持と、滞在時には給仕全般をしてもらってるよ」


商会のたびにそれぞれが姉妹にむかって会釈をする。


「こちらは剣士がカエデに魔法士がツバキ。新しいパーティメンバーだ。なので内部の人間と同等に対応して」

「ちょっとマルティ、受け入れてくれるのはありがたいんだけど、たぶんだけどこの二人って」

「うん想像通りだとおもうよ。二人とも君のうちにおいてきたメイドたちとおんなし。僕の作ったホムンクルスだよ」



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