サイドA-9 初めての魔物狩
ホクトが最初に見つけたのは、1本角を持つホーン・ラビットであった。
ウサギと名がついているが、魔獣だけあって気性がはげしく、ヒューマン程度であれば突進で襲ってくる。
同時に肉がやわらかく、角も毛皮も素材として秀逸で、比較的弱い部類に入るため、狩猟対象として人気のある魔物であった。
通常は、現実世界でいうと豚程度の大きさが普通なのだが、この森にふさわしくホクトの見つけたものは、仔馬程度の大きさであった。
隠密スキルが働いているため、姿を見せたり大きな音を立てない限り、見つからないので、ホクトは背後からまわって、小木の陰に隠れて鑑定を行ってみた。
(えっ)
ホクトは、結果に驚いて、ガサリと音を立ててしまった。
ホーン・ラビットは、敏感に音を察知すると、北斗めがけて突進して来た。
ホクトは間一髪ではなく、その動きを余裕で回避した。
ホーン・ラビットは突進が空振りに終わると、そのまま走り去った。
取り逃がしたのは残念なはずのホクトは、茫然自失状態だった。
そのスキル値の余りの低さに、唖然としてしまったのだ。
ホーン・ラビットのステータスは、最大値がHPの21だった。
ホクトのステータスの1/1000程度しかなかった。
★★★
ホクトはその後気を取り直して、根気よく索敵を継続し、グレートレッドボアに遭遇した。
その体躯は、現実世界のダンプカーなみにでかく、正面切って対峙したいとは思えないほどの迫力があった。
ただ、ここでもホクトがある程度予測した通り、ホーン・ラビットほどではないにしても、鑑定結果は外見からは想像できないほど低かった。
HP 180
MP 20
ATK 250
DEF 232
INT 11
AGL 14
MGR 9
LUCK 45
現代人であるホクトが、現実世界でこのような大きくどう猛な生物に、遮蔽物なしで対峙することはない。
なのでホクトのなかの現実世界人としての、常識的な精神範囲ではひびりまくっていた。
反面ステータス絶対主義のゲーマとしては、100倍以上のステータスをもつこの体が、体の大きさに関係なく負けることはありえないと確信していた。
(男は度胸ってか)
ホクトは腰に下げたツクヨミの剣を抜くと、隠密スキルでグレートレッドボアの背後に忍び寄り、剣技スキルの命じるままに点に突き上げるように巨体を薙いだ。
ツクヨミの剣は、何の抵抗もなく、グレートレッドボアのからだを、すり抜けた。
グレートレッドボアは、悲鳴あげ横転、若干の痙攣のあと動かなくなった。
スキルのおかげか、急所を一閃したらしく、あっけない幕切れだった。
ホクトの中で、無音ではあったが意識できるファンファーレとログが流れた。
「ホクトのレベルが2に上がりました。スキルポイント20獲得しました」
「ホクトのレベルが3に上がりました。スキルポイント30獲得しました」
「ホクトのレベルが4に上がりました。スキルポイント40獲得しました」
:
「ホクトのレベルが31に上がりました。スキルポイント310獲得しました」
レベルが低いとはいえ、上がり方と獲得できるスキルポイントが極端なような気がしたが、これも『ケイオスの指輪』による経験値10倍のせいだとホクトは思い出した。
各ステータスも、元が大きいので極端ではないが、それなりに上がっていた。
ホクトは若干興奮しながらも、今の成果をかみしめた。
レットボアの巨体は、そのまま松のユニットストレージに格納した。
★★★
大物をしとめたことと、ステータスの差が歴然としている事実が、その後のホクトを勢いづかせた。
魔物とはいえ血を見ることでの興奮や、本能的な恐怖からくる武者震いが無くなることはなかったが、1匹目の討伐に比べたら、だいぶ冷静に対応している自信がホクトにはあった。
剣技については、ツクヨミの剣を使いこなせるスキル『剣術(日本刀)』を持っているため、自然と体が反応して扱えていた。
無意識かつ半自動的な動作になっていることは否めなかったが、少しづつではあるが思考も追従するようになってきた。
ホクトは、自分がどのように体を動かしてその剣技を出せているか、また振る前に軌道を頭に思い描くことができるなど、後付けではあるが心技が一体化してきたと感じた。
そして効率的に剣が振れており、あいての弱点や急所を畳みかけるようにヒットさせることができることから、剣術のスキルとは
・リアルタイムに剣の振り方を組み立てることができる。
・対象の弱点や急所を的確に把握することができる。
・剣の挙動を体だけでなく、頭の中でも理解や組み立てができる。
との結論に、ホクトはたどりついた。
結局あのあと、ホーンラ・ビット5体、グレイウルフ15体、レッドボア2体を討伐し、最終レベルは52、獲得スキルポイントは4200となった。魔獣狩り初日としては、ずいぶんと大きな成果だと感じた。
グレイウルフは集団に遭遇したので数が多かったが、それ以外の魔獣は単独でいたところを狩ったことから、ペースとしても相当早い部類だろうと感じた。
討伐後は解体作業をせずに、すべて時間制止タイプのストレージにそのまま格納した。
ストレージ格納に関しては、対象に近寄って格納先を想定するだけで、自動的に収まったので、手は全くかからなかった。
格納先の種類にしても、同じ種類のものはいくつ格納しても総量に問題がないユニットストレージを利用したので、魔物が4種類ということもあって、大小関係なく今回は4つのストレージユニットだけがうまった。
解体はこれからではあったが、ホクトとしては当分の食材を確保できたことで、ほくほくであった。




