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サイドC-21 北斗ダンジョン会議

ガガは目覚めると簡素だが清潔で高い天井が目の前に広がっていた。

窓は遮蔽物が薄いレースのカーテン以外ない作りで。そこからつねに気持ちの良い風が流れ込み、窓の外からは波が建物にあたる音が単調にくりかえされている。


気候はあつくも寒くもなく、過ごしやすい気候で窓がオープンでも違和感はなかった。

ガガたちのいる建物は浅瀬の海の上に建っており、陸地とは桟橋を経由して離れた場所にあった。

海と海岸を挟んで陸地にたつ建物は、高さ30メートル程度の弧を書いた四角いてたもので、「城」として案内されたが、それはガガたちの想像する城とは似ても似つかなかった。


それも当然で、この建物は現実世界の南国リゾートホテルをモデルに模したもので、ガガたちの割り当てられた場所は海上コテージをまねしたものだった。

当初は見たこともない形式の建物で、海の上という斬新さにメンバー一同喜んではいたものの、じつは次の層に行くための通路がある本館からガガたちを遠ざけるための措置で、実質隔離に近い状態だ。


それでも対応はいたせりつくせりで、天蓋こそないが上質で大型のベッドにシャワーとかいう体を洗う機器にテツガでも余裕で浸かれるバスタブ、清潔なトイレに贅沢な食事にメンバー一同不満はない。

むしろ本館を含めて見たことのない様式や遜色ない対応、快適な気候に風の音や波の音以外しない環境、ダンジョン内とは思えないほどゆったりとして安全な時間がながれるのに身を任せることに心地よさを感じていた。


(あれほどまでのヒュドラ戦が遠い過去のようだな....)


メンバーはもちろん、国王の使命をおびているガガでさえ、呆けそうになる環境だからしょうがないともいえた。


「ガガ様、おはようございます。お食事の用意ができております」


寝室の入り口、こちらも扉はないのだが、にマリンブルーのメイド服を着た黒髪の少女がガガに声をかけた。

「城」に到着後、ガガたちに割り当てらりれたメイドで、名前をタウというらしかった。

当初はタキシードエルフのタクミが案内等や説明をしてくれていたが、そのうちこのタウに引き継がれ全員の補助兼見張り役を一人でおこなっている。


「メンバーの方々もすでに来られております。いかがいたしましょうか?」

「ああ、わかった。すぐ行く」


ガガたちは個々に海上コテージを割り当てられており、その中心にあるカウンターバー付きの食堂で、あつまって食事をしている。

こうして食事をとるのは5回目、つまりカスミと戦ってからふた晩が過ぎていた。

食堂につくと、メンバーは先にすわって食事を開始していた。


朝食はパンにスクランブルエッグ、オークベーコンにブラッドシープのウィンナー、大量のサラダにコーンスープ、果物のジュースと牛乳であった。

デザートとして、生クリームのたっぷりと乗ったシフォンケーキに、ガガたちにはなじみのない柿とキウィという果物もつんであった。

そのほかに個別で頼んだであろうオムライスがプラティアの前にあった。


「おう、リーダー、先にやってるぜ」


テツガのあいさつに無言で席にすわる。


「相変わらずの量だな、プラティア。体が重くなるぞ」

「それはありませんわ。すべて魔力に変換されますさかい」


軽口をたたくも、ガガも食すのに藪嵩ではない朝食を開始する。

ほかの食事もそうだが、このカリっとしていて表面がやや硬さのある塩けの多いパンがガガは好きになり始めていた。


「それにしても、こうゆったりしていると、気が抜けちまうぜ」

「同感です。とてもダンジョン攻略中という感じではありません」


おなじく食すことに楽しみを持ち出しているテツガとランも、こんな状態でいいのかと思い始めている。


「まあな、あちらさんの出方を待つしかないからな。なんとかしたくても、あのカスミがいる限り俺たちにはなにもできんしな」


記憶をけされて、強制的に送り返されるよりはましということだ。

自由に動けない以外は対応に不満はないし。


「でももう二日ですよ。いつまで待たされるんですかね?」


ランが背後に控える黒髪のメイドの方をちらりとみてつぶやく。

聞こえるようには言ったつもりだが、メイドは微動だにせず無視をつらぬく。


「さあな、あれ以来カスミも男のエルフ、タクミだったかな?も姿を見せないし。でも俺たちに何もしないということは、ちょっとは真剣に対策を講じてくれているんじゃないのか?」

「結論が出ない場合、ずっと監禁しておかれている、ということもありうりますがな」


プラティアのつけたしの言葉に、メンバーはその可能性もありうることを想像して黙り込む。


(お願いだから対策を検討してくれてろよ...でないと、ここからの決死の脱出を考えないといけないぞ)


それだけは避けたい事態だった。

カスミだけでなくあのタクミも相当な実力者に見えたし、背後の黒髪メイドもあの連中の仲間である以上、なにかしらの特異性があると考えてよかった。

なによりも、来た道を戻るにしても、ヒュドラも復活しているだろうし、それで足止めを食らっている間に追いつかれてとらえられたらアウトである。


せっかくの食事も味がしなくなるほど切に願うガガであった。


★★★


ガガが悩んでいるとき、同様に北斗たちも難問を抱えて悩んでいた。

カスミに報告を受けたエギルは事態を重く受け止め、エギルキャラだけで解決すべき内容ではないということで、『多重自我憑依』の機能である自身同士のメッセージを用いて、ホクト(マルティ)とオリョウをファーラーン・ダンジョン・コアルームに呼び寄せていた。


オリョウは『多重自我憑依』でサブキャラに北斗の自我を乗せたひとりで、『カメヤマシャチュウ』商会の代表を務めている。

彼女はマルティと同じハイ・ヒューマンのURキャラで特性は魔法職なのだが、記憶と計算に特化したスキルも持ち合わせていたため、北斗の構想のひとつであった商会の代表をになっている。


今この世界で北斗の自我をかぶせているキャラはあとふたりいて、アースワン・ダンジョンのダンジョンマスターのミミコ、ベルゼ・ダンジョンのダンジョン・マスターのエリゼオだ。

この二人はダンジョン・マスターの特性上ダンジョン外への移動はできず合流は無理なので、今回は欠席となる。


本来であれば現実世界にもどって北斗として意識を統合して考えても良いのだが、この場合はダンジョンマスター、冒険者、商会代表という三つの視点から同一人物で同じような思考の持ち主同士であっても議論した方がよさそうだとエギルはおもい、二人をダンジョンまで呼び寄せたのだった。

ふたりもこの方針には賛成した。


ダンジョンコア・ルームにはあとカスミと猫人のミヤビとマツリ、ホクトのパーティメンバーであるカエデとツバキの姉妹もいた。

ホクトはカエデとツバキについては連れてくるか迷ったものの、この世界の住人の意見としては必要と判断したため、パーティとしてもともと行動はともにしていたのもあるが、今回は相談事があると連れてきた。

タクミは意思のないサブキャラなので、背後にて給仕をしつつ控えている。

この部屋にはいまはいないが、タクミのほかにマルティが生み出したホムンクルスのタオが常駐している。

彼女はいま第78階層の、エギルいわく『南国のリゾートホテル群』で、ガガたち『レッドサンダー』の給仕兼見張り役として張り付かせている。

彼女もマルティの生み出したホムンクルス同様、ある程度の自立意識と給仕能力を有しており、戦闘能力に関してはサブキャラには及ばないものの、アイテムを盛りだくさんつけた上に特定スキルを伸ばすことで、S級冒険者の彼らでも足止めできるくらいの実力は要している。


「考えることはたくさんあるが、俺が思うに要約するとこうなると思う」


エギルは、紙に書き出した項目を皆に見せる。


1.『レットサンダー』に開示する秘密の範囲

2.秘密を開示した後のフィオナ王国の対応方法

3.『レッドサンダー』を仲間として迎え入れるか?


紙をみてホクトとオリョウはうなりだす。


「3.についてはないんじゃないか?今回は冒険者としてきているだろうけど、国に帰れば貴族でもあるんだろ?」

「そうね。しかも今回のダンジョン攻略が純粋な冒険者のそれではないからね。仲間にできても、貴族なら国を優先せざるを得ない場合もあるだろうし、それをはねのけられるポリシーがあるかどうかもいまの段階ではわからないからね」

「それに関してはあげておいて何だが、俺もそう思っている。ただちょっと気にかかる部分があって、可能性がない事もないんじゃないかと思ってあげた」

「気になること?」

「ああ、彼が冒険者パーティーを組んでいることだ。この世界での常識はわからないが、普通俺たちの知っている貴族といえば権力獲得や拝金主義、つまりどれだけ財をなすかに腐心している人物ばかりを想定する。もちろん国を思ってのそれらの闘争でもあったりするわけだが、それでも最終的には自国の利益を優先する体質は変わらないと思う。ところがだ、彼はそういう立場にありながらも、自分の軍隊ではなく、自分のパーティーを形成している。これがどういう意味なのかはわからないが、ちょっと特異だと思った。もう少し彼のことをしってその理由如何では、仲間にできるんじゃないかなとも思った」

「なるほど。ツバキ、この国で有名な冒険者パーティを組みつつ政治にも携わっている人間を知っているか?」


ホクトは、背後をふりかえり姉妹のひとり、ツバキに聞く。


「えっ、政治家で冒険者ですか?いや聞いたことはないです。軍隊の長などが政治に参加している例はありますが、すくなくとも著名な冒険者パーティの方で政治に参加されている方は、私の知っている範囲ではありません」


それをきいて、分体三人とカスミはそうだよなとうなづく。

そこら辺の常識は、この世界でも同じようで安心する。


「でもさ、Sランクパーティーだぜ。冒険者ギルドは身分は配慮しない実力・実績主義だ。そうとうの実績か実力がないとS認定はされないはずだから、片手間に冒険者やっていたとも思えないぜ」


カエデが私もいると言わんばかりに、つけたした。


「そりゃそうだ。この件はガガという貴族の経緯をしるまでは保留だな。ギルマスのケビンなら何か知っていると思うから、聞いておくよ。話はそれからだな」


一同ホクトの言葉に同意し、次の話にうつった。


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