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劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第3章 統合新人戦編
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第56話 次の選手

統合新人戦2日目午前の部

いよいよ残るは第1ステージの大将戦のみ。

イリーナル学園はすでに負けが確定しているものの、

第3試合に向けて希望を残すのであればここは勝つべきところ

果たして出場者は誰になるのか?


ー少し前のサンジュ学園サイドー


「お嬢様っ!その魔法はっ!」


お嬢様、水炎寺 波流渦の従者レイリーは統合新人戦第2試合大将戦の試合を観戦している。

試合は対戦相手、レイン・ザガンの剣技に対して水炎寺が人工魔装である紅藍紫槍ブルージュ・プゥプレェランスを使用。

その魔法である『青槍守天・壁靂鎧甲』を発動中のところだ。


「ありゃ?あの魔法、自分ごといってねーか?」


隣で不思議そうな顔をして尋ねるのは風間 風助。

レイリー達と同じチームメイトだ。


「あの魔法はまだ未完成。元々人工魔装の力を完全に会得していない状態での使用だと言うのに…」


「あれ未完成であの完成度なんだ…」


風間は改めて公爵家のポテンシャルに驚かされる。


「てか、あの身体状況でそれってヤバくねえか?」


「だから言ってるではないかっ!」


レイリーは声を荒げる。


「そんな俺に言っても…」


「お嬢様…」


心配そうな従者は今にも飛び出していきそうだ。

目の前で懸命に戦っている水炎寺の姿を受け、一滴の涙をこぼす。


「…次で決着がつきそうだな」


「ああ、絶対にお嬢様が勝つ」


両者から最後の一撃であろう大技が発動する。

互いの技はぶつかり合い、やがて…


「…分がわりい」


風間の一言。

それがすべての結果を予知させる。

水炎寺の魔法が真っ二つに割れ、レインの剣技が届く。

その刹那。


「…風間」


呼ばれた本人が振り向くと、そこには氣と魔力を練り、臨戦態勢のチームメイトがいた。


「すまない。…後は頼む」


「おいおい…まじかよ」


「『剛氣・耐』、『剛氣・速』」


魔法を唱え、視界から消える。

その後1秒もたたず、



ザクッッッ。



ブシャァァァ。



なにかがちぎれる音、噴き出す音が響く。


「…くっっっそが」


風間は何もできない自分の弱さに嫌悪感を示す。

…その後のやり取りは省こうか。

結果としては、聖マリウス学院の完勝。

この時点で優勝候補はほぼ絞られる。

いまだ第1ステージの大将戦は終了していないが、2試合目の結果はすでに決まっている結果。

イリーナル学園は2敗していることから第2試合は負けが確定。

それも込みでの順位表はこうなっている。

聖マリウス学院 5勝1敗 0分け

老游院     3勝2敗 0分け 2試合大将戦を除く

イリーナル学園 1勝3敗 1分け 2試合大将戦を除く

サンジュ学園  1勝4敗 1分け


次の大将戦で老游院が勝利すれば希望はある。

だが、3試合目のイリーナル学園と聖マリウス学院。

現状ここで聖マリウス学院が勝ち星を落とすとは考えられない。

しいて言うならレオナルドが勝もぎ取るくらい。

だが、その頼みのレオナルドも試合に出れる状態は分からない。

イリーナル学園とサンジュ学園は崖っぷちだ。


そんな大事な大将戦。

その結果を見ていこう。





ー現在ー


「…あの、クノウさん」


おどおどした様子で、座っている女性に話しかけるのはイリーナル学園の選手、天縫糸 花音。

そのかのんが話しかける人物、イチカ・クノウ。

彼女は静かに目を閉じている。


「…お話しても、良いでしょうか?」


「…どうしたのじゃ?天縫糸殿」


「…次の大将戦、クノウさんが出ていただけませんか?」


「…理由を聞いても良いかの?」


かのんは不安げに話し始める。


「…私は、私の実力が分かっているつもりです。老游院の方はあの姉妹さんのどちらかです。幻術を使うような方か、近接が強そうな方。…私じゃ、とても勝てるとは思いません…」


「…わしの意見、良いかの?」


かのんは黙って頷く。


「1つ。わしとしては、あの氣というものがどの程度のものがいまだ分かっておらん。その分、お主の方がまだ対処可能と思える。2つ。近接を相手にするものならお主は先の新人戦で通用することを証明しておる。3つ。幻術使い、これの対処も、おぬしはもっておろう?」


まるでかのんの心を見透かしたように聞くクノウ。

その発言にドキッとしてしまうかのん。


「…なんでそう思うかは、聞きません。…ですが、それを考慮しても、クノウさんが良いといいと思います」


「うむ…困ったの…」


クノウは困った表情をする。


「…お主は怖いんじゃろうなあ。前の大会と違い、ここはたくさんの()がある。それがお主の行動を、勇気を、妨げてしまうんじゃろうなあ…」


クノウは少し考えた後、ポンっと手を叩く。


「そうじゃ。それなら公平にじゃんけんで決めようかの」


思いついたように話を進めるクノウ。


「わしが勝ったら、天縫糸殿。お主が出るのじゃ。お主が勝ったら、わしが出る。これでいいじゃろ?」


かのんは急な提案にびっくりするが少し考えたあと、


「…たしかに私の一存で出てくださいは、少し不公平な気がします。やりましょう」


「それじゃあいくのー?さいしょはぐー、じゃーんけーん」


かのんはぐーを出そうと手を伸ばす。


『…クノウさんは…?』


かのんがチラッとクノウの手を見る。

はっきりとは見えないが、クノウの手はチョキの形をしている…ように見えた。


『…私の勝ちっ』


かのんは内心喜んでいた。


「ぽん」


かのんは先ほども言ったようにぐーを出した。

だが、クノウは…パーを出していた。


「…えっ」


「これでわしの勝ちかの」


かのんは納得いかない様子。


「…ク、クノウさんっ!さっきまでチョキだったのに!」


「お主は手が見えておったのかの?残念じゃったなあ、見間違いみたいじゃ」


そんなわけない。

かのんは何かしらの種があると思い、クノウを見る。

クノウはパーを出した手をブラブラと振っている。

かのんはその動きを見てハッとする。


「…クノウさん、魔法使いましたね?」


そう。

クノウは確かにチョキを出そうとしていた。

だが、クノウの使う雷魔法。

これを利用し、電気刺激によって自身の筋肉に電気を流し、反射的に指を動かしたのだ。


「…目ざといのう。でも魔法を使ってはダメ、とは言っておらんじゃろ?」


「…」


かのんはムスッとした顔でクノウを見る。


「…どうじゃ?緊張は解けたかの?」


クノウの言葉にいつの間にか緊張の糸が切れていることに気づくかのん。


「…それでも、イカサマは許しません」


「すまんかったの。根に持ってくれて構わないぞ。その方がお主の記憶にわしが残るというものじゃ」


「っ!…ふふっ。クノウさんたらお茶目なところもあるんですね」


「おちゃめ…とな?」


「そんな事しなくても私はクノウさんのこと覚えてますよ」


「…そうじゃな」


「イリーナル学園の生徒様。大将戦の選手を決めてくださーい」


かのんとクノウを呼ぶアナウンスが聞こえる。

司会の念動 勝さんだ。


「…負けちゃったんで、行ってきますね」


「無理するでないぞー」


不思議と怖さはない。

緊張もさっきなくなった。

こんなにステージに行く足が軽いと思ってなかった。

それもこれもクノウさんのおかげ。


「…よしっ」


気合を入れてステージに上がるかのん。


「あ、かのんちゃんだ。かのんちゃーんっ!」


観客席からかのんの名前を呼ぶ声が聞こえる。

かのんは声のする方へ顔を向けると、パァと笑顔になる。


「…華ちゃんっ!」


観客席からお嬢、公家院 華が手を振ってかのんを応援している。


「…頑張るからねっ」


「仲睦まじいね」


かのんの対戦相手、林・美蘭(リン・メイラン)がかのんに話しかける。


「…老游院は、仲良くないんですか?」


「己の力高める、これにそんなの不要ね」


「…貴方の考えは分かりました。…でも、私には必要なものだと思います」


「人の考えなんてかんけーないね。それで強くなるなら、ぜひ教えを乞いたいね」


「…教えるなんてできませんよ?自分で見つけないと」


「ごちゃごちゃ言ってないで、さっさとやるね」


「…よろしくお願いします」


「それではこれより、試合を開始したいと思います!2日目第2試合大将戦、開始!」


「いくねっ」


開始早々、かのんに向かって突っ込んでいく美蘭。


「…ショウティちゃん!」


かのんはすかさずぬいぐるみを出す。

猫の形をした小さなぬいぐるみ、ショウティだ。


「知ってるね、人形使い!そんなの避ければいいだけね」


美蘭はショウティをひらりと躱すとかのんに急接近する。


「本体を倒せばすぐね」


美蘭が手刀を構える。


「サーティちゃん!」


かのんが新たなぬいぐるみの名前を呼ぶとかのんの前に騎士のような姿のぬいぐるみが現れる。


「なにねっ!?」


美蘭は驚いて後ろに引く。

だが後ろにはショウティが。


「ショウティちゃん!サーティちゃん!」


前方の騎士、後方の猫に囲まれる美蘭。


「なんのこれしきね」


前後から来るぬいぐるみの攻撃をいなしていく美蘭。


「…まだまだっ!」


かのんはぬいぐるみ達に指示を送り、美蘭に隙を与えない。


「ふぅー…」


美蘭はぬいぐるみと攻防しながら、静かに呼吸を整える。


『…まずい』


かのんも美蘭のしていることを察知し、なんとか妨害できないか考える。


「…ショウティちゃ…」


かのんがぬいぐるみを使って阻止しようと声かけをするが、その声は遮られる。


「おそいねっ」


美蘭は呼吸を整え終えると、体内に貯めた氣を開放する。


「『内氣静功』」


内側から解放された氣は魔力が上乗せされ、衝撃波となる。

ショウティ・サーティは衝撃波によって吹き飛ばされる。


「こんなもんか…ね」


美蘭は仁王立ちをしてかのんを煽る。


統合新人戦第2試合大将戦。

思いのほか、いい勝負になりそうだ。








老游院VSイリーナル学園 大将戦




林 美蘭VS天縫糸 花音




試合継続中

かのんの新しいぬいぐるみサーティちゃん。

護衛兵みたいな感じをイメージしてます。

THE・騎士みたいな(´・ω・`)

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