第52話 戦いの後は友
レオナルドから出た謎の魔力に皆動揺を隠せない。
各々詳細を知るべく動いているが、大会は止まることなく進んでいく。
レオナルドVS陳・立駿の試合は立駿の勝利で幕を閉じた。
少し?問題が生じたが今のところは大会に支障をきたしていない。
大きな試合となった裏ではサンジュ学園と聖マリウス学院の試合が行われていた。
「…初戦から俺かよ…」
げんなりした様子で話すのはサンジュ学園の選手、風間 風助だ。
そんな風間の横にいるのは水炎寺 波流渦とその従者レイリー。
「お嬢様は少しでも休息が必要だ」
「それは分かるんだけど。…だったらあなたが出ればいいのでは?という話です」
風間は嫌そうにレイリーに問いかける。
「初戦は誰が出るか分からん。様子見だ」
「あっそう…」
こいつには何を言っても無駄だ。
そう悟った風間はこれ以上意見するのをやめた。
「そんじゃあいってくるから…」
トボトボと諦めた様子でステージを歩き出していった風間。
「…ちょっとかわいそうになるわね」
「なぜですか?お嬢様のためになるのはむしろ光栄かと」
「それは従者である貴方だからでしょ…」
水炎寺も呆れたようにレイリーを諭すのだった。
「…先鋒はあんたなのね」
風間はステージに上がると目の前にいる対戦相手に告げる。
「まあな」
風間の前にいる槍を持った男。
パーラ・ライオネルだ。
「あんた風魔法使うだろ?それに加えて槍なんてリーチが長いもの、どうやって俺は戦えばいんだよ」
投げやりな言葉をライオネルにぶつける。
「お前も槍持てばいいだけの話じゃね?」
至極真っ当な意見である。
「残念ながら武器の才能は持ち合わせておりません」
風間は首を振りながら答える。
「そうか、ないものねだりか」
ライオネルは少し落胆する。
こんな言い訳ばっかの男が次の対戦相手か。
すぐ試合が終わりそうだな…と。
「両ステージ選手がつきましたので、試合を開始したいと思います!2日目第2試合先鋒戦、開始!」
アナウンスが聞こえる。
さっさと終わらせて中堅にバトンタッチしますか。
そう思い槍を構えようとするライオネル。
すると、
「!?」
ライオネルは目を疑う。
先ほどまで話していた風間の姿がないのだ。
「っくしょう。俺の試合はこんなんばっかかあ?」
すぐさま辺りを見渡す。
それでも風間の姿は見えない。
「っどこ行きやがった!」
「パーラ!上だ!」
ステージ外からライオネルのチームメイト、レイン・ザガンが叫ぶ。
とっさに上を向くライオネル。
そこには姿が見えなかった風間が。
「ちっ…外野から助言とかありかよ!」
魔力を貯めながら文句を言う風間。
だが充分時間は稼げた。
「これでも食らいな!」
魔力を込めた右手はライオネルに向けられる。
「『暴風』!」
ボオォォォ。
解放された魔法は一直線にライオネルに向かっていく。
「くっ…。『突風』!」
向かってくる魔法に対し槍を突き刺し対抗する。
だが、ライオネルの魔法『突風』は風間の魔法『暴風』より威力の低い風魔法。
ライオネルの分が悪い。
「ぐあぁぁぁ」
風間の魔法を受け、吹き飛ばされるライオネル。
「ふぅ…。ひとまず奇襲は成功っと」
風間は一息つく。
「てめえ…さっきまであんなにやる気なかったくせに…」
ライオネルは立ち上がりながら風間をにらむ。
「こんな展開にするにはぴったりな言動だっただろ?」
「わざとってことか…」
ライオネルの眉間に血管が浮かび上がる。
相当お怒りのようだ。
「ただでさえ実力差があるのは明確。なにか奇策がないと勝てないだろうが」
風間はぶっきらぼうに答えるが、すぐさま臨戦態勢をとる。
ライオネルの周囲に濃い魔力があふれ出る。
「ふぅ…」
ライオネルはしっかりと風間を見つめ構える。
「奇策でしか戦えない弱っちい奴ってことで侮ってくれればこっちとしてはありがたいんだが。…そうゆうわけにはいかないみたいだな」
「お前の昨日の試合は研究済みだ。最初から侮ってなんてねえよ。イリーナル学園の化け物に真正面から立ち向かったんだ。敬意すらある」
そう、昨日の試合を各参加者たちは映像として残し、それぞれ一夜漬けの研究と対策を行っていた。
「あんなダセえ試合見る価値ねえよ」
「そんな釣れないこと言うなよ」
「ったく、聖マリウス学院の選抜ってだけで大変なのに、対策までされちゃ勝ち目なんてねーよ」
「そうかよ」
「…それにしてもそんな魔力溜めてどうするつもりで?」
「お前の方こそ、それが分かった途端にこっそり魔力溜めてるじゃねえか」
「そりゃ警戒ぐらいするだろ。…まあちょうどいんじゃねえか?同じ風魔法同士、ぶっ放して決めようじゃねーの」
「嫌だ…って言いたいところなんだが」
そう言って風間は会場を見渡す。
観客席は思いの外、大盛り上がりを見せていた。
「こりゃどっちが勝つんだ!?」
「そりゃあマリウスの生徒だろ。あそこは出来が違う」
「同じ風魔法にぶつかり合い!滾るねえ!」
同じ魔法を使うこともあってか、観客の関心も増す。
「この状況で、断る方が野暮かね…」
「いいじゃねえかお前。風間…なんだ?下の名前は?」
「風助。風間 風助だよ」
「フースケか!俺はパーラ・ライオネルだ!呼び捨てで構わない」
「はいはい。パーラね、覚えとくよ」
一通り話がついたのか、2人は黙り込む。
「んじゃあ、ぶっ放しますか!」
「俺が弱えーからって、幻滅すんなよ!」
2人は魔法陣を展開する。
込められた魔力は魔法陣へと伝っていき、魔法を叫ぶ。
「ぶっ飛べ!」
「最大火力だぜ!」
「「『暴風』!!!」」
互いの魔法陣から壮大な嵐のごとく、魔法が吹き荒れる。
会場を巻き込むほどに。
だが勝負とは無情なもので、2人の威力には大きな差があった。
「くっっっそがあっ!」
威力の低い方、風間は押し切られ吹き飛ばされる。
魔法発動後のステージでは静かな風の音しか聞こえない。
「…ふぅ…」
ライオネルは一息つき、風間に近づく。
「お前の負けな?」
そう言いながら風間の手を掴む。
風間は悔しそうな顔をしながら、だがどこかすっきりしたような顔をする。
「…はいはい、分かりましたよ。俺の負け」
風間は自身で投了を宣言する。
『第2ステージ側の試合が終了しました。結果、聖マリウス学院の勝利です』
アナウンスも行われ、試合が終了する。
「映像でも見た通り、やっぱ根性があるなフースケ!」
ライオネルは風間の肩に手を回しながら声をかける。
「根性なんてねーよ。やることやっただけ」
「それがいんじゃねえか」
ライオネルは笑いながら返答する。
「負けましたね」
サンジュ学園のチームメイト、レイリーが水炎寺に話す。
「そうね。…でも、いい試合だったわ」
水炎寺は嬉しそうに呟く。
「まあ、そうですね」
珍しくレイリーも風間を賞賛する。
「おいフースケ、お前の連絡先教えてくれよ」
試合を通じて友になった2人が楽し気に話している…と、
ゾクッゾクッゾクッ。
突然の悪寒。
たまらず話を中断し、悪寒を感じたほうを見る2人。
サンジュ学園・聖マリウス学院の選手や観客席の人々も同様だ。
中には気絶するほどの人も。
「…んだよ、この魔力」
「…風が」
「ああ?どうしたフースケ?」
ライオネルは風間の言葉が聞き取れずに問う。
「風が…怯えてる…。こんなの初めてだ」
「風…?」
風間の力を知らないライオネルからすれば何を言ってるか分からない話だ。
「あっちの方向は…第1ステージか?」
考え込みながら独り言を言い続ける風間。
「何の指示もないってことは、大丈夫ってことだよな?」
「多分な」
あっちの様子は気になるが、何事もなかったため、次の試合に意識を斬り返すことにする風間。
第2ステージ側は疑問が残りながらも、中堅戦へと準備を始めるのであった。
サンジュ学園VS聖マリウス学院 先鋒戦
風間 風助VSパーラ・ライオネル
結果、パーラ・ライオネルの勝利
同じ風魔法同士の戦いはライオネルの勝利で終わりました!
あ、風魔法のレベルは、
突風→旋風→暴風がより強い風魔法になります。
ぜひ参考程度に。