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劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第3章 統合新人戦編
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第51話 隠された魔力

イリーナル学園の初戦は敗戦。

学年主席の負けをチームメイトはどう受けるのか…

また、レオナルドが見せたものはいったい…


ー最上階ー


「あれはなんだね?」


聖マリウス学院の長、エガエル・マノエル学院長は眉間にしわを寄せながらイリーナル学園長に問う。

イリーナル学園長、ジェフ・イリーナルは笑顔で答える。


「あれ…とは?」


その反応にマノエル学院長は顔を真っ赤にして問いただす。


「貴殿の生徒のことだ!知らないでは済まされんぞ!」


マノエル学院長の怒号が響く。


「そんなこと言われましても…知らないとしか言えませんね」


イリーナル学園長はさらりと応える。

マノエル学院長はその態度に肩をワナワナと震わせている。


「ほんとに知らなかったんですか?学内新人戦のことと言い、何かあるなら力になりますよ?」


助け舟を出すのは、サンジュ学園の長、酔艶寺 刀也(しんや)だ。


「何かあったときは真っ先に相談しますよ。けど、何もないものはないんですよねえ」


「あれはうちの生徒とは別だ。憑依じゃない」


するとずっと黙っていた老游院統括理事長、李が口を開ける。


「だからこうして問いただしているのではないか!あれは魔法ではない!完全は魔物による乗っ取りだ!」


マノエル学院長の怒りは収まらない。


「勘違いじゃないですかね?」


イリーナル学園長は笑顔で返す。


「あれを勘違いで済ませと?飄々としているが、イリーナルの。貴様、相当狐だな?」


理事長はクスッと笑う。


「狐だなんてそんな滅相もない」


「たしかに彼は昔からなに考えてるか分からない不思議者ですが…。悪い事に加担するような人じゃないですよ?」


酔艶寺学園長はイリーナル学園長を擁護する。


「じゃああれをどう説明する!?」


「どうと言われましても…分からない、としか」


「至急彼をここに呼びたまえ」


マノエル学院長はレオナルドを招集するように呼びかける。


「うちの生徒はうちで対応するので大丈夫ですよ」


「そんなことを言っている場合か?」


「…僕が買い取ろうか」


理事長の発言にその場が凍る。


「それは一番悪手な気がしますね…」


酔艶寺学園長は苦笑いをする。


「貴方のおもちゃにされては困ります」


「狐のおもちゃにはしていいのか?」


「おもちゃにした覚えはないんですが…」


徐々にイリーナル学園長の魔力圧が増していく。

理事長も気を練り、それに対抗する。



ミシッ…ミシッ…



強者2人の圧により、最上階の扉や窓にヒビが入っていく。


「お二人とも、落ち着いて下さいっ」


すかさず酔艶寺学園長が止めに入る。

そんな様子を見たマノエル学院長は頭を冷やした様子。


「…ふぅー…。貴殿らを見ていたら、嫌でも冷静になるわい」


「マノエル学院長が納めてくれないと困りますよ」


酔艶寺学園長は困った顔をしてマノエル学院長に話す。


「すまないな。…して、イリーナル学園長。この件をどう収めるつもりだ?」


話を振られた本人は、放っている魔力圧を抑え、口元に手をあてる。


「そうですねぇ…とりあえず本人に聞いてみないことには、何とも言えないですね。彼自身に悪意はないと思われるので、事情聴取、という形が今できることかと」


「…なにかあったらすぐに報告する様に」


「わかりました」


「なんだ、結局は現状維持か。平和を求める老害らしい思考回路だな」


「また此奴(こやつ)はっ…」


「まあまあ、この話はこの辺で納めときましょう?ね?」


酔艶寺学園長の仲裁が再度入り、事なきを経たのであった。







ー観客席ー


「う~ん、あれは~、ん~」


イリーナル学園の教員、佐々木 歪先生は困った様子でうなっている。

その横で的場先生は不快な顔をしている。


「魔物…か」


その一言を告げるだけで、それだけ異常なことかがよく分かる。


「魔物って…そんなわけ…」


お嬢、黒崎 華も何か考えた様子で反応する。


「あれが…魔物の魔力なのですか?」


生徒会長のアルサッド・ビートレイ会長は不思議そうに問う。

その横に座っている森波 木馬先輩、浦々 灰賀先輩は目を輝かせている。


「魔物を飼っているのか…?」


「おいおい、こいつはすげーぞ…」


「面白がるものじゃないだろう?人間の身体に魔物が住んでる。それがどれだけヤバい事か」


2人はすまんすまんと謝る。


「公家院さんはあまり驚かないのですね」


「わ、私だって驚いてますよ!こんなところで魔物に会うなんて…」


「あぁ、そうか。公爵家は前線の経験があるだったな」


「経験というか…社会見学というか…」


的場先生の言葉に煮え切らない様子で返すお嬢。


「ちなみに~前線で見た魔物と比べてどうでしたか~?」


ただの興味本位なのだろう。

佐々木先生はお嬢に魔物のことについて尋ねる。


「下級の魔物は見てきましたが…あれはそれに該当しないように見えました」


「というと~少なくとも~下級より上の位ということになりますね~」


「そんな異物を取り込んで生活しているというのか?非現実的な話だな」


「そんな非現実的な話を納得するのは自由ですよ~。それに彼の強さの根源があれだとすれば~少なくとも納得はできますよね~」


「たしかに…」


お嬢も佐々木先生の話に賛同する。


「ま~本人に聞いてみないことには、何も分かりませんけどね~」


佐々木先生は困った表情を変えずにしゃべる一方、的場先生は険しい顔を続けるのであった。









立駿(リージュン)、おつかれさま」


老游院側の選手出入口。

せまい通路でチームメイトの梁・我酸(リャン・ウォスァン)は、先ほどの戦いに勝利した陳・立駿(チン・リージュン)を褒める。

少なくとも褒められて機嫌を損ねたりしないだろう。

勝利したのは事実。

梁はそう思っていた。

だが、立駿の反応は違ったものだった。


「…くそがっ!」


壁を打ち付け、悔しがる表情を見せる立駿。

壁はベゴッと鈍い音を立て、破損する。


「リ、立駿…。なぜ悔しがっている?相手の主席に勝ったんだぞ…?喜ばしいことじゃないか」


梁は戸惑った様子で問う。


「…あぁ?」


機嫌が悪いようで、梁に対して不愛想な態度をとる立駿。


「勝ったのに何で機嫌悪いアルか?」


「立駿さん…」


(リン)姉妹も不思議な様子で尋ねる。


「たしかに最後の魔力は不気味なものを感じたが…」


レオナルドが最後に見せた魔力。

前線経験者や魔物との戦いを経験したことのあるものは見覚えがある。

魔物の魔力は人間の者とは違い、独特のオーラが感知される。

禍々しいもの・淀んでいるもの・邪悪なもの。

そのすべてが同一ではないものの、一度見たことあるものはその区別ができる。

というより、嫌でも区別することになる。

だが、大会に出場している生徒及び大勢の観客。

当然魔物の魔力など、分かるはずもない。

それに加え学園の生徒が魔物の魔力を持っているなんて、万が一にも考えるはずのないことだ。

たとえレオナルドか膨大な魔力量が検出されたとしてもさっきの佐々木先生同様、学年主席の強さの源という見方をすれば納得する。

異常な魔力を感知した各経験者たちの間では、にわかに信じがたいと疑心暗義になっているもの、すでに行動に起こしているものなど様々な反応を見せていた。

だからこそ老游院の選手たちは立駿が苛立っている理由が分からない。

立駿はまだ魔法継続の最中、普段の性格と正反対の状態にあることから、いつ自分たちに火種が来るかも分からない。

自分たちの中で一番強い人物。

それは心身ともに出来た人物じゃない場合、心強い味方と同時に手を付けられない猛獣と化す。


『この俺が…一瞬とはいえ…』


この先は死んでも考えたくない。

そんな事を考えている立駿には、梁たちの言葉なそ耳に入るはずもなく…。


「立駿!聞いているのか!」


しびれを切らし梁は大声を上げる。

ようやくその声が立駿に届く。


「…あぁ?」


機嫌が悪い立駿。

チームメイトの言葉もただの雑音にしか聞こえないのだろう。


「なぜお前が悔しがっているのは分からないがこれ以上はやめろ。林姉妹も怖がっている」


「…ちっ。知るかよそんなの」


そう舌打ちしながら出口の方へ歩き出す立駿。


「…なんなんだあいつ」


梁の言葉はポツンと呟かれる程度だった。









主人(マイ・マスター)、聞こえますか?』


唐突に俺、黒崎 迅の頭に響くように凛とした声が聞こえる。

老游院とイリーナル学園の試合終了後、ハクノは自身の主に連絡をとっていた。


『…聞こえるぞ』


俺は返答する。


『ただいま1つ目の試合が終了したのですが…』


なんだか煮え切らない話し方に俺は何かあったことを察する。


『ゆっくりでいい。何があったか説明してくれ』


そういったものの、ハクノはどう切り出せばいいものか考え中だ。


『あの~主人(マスター)?わたしから簡単に説明しても?』


ハクノの凛とした声とは違い、今度は可愛らしい声が聞こえる。

会場入りをしていた桃色髪の女性、桃夏だ。


『そんな深刻なことなのか?』


俺は少し不安を覚えながら桃夏に問う。


『うーん、どうなんですかねえ?…と、とりあえず報告をしますね?今戦ってたのは主席のレオナルド君だったんですけど…』


桃夏は続ける。


『試合結果としては負けました』


『…は?レオナルドが負けた?マジかよ…』


これは確かに深刻だ。

正直あのレベルの実力だったら全勝は堅いと思っていたからだ。

驚きが多い。


『問題は試合内容でして…』


『なんだ?ボコボコにでもされたのか?』


『まあ捉え方次第では。でも問題はそこじゃなくて、レオナルド君が意識を失った後、出てきたんです』


『なにが?』


『…魔物の魔力、ですかね』


………は?

思考が停止する。

桃夏は何を言ってるんだ?

突然のカミングアウトに整理ができない。

いや、きっと桃夏の見間違いだろう。


『…ハクノ』


『残念ですが、事実です』


『…どうなってんだよ、それ…』


言葉を失う俺。


『多分、上層部はすでに動いているかと』


『まあ…そうなるよな。…今回の司会者は誰だ?』


『防衛軍オペレーター、念動です』


あの人か…。

まだ冷静に対応してくれそうだな。


『んで?』


『さっそく彼周辺の調査を考えております。華様への被害は今のところ何も』


『んー、それでいいか』


『ビューは今外のことで忙しく、私達も手が回らない状態ですので、調査には向いておりませんがプロテにお願いしようかと』


『プロテかあ。まあ人手足りないし、仕方ないな。でも本人が嫌がるなら断ってもらって大丈夫だぞ』


『そう伝えておきます』


ハクノは言われた通りに動いていく。


『それにしてもなんで魔物の魔力なんか…』


『それは…分かりませんね…』


桃夏も信じられない様子。


『…近くにいるときは何も感じなかったが…』


そういえばあいつ、入学当初の魔力診断で人間離れした魔力総量が出てたな…。

たしか、魔力総量6じゃなかったっけ?

学生でその数値なら異常だ。

かの有名な万有引力の魔女(グラビティ・ウィッチ)は完成された魔法士。

彼女の魔力総量は8。

それに近しい魔力を持つレオナルドは才能にあふれた人物、だと思っていたのだが。

実力者も何かしらあるってわけだ。


『…ビューから連絡が入りました』


気になっていたもう1つの話題に進展か?

ハクノは続ける。


『遠くで動きがあったみたいです』


『何か分かるか?』


『そこまでは分からないみたいです。バレない程度に監視しているとのこと』


『そのまま続けといて。なにかあったら動く』


『了解です』


そこで会話は途切れる。

とうとう動き出した謎の存在。

果たして中央都市の人々はどうなるのか?

思ったより長くなってしまった(´・ω・`)

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