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劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第3章 統合新人戦編
50/61

第50話 僕の名は

突然の変貌。

圧倒的な力。

不気味な雰囲気を持つ相手に流れを持っていかれるレオナルド。

ここからの勝負はいかに…


「馬鹿げた力だな」


統合新人戦会場の最上階。

そこから陳・立駿(チン・リージュン)のことを語るのは老游院統括理事長、李様だ。

理事長の実力は親善試合で明らかになっている。

その理事長が興味を示すほどの存在。

それが陳・立駿だ。


「武術を重んじる我が院にて、武術を学ばない異質な存在。唯一僕に反抗した1年生。世間を知らないとはいえ、実力差も考えず噛みつくその姿勢はまるで獣。普段は飄々としている印象とは裏腹にあの凶暴性。面白い奴よ」


理事長はえらくご満悦なようだ。


「あれはなんなんですか?」


隣のテーブルから質問するのはイリーナル学園の長、ジェフ・イリーナル学園長だ。


「あれは憑依だ」


「憑依…ですか。橙色の精神魔法に近いとされていますが、実際は精神干渉はなく、あくまで魔法による魔術的強化とされている赤色の攻撃系統魔法。…珍しいですね」


興味深そうに話すのはサンジュ学園の長、酔艶寺 刀也学園長だ。


「媒体は何なんですか?」


「ベースは(マァ)…らしいが、あの凶暴性は説明つかん」


「馬ですか…。なるほど、あのスピードや破壊力はそこからきているんですね」


酔艶寺学園長は冷静に立駿を分析する。


「マノエル学院長。憑依のデメリットであのような性格変貌はありましたでしょうか?」


イリーナル学園長はこの中で1番老けている男性に声をかける。

聖マリウス学院の長、エガエル・マノエル学院長だ。


「うーむ、憑依自体あまり話を聞いたことは無い…が、媒体の精神は干渉とまでは言わんが影響はあると言われておるな」


「ですが媒体が馬ですからね…他の要因もありそうです。李理事長、彼の性質上他に関係がありそうなことが分かりますか?」


「知らん。偶然院にいた化け物だ。僕の暇をつぶせる存在にしか思ってなどいない」


「自分のとこの生徒なのに…」


マノエル学院長ははぁ…とため息をつく。


「生徒を正しい道に導くのも、先導するものの役目なのだぞ」


「偉そうに語るな」


そういってから理事長は黙ってしまう。

これ以上理事長の口が開くことはなかった。










「さぁ…こいよ」


立駿は身構えるレオナルドに一言告げる。

レオナルドは構えている剣を立駿に向ける。


「君の強さは充分わかった。…でも、それが勝てない理由にはならない」


「そんな御託はいい」


そういうとレオナルドの視界から一瞬で消える。

レオナルドは即座に辺りを見渡し、立駿の襲撃に備える。



ギンッッッ。



何かがぶつかり合う鈍い音が響く。

立駿がレオナルドをとらえるが、すんでのところで防御をとる。

立駿の一撃は重く、レオナルドは吹き飛ばされる。


「くっ…」


「よく防御できたな」


「君の姿は速すぎて捉えられない。…が、君の不気味な感じは嫌でも肌で感じるからね。紙一重だよ」


強がるように言うが、レオナルドは内心焦っていた。

身体強化の魔法をかけているにもかかわらず、ギリギリでしか反応できない状況。

ここまでの実力差を感じるのは、兄以来のことだ。


『かといって、(あの人)と同じような理不尽さではない』


レオナルドにとって兄以上ではない。

この事実は本人を奮い立たせるには充分だ。



パアァァァ。



レオナルドは静かに剣に魔力を込める。

光り輝く剣は、観る者を魅了する。


「…すごい魔力だ。そんなん食らったらひとたまりもねえな」


立駿はそう語るが、邪魔する気は全くない。


「待っててくれるんだね」


「相手の全力を折れば、戦う気も失せるだろうしな」


「なるほど」


レオナルドは納得する。

話しているうちに剣の輝きは限界まで達する。


「さぁ…見せてみろ。お前の魔法を」


「お言葉に甘えて」


レオナルドは持っている剣を上空へ向ける。

そしてその魔法の名を叫ぶ。


「『王剣光波エィペ・ロイ・リュミヌゥ』!!!」


剣から放たれた魔法は、立駿を丸呑みにするほどの規模。

光り輝く魔法が迫ってくるのを見て呟く。


「滾るねぇ…」


立駿は右脚を下げ、腰を低くする。


「…『馬超扇(ばちょうせん)』」


立駿は下げた右脚を一閃する。

両者の技がぶつかり、地響きになるほどの衝撃音が響き渡った。

立駿のいたところはレオナルドの魔法との衝突によって土煙が舞っている。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


強力な一撃は、膨大な魔力量を要する。

学内新人戦の時と比べて、その威力は以前より増している。

それほど警戒してのことなのだろう。

次第に土煙がなくなり、視界が晴れていく。


「…倒せるとは思っていないかったけど、さすがに落ち込むかな」


レオナルドの発した一言で、その場の状況が分かる。


「いやぁ…押し返せなかったのが解せねえな」


全身のいたるところが出血しているが、大きなダメージとまではいっていない様子だ。


「一点集中で、被害を防いだみたいだね」


立駿の放った『馬超扇』は、レオナルドの『王剣光波』を撃ち返すためではなく、自身のダメージを最小にするための放ったのだ。

まあ本人は撃ち返すつもりで放ったらしいが。


「一応、僕の最大威力だったんだけどね」


「効いたぜ、しっかりとな」


「そんな風には見えないけどね」


「ハッッ」


レオナルドの言葉は鼻で笑われる。


「ずいぶんとしんどそうだが、まだやれるか?心折れたんじゃねえか?」


立駿の言葉に少し迷うレオナルド。

確かに、実力差のある相手だ。

これ以上の魔法もないし、勝てるビジョンもない。

だが、レオナルドは少し表情を柔らかくする。


「………ない…か…」


レオナルドは小声で何かを呟く。


「あ?ぶつぶつと何言ってんだよ?」


「いや…。勝てる理由がなくても、戦わない理由にはならない。そんな言葉があってね」


「おまじないか何かか?」


「そうかもしれないね」


「つまんねぇ…なっ!」


立駿はレオナルドの視界から消える。


「くそっ…」


レオナルドは再度周辺にある不気味な雰囲気を探る。



ボゴッッ。



「たっ…はっ…」


まともな一撃を食らい、その場に倒れるレオナルド。

立駿は倒れたレオナルドの首元を持ち、引き上げる。


「もう終わりか?」


レオナルドは無言で立駿に向かって剣を振るう。

立駿はレオナルドを離し、それを躱す。

そして右脚で迎撃する。



ドゴッ…バタンッ。



鈍い音が鳴り、観客席も声を出すことは無くなった。


「レオナルドっ!」


「…レオナルドくんっ!」


イリーナル学園サイドにいる美登・H・紫翁と天縫糸 花音は仲間の名を呼ぶ。


「…くっ…うっ…」


かろうじて意識を保っているレオナルド。

立ち上がることはできない様子だ。


「早く降参しろよ。もう飽きたわ」


立駿はやる気を失ったようで、試合終了を促す。


「ほんっと、君を見ていると嫌になってくるよ…」


「あぁ?」


「勝利にしか興味ない。勝利以外の価値はない。そんな風な人を知っていてね」


「実際勝てないと話にならないだろ?」


「確かにそう…だと思ってたんだけどね」


レオナルドは剣を支えにしてゆっくりと立つ。


「それ以外にも、価値があることを、最近考えるようになった。それは抽象的で現実じみたことではないんだが、僕の追い求めていた強さとは違った何かなんだ」


「なにが言いてえ?」


「僕もよく分かっていない。それが何なのか、僕はどうしたいのか。…ただ、1つだけ言えることがあるとすれば…ちょっと遅かったかもしれないこと、かな」


そういって、レオナルドは剣を高く掲げる。


「僕の名はレオナルド・テリオス。イリーナル学園の学年主席にして、学内新人戦優勝者!いざ、尋常にに!」


レオナルドが高らかに宣言する。


「…うぜえ」


立駿は一瞬でレオナルドとの距離を縮め、右脚で乱打する。



ドゴッ、バキッ、ゴキッ。



人間からは聞こえてこないような音が会場を覆う。

会場は完全に静まり返っている。


「…」


重い攻撃を何度も受けている内にレオナルドの意識は薄くなっていく。


『ここで…負け…か…』


そこでレオナルドの意識は途切れる。


「死ね」


そんな様子を見た立駿が最後の一撃で終わらせようとする。

振り上げた右脚はレオナルドの頭上に直撃する。



バシッ。



振り上げたはずの攻撃は不発に終わる。

意識がないはずのレオナルドが、立駿の右脚を掴んだのだ。

これまで捉えることのできなかった立駿の攻撃。

ここにきて火事場の馬鹿力の発揮か?

立駿はニヤッと笑い、まだ戦えるかと高揚を示す…はずだった。



ゾクッゾクッゾクッ。



ステージ・選手・観客を含むすべての人が感じた殺気。

立駿の不気味な感じとはベクトルが違う。

…これはまるで。


「…は?魔物?」


司会の念動 勝さんも思わず臨戦態勢をとりながら呟く。

見えている人数は限られているが、レオナルドの周囲は赤黒い魔力があふれ出ている。

さらに頭には、小さな角のような形も。

立駿は身の危険を瞬時に察知。

至近距離での全力をぶつける。


「うおおおぉぉぉっ!『馬超扇』!」


掴まれている右脚を軸にし、振り回すように左脚を一閃する。

レオナルドは受け身も取らずに場外へ吹き飛ばされる。


「はぁ…はぁ…」


立駿は息を切らしながら自身の右脚を見る。

掴まれた場所は、手形がくっきりと残り、あまりの力強さに感覚はなくなっている。


「ちぃっ」


立駿は不機嫌のまま、ステージを後にしようとする。


『第1ステージ側の試合が終了しました。結果、老游院の勝利です』


「え…っと、だ、第1ステージ終了!救護班、いけるかな?」


念動さんは救護班にレオナルドの治療を依頼する。

救護班はおそるおそるレオナルドに近づく。

先ほどの赤黒い魔力はなくなり、ピクリとも動かない。

救護班は意識がないことを確認し、担架に運ぶ。


「…さっきの怖い感じは、レオナルドくんからでしょうか…?」


かのんの頭に疑問が浮かぶ。


「いや…まさか…。老游院の奴でしょ」


美登はそれを否定する。


「…ですよね」










老游院VSイリーナル学園 先鋒戦




陳 立駿VSレオナルド・テリオス




結果、陳 立駿の勝利












サンジュ学園VS聖マリウス学院 先鋒戦




???VS???




試合継続中

あらあら、なにやら変なものが出てきましたね(´・ω・`)

あ、50話までなんとかいけました~

皆様が見てくれるおかげです。

今後とも♯劣弱護衛をよろしくお願いします!

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