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劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第3章 統合新人戦編
49/61

第49話 陳 立駿

夜の作戦タイムも終わり、とうとう2日目。

あと2試合で統合新人戦の優勝者が決まる。

はたして勝つのはどこなのか?


時間は進み翌日の朝。

選手、関係者及び観客はすでに会場入りし、大会の再開を今か今かと待っている状態だ。


「一晩が早すぎる…」


苦虫を嚙み潰したような表情で話すのはお嬢、公家院 華である。


「…は、華ちゃん。せっかくの可愛い顔が台無しだよ…?」


その横で慌てながら話すのは天縫糸 花音。


「だって気がついたら朝だったんだもん…」


「…仕方ないよ。華ちゃん疲れてたみたいだし、すぐ寝ちゃったもんね」


「そうだけど…」


「ぐだぐだ言う暇があるほど、余裕みたいだな」


皮肉な口を利くのは生徒会を指揮する先生、的場 入先生だ。


「…すみません」


お嬢は何か言いたそうな顔をするが、それを飲み込み謝罪する。


「ま~たそんな冷たいこと言って~。素直じゃないんですから~」


1年担任の佐々木 歪先生が的場先生をつつく。


「本心だ」


スパッと斬られてしまう佐々木先生。


「はーい。皆さん聞こえますかー?」


そんな会話の途中で、司会の念動 勝の声は響く。


「大変お待たせいたしました!これより統合新人戦2日目を開始したいと思います!」



うおぉぉぉぉっっっ!



会場が湧く。


「次の対戦相手も決まってます!皆様上空をご覧ください!」


念動さんの声かけに皆が上空を見つめる。

するとモニターから第1ステージ、第2ステージの対戦相手が表示される。



第1ステージ

老游院VSイリーナル学園


第2ステージ

サンジュ学園VS聖マリウス学院



「俺たちの相手は…」


「…老游院か」


メンバーのレオナルド・テリオス、美登・H・紫翁は静かに息を飲む。


「さ~皆さ~ん。いってらっしゃ~い」


佐々木先生は生徒たちを笑顔で送り出す。


「…いってくるね。華ちゃん」


「ええ。無理だけはしないでね、かのんちゃん」


先生やお嬢に見送られ、メンバーの4人は試合向かっていく。


「…悔しいですね~。見送るだけ、というのは~」


佐々木先生は振り返らず、お嬢に声をかける。

声をかけられたお嬢は…悔しそうな顔をしていた。


「…は、い、」


試合に出れない。

この悔しい感情は、お嬢にとって苦痛以外にほかない。

メンバーの皆には一度たりともこんな表情を見せずにいた。

その握りしめた拳には、どれほどの思いがあったかが分かる。


「いいですね。こんなにも強い意志を持っている後輩がいるということは。ますます生徒会に欲しい人材です」


近くに座っていたアルサッド・ビートレイ会長はお嬢に対し好感をもつ。


「自己管理もできない奴には、当然の末路だ」


的場先生は相変わらずキツイ。


「俺らがいなくなっても、先が安泰なのはいいことだねえ」


「そうだね」


ビートレイ会長の隣に座る浦々 灰賀先輩と森波 木馬先輩も好印象だ。


「今回を糧にして~次に繋げてください~」


お嬢は黙って頷く。


「さ~試合を見ていきましょうか~」


佐々木先生の言葉に皆の視線はステージへと向くのであった。








「先鋒は誰が出ようか?」


レオナルドは他の3人に問う。


「んー俺が様子見でもいいけどな」


美登は自身を推奨する。


「…わ、私もいけます」


かのんは緊張しながらも声をあげる。


「わしは出ろと言われれば」


端っこで座っているクノウも同じ意見だ。


「うーんどうしようか…」


レオナルドが考えていると…



ゾクッ。



ステージから悪寒を感じる4人。

たまらずその場所を凝視する。

ステージ上にはすでに老游院の選手が立っていた。


「…んだぁありゃ…?」


美登から一滴の汗が流れる。


「…あ、あの方は昨日はいなかった方ですよね…?」


かのんも警戒しながら話す。


「…すごいのう」


一瞬だけ緊張するもクノウだけはすぐに正常に戻る。


「彼は…すごいね」


レオナルドも固唾を飲む。


「…ここは僕がいくよ」


レオナルドは意を決し、先鋒戦を買って出る。


「俺がいく…と言いたいところだが、すまねえ」


「大丈夫さ、それじゃ行ってくる」


そういってステージに上がるレオナルド。


「先鋒戦は僕だ。よろしくね」


レオナルドは対戦相手に挨拶する。


「ぼ、くは、(チン)(チン) 立駿(リージュン)


「陳くんか。あらためてよろしく」


「よ、ろしく」


長身で黒髪ポニーテールの男性。

少し拙い喋りだが、聞き取れないほどではない。


「両ステージ選手がつきましたので、試合を開始したいと思います!2日目第2試合先鋒戦、開始!」


念動さんの合図で試合が開始される。



カチャッ。



レオナルドは鞘から剣を抜く。


「『集中強化アクロワスワン・レンフォーサー』」


自身に魔法をかけ、陳 立駿を警戒する。


「イ、リーナルで、いちば、ん強い、人」


そういって指を指す。


「僕は確かに大会に優勝したが、一番強いとは思ってないよ」


「け、んそん?」


「そうゆうわけではないんだが。…そうだね、武力だけじゃ最強を名乗れないと知ったと言ったところかな」


「武、力はさいきょ、うにはなれな、い?」


「うーん、難しい質問だね。矛盾するかもしれないが、一概にそうとは言えない。君の所の理事長さんはその武力で最強なんじゃないかな」


「理、事長は、最強」


「だろうね」


「そ、してぼ、くが、それを、継ぐ」


「…なるほど、それが君の強さか」


さっきの悪寒が増していく。

この思いこそが、陳 立駿の不気味さを際立たせる。


「すまないが、話はこの辺でいいかい?」


あまりの圧に耐え切れなくなったのか、レオナルドが試合を再開を提案する。


「い、いよ。いつで、も」


「勝負を急ぐなんてレオナルドらしくないな」


「…それほど、警戒しているということでしょうか?」


「問題なければいいんだけど」


美登とかのんは少し不安な様子を残す。


「『王剣風圧エィペ・ロイ・プレッション』!」



ボオオォォォン。



いきなりの魔法。

剣から放たれる風は魔力を帯びて相手を覆う。

立駿は不意をつかれ、そのまま直撃する。


「…ふうぅぅぅ」


レオナルドは深く深呼吸をする。


「彼が接近戦を好まずに魔法を撃つのは~初めてみましたね~」


観戦している佐々木先生もレオナルドの言動に疑問を呈している。


「こちらでは感じない何かがあるのでしょうか?」


「そうかもしれませんね~」


お嬢たちの席からは、あの不気味な雰囲気は感じ取れていないらしい。


「これで終わりでいいですか?」


レオナルドは司会の念動さんに声をかける。


「んー、姿が見えてからにしましょうか」


「そうですよね」


レオナルドが少し残念そうにした。

…その時、レオナルドの首筋に何かが這うような感覚に陥る。


「うっ!」


レオナルドはそれを払う…が、そこにはなにもない。


「なんなんだ、これは…」


レオナルドは自分の身に何が起きたか分かっていない様子。


「ふふふっ」


レオナルドは声のする方を振り向く。

そこは魔法を放った立駿のところだ。


「あははははっ」


不気味な笑い声が響き渡る。


「遅いぞ」


最上階から一言。

そう呟くのは老游院統括理事長。

理事長こそが立駿を先鋒戦に抜擢した張本人。

その理事長が言った遅いぞの意味、それは…


「はははははっ」


ステージ上では高笑いの声が続いている。


「…気味が悪いね」


さすがのレオナルドも不気味さを口に出してしまう。


「ははははっ………はぁ」


声の主はやっと笑うのをやめた。



…スンッ。



ボゴッッッ。



「…グフッ!?」


突然の出来事。

激痛と共に地面に叩き潰されているレオナルド。

口から血を吐き出している。

何が起こったか分かっていない様子だ。

すると何かに気づくレオナルド。

とっさに横に転がり、その場から離れる。



バゴッッッ。



レオナルドがいた場所は大きなクレーターのような跡が。

まともに食らえば致命傷だ。

レオナルドは眼に見えない速さで攻撃をされた。

しかも当たるまで気づかないほどの速さで。

現状はその情報しかレオナルドには分からない。

レオナルドは何とか立ち上がり、相手に話しかける。


「…ずいぶんイメチェンしたみたいだね」


レオナルドの視線の先には、自身の魔法を食らったはずの立駿の姿が。

だが、先ほどと違いその雰囲気は真逆だ。


「あぁ…いいね。その調子で…もっと…もっと…」


立駿に何があったのか分からないが、自身の昂ぶりを抑えきれないようだ。


「スロースターターってやつかい?」


「これは俺の魔法の副産物さ」


「副産物…ね」


「そんな話はいい。さっさと続きをするぞ」


立駿は構える素振りを見せない。

だがレオナルドは動けずにいる。

一見、何にもないように見えるが、その佇まいに一切のスキはない。

レオナルドは再度強く剣を握りしめる。

常にくる重圧と悪寒は止まらない。

さっきの幻覚のような感覚も、鮮明に身体に刻み込まれている。

これまで戦った強者とは毛色が違う相手。

この不気味な相手に、レオナルドは勝つことができるのだろうか。








老游院VSイリーナル学園 先鋒戦


陳 立駿VSレオナルド・テリオス


試合継続中






サンジュ学園VS聖マリウス学院 先鋒戦


???VS???


試合継続中


立駿はどうやったら不気味な雰囲気が出るか悩みました(´・ω・`)

雰囲気出てるかな?難しい…

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