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劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第3章 統合新人戦編
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第47話 聖マリウス学院の公爵家

イリーナル学園とサンジュ学園の戦いは痛み分けとなった。

次の戦いに向けて、メンバーの入れ替えがあるのだろうか…?


「では、行かせていただきますよ」


老游院の梁 我酸(リャン・ウォスァン)は対戦相手のナナ・ノルヴァックに声をかける。


「そう簡単にはやられませんよ」


ノルヴァックも負けじと戦闘態勢をとる。


「こおぉぉぉ」


梁は呼吸を整え、気の練度を高める。


「そうはさせません!『流水(ウォーターフロウ)』」


すかさず梁に攻撃するノルヴァック。


「ハッ!」


迫りくる水魔法を自身の拳で吹き飛ばす梁。

そしてすぐさま距離を詰める。


「『集中強化アクロワスワン・レンフォーサー』!」


梁が距離を詰めたことを確認し、自身の身体強化を図るノルヴァック。


「多彩なんですね」


「小さい頃から厳しく育てられたもので」



バシッドスッダッ。



気を高めた梁と身体強化を図ったノルヴァックの肉弾戦が繰り広げられる。

観客も息を飲みながらその行く末を見守る。


「魔法を使っても、差が変わらないなんてっ」


ノルヴァックは梁の身体能力に驚きを隠せない。


「老游院は気の使い方と武術を主にしている院ですので」


梁は余裕の表情でノルヴァックの攻撃を受けきる。


「負けてられない!」


ノルヴァックはさらに攻撃の手を早める。

だが、梁はなんなくそのスピードについてくる。


「今度はこちらの番ですね。『(ダン)』」


梁の拳はまっすぐノルヴァックに伸び、大きな打撃となる。

かろうじて両腕で防御するが、相当重い一撃となる。


「これは…八極拳!?」


「そう、これは我々老游院の学びある中の1つ。この梁・我酸は八極拳の使い手!」


梁は続ける。


「未だ未熟ではあるが、この場においては有効な技となろう。『胯單(クァダン)』!」



ゴンッ。



腕のみならず、身体全体を使った豪打は先ほどの單よりも威力増大。

その衝撃音に思わず観客の顔も青ざめる。


「くっ…はっ…」


思わずノルヴァックも仰け反る。

梁はそのスキを逃さない。

一瞬で間合いを詰め、身体を寄せる。


「『鉄山靠(てつざんこう)』」


身体全体を使った武術がノルヴァックに直撃する。

そのまま後ろに倒れ込む。


「んぅっ…くぅっ…」


あまりの衝撃に起き上がることができないノルヴァック。


「万に一つも負けはない」


梁は追撃の構えをとる。



パアァァァ。



ノルヴァックの身体が青白い光によって包まれる。


「…それがあなたの魔法ですか」


この青白い光はノルヴァック家に代々受け継がれる治癒系統の魔法。

その効果はライオネルの時に実証済みだ。


「はぁ…はぁ…」


ノルヴァックはやっとの思いで立ちあがる。


「身体のダメージは治せても、疲労までは治せませんか」


梁は冷静に分析をする。


「『魔力増大(アクロ・ラ・マギ)』」


ノルヴァックは自身に魔法をかける。

そして両手に魔法陣を展開する。


「魔力の増加ですか」


「『多重流水(ドゥープル・フロウ)』」


2つの魔法陣から水魔法が放たれる。

だが、梁はその攻撃を宙を舞って回避する。


「そんな単調な攻撃は当たりませんよ」


宙に舞った梁はそのままノルヴァックに接近し、反撃する。

その攻撃を何とか防ぐノルヴァック。


「くっ…『集中強化アクロワスワン・レンフォーサー』」


再度身体強化を行い、梁との肉弾戦に挑むノルヴァック。


「何度やっても結果は同じですよ」


やはりノルヴァックの攻撃は決定打にならない。


「嬢ちゃん打つ手ねえみてーだな」


観戦している聖マリウス学院のメンバー、パーラ・ライオネルは気難しそうな顔をする。


「仕方ないんじゃない?元々戦闘メインのスタイルじゃないんだから」


「そんな彼女を送り出したのは、君なんだけどね」


他メンバーの沙花又 陽樹、レイン・ザガンはそれぞれの意見を述べる。


「やっぱお前が行くべきだったんじゃね?」


「…めんどい」


沙花又はだるそうにそっぽを向く。


「これまでの試合を見るに、彼女自身の戦意がなくならない限りは試合は継続される。そして彼女はこの試合を投げる気はない。我々としてはどうすることもできない」


レインは冷静に状況を分析する。


「見てるだけってのは、胸糞わりいぜ」


「さっさと降参して明日に備えればいいのに」


「ほんっとにお前はどの目線で語ってるんだ?」


「僕は僕の目線で話してるよ」


「そうかいそうかい」


マリウスの3人はノルヴァックの行く末を見守ることしかできない。

3人が話している間にも試合は続いている。

ふと気づくとすでにノルヴァックはボロボロだった。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


状況を打破することができず、ただただ消耗するだけの状況。

ノルヴァックの精神もすり減っていた。

対する梁は余裕の表情。


「…まだ、続けますか?」


梁からの提案が入る。


「このままだと、弱い者いじめしているみたいになりますよ」


「…私が弱いのは認めます。ですが、この場に立っている以上、聖マリウス学院の生徒、そしてノルヴァック家としての2つを背負っているのです。無責任なことはできません」


「…なら、そのまま負けを背負って逝ってください」


梁は満身創痍のノルヴァックに向かって走り出す。

ノルヴァックも左手を前に出し構える。


「これでとどめです」


「まだっ!私は負けないっ!」


梁はノルヴァックの伸ばしていた腕をつかむ。


「こおぉぉぉっ!『捻転・車輪』!」


梁の技が炸裂する。

ノルヴァックの身体はその場で回転する。

ノルヴァックの視界は唐突に重力の概念を忘れ、自身の状況把握ができなくなる。


「おおおぉぉぉっ!」


そして梁は無防備はノルヴァックをステージの地面にたたきつけた。



ゴンッ!



鈍い音ともに会場は静寂に包まれる。


「…ほぅ」


新人戦会場の最上階、各トップがいる部屋で1人、関心の声をあげる人物。

老游院統括理事長、李である。


「僕の技を真似たのか」


そう。

『捻転・車輪』とは、李の技。

掴んだ相手に対し、平衡感覚を狂わせ体勢を崩す。

生みの親、李までになれば掴むのではなく、掴まれても技の発動は容易。

先の親善試合でもこの技は使われている。

ビートレイ会長と剛毛会長に対してだ。


「まだ未熟ではあるが…まあこれからか」


自身の生徒の成長に及第点を出す李。

評価の対象になった梁は不満げだった。


「李様の技とは程遠い…改善の余地しかない…か」


そう言って倒れているノルヴァックを見つめる。


「…また会いましょう。公爵令嬢」


『第2ステージ側の試合が終了しました。結果、老游院の勝利です』


試合終了のアナウンスが行われ、ステージに倒れているノルヴァックに救護班が駆け寄る。

梁は老游院のメンバーの元に帰っていく。


「梁!」


老游院の選手、林・美蘭(リン・メイラン)は梁に声をかける。


「おめでとうございます!」


妹の林・玉蘭(リン・ユーラン)も勝利への言葉をかける。


「これでひとまず、怒りが収まってほしいが…」


そういって梁は最上階を見る。


「り、李様が怒ってたらどうしよう…」


「だ、大丈夫だよお姉ちゃん…」


林姉妹は不安そうだ。


「やあ」


ある人物の声に3人は身震いした。

林姉妹は怖くて後ろを振り向けない。

代わりに梁が後ろを向いて返事をする。


「李様、ここまで足を運んでいただき、ありがとうございます」


梁は膝をついて挨拶する。


「楽にしていいよ。1試合目が終わってから労いに来たんだ」


林姉妹も梁と同様のポーズをとり、挨拶する。


「り、李様。ご、ご足労ありがとうございます」


「お忙しいところありがとうございます」


「気にするな…と言いたいところだが、」


「「っっっ」」


林姉妹は顔を上げることができず、身震いするばかり。


「この失態は、許されるものではないかな」


「…うっ…えぐっ…」


李のあまりの圧に姉の美蘭は泣き出してしまう。

妹の玉蘭は顔が青ざめる。


「…まあ、明日の試合を楽しみにする、ということで手を打とうかな」


李自ら再起の機会を提案する。


「あ、明日の試合は必ず」


「良い結果が得られるように」


林姉妹は明日の試合の勝利を誓う。


「それと、梁」


李は話を変え、梁の名前を呼ぶ。


「はっ」


梁はポーズを崩さず、李の問いかけに答える。


「さっきの試合、見たよ」


「ありがとうございます。李様が院にて1度だけ見せていただいた技を試行錯誤したのですが、李様の武には程遠く…」


「ははっ。僕の技を見ただけで完璧にできたら今頃君は学年トップだよ」


李は笑いながら答える。


「まあでも、梁なりにうまく改良できていたと思うよ。これからも精進するがいい」


「はっ」


梁は深くお辞儀をする。


「あ、そうだ。明日の先鋒戦は立駿(リージュン)に出てもらうから」


3人は驚いた表情で李を見る。


「リ、リー…ジュン…ですか…?」


「そうだけど、何か不都合があった?」


「い、いえ。彼が大会に出るとは、思っていなかったもので…」


梁は戸惑いを隠せない。


「確かに彼はこういった催し物は興味がない。今回はちょっと話をしてね。その結果、1回だけ出てくれるみたいだ」


「り、李様が直々に…」


「ま、そうゆうことだから。明日の2試合、楽しみにしとくね」


李は期待を口にしつつ、その場を去っていくのであった。








「あーあ、負けちまった」


ライオネルは大将戦での試合を振り返る。


「実力差を考えれば、健闘した方だろう」


「勝ち越してんだからいいじゃん」


レインはノルヴァックの試合を称え、沙花又は気にしていない様子。


「明日の試合は出ろよ」


「気が乗ったらねえ」


沙花又はライオネルの言葉をのらりくらりとかわす。


「明日は2試合ある。我々の状態を見極めつつ、適宜最良の選択をしていかなければならない。そのためには沙花又。君の力も絶対必要になるはずだ」


レインのまっすぐな言葉に呆れる沙花又。


「…はいはい」


「今日はこのくらいにして、明日に備えよう。ノルヴァック公爵の様子も気になるしね」


「そうだな」


そういって3人は医務室へ運ばれたノルヴァックの様子を見に行くのであった。








かくして、統合新人戦1日目の日程は終了した。

結果が伴わなかったもの。

実力差を思い知らされたもの。

圧倒的な力を見せたもの。

それぞれ魅力のある試合が多かった。

明日の2試合ではさらなる激闘が待っている。

選手たちはつかの間の休息をとるのであった。







老游院VS聖マリウス学院 大将戦




梁 我酸VSナナ・ノルヴァック




結果 梁 我酸の勝利

仕事が忙しくて投稿頻度が安定しないの少しストレス(´・ω・`)

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