第45話 剣士VS風使い
中堅戦も終わり、いよいよ大将戦。
勝利が必要なイリーナルの大将はレオナルド。
ここで挽回なるか…
中堅戦はレイリーの勝利で終わった。
次は大将戦になるのだが、第2ステージの中堅戦に時は遡る。
「続きまして第2ステージ!老游院からは林・美蘭選手。聖マリウス学院からはレイン・ザガン選手の試合です」
司会の念動さんが第2ステージの対戦相手を発表する。
「お姉ちゃん頑張って」
「任せるあるよっ」
妹の林・玉蘭に応援され、ステージへ上がる美蘭。
すでに1敗している老游院にとって、この中堅戦は勝利が欲しいところ。
対戦相手のレイン・ザガンは静かにステージに佇んでいる。
「よろしくねっ。学年主席さん」
「…俺を知っているのか?」
レインは不思議そうに尋ねる
「老游院は各校調べる当たり前ねっ」
「なるほど。勝率を上げるには理にかなっているな」
「手加減する気はないねっ」
「俺もその気だ」
互いに戦闘態勢をとる。
「それでは中堅戦、開始!」
念動さんの合図により試合が始まる。
レインは静かに剣を抜き、美蘭に歩み寄っていく。
「…とは言ったものの、学年主席は割に合わないね…」
強気の啖呵は切ったはいいが、実力差があるのは自覚している様子。
それでも老游院としては勝利が必須。
泣き言を言っている場合ではない。
「…圧がすごいねっ」
ゆっくりと歩いているだけなのに、レインの存在感に圧倒されている美蘭。
「スゥゥ…」
ゆっくりと息を吸い、得意の気を高めていく。
その頬からは一滴の汗が流れる。
ツゥー…ポタッ。
美蘭から流れる一滴の汗が地面に落ちた。
その瞬間、美蘭は走り出す。
「はいやー!」
レインとの距離を詰める。
狙いは首。
美蘭の手刀がレインを襲う。
「とった!」
美蘭の攻撃があと数ミリで届く距離までいった。
だが、その攻撃は当たることは無かった。
ザシュッ。
美蘭の手刀が届く前に、レインの剣が美蘭を斬る。
「な、んで…」
バタッ。
美蘭はその場に倒れる。
「お姉ちゃん!」
玉蘭の大声が響く。
「…気の練度は素晴らしかった。だけど、それだけだ」
「…まだ…」
美蘭は地面を這いながらレインに近づこうとする。
「すごい執念だ」
レインも美蘭の意思を褒める。
「私は…まだ…」
立ち上がろうと手を伸ばすも、その手は地面に落ちる。
「救護班」
レインは傍にいた救護班を呼ぶ。
救護班たちは意識を失った美蘭を担架に運んでいく。
「お姉ちゃん!」
玉蘭は救護班と共に姉を介護する。
『第2ステージ側の試合が終了しました。結果、聖マリウス学院の勝利です』
アナウンスも放送され、中堅戦があっけなく終わる。
「瞬殺じゃねえか」
聖マリウス側にいたパーラ・ライオネルもドン引きな様子。
「そんなことはないよ」
ライオネルの言葉を否定するレイン。
「流石の実力ですね」
隣にいたナナ・ノルヴァックも褒める。
「相手が可哀そう」
試合を見ていた沙花又 陽樹も相手を憐れむ。
「まあこれで俺らの勝ち越しは確定。大将戦は誰が出ても文句ねえわけだ」
ライオネルは自分たちの勝利に喜ぶ。
「沙花又が出るのかい?」
「なんで俺が出るんだよ。ここは公爵様に任せるよ」
「…え?私ですか?」
微塵も出ると思っていなかったノルヴァックはきょとんとした顔で沙花又を見る。
「なんのために選抜に選ばれたの?試合に出るためでしょ」
「それは君にも言えることじゃないかな」
「完全なブーメランだろ、それ」
2人から訂正されるが気にしていない様子。
「まあ僕は次の試合でないから、あとよろしくね」
そう言って欠伸をする沙花又。
3人は呆れた表情を浮かべる。
「…ほんとに私が出るんですか…?」
ノルヴァックは不安そうな声を出す。
「…申し訳ないがそうなる」
「ま、まあ勝ち越してはいるからそんな心配すんなって」
2人のフォローが入る。
「わ、わかりました…」
しぶしぶ承諾するノルヴァックであった。
「さあさあ皆様おまたせしました!いよいよ大将戦のお時間です!」
念動さんのアナウンスが行われ、最後の大将戦が始まろうとしていた。
「じゃあ、行ってくる」
「…はい、無理しないでくださいね」
イリーナル学園の主席、レオナルド・テリオスはチームメイトである天縫糸 かのんとやり取りを行う。
「はあ…。じゃあ行きますか」
「貴方らしく戦えばいいのよ」
「勝つんだぞ」
対するサンジュ学園も風間 風助のやる気のない声に水炎寺 波流渦、その従者レイリーが励ましの言葉を贈る。
風間には全然響いていないみたいだ。
「…あちらさんも大変そうだ」
風間は第2ステージの方を見る。
少し距離があるため、詳しく見えているわけではない。
が、風間には『風』が見えている。
その影響で大まかな状況は把握できる。
「それに比べればマシか…?いや、俺の方が大変だね」
自分1人でぼそぼそと話す。
「あの人大丈夫かしら?」
「元からおかしい奴なんで大丈夫かと」
レイリーの評価は低い様子。
「どーも」
風間は共にステージに上がったレオナルドに対して軽く挨拶をする。
「互いの健闘を」
レオナルドは風間との勝負を称える。
『それではこれより、第1ステージ・第2ステージの大将戦を開始してください』
全体アナウンスが響き渡る。
「いっちょ頑張りますか」
風間は周囲に風を発生させ、自身の身を守る。
「いい魔法だね」
「そいつはどーも」
褒められるがあまり気にしていない。
「それで攻撃するのかい?」
「いや?これは護身用。どーせ突っ込んでくるでしょ?」
「僕のことを知ってるみたいだね」
「そりゃ大会で優勝すりゃ知名度も上がるでしょ」
「それは校内の話ではないかい?」
「観客まで呼んどいてなに言ってんだが」
「たしかに」
レオナルドは笑いながら風間の話を肯定する。
「では、行かせてもらうよ」
「ご自由にどーぞ」
風間の周囲に漂っている風魔法はより一層強まる。
「『集中強化』」
レオナルドはお得意の身体魔法で自身を強化する。
そして風間に剣を向ける。
少し踏み込みを入れた瞬間、
ドゴッ。ビュンッ。
レオナルドの地面に穴が開き、一瞬にして風間の前まで移動する。
「…化け物め」
レオナルドは何も言わずに剣を振るう。
風間はそれをギリギリで避ける。
「っっっぶねえ!」
そのまま後方に下がる風間。
「僕のことを化け物扱いするけど、それを避ける君はどうなんだい?」
レオナルドの質問に対し、
「俺はあんたの動きなんて見えてねえよ!一緒にすんな!」
「それなら僕の攻撃を避けた理由にはならないな」
「あんたの攻撃は風で先読みしているだけ。そのあとの動きも風のサポートあり気だっつの」
風間は困ったように話す。
「…その風は厄介だね」
レオナルドは風間の風魔法を警戒する。
「そんな警戒するほどのことでもないと思うんだがね」
「僕の攻撃が当たらないんじゃ、警戒するのは当然じゃないかな?」
「ご自身の実力を理解したうえでの発言ってか!」
ビュゥゥゥ。
風間は、自身の風を追い風にし、レオナルドからは逆風になるよう細工する。
「ようやく戦ってくれるのかい?」
「やらないと後ろのお嬢様に怒られるんでね」
「先鋒戦の彼女か。とても強かったね」
「あんたが言うと嫌味にしか聞こえないね」
「素直に受け取りなさいよ。私は強いんだから」
後ろで水炎寺が何か言った気がするが、無視する風間。
「正直、まともにやり合いたくないんだよね。あんた強すぎるし」
「僕はまだまだだよ。超えるべき相手も見つかったしね」
「迅か?」
黒崎 迅の名前が出て、反応を見せるレオナルド。
「ビンゴってとこか。しっかり意識してんだな」
「…次戦ったら勝てるかどーか分からない。そのためにももっと強くなる必要がある」
「そんな強くなってどうするのやら」
そう言いながら、両手をレオナルドに向ける。
「時間稼ぎは済んだかな?」
「ばれてーら」
舌をべーっと見せ、開き直る風間。
「ほんじゃあ、行かせてもらいますか。特大の風魔法をお見舞いしてやるよ!」
風間のい両手に大量の魔力が注がれる。
そしてそれは大きな魔法陣となる。
「今だけ!ありったけの風を!『暴風』!!!」
家1つ跡形もなく吹き飛ぶくらいの風魔法が、レオナルドを飲み込んでいった。
イリーナル学園VSサンジュ学園 大将戦
レオナルド・テリオスVS風間 風助
試合継続中
老游院VS聖マリウス学院 大将戦
???VS???
試合継続中
レオナルドはなぜこんなに貫禄があるんだろう…