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劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第3章 統合新人戦編
44/61

第44話 甘さ

激化する中堅戦。

ギリギリのところで一矢報いた美登の攻撃は果たして…



『双刀・ツチウミ』


その両剣から織りなされる剣技は、無数の斬撃を生み、相手を息する暇なく攻撃する。


『双刀・ヤマツチ』


両剣を重ね合わせることで、厚みのある刃と化す。

さらに魔力を込めることによって殺傷力を増し、並大抵の守りじゃ防御不可能。


美登の生成系統の魔法を生かし、独自の剣術と居合を磨きぬいた剣技。

自身の特色を理解したうえでの戦い方。

レイリーの武術も自身の特色を生かした戦い方と言える。


「…はぁ…はぁ…」


美登の息は切れ、その場に座り込んでしまう。

やっとの思いでレイリーに一撃を加えることができた。

その事実が美登が抱いていた緊張の糸が切れるには充分だった。


「『剛気・波』」



ドゴッ。



美登の身体は宙を舞う。



ドサッ。



そのまま場外まで吹き飛ばされ、地面に身体を打ち付ける。


「グフゥッ」


美登は口から血を吹き出し、もだえ苦しむ。


「紫翁君!」


「…美登君!」


レオナルドとかのんが美登の方に駆け寄る。

返事はないが、かろうじて息はしている。


「早く救護班を!」


「すでに待機をしています」


近くに待機していた救護班が美登を担架に乗せ、医務室へと運んでいく。


「…ふぅ…」


ステージに1人立っているレイリーは深く呼吸をする。


「危なかった…」


美登が繰り出した最後の一撃、『双刀・ヤマツチ』。

威力はもちろんのことだが、不意を突いたことでレイリーにとって致命的な一撃になる…はずだった。

気の練度は練れなかったのはもちろんのことだが、こいつは気を使えるだけの男ではない。

ギリギリの後方回避とオーラによる局所防御。

本来、あの赤いオーラは攻撃用に特化されたものだが、防御に使うことによってその破壊力で相殺を図ったのだ。

とっさの機転により致命傷を避け、そのままカウンターを繰り出した。

左胸付近は確かに斬られた跡があり、出血もしているが軽症だ。


「…お嬢様の顔に泥を塗るわけにはいかないからな」


そういってステージを後にしていく。


『第1ステージ側の試合が終了しました。結果、サンジュ学園の勝利です』


全体アナウンスも放送され、中堅戦終了となる。


「えー、これでサンジュ学園が1歩リードってとこかな?」


司会の念動さんも試合が終わり、現状を把握する。


「…」


レオナルドはその念動さんに視線を向ける。


「どうしたのかな?若人よ」


念動さんも気づいたようで、レオナルドに向かって話しかける。


「…1つ、進言を」


「どーぞ」


「貴方がさっきの戦いで止めなかったのは、美登の戦意消失がないと判断した。…ということでいいですか?」


「まあそうですね。明らかに戦う意思がありましたし、それに相手側も殺意があったわけではありません」


まったくもってそのとーりだ。

何も言い返すことはない。


「…そうですか」


レオナルドもこれ以上の答弁は意味がないことを分かっている。


「…これは持論ですが」


話を終えたレオナルドに話を続ける念動さん。


「先ほどの親善試合でのことを覚えていますか?」


突然の質問に戸惑うレオナルド。


「…それは会長たちの試合でしょうか?」


「そうです。あの場での老游院統括理事長の言動です」


試合というより一方的な暴君に近かった試合のことだ。


「それがどうしたのでしょうか?」


「あの試合を止めなかった私は少し反省をしました。あのレベルの戦いは止めるべきなのだと」


そこから念動さんの表情から感情が消える。


「近年の学生はずいぶんぬるい指導をしているんだなと」



ゾクッ。



レオナルドはもちろん、会場にいた観客も背筋が凍る感覚を味わう。

すぐさま念動さんは元の状態に戻る。


「ま、この考えは長生きしている老害の考え方なのだろうと納得しましたが、将来のことを考えると未来はないのかなと思いました」


「…」


レオナルドは返す言葉もなく、ただただ黙って話を聞いているだけだ。

近くにいたかのんは身体が震えている。


「怖い思いをさせたかったわけではないんだ。その感情は大事だ。前線に出るかは知らないけど、その感情があるだけで生存率は増す。ただそんな感情を抱く前に死ぬのが前線なんだけど」


さらっと言葉を並べるが、前線が目標である人からするとなんとも希望のない話である。


「念動く~ん。あまり学生たちを怖がらせたらダメだよ~」


佐々木先生が話に入ってくる。


「あ、佐々木先生!そうですよね。怖がらせるつもりはなかったんですが…。自分はオペレーターなのでいつもの歯がゆい思いを私情でぶつけてしまいました。すみません」


佐々木先生のいる席の方に頭を下げる念動さん。


「少しフォローというわけではありませんが、けっして全生徒が甘い考えというわけではないですよ。現状を理解し、しっかりと地に足がついている若者も多くいます。それはほんとです」


ただその数が少ない。

ただそれだけのことだ。


「話がそれました!司会を続けていきたいと思います!第2ステージの方はどうでしょうか?」


念動さんが老游院と聖マリウス学院の勝敗を尋ねる。


「もうとっくに終わってますよ」


聖マリウス学院側から声が。

試合をしていた本人、レイン・ザガンが返事をする。


「あら、早かったですね。レイン選手がその様子だと試合は…」


「はい。聖マリウス学院の勝利です」


「おーおめでとうございます」


念動さんから拍手が送られる。

老游院側はというと…


「お姉ちゃん!大丈夫?」


「負けちゃった…負けるわけにはいかなかったのに…」


心の底から悔しそうに下を向く林・美蘭(リン・メイラン)


「仕方ないよ。相手は大会筆頭って呼ばれている人。試合を見てたけど、あの実力は桁違い…」


妹の林・玉蘭(リン・ユーラン)も半ば諦めのムードだ。


「それでも負け越しするわけにはいかなかったのに…李様…」


「起きてしまったことは仕方ない。次に切り替えよう」


「でも(リャン)!」


「大丈夫だ。私が1勝して次に活かす」


自信たっぷりの梁に言葉を紡ぐ美蘭。


「…イリーナルとサンジュには絶対勝って見せる…」


「わ、わたしもがんばるよ!」


「その意気だ」


老游院は負け越しが決まったものの、3人のモチベーションは変わらずだ。







「余裕の勝利だったな」


サンジュ学園の風間 風助は試合に勝ったレイリーに対して皮肉を込めて賛辞を贈る。


「当たり前だ」


その言葉に真正面から受け取るレイリー。


「可愛げのないこと」


風間はげんなりした様子だ。


「お嬢様のための勝利だ。負けるわけにはいかない」


「へいへい」


もう興味をなくしたのか、レイリーとの会話を切ろうとする風間。


「次はお前だぞ。そんな調子で大丈夫なのか?」


「めずらしく俺の心配ですか?これから雨でも降るんかね」


「それだけ余裕なら次の試合は勝つんだろうな」


「まさか」


風間はさらっと否定する。


「俺の次の相手誰だと思ってんの?イリーナルの学年主席様だぜ?勝てるわけねーよ」


「なにを弱音を吐いている!お嬢様のために勝て!」


「そんな根性論で勝てるなら今頃人類最強だわ!だったらお前が大将戦出ればよかったじゃねえか!」


「…確かに」


レイリーはふむ…と考え込む。


「水炎寺が引き分けたからって頭に血が昇って中堅戦に出やがって。俺が尻拭いする羽目になってんじゃねえか」


「あら?尻拭いをしてくれるのかしら?」


後ろから聞き覚えのある声が。

いたるところに包帯による処置を施された水炎寺 波流渦が立っていた。


「お嬢様!」


レイリーはすぐさま水炎寺の近くに行き、状態を確認する。


「お怪我は大丈夫なんですか?」


「大丈夫よ」


「いや、その様子見て大丈夫な方がおかしいだろ」


「心配してくれるの?」


「さすがに心配しないほど冷徹ではないが」


「ふふっ。そうね、ありがとう。でもほんとに大丈夫よ」


「それならよかったです」


レイリーもホッと胸をなでおろす。


「それは別として風間君。私たちの尻拭いは…してくれるのかしら?」


自信たっぷりな態度で風間に聞く水炎寺。


「…はぁ。善処します」


「よろしい」


「目指すは全勝だ」


「今の時点で達成できてねえよ」


風間はレイリーの夢物語のような発言をバッサリ切っていくのであった。









イリーナル学園VSサンジュ学園 中堅戦


美登・H・紫翁VSレイリー


結果 レイリーの勝利





老游院VS聖マリウス学院 中堅戦


林・美蘭VSレイン・ザガン


結果 レイン・ザガンの勝利

中堅戦も終了。

美登は負けてしまいましたね(´・ω・`)

この時点で聖マリウス学院は勝ち越しが決まり。

イリーナルとサンジュは次の試合次第でまだ分かりませんね。

どうなることやら|ω・)

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