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劣弱と呼ばれた最強護衛  作者: 佐藤 拓磨
第3章 統合新人戦編
43/61

第43話 レイリーVS美登

第2ステージの先鋒戦では、聖マリウス学院の勝利となった。

中堅戦も始まり、各校ヒートアップしていく。

イリーナル学園は初勝利を飾ることができるのか。



ギィィィン。



互いが接触した音が会場に響いていく。

剣と拳の激突とは思えない音だ。


「…その拳は…」


美登はレイリーの拳を見つめ呟く。


「ああ、これかい?魔法を施しているんだよ」


そう言って自身の拳を前に出す。

レイリーの拳には赤いオーラのようなものが覆うように光っている。


「…いつ魔法を唱えたんだ?」


美登は不思議そうに尋ねる。


「ん?強化魔法のことかい?これは無詠唱だよ」


「…そうか」


美登はさらに警戒心を強める。


「君は…確か居合の使い手だったよね。あいつに負けていた」


「…あいつとは、黒崎のことか?」


「そうだよ、魔力0の彼のことだ」


「…クラスメイトと悪く言われるのは、いい気分じゃないな」


「君らも入学当初は同じような気持ちだっただろ?みんな感じるものは一緒さ」


「…否定はしない」


「素直なことだ。…手の内が一方的に明かされているのは癪だな。こちらも開示しようか」


「…余裕なんだな」


「負けの言い訳にしてほしくないだけだよ」


そしてレイリーは自身の能力について語っていく。


「私の魔法は身体強化とは少し違う。追加付与がついてくる」


「追加付与…?」


「触れるものに対する破壊能力だ」


そう言ってレイリーは地面に向かって拳を打つ。

すると、



ボゴッ。



身体強化だけでは説明がつかないほどの衝撃が走る。


「…俺に触れればいいな」


「触れれば…ね」


そういってレイリーは右手を引き、打撃の構えをとる。

そしてその拳を打ちつける。

その瞬間、



ドンッ。



「うぐっ…」


腹部に攻撃を受ける。

届くはずのない打撃が美登を襲う。


「残念だったね。私は接近戦闘だけの武術家ではないんだ。気の練度もばっちりさ」


「…勉強になったよ」


美登は腹部を抑えながら苦笑いをする。


「今度はそちらの剣技を見せてくれるかい?」


余裕のあるレイリーに対し、美登は笑い返す。


「…舐められたものだな」


「舐めてなんていないさ。これが実力差ってやつだよ」


そこまで言われて引き下がるわけにはいかない。

美登は深呼吸をし、自身の剣に手を伸ばす。

ただ一点だけを見つめ、


「『居合・翁』」


言葉と共に放たれた剣技は、まっすぐレイリーに向かっていく。


「剛氣・耐」


レイリーはその攻撃を真正面から受ける。

着ていた服は斬撃により斬れるが、肝心の身体に傷はない。


「…斬れないか」


美登は驚く様子もない。

そんなレイリーは残念そうに


「もっと驚くと思ってたんだけどな」


「…」


無言で構えなおす美登。

再び深呼吸をする。


「やる気が削がれてなくて安心したよ」


「…『居合・二枚翁』」


次の攻撃がレイリーを襲う。


「何度やっても同じだよ。『剛氣・耐』」


同じ展開が繰り返される。

2回になった斬撃も服だけが斬れ、ダメージにはならない。


「居合ってものがどんなものかと思ったけど、こんなもんか」


レイリーは服を払いながら呟く。


「なに?」


「所詮武器を手にしたところで、私の身体1つ傷をつけることもできないのなら持つ意味もないだろう」


レイリーは煽っているわけではない。

ただただ本心で武器の必要性を説いているのだ。

美登にとっては、ただの冒涜にしか聞こえないわけだが。


「…ふぅ」


美登は頭に血が昇り、今にでもレイリーに掴みかかりたい気持ちを必死に抑え深呼吸する。

そして左手を前に出し、魔力を注ぐ。


「まだ策があるみたいだね」


レイリーはその光景をただじっと見つめている。

美登から出ている魔力は次第に横に伸びていき、剣へと変わっていく。


「なるほど。生成系統による魔法か」


分析をしながら観察を続ける。

美登が作り上げた剣は自身の持っている剣よりも少し短い短剣となって生成される。


カチャッ。


美登は生成した短剣を抜き左手に、持参していた剣を右手に携え、構えなおす。


「剣を1つ増やしたところで変わりはないよ」


レイリーも一連の流れを確認し構えをとる。


「…いくぞ」


美登はレイリーに向かって走りだす。


ボォォ。


レイリーも両手に赤いオーラを灯し迎撃態勢をとる。



ギィィィン。



互いの攻撃が交差する。

美登は間髪入れずに攻撃を続ける。

レイリーはそれをいとも簡単にいなす。


「単調な攻撃だね」


「の割には防御だけか?」


「様子見ってやつだよ」


レイリーは美登の剣を振り払い、身体に打撃を与える。


「ぐっ…」


「まだまだ」


レイリーは脚にもオーラを付け、美登に攻撃する。

モロに頭を攻撃され、一瞬意識が飛ぶ。


「これでおしまい」


レイリーは倒れそうな美登にさらなる追い打ちをかける。


「『剛氣・波』」



ドォォン。



魔法と気の両立された攻撃は無防備な美登に直撃する。

そのまま吹き飛ばされた美登は受け身をとることもなく地面へと倒れ込む。


「んー、もうちょっとやるのかなと思ってたけど…大したことないな」


レイリーは微妙な反応を見せる。


「お嬢様と引き分けた公家院様の実力で次席にもなれなかったことを考え、少しは警戒していたが…大げさだったか」


レイリーはステージから降りようと歩き始める。


「…カヒュー…」


今にも息絶えそうな呼吸音が聞こえ、ゆっくりと振り返る。


「…その忍耐力は評価しよう」


レイリーの視線の先には、剣を支えに立ち上がろうとする美登の姿が。


「まだやるのかい?その感じだと肋骨辺りが折れていそうだけど」


レイリーの言葉などお構いなしに動こうとする美登。


「レフェリーストップだ!」


ステージ外からレオナルドの大声が響く。


「…うーん…」


肝心の念動さんは迷っている様子。


「なぜ試合を止めない!?紫翁君はもう試合できる状態ではないだろう!」


「その方が賢明だ」


レイリーも同意見のようだ。

そんな心配を振りきるように美登は立ち上がりきる。


「試合続行の意思を認めます」


念動さんは考えた末、結論を出す。


「なっ…」


レオナルドも唖然とした様子。


「…司会がそうゆうなら仕方ない」


レイリーは再度美登に向かい構える。


「そんなバカなことがあってたまるか…」


「…美登くん」


悔しがるレオナルドとその横で心配そうに見つめるかのん。


「呼吸もままならない君を攻撃するのは少し気が引けるが…一撃で終わらせてあげよう」


「…ヒュー…」


レイリーの両手が赤いオーラに包み込まれる。


タタタタッ。


「…終わりだ」



ゴンッ。



レイリーの拳が静かに美登にぶつかる。

これで終わり…。

誰もがそう思った…が。


「…ここまでくると往生際が悪いよ」


レイリーの拳を両方の剣で防御している美登。

その眼はまだ…死んでいない。


「…ュー…」


呼吸も次第に落ち着きを取り戻していく。

レイリーは怪訝そうな顔をしながら、


「…君の身体はどうなっている?」


レイリーは続ける。


「その回復力…人間の域を超えてはいないかい?」


「……黙れよ」


「…喋れるのかい?ほんとに不思議な人だな」



ギィィィン。



美登は無言でレイリーを振り払い、追撃を行う。

レイリーは両手を使い、華麗にかわしていく。


「『双刀(そうとう)・ツチウミ』」


2つの刀による美登の剣技。

その剣さばきの骨頂は居合術並みの速さにある。


「…っ!『剛氣・耐』」


レイリーもとっさに防御の構えをとる。


「いくら無数の剣技としても!その刃は届かぬ!」


「…だろうな」


美登はあっさりとレイリーの言葉を受け入れる。

だが、決して諦めているわけではない。

そして防御に専念していたレイリーは自身の足元の状況に気づかない。


「食らえ」


レイリーの足元には美登の魔力が集まっていた。

そこから3本目の剣が出現し、レイリーにまっすぐ飛んでいく。


「…くぅっ」


並外れた反射神経により、紙一重の差で躱すレイリー。


「すぅぅー…がはっ!」


その間に美登は血を吐きながらこの試合で1番と言っていいほどの深呼吸を行う。


「その身体でなぜそこまでの呼吸ができる!?」


レイリーも困惑している。

美登の身体状況を考えれば、とてもまともな呼吸ができる状態ではない…はずだ。

だが、現に美登は深呼吸をし、身体を動かしレイリーに迫る。


「…一瞬乱してくれたら、それでいい。気の練度も呼吸あり気だろうからな」


「くっそぉ!」


レイリーが防御の構えをとろうとするが、一瞬のスキを美登は見逃さない。


「『双刀(そうとう)・ヤマツチ』!」



ザシュッ。



始めて美登の一撃が…レイリーに届く致命打になった瞬間であった。







イリーナル学園VSサンジュ学院 中堅戦


美登・H・紫翁VSレイリー


試合継続中

水炎寺家の護衛、レイリーの実力が発揮されましたね(´・ω・`)

美登くんがボッコボコですが、ようやく一撃が通りました!

これからどうなるのでしょうか?

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